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047 AIによる大失業時代のコメリカに転移


マーカス(ベア)率いるギャングの車両群が、暗闇を突いて果樹園へと続く旧農道へと進入した頃。


ファームハウスの2階にある静まり返ったベッドルームでは、柔らかなシーツに包まれて眠るフィクスのもとへ、突如として青白い光の粒が弾けた。


『フィクス、起きて! 襲撃よ!』


バングルから姿を現したジェミニのホログラムが、フィクスの肩をぺちぺちと叩くように揺さぶる。


それとほぼ同時に、重厚な木製のドアが静かに開かれ、完璧に着崩れのない給仕服に身を包んだアリタが室内へと足を踏み入れてきた。


「マスター、お目覚めください。侵入者が接近しております」


二人の声が重なり、フィクスはまぶたをこすりながらゆっくりと身体を起こした。


「……んー、本当に来たんだ。こんな夜中に……」


フィクスはベッドから足を下ろすと、のんきに欠伸を噛み殺しながら言った。


「よし、じゃあ計画通り地下5階へ避難しようか」


『転移陣を起動するわ』


ジェミニが転移陣を起動しようとした、その時だった。


「あ、ちょっと待って。表のドアを開けてくるよ」


『……はい?』


ジェミニが目を見開いて動きを止める。フィクスはスリッパを引っかけると、さっさと部屋を出て1階の玄関へと向かってしまった。


『鍵を開けてくるって……フィクス、正気!?』


「ええ。せっかく綺麗に作ったドアなのに、バールやハンマーで蹴破られたら嫌じゃないか。修理するのも手間だしね」


階下から呑気な声が返ってきたかと思うと、ガチャンと玄関の解錠音が響き、フィクスは何事もなかったかのようにすまし顔でベッドルームへと戻ってきた。


戻ってきたフィクスに対し、アリタは静かに眉をひそめ、ジェミニは両手を腰に当てて呆れ果てた表情を浮かべている。


「……マスター。侵入者に対して『どうぞお入りください』と玄関を開放する防衛主は、世界を探してもマスターくらいでございます」


『ドアを壊されないためとか配慮の方向性がおかしいのよ……』


「まあまあ。それで、二人とも忘れ物はない? 大事な本とか、お気に入りの紅茶の葉とか」


「……地下5階の備蓄は完璧でございますので、何も問題ありません」


『いざとなったら転移陣を起動させて必要なものはセーフハウスに転移させるわ』


ふたりの返答にフィクスが満足そうに頷いたところで、ジェミニが諦めたように溜息を吐き、床に青い幾何学模様を描き出した。


『転移陣、起動!』


足元から放たれた眩い光が3人の身体を包み込み、次の瞬間にはベッドルームから気配が完全に消え去っていた。


……


一瞬の浮遊感の後、3人が立っていたのは、地下5階に構築された「セーフハウス」の広々としたリビングルームだった。


地上の混乱や湿気とは完全に無縁な、温かな空調と安定した電力が供給される空間。フィクスは吸い込まれるように快適なソファへと深く腰掛け、アリタにコーヒーをいれてくれるように頼んだ。


「さて、ジェミニ。地上の様子を見せてくれるかい?」


『はいはい、了解よ!』


ジェミニが指先を弾くと、リビングの中央の空間に複数の超高精細なホログラムモニターが浮かび上がった。


画面には、特製ドローンのカメラが捉え、ジェミニがまるで昼間の映像のように見やすく加工した果樹園のようすが映し出されている。


フィクスはまるで深夜の映画鑑賞でも楽しむかのように、画面の中の襲撃者たちの待ちわびるのだった。



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