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13話 限界突破

 オーガよりも巨大で動きは鈍重だが、トロールは腕の膂力が強く、一発でも腕が当たれば吹き飛ばされる。

トロールと対峙する時の鉄則は棍棒の一振りを喰らわないこと。

そのことをキースも他の三人もよく熟知していた。

トロールの棍棒を持っている利き腕の手首を狙うのが一番効果的だ。


 スーラとウーラは二人で連携しながら、一体のトロールを斬り刻む。一撃でトロールの筋肉を断ち斬ることはできないが、何度も同じ箇所を斬ることで、それを補う。

既にトロールの腕から棍棒が消えている。双子がトロールの利き腕の手首を斬った。


 アルナは魔法障壁を展開して、トロールの攻撃を完全に防いでいる。そして逆袈裟にトロールの膝裏の健を狙って、剣を振るう。


 キースは棍棒の一発を貰わないように、円を描くように立ち回り、トロールに的を絞らせない方法で、懐に飛び込み、横薙ぎに剣を一閃する。トロールの皮膚は斬れるが、筋肉を斬ることはできない。



「ウァララー」



 トロールが怒りの咆哮をあげた。

それでもキースの攻撃は止まらない。懐の飛びこんだまま、トロールの利き腕の手首を狙って一閃する。やはり皮膚が斬れるだけで、手首を斬り落とすことができない。


 怒ったトロールが棍棒を左右に振って、暴れまわる。キースは一旦距離を取って、体制を立て直した。


 双子達は四本のシミッターでトロールを切り刻み、最後に首を半分斬り落としトロールと討伐する。そしてアルナが受け持つ一体へと駆け走る。



「ウォァララー」



 トロールが棍棒を横薙ぎに振って、アルナと双子を近づけないように牽制した。しかし、双子は棍棒の上をヒョンと飛び越え、トロールの懐へ入り込んで斬り刻む。


アルナは魔法障壁で棍棒を弾いて、膝裏の健へと剣を振るった。アルナの一撃でトロールの膝裏の腱が斬れ、トロールが体勢を崩して倒れ込む。


双子が倒れたトロールの上に飛び乗って、首を狙ってシミッターを振り下ろした。その一撃でトロールは絶命した。



 キースはトロールと対峙したまま、棍棒が届くギリギリの位置で剣を構えた。そしてトロールが棍棒を振ると、棍棒に剣を合せて、軌道を狂わせて受け流す。


これだけでも精神力を搾り取られるように疲れた。しかし集中力は増していく。トロールの動き全体が手に取るようにわかる。


キースはギリギリの攻防を繰り広げながら、目を輝かせた。


 双子とアルナがトロール二体を倒してキースの援軍に現れた。これでキースは自分の任務が果たされたと内心で安堵する。しかし双子がキースに大声を出した。



「「戦い中に安堵しちゃダメ!」」



 集中力が散漫になった途端、キースの真横をトロールの棍棒が通り過ぎていく。もう少しで棍棒の一発を貰うところだった。

キースは冷や汗をかいて、もう一度集中力を高めた。

アルナがトロールの利き腕の手首を斬り飛ばす。棍棒が轟音をあげて地に落ちた。双子がその隙にトロールの懐に入って、袈裟切り、逆袈裟にトロールを斬り刻む。


トロールは堪らず手を振って暴れまわった。


 アルナが魔法障壁を展開して、キースと双子を守る。

双子が跳躍してトロールの首へシミッターを突き刺して、首の筋肉を引き裂く。キースも双子の後に続いて、半分斬れている首に剣を突き入れる。


アルナが風の精霊を操って、飛翔して首を斬り裂く。これで致命的な一撃となった。



「ヤッタじゃん。私達だけで三体のトロールを討伐したんだよ」


「そうです。誇っていいのです。ヤッターなのです」


「キース、よく頑張ったわ。『肉体強化』は使用すればするほど進化していくから、これからが楽しみよ」



 双子とアルナはキースを囲んで喜びの声をあげる。キースは自分がトロールと対峙できていることに内心驚いていた。今までにない喜びが体を貫いた。

するとキースの体が光に包まれる。



「その光はスキルアップ。キースの支援魔法のスキルがアップしたわ」



 アルナがキースの体の輝きを見て、スキルアップに驚いている。

スキルアップ、それは戦いの中で自分の領域を超えた時に発揮される。

キースはこの戦いで自分の限界を超えたことを実感した。



「ありがとう、皆。皆がいたから、俺は限界を突破できた」


「「おめでとう、キース!」」


「スキルアップは私達にもありがたいわ。おめでとう」



 双子がキースに抱き着いて喜んだ。

その姿を見て、アルナは嬉しそうに微笑んでいる。


 トロールの魔石と討伐部位を斬り取り、リュックの中へ入れて、今日の討伐を終える。

随分と森の奥まで来てしまっていた。

今からデリントンの街へ戻れば、丁度壁門が閉じる時間帯だ。


 魔獣に遭わないように樹木に隠れながら、西の森をデリントンの街へ向かって歩いていく。

空は夕陽で真っ赤に染まり、樹木の間を歩く四人を照らし出した。

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