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ドンガン地下シェルターの秘密と、戦術医官の防衛構想

ドンガン地下シェルターの秘密と、戦術医官の防衛構想

 ポポロ村の集会所の裏手、厳重に偽装された地下倉庫の奥深く。

 優太は、村の変人こと『ポーン』の変異種ネギオに案内され、仄暗い石造りの階段を延々と下っていた。

「……ずいぶんと深く掘ったな。まるで冷戦時代の核シェルターだ」

 優太が壁の材質を素手で確かめながら呟くと、前を歩くネギオが口元のポポロ・シガーを揺らしてニヤリと笑った。

「地球の歴史は知らんが、似たようなもんさ。この壁はただの石じゃねぇ。ドワーフの治金技術と土魔術でコーティングされた『対極大魔法用』の防爆壁だ」

 階段を降りきった優太の目の前に広がったのは、およそ一村の地下とは思えない巨大な地下空間だった。

 東京ドームに匹敵しようかという広大なドーム状の空間には、清潔な居住区画、非常用の水耕栽培プラント、そして無骨な魔導戦車や対空魔砲などの重火器がズラリと並べられている。

「ようこそ、ポポロ村の真の姿へ。これが俺たちと『ドンガン地下帝国』が密約を交わして作り上げた、絶対防衛地下シェルターだ」

 ネギオの言葉に、優太は静かに頷いた。

 ポポロ村はルナミス帝国、レオンハート獣人王国、アバロン魔皇国の三極緩衝地帯。表面上は平和な農村だが、その実態はドワーフの死の商人たちと裏で繋がった一大戦略拠点だった。

「村で採れる極上のサンライスやポポロ・シガーを、三国の重税を逃れて地下ルートで密輸する。その見返りに、ドンガンから最新の兵器と防衛インフラの提供を受ける……見事なエコシステムだ」

「ご名答。だが、三国の上層部もバカじゃねぇ。この村が単なる農村じゃないことぐらい薄々感づいてる。だからこそ、表立って軍を動かせない。どこかが手を出せば、残りの二国が介入して泥沼の世界大戦になるからな」

 ネギオは近くの木箱に腰を下ろし、シガーの灰を落とした。

「だが、さっきお前が野盗を片付けたように、小競り合いは絶えねぇ。三国の末端の暴走や、死蟲機ネクロバグのはぐれ共が常にこの村の物資を狙ってる。……優太、お前はこの村の防衛線をどう見た?」

 試すようなネギオの視線。

 優太はシークレットホルスターからアメスピを取り出し、軍用マッチで火を点けた。紫煙を細く吐き出し、中央の作戦板に広げられた村の防衛図面を見下ろす。

「……ハード(兵器)は一流だが、ソフト(戦術)が三流だな」

「なんだと?」

「自警団の練度と装備は申し分ない。だが、防衛線が『線』になりすぎている。これじゃあ、一点を突破されたら一気に村の中枢まで雪崩れ込まれるぞ。それに――」

 優太は図面の数箇所を指でトントンと叩いた。

「負傷者の救護所トリアージ・エリアが設定されていない。キャルルが回復魔法を使えるからといって、前線を走り回らせる気か? メディックが撃たれたら、部隊はそこで全滅だ」

 アメリカ軍特殊部隊グリーンベレーの基地防衛戦術や、TCCC(戦術的戦闘救護)の知識が優太の脳内でフル回転していた。

「交戦規定(ROE)と陣形をアップデートする。村の入り口をわざと開けて『キルゾーン(十字砲火地帯)』を作り、そこに魔導自爆ドローンと地雷を集中させる。敵を誘い込んでから包囲殲滅するんだ。そして、安全な後方――このシェルターの入り口付近に『CCP(負傷者集合拠点)』を設置する。キャルルと俺はそこで待機し、運ばれてきた負傷者を片っ端から治療して前線に復帰させる」

 淡々と、しかし恐ろしいほどに合理的で冷徹な防衛構想。

 それを聞いたネギオは、ポカンと口を開けた後、肩を震わせて大笑いした。

「ハハハッ! 傑作だ! 一点突破を逆手にとって罠にハメるだと? お前、本当にただの医者か? どこぞの歴戦の指揮官よりよっぽどエグい戦術を組みやがる!」

「言ったろ。地獄を綺麗にするのが俺の仕事だってな。血を流すのは最小限でいい」

 優太がアメスピの煙を燻らせたその時だった。

 ダダダダダダッ!

 地下階段を駆け下りる激しい足音と共に、村長のキャルルと、自警団のマンミアが血相を変えて飛び込んできた。

「優太さんっ! ネギオさん!」

「どうした、キャルル。マンミアも、そんなに慌てて」

 優太が振り返ると、キャルルは息を切らし、その長い兎の耳を恐怖に震わせていた。

「む、村の北側境界に設置した魔導センサーが……異常な数値を弾き出しました! さっきの野盗や、はぐれの魔獣なんてレベルじゃありません!」

「なにかの群れが、こちらに向かって真っ直ぐ進軍してきます! 数は……およそ五百以上!」

 マンミアの報告に、ネギオの顔色が変わった。

「五百だと!? 三国の正規軍か!?」

「い、いえ……生体反応からして、人間や獣人ではありません。あれは――神話の化け物、『死蟲機ネクロバグ』の大群です! しかも、複数の大型機まで確認されています!」

 その言葉に、地下シェルターの空気が凍りついた。

 死蟲機。魂を喰らうために生み出された殺戮機械。数十匹なら自警団で処理できるが、五百という数は完全に一つの『軍隊』だ。

 もしそれが村になだれ込めば、村人千人はただの餌に成り下がる。

「……チッ、どうやら俺たちの防衛線をテストする絶好の機会が、予定より早く来ちまったらしいな」

 ネギオがネギカリバーの柄を握りしめ、舌打ちする。

 しかし、優太の顔には一切の焦りがなかった。

 彼はゆっくりとアメスピを携帯灰皿で揉み消し、傍らに置いたミリタリーリュックを背負い直す。

「マンミア。村人全員をただちにこの地下シェルターへ避難させろ。フェイトの首根っこを引っ掴んででも、自警団を北の防衛線に集結させるんだ」

「は、はいっ!」

「キャルル、あんたは俺と一緒にCCP(救護拠点)の設営だ。……安心しろ、誰一人、地獄には落とさせない」

 優太の低く落ち着いた声と、その背中から放たれる絶対的な安心感。

 絶望的な数を聞いて震えていたキャルルの心臓が、トクン、と大きく鳴った。この人がいれば、どんな理不尽な暴力も絶対に自分たちには届かない。そう確信させるだけの力が、優太にはあった。

「……はいっ! 優太さんっ♡」

 キャルルは恐怖を忘れ、愛しい人を見つめるような熱を帯びた瞳で力強く頷いた。

 迫り来る五百の殺戮機械の群れ。

 だが迎え撃つのは、地球の戦術と悪知恵を極めた、一人の戦闘医官だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

ポポロ村の「裏の顔」であるドンガン地下シェルターの設定と、優太の「軍事戦術」が開示されました。

単なる医療チートだけでなく、部隊運用やキルゾーンの構築など、大人の軍人としての知略で戦うのが優太のスタイルです!

「キルゾーン設営熱い!」「医官なのに指揮官やってるw」「キャルルの切り替え早すぎ!」

と少しでもワクワクしていただけましたら、

ぜひページ下部にある【ブックマーク】と、【星(評価)】を『★★★★★』でポチッと押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

次回、ついに五百の死蟲機群との防衛戦が開幕。

優太の指揮の元、ポポロ村自警団のチームワークと『悪知恵』が炸裂します!

引き続きよろしくお願いいたします!

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