11話 相談
「もうそろそろ魔巣窟の森に挑戦してもいいんじゃない。キースも強くなったわけだし」
「そうですね。魔巣窟の森も、危険を察知して回避していけば、Cランク魔獣とだけ戦うこともできますし」
スーラとウーラは魔巣窟の森への冒険を進めようと主張する。
しかし、アルナは少し考え事をしている顔をしてアゴを傾げる。
「確かにキースは強くなった。しかし、まだ秘術に慣れているとはいえない。常日頃から『肉体強化』をすぐにできるように訓練してから、魔巣窟の森に行っても遅くはないわ」
キース自身もエルフの秘術、『肉体強化』を手に入れたばかりだ。もう少し訓練をして、慣らしておいたほうが安全であると思う。
「俺は、もう少しの間、西の森でDランク魔獣を相手に、『肉体強化』を試してから、自信を持って魔巣窟の森へ進出したいと思ってるんだけど」
「キースの自信を待っていたら、遅くなるでしょ」
「キースは自信を持つのが遅いですから」
スーラとウーラの言うことも理解できる。
自信などというのは、自分の気持ちだ。
しかし、実績を積んでから、魔巣窟の森へアタックしても遅くはないと思う。
「わかった。このことはロミンダにも相談してから、決めさせてもらってもいいかな? 一応、彼女は冒険者ギルドで俺の専属アドバイザーになっているわけだし」
「ロミンダに相談したら、止められるに決まっているわ」
「ロミンダは安全第一と考えますからね」
確かにロミンダは毎回、危険を回避して安全を確保した冒険をするように、キースに何度も忠告をしてくる。ロミンダに相談すれば魔巣窟の森への冒険は止められるかもしれない。
キースはそれでもいいと思った。
キースには仲間の命を守るという優先事項がある。
無謀な冒険は避けたほうがいい。
「とにかく宿から出て、冒険者ギルドへロミンダに相談にいく。これで決定だ」
キースはそう言うとベッドから立ち上がって、冒険者ギルドへ行く準備を急ぐ。
それを見たアルナと双子も自分達の部屋へと準備をするために戻っていった。
そして宿を四人で出て、冒険者ギルドへ向かう。
今日も空は晴天で、大通りには露天商が立ち並んでいる。
スーラとウーラは露天商で串焼きを買って、美味しそうにつまんでいる。
「美味しいね、ウーラ」
「美味しいですね、スーラ」
冒険者ギルドへ到着して、受付カウンターにいるロミンダへ会いにいく。
今日も忙しく冒険者達の対応にロミンダは追われている。
「おはようございます、キース。今日もEランク魔獣討伐とDランク魔獣討伐の依頼でいいですか?」
「それもあるんだけど、ロミンダに個人的にというか、パーティ的に相談があって来たんだ」
「それでは別室でお話を伺ってもいいですか?」
「よろしくお願いするよ」
ロミンダの後ろに付いて、冒険者ギルドの奥にある扉を開けて、別室へと通じる廊下を歩く。
そして別室の中へロミンダと共に四人は入っていく。
別室に通された四人は各々にソファに座り、ロミンダが対面の席に座るのを待つ。
ロミンダはソファに座りながら不思議そうな顔でキースを見て来る。
そこで、今日の朝、宿で話していたことを、一部始終全てロミンダに説明する。
ロミンダは静かに聞いて、時々、目を閉じて考えているようだ。
「話は聞かせてもらいました。私はキースさんの意見に賛成です。結論からいうと、今すぐ魔巣窟の森へ冒険に行く必要はないというのが私の意見です」
「やっぱりロミンダはそういうと思った」
「私もロミンダならそう答えると思っていました」
「理由は簡単です。キースさんの支援魔法があれば強力です。しかし、支援魔法がキースさん自身を守ってくれません。だからキースさんの成長を待ってからというのが理由です」
ロミンダは静かに皆を諭すような眼差しで、落ち着いた口調で話す。
スーラとウーラも落ち着いて、ロミンダの話を考えている。
「今の実力があれば、西の森のDランク魔獣なら確実に安全性が高く討伐することができます。西の森で十分にキースさんの成長を進めて、それから魔巣窟の森へ向かっても遅くはありません」
安全性を優先するロミンダらしい意見だ。
もちろんキースはロミンダに異議をいうつもりはない。
このことではキースもロミンダの意見に賛成だ。
これで魔巣窟の森へ行こうとする双子二人、キースの成長を見定めてからにすることでアルナ、ロミンダ、キースの三人。二対三で、ロミンダの意見が採用されることになった。
そして冒険者ギルドを出て西の森へと向かう。
西の森へ到着して森の茂みを歩いて、Dランク魔獣の群れを探す。
なぜ群れを討伐するのかは、キースに魔獣を残すためだ。
残った魔獣相手にキースが『肉体強化』を使って、どこまで戦えるかを実践すること。
森の奥へ入っていくとオークが六体の群れで歩いている。




