062 AIによる大失業時代のコメリカに転移
朝日が薄っすらと差し込む地上のファームハウス、1階のリビング。
「ボス! ちょっと来てくれ! テーブルの上に妙なもんが置いてあるんだ!」
構成員の声に、ベアは重い足音を響かせてリビングへと入ってきた。
「朝っぱらから大声を出すな。何があった」
構成員が怯えたように指差したのは、木製テーブルの上だった。そこには、乱れもなく几帳面に並べられた数枚の書類と、一番上に添えられた小さなメモが置かれていた。
「見張りが目を離した隙に入り込まれたのか……!? 」
ベアは太い眉をひそめ、テーブルへ歩み寄った。警戒しながら書類を手にとり、そこに並ぶ整然とした文字に目を走らせる。
『警備委託契約書』。
『雇用者による業務評価書』。
とある有名ビッグテック企業の共同オーナー宛ての『推薦状』。
そして、最後に残された一枚のメモを拾い上げ、ベアはその文面を読む。
『警備委託契約書に基づき、これから約1年間は当拠点の警備を継続していただきます。ただし、それ以降のファームハウスおよび地下施設の無断占拠は違法行為となりますので、期間満了までに次の契約先を見つけることを強く推奨します。
推薦状は、私の知り合いのビッグテック共同オーナー宛てです。彼には、あなた方を“マーカス警備保障”として話してあります。 IT野郎』
「……ボス、これって」
不安そうに覗き込んでくる構成員を制し、ベアは考え込んでから言う。
「どう思う、レオ」
静かに書類に目を通していたレオは書類を静かにテーブルへ戻すと、小さく息を吐き出してから言う。
「警備委託契約の期間は俺達がここを襲撃した日が契約開始、今から約一年後の日付が契約終了となっている。それに『業務評価書』を見る限り、僕たちの規律や警備能力をかなり高く評価してくれているよ」
「どこからか覗き見てたってことか」
「……ボス、どういう意味なんだ?」
不安そうに覗き込んでくる構成員達に対し、ベアは苦虫を噛み潰したような顔でレオに答えろと顎をしゃくる。
「『IT野郎』と俺たちは正式に契約を結んでいることになっている。おまけに、一年後の見込み客まで用意してくださったそうだ……。これで俺達は真っ当な生活ができるようになるってことだよ」
ベアの苦々しくもどこか呆れたような吐息が、静かなリビングに重く響いた。




