エピローグ
「おーい、ユウキ、ほら見ろ」
眼の前ではメテムがイルカに乗って大声を上げてる。
乗るというと背中に跨るをイメージすると思うが、そうではなくイルカの上に立ってると表現した方が良いだろう。
「みろよ、ほらほら」
僕がビーチの椅子に座ってそれを眺めてるとメテムは片足を宙に浮かせた。
見事なまでのバランス力だ。
「ユウキ、お前もやってみろよ」
メテムの問に僕はため息混じりに答える。
「やだよ。そのイルカさ、僕が乗ろうとすると振り落とすんだもん」
そう言うとメテムは「ハッハ」と声を出してイルカの頭をなでた。
「おまえはな、何事に関しても愛が足りないよ。イルカ見てみろよ、わたしの愛をたっぷり受け入れてるだろ?」
愛ねえ……。
得意げなメテムと、なついてるイルカ。
それに反比例するようにブスッとしている僕だった。
僕らは今、中南米最大の観光地カンクーンにいる。
旅も無事終わったし、いつものように疲れを癒やすためにビーチリゾートに来たのだ。
ホテルも奮発して五つ星のインターコンチネンタルホテルにした。
カンクーンらしく様々なマリーン・アクティビティがあり、そのうちのドルフィン・ライディングに申し込んだ、というわけだ。
しかし振り返ってみても今回の旅は移動が大変だった。
バス停で十時間以上待つとかザラだったし、バス移動、列車移動などどれも長距離でクタクタだった。
ラパスは治安悪いし、イースター島はジャングルみたいだし、苦労して行ったウユニ塩湖もあれだった……。
まあそこはメテムと二人だから乗り越えられたか。
そんな事を考えていたら、突然顔に水がふりかけられた。
「なーにを考え事してるんだ、おまえは」
眼の前には、イルカに乗って満足したのかスッキリした表情のメテムがいた。
「いや、今回も楽しかったなって」
そう話しかけると、メテムは隣の椅子に腰掛けた。
「そうだな、色々な場所行ったよなあ」
「うんうん、モアイも見れたし、マチュピチュもみれたし」
「ウユニ塩湖は散々だったけどな」
「はは……申し訳ない」
僕はホコリまみれの塩湖を思い出して苦笑いを浮かべた。
「食事はどれも微妙だったな」
「というかそもそも英語が通じないのはきつかったねえ」
「だな。メニュー見ても何かわからないのはキツイ」
「うん……」
道中の食事が思い浮かぶ。
メキシコのタコスは美味しかったけれど、塩スープやら素パスタを食べることになるとは思いもよらなかった。
「しかしあれだな、ようやっと探してた場所が見つけられたのは嬉しいよ」
「メテム、本当にいいの?」
「ん?」
「いや、あの場に留まらなくて良かったのかなって」
「問題ないさ、あの場所はたまに行くぐらいで十分なんだ。もう見つけたからいつでもいける」
そう言うとメテムはニヤリと笑みをこちらに向けた。
キシシ、といつもの声が聞こえるようだ。
「メテム、これからどうする?」
「んーそうだな、今度は私の世界へ来てみるか?」
「なんだっけ、アイなんとかだっけ」
「アイナトリーな」
「それも興味あるねえ。君がどんな暮らししてるのかみたいよ」
「はっは」
「まあでもとりあえずはもう少しこの地球を回ろうか」
「それも良いな」
「見どころまだまだあるよ」
「お、どんなの?」
「青の都にピンクの都市、砂岩都市に湖上の牢獄、地球もそこそこ広いからね」
「うし、んじゃどうせなら虱潰しに行ってみるか」
そういうとメテムは「うーん」と唸りながら子猫の様に体を伸ばした。
そんなメテムに僕は話しかける。
「まだまだ旅は続くね」
「いいんじゃないか? 二人の人生旅ぐらし、みたいな感じで」
「そうだねえ」
「どうせ生きるなら楽しまないと損だよ」
「君が言うと本当にそれらしく聞こえるよ」
「キシシ」
ビーチに寝そべる二人を、塩を含んだ風がそよぎる。
日本と比べて若干強い太陽がパラソルの傘を差す。
二人の人生旅ぐらし。
このやんちゃな魔法使いといられるならそれで十分か。
そんな事を思いながら僕は体を休めた。
中南米編、これにて完結になります。
あとは挿絵を幾つか用意して完成です!
半年ものお付き合いありがとうございました。
次シリーズは未定です。
候補はまだまだ沢山あるのでゆっくり目的地を決めようと思います。
多分ヨーロッパか中央アジアとかになりそうです。
2019年再開を目指してがんばります。
本当に長い間お付き合い頂きありがとうございました!!




