↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫が出戻り従姉妹との結婚を宣言しました。ではお義父様、例の件をお願いいたします。  作者: さんけい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/10

第6話 離婚するのは誰でしょう

「ラベンダー。少し、二人で話そう」


 夫がこちらへ椅子を寄せました。

 その袖をスカーレット様がつかみます。夫は「少しだけだ」と振りほどこうとしましたが、その手に義母までつかまりました。

 左右から引かれている方と、内緒話をするのは難しそうです。


「お話でしたら、ここで伺います」

「夫婦の間には、他人に聞かせるべきではないことがあるだろう」

「先ほど、皆様の前で離婚をお申し出になりましたね」

「あれは…… 考え直してもよいということだ」


 スカーレット様が夫の腕を、もう一段強く引きました。


「ブリヤン! この子はどうなるの?」

「だから、少し黙っていてくれ!」


 運命の恋が、初めて私の役に立ちました。夫の椅子が元の位置へ引き戻されます。

 審理官は私の離婚意思を改めて確認し、夫の申し出とは別に、私からも離婚を求めていたことを告げました。

 今朝の宣言だけが頼りでしたら、今の一言で振り出しへ戻ってしまいます。準備はしておくものです。


「婚姻当初からの扱いと、婚姻外の関係については、本人の発言と証言で確認できました。ラベンダー殿に、子がない責任があるとする主張も認めません」

「だから、それはもうよい、と言ったではありませんか」

「あなたがよいとおっしゃったと言っても、確認を省くことはできません」


 夫は署名用のペンをにらみました。

 続いて、義父と義母の婚姻についての判断が読み上げられます。

 不貞と、出生を偽って届けさせた経緯。それに対する義母の返事は、最後まで「こんな昔のことで」でした。

 審理官には、証拠と当事者を確認した上で離婚を裁定する権限があります。今日この席へお越しいただいたのも、ただ、夫婦喧嘩の仲裁をお願いするためではありません。

 さて、めでたく二組の離婚が裁定され、成立の日付が読み上げられました。

 私は確認を終えた書面へ署名し、夫だった方へペンを渡します。ブリヤン様は受け取るのをためらいましたが、私との離婚をいつまでも止めているわけにはいかないと説明され、乱暴にご自分の名を書きました。


「次に、出生届の父の記載を訂正し、それに伴う嫡男としての登録を取り消します。加えて、当主の申立てと親族の同意に基づき、後継者指定を解除いたします」


 先ほどまでの夫は、椅子から半分腰を浮かせました。


「叔父上たちも、同意したと?」

「したとも」


 バーント伯爵が答え、グレイ子爵も、用意してきた同意書を示します。

 この二つの家は、伯爵の弟たちの家です。ヴァイオレット様のご実家に当たるマンダリン子爵家とは、別の家。スカーレット様が「身内ですもの」と微笑んでいた間にも、私たちの準備を手伝ってくださいました。


「叔父上たちまで、裏切ったのか!」

「お前がラベンダーさんへ押しつけた招待状の返事を、誰と相談して書いていたと思う」


 グレイ子爵が、私の前の書類へ手を添えました。


「仕事を教えようと呼んでも来ない。説明をすれば、妻に聞いておけと言う。その妻と私たちが話をしていて、何が不思議だ」


 ブリヤン様は叔父様方の奥様へも顔を向けましたが、お二人とも、困っている私へ手を貸した時と同じように、私の隣に座っています。

 ローズとペールも、書類を片づけ始めました。義母だった方が呼びつけても、こちらの作業を終えてから顔を上げます。


「あなたたち、誰のおかげでこの家に上がれたと!」

「今後の配置につきましては、伯爵様からご指示をいただいております」


 ローズはそれだけ答え、私の手元から空いたインク壺を下げました。

 古参の使用人についても、伯爵はそれぞれの対応を調べています。夫人がそうおっしゃるから、と私への仕事を怠った者には、役目の変更や再教育が決まっていました。

 私が教えた二人は、これからも私付きです。


「ではヴァイオレット、ブリヤン。お前たちには、この屋敷を出てもらう」


 伯爵が告げると、元夫人は椅子の肘掛けをつかみました。


「わ、私のお金も、宝石も、取り上げるおつもり?」

「お前自身の持ち物は持っていけばよい。私物と家の所有物は、目録で確かめる。ブリヤンも、自分の預金まで失うわけではない。ただし、今後の請求をこの家へ回すことは認めない」


 スカーレット様が、握っていた腕を少し緩めました。


「お家を出たら、私たちはどこへ住むの?」

「それについては、住まいと働き口を一つ用意してある。条件は後ほど説明する」


 伯爵の返事を聞き、ブリヤン様は今度こそ、キッと私をにらみつけ、地獄の釜の底から響くような声で言いました。


「ずいぶん用意がよいじゃないか。お前が父上に取り入って、侯爵家まで使って仕組んだのだろう!」

「縁談を持ち込んだのは、私だ。勘違いするな」


 伯爵が、ご自分を指しました。


「三年前、私がクリムソン侯爵家へ出向いた。ラベンダーにも、その時から相談している」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。