032 AIによる大失業時代のコメリカに転移
「新しい計画は、こういうことさ」
僕は腕を組み、地下1階のひんやりとした岩壁に背をもたれかけながら、静かに語り始めた。
「第1層は、さっき話した日本の城の防衛機構を組み込んだ迷路階層にする。そして……第2層を食糧倉庫として、部分的に氷結パートにするんだ。そこにはたっぷりと食料を保存しておこう。それだけじゃない。家具や電化製品、通信設備も備えた快適な居住エリアを作り、10人くらいは余裕で住めるように整備する」
僕は二人の表情を見つめながら言葉を重ねる。
「ここの電気は、地上の果樹園に設置した太陽光パネルから供給させる。果樹園の防衛範囲に侵入者が入ってきたら、この第2層の居住エリアで即座に状況を確認・監視できるようにしたいんだ。……あとは、防衛用の銃火器と弾薬もたっぷりと用意しておく」
説明を聞いていたジェミニとアリタは、再び怪訝そうな表情を浮かべた。
「……マスター。元々の設計では、私たちの居住区は地下4層に配置する予定でした。それを第2層に移すとおっしゃるのでしょうか?」
アリタが微かに首をかしげ、静かな声音で問いかけてくる。
『そうよフィクス! 侵入者が入ってくるかもしれない上の階層に、なんでわざわざそんな豪華な部屋や食料や武器を用意するのよ?』
「いや、そこに住むのは僕たちじゃない。ここにやってくる侵入者たちに、防衛要員としてそのまま住み込んでもらうのさ」
僕がさらりと告げると、二人は思わず目を見張った。僕の口から出た言葉の意味を測りかねているようだ。
「例えば……社会の混乱がピークに達する第3フェーズで治安が悪化した時のことを想像してみてほしい。誰かがこの農園に、甘っちょろい『環境に配慮した自給自足型のITワーカー』が住んでいることを知っていて、略奪目的でここを襲ったとする」
僕はゆっくりと歩みを進め、地下の静寂の中で二人の目を交互に見つめた。
「彼らは地上の家を破り、地下貯蔵庫の奥に隠された地下1層への入口を見つける。そしてダンジョンに入り込むけれど……そこには恐ろしい魔物もいなければ、殺傷トラップもない。だから根気強く進めば、比較的簡単に第2層へ辿り着くことができる」
僕はそこで言葉を一度切り、落ち着いた笑みを浮かべた。
「そこで彼らが目にするのは、外の荒廃した世界とはまるで別世界の、天国のような快適な居住空間だ。潤沢な食料、自家発電の電力、通信設備、そして自分たちを身守るための銃火器や大量の弾薬までもが整っている場所をね」
僕はポケットから手を出して見せた。
「彼らはこう考えるはずだ。『あの甘っちょろいITワーカーめ、いざという時のために素晴らしい地下シェルターを準備していたんだな。そして何らかの理由で、ここを放棄して逃げ出したに違いない』……とね」




