029 AIによる大失業時代のコメリカに転移
僕はローテーブルの上に置いたノートを開き、ペンで簡単な階層図を描きながら二人に見せた。
「今のところ僕が考えているダンジョンの構造は、こんな感じなんだ」
* **ダンジョン入口:** ファームハウスの地下貯蔵庫の奥
* **地下1階〜地下2階:** 侵入者を撃退・誘導するための迷路階層(時間とマナに余裕が出れば、さらに階層を増やす)
* **地下3階:** 氷結層(長期保存用の食料・物資ストレージ)
* **地下4階:** セーフハウス(僕たちの居住区)、発電設備、水耕栽培の野菜畑
「……どうだろう? 何か意見や改善点があれば教えてほしいんだけれど」
僕が尋ねると、ジェミニがホログラムの身を乗り出してノートを覗き込み、目を輝かせた。
『わあ、すっごく合理的でワクワクする構造ね! 元ダンジョンコアの視点から見ても、侵入者対策と生活機能を上下で完全に分けるのは大正解よ!』
ジェミニは空中をクルリと舞いながら、人差し指を立ててアドバイスを加えた。
『特に地下3階の「氷結層」をセーフハウスの上に配置する構造がイイわね! ダンジョン魔法で発生させる冷気を自然にコントロールすれば、下の第4層への断熱壁としても機能するし、食料の永続保存コストも最小限に抑えられるわ。迷路階層も初期は2層にしておいて、マナの3%運用益が溜まるのに合わせて「トラップや幻影のギミック」を後からアップデートしていけば無駄がないわ!』
続いて、アリタが静かに一礼してから、ノートの第4層を指し示した。
「マスター、私からも1点、設備配置の観点からご提案がございます。第4層の発電設備と野菜畑についてですが、地上の太陽光パネルや果樹園からの排熱・給排水ラインと最短距離で連結できるよう、配管シャフト(縦坑)を迷路階層の裏に通す二重壁構造をご提案いたします。これにより、万が一の侵入者にも重要インフラのラインを察知される危険がなくなります」
「なるほど……二人とも流石だね。冷気の断熱利用に、インフラ配管の秘匿二重壁か。どれも素晴らしいアイデアだ」
僕はノートに二人の意見を素早く書き加え、満足そうに頷いた。
「よし、それじゃあ地下1・2階の迷路のレイアウト設計と、地下3階の氷結魔法の出力計算から取りかかろうか。元本を維持しながら、少しずつ、確実に僕らの要塞を創り上げていこう」
『はーい! “サイレント施工・第1期工事”、張り切ってスタートね!』
秋の穏やかな日差しが注ぐリビングで、僕たちの密やかな「箱舟」の設計図が、より強固で完璧なものへと描き換えられていった。




