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大企業『ゴルド商会』の噂と影

大企業『ゴルド商会』の噂と影

 深夜の医療用コンテナハウス。

 自家発電機の低い駆動音が響く中、優太は白衣代わりに羽織ったパーカーの袖をまくり、デスクに広げた村の備蓄リストと睨み合っていた。

「……やはり、燃料問題の解決が急務だな」

 優太が小さく息を吐いたその時、コンテナの自動ドアが開き、夜風と共に重厚な葉巻の香りが流れ込んできた。

 村の変人こと変異種ポーンのネギオが、いつものポポロ・シガーを咥えながら入ってきたのだ。その表情は、いつになく険しい。

「よう、優太。夜遅くに悪ぃな」

「ネギオか。どうした、そんな渋い顔をして。またフェイトがパチンコで借金でも作ったか?」

「あのポンコツの話なら、笑い飛ばして終わりなんだがな。……ちぃとばかり面倒な連中が、この村を嗅ぎ回ってるって情報が入った」

 ネギオはデスクの向かいのパイプ椅子にどっかりと腰を下ろし、葉巻の灰を携帯灰皿に落とした。

 そのただならぬ雰囲気に、ソファーでうたた寝をしていたキャルルとマンミアが目を覚まし、キッチンでおやつを漁っていたリーザも顔を出す。

「面倒な連中?」

 優太が眉をひそめると、ネギオは忌々しそうに舌打ちをした。

「お前が前回の情報戦サイオプスで、ルナミス新聞の記者や地下の商人に渡した賄賂……地球の『シングルモルト・ウイスキー』と『キューバ産のプレミアム・シガー』。あれが、ちと効きすぎた」

「……なるほど。極上の嗜好品が出回った出所を探られたわけか」

 優太は事態を察し、シークレットホルスターからアメスピを取り出して火を点けた。紫煙を細く吐き出しながら先を促す。

「ああ。あの酒と煙草の噂は、あっという間に裏社会から表の経済界にまで広まった。そして、その『未知の極上品質』の出所がこのポポロ村にあると嗅ぎつけた大馬鹿野郎がいる。……『ゴルド商会』だ」

「ゴルド商会……!」

 その名を聞いた瞬間、キャルルとマンミアの顔色が変わった。

 ルナキンでタダ飯のハンバーグを囓っていたリーザでさえ、ピクッと反応して耳を傾ける。

「ゴルド商会って……あの、大陸全土にファミレスの『ルナミスキング』やスーパーの『タローマート』、武器や日用品を扱う『タローマン』を展開してる、超巨大企業ですよね?」

 キャルルが信じられないというように声を上げる。

「その通りだ。食料、日用雑貨、武具、土地の売買まで、あらゆる流通を牛耳る大陸屈指のメガコーポレーション。ゴルド商人の顔パスがあれば、三国どこの国境でもフリーパスで通れるって言われてる。そのトップである会長――『オロチ』が、直々にこの村の情報を集めさせてるらしい」

 ネギオは腕を組み、深く息を吐いた。

「オロチは蛇目族の男だ。年齢は五十がらみで、趣味は極悪なまでの『成金趣味』。見た目は昭和のパチンコ屋の社長みてぇな悪趣味な格好をしてるが……その実態は、金のためならどんな汚い手も使う冷徹なビジネスマンだ。敵対する商会は徹底的に潰し、欲しいものは国を動かしてでも手に入れる」

「……厄介な相手だな」

 優太はタバコの煙をくゆらせながら、静かに分析する。

「それだけじゃないぜ」

 ネギオはさらに声を潜めた。

「オロチが興味を持ってるのは、酒や煙草だけじゃない。お前がここに出現させた、この『医療用コンテナハウス』……魔法でも闘気でもない、未知のテクノロジーの塊。オロチの腹心たちが、この建物の噂をどこからか聞きつけてる。あいつらの狙いは、この村の『地球のアイテム』の独占権だ」

 その言葉に、真っ先に殺気を放ったのはヤンデレ村長のキャルルだった。

「優太さんのアイテムを奪う!? ふざけないでください! 優太さんのものは私のものですし、私のものは優太さんのものです! もしその成金蛇野郎がこの村に足を踏み入れたら、特注の安全靴で顔面をすり潰して、ルナキンのハンバーグの肉に混ぜてやりますっ!」

「お、落ち着けキャルル! 相手は大陸経済の支配者だぞ。下手な手出しをすれば、商会の傭兵部隊や、彼らに恩を売られた三国の軍隊が動く可能性もある!」

 マンミアが慌ててキャルルを羽交い締めにして止めるが、キャルルの兎耳は怒りでピンピンに直立していた。

 そんな騒ぎをよそに、優太は呆れたように首を振ってアメスピをもみ消した。

「キャルル、暴力で解決しようとするな。……相手は商人だ。軍隊じゃなく『金と利権』で動く。だったら、交渉ビジネスのテーブルに引きずり込めばいいだけのことだ」

「交渉、ですか……? でも優太さん、相手は血も涙もない悪徳商人ですよ? そんな奴を相手に、真っ当な取引なんて……」

「真っ当な取引をするなんて、一言も言ってない」

 優太の口元に、冷酷で、だが底知れぬ自信に満ちた『大人の男の悪知恵』を孕んだ笑みが浮かんだ。

「いいか。俺たちは今、このコンテナの燃料代と防衛費の資金繰りに困ってる。そして向こうは、俺たちの持つ『地球のアイテム』を欲しがっている。……需要と供給は完全に一致してるじゃないか」

「ですが優太殿、相手はあのゴルド商会です。下手をすれば、村ごと買いたたかれて搾取される側に回りますわ」

 マンミアの懸念はもっともだった。相手は百戦錬磨の経済の化け物。生半可な交渉術では、骨の髄までしゃぶり尽くされる。

「だからこそ、こっちが『主導権』を握るんだ。オロチがどれだけ強欲だろうと、ヤツの目の前に『絶対に手に入れたい餌』をぶら下げて、首輪をつける。向こうが『村を搾取する』つもりで来るなら、こっちは『大企業のトップをパトロン(金ヅル)にしてしゃぶり尽くす』つもりで迎え撃つまでだ」

 優太の瞳の奥に、戦場を生き抜いてきた者特有の鋭い光が宿る。

 弾丸が飛び交う戦場だけが『地獄』ではない。金と欲望が渦巻く交渉のテーブルもまた、油断すれば一瞬で命と誇りを奪われる地獄だ。

 だが、優太はその泥水に浸かることを一切恐れない。むしろ、自分のテリトリーに引きずり込んで『綺麗に掃除してやる』気満々だった。

「……ハッ! さすがは優太だ。五百の死蟲機をクレイモアで消し飛ばした時のように、あの成金親父にも極悪な罠を張るってわけだな」

 ネギオが嬉しそうに葉巻を吹かす。

「罠って人聞きが悪いな。正当な『スポンサー契約』を結ぶだけさ」

 その時、キッチンで黙々とハンバーグを食べていたリーザが、ガタッと椅子から立ち上がった。

 彼女の瞳には、いつものタダ飯を求める卑しさではなく、別の種類の『ギラギラとした欲望』が燃え盛っていた。

「……お金持ち。大陸屈指の、大金持ちの会長さんが、直々にこの村に来るんですのね……?」

「リーザ?」

「フッフッフ……お任せくださいませ、優太様ぁ♡」

 リーザは、ジャージの胸元をドヤ顔で叩いた。

「強欲なオヤジの相手なら、この絶対無敵のスパチャアイドル・リーザにお任せを! 私の極上の『接客おもてなし』で、その会長の財布から金貨の最後の一枚まで、綺麗さっぱり吸い上げてさしあげますわ!」

 リーザの背後に、彼女のユニークスキルである【貧乏神】の恐るべきオーラ――対象の財産と運気を強制没収する『お賽銭箱型掃除機』の幻影が、ヌゥッと立ち上ったような気がした。

「おいおい……お前、ストリートライブで大爆死したばっかりだろうが。変なちょっかいを出して、交渉をややこしくするなよ」

「失礼な! 路上で不特定多数から小銭を集めるのは失敗しましたけれど、ターゲットを一人に絞った『太客パトロンの囲い込み』なら、アイドルの真骨頂ですわ!」

 全く根拠のない自信に満ちたリーザの宣言に、優太は深くため息をつきつつも、どこか面白そうな表情を見せた。

(まあいい。オロチのような手段を選ばない男を相手にするなら、リーザのような常識外れのトリックスターが引っ掻き回すのも、交渉の『煙幕』としては使えるかもしれないな)

「よし、分かった。リーザ、お前の接客スキルに期待する。ただし、勝手な行動は控えること。主導権は俺が握る。……キャルル、マンミア」

「はいっ!」

「オロチがいつ村に来るか分からない。相手は護衛を連れてくるだろうが、こちらから手は出すな。あくまで『お客様』として丁重に出迎える準備をしておけ」

「「了解です(わ)!」」

 戦う医官と仲間たちは、次なる戦場――『金と欲望の交渉戦』に向けて、静かに陣形を整え始めた。

 数日後。

 ポポロ村の広場に、その『経済の化け物』が、ド派手な足音と共にやってくることになる。

 優太たちの資金問題と、大企業のプライドが激突する、前代未聞の『ざまぁ』の幕開けが、すぐそこまで迫っていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

次なる敵は、大企業「ゴルド商会」の会長・オロチ!

武力ではなく、ビジネスと利権で攻めてくる相手に対し、優太は武力で追い返すのではなく「パトロンとして首輪をつける」という大人な悪知恵を働かせます。

そして、リーザの「太客狙いのアイドル魂」が火を噴く予感……!?

「大人の交渉戦ワクワクする!」「リーザのやる気が変な方向に向かってるw」「優太の悪代官っぷりが好き」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部にある【ブックマーク】と、【星(評価)】を『★★★★★』でポチッと押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

次回、ついに成金会長オロチがルナキンに降臨!

リーザの【貧乏神】スキルが炸裂する、ドタバタ接客戦をお楽しみに!

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