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016 AIによる大失業時代のコメリカに転移

アパートに戻ると、僕は買ってきた浅煎りのコーヒー豆を慎重にミルで挽き、丁寧にドリップを開始した。部屋の中に芳醇な香りが広がるのと引き換えに、デスクに置いたPCの大型ディスプレイが静かに立ち上がる。


「よし……買い物帰りに話していた『治安悪化とステルス犯罪』の背景について、少し深く掘り下げてみようか」


僕がキーボードを叩き、大手動画配信サイトやSNSのリアルタイムトレンドを開くと、画面上にはAI化の波に呑み込まれた人々の「ナマの声」が溢れ出してきた。


画面の明かりが薄暗い室内を照らし、動画の音声やテキストコメントが濁流のように流れていく。


---


【ライブ配信】大手IT解雇組の部屋:元上級エンジニア(30代男性)


> 「みなさん、こんばんは……。今日で弊社をクビになりました。AIエージェントの導入で『君たちのチームの業務はすべて自動化された』って、メール一本で解雇通告です。ローンも残ってるのに、明日からどうすればいいんだよ……」

**コメント欄の反応**

> * 「俺も先週まったく同じ理由で飛ばされた」

> * 「プログラマーなら再就職できるとか言ってたの誰だよ。求人出してもAI選考で0.1秒で落ちるぞ」

> * 「人間が面接官をしてくれる会社すら存在しないんだが?」

> * 「マジでスキル磨いてきた10年間なんだったんだ」


---


『【悲報】AIガチで人間の仕事を奪い尽くすwwwwww』


1: 名無しの求職者 20xx/10/12(月) 14:15:02.11

マジでホワイトカラー全滅だろこれ。

事務、経理、翻訳、イラスト、ライティング、一次コード作成、全部AIで済む。


14: 名無しの求職者 20xx/10/12(月) 14:18:45.33

>>1

しかもたちが悪いのが「会社は最高益」を出してることなんだよな。

人件費カットできたから株価は上がって経営陣は大儲け。

追い出された俺たちは路頭に迷う。


32: 名無しの求職者 20xx/10/12(月) 14:22:10.89

求人サイト見ても「AIエージェントの運用監視(時給最低賃金)」しか残ってなくてワロタ……ワロタ……。


88: 名無しの求職者 20xx/10/12(月) 14:35:50.02

凶悪犯罪を起こすと監視AIですぐ捕まるから、みんな「バレない小悪事」に走ってるよな。

サブスクの不正共有とか、ドローンの荷物横取りとか、セルフレジの目誤魔化しとか。

まじめに生きてる奴が一番バカを見る世界になったわ。


---


【告発動画】「AI選考システムの裏側を暴露します」


> 「企業が使ってるAI採用ツール、あれ完全に人種や年齢、病歴のシグナルを自動で弾いてますよ。表向きは『公正な適性検査』って言ってますけど、裏のアルゴリズムは『とにかくコストがかからず文句を言わないやつ』を選別してるだけ。人間が異議申し立てをしようにも、相手はAIだから連絡先すら存在しないんです」


---


PCモニターに映し出される「生の声」


* **「物理学の学位を取得予定の22歳だが、応募している職種は惨状そのもの。大学院(PhD)なしでは実質役に立たず、要求される7年の実務経験もない」** `[00:00:00]`


* **「応募した求人は数千件にのぼる。昨年の夏だけでも300件以上に応募したが、AIによるスクリーニングで自動不採用にされるか放置されるばかりだ」** `[00:02:02]`


* **「ある企業で5回の面接を受け、内定直前で不採用になった。別の件では6回の面接を経て『内部昇進で決まった』と不採用通知が届いた」** `[00:06:53]` `[08:20]`


* **「イエール大学をGPA 3.8で卒業しファイナンス修士号を持っているが、小売店のレジ打ちの仕事すら採用を拒否された。『無職であること』が不採用理由にされた」** `[00:08:35]` `[00:09:03]`


* **「退役軍人で20年以上の経験と資格があるのに『オーバークオリティ(高望みしすぎ)』として面接すら進めない」** `[00:10:07]`


* **「4ヶ月で400件応募し、時給45ドルだったのが時給18ドルの職にしか就けず、家賃や車のローンが払えない」** `[00:12:58]`


* **「2,000件応募して、進めた面接はわずか3件だった」** `[00:13:15]`


* **「レジ打ちにすら不採用になった。ある求人に応募しようとしたら、すでに2,700人も応募者がいた」** `[00:00:00]` `[00:00:06]`


* **「理工学や科学系の工学学士号(4年制)を持っているのに、ファストフード店の仕事すらもらえない」** `[00:02:18]`


* **「会計学の学士を取り『需要が高くて困らない』と言われてきたが、結果はこれだ。1年前から仕事がない」** `[00:05:37]`


* **「240日間無職で、貯金も失業手当も底をついた。150件以上応募して採用内定はわずか1件だけだった」** `[00:08:52]`


* **「解雇を通告された。こんな職場は雰囲気も最低だ。友達全員にここから品物を盗むよう伝える」** `[00:00:00]`


* **「体調不良や裁判の出廷が重なって休んだら、HR(人事)に呼び出されて勤怠を理由に即解雇された」** `[00:02:28]`


* **「24歳で人生初の解雇を経験した。大好きな仕事から急に無職になり、取り残された感覚と失敗感に苛まれている」** `[00:08:02]`


* **「長年勤めて全人生を捧げてきた仕事を突然奪われた。裏切られたような感覚だ」** `[00:00:13]` `[00:01:21]`


* **「ジュニアから7年間、週末も夜も働き、有給も取らずに全力を尽くしてきた。それなのにHRとのわずか5〜10分の電話で7年間のキャリアが消えた。10ヶ月の娘もいるのに」** `[00:07:01]`


* **「夫婦揃って学位を持つ専門職なのに、1年以内に二人とも解雇された」** `[00:08:02]`


* **「初日に30分遅刻し、2日目も生理痛で10分遅刻したら『帰っていい、クビだ』と言われた」**


* **「SNSアカウントを持っていること自体を理由に解雇された。上司に新居を調べられたり副収入を探られたりした」** `[00:16:06]`


* **「求人応募に7年の実務経験やCPA(公認会計士)ライセンスが必要な職に就いたのに、上司から『この作業にAIを活用しろ』と指示された。大学、修士、CPA試験の苦労は一体何のためだったのか」** `[00:04:00]`


* **「18歳で物語の執筆を学んでいるが、AIが生成した作品を見て、人間が込めた努力や感情が奪われる恐怖を感じている」** `[00:08:35]`


* **「サンフランシスコの看板広告には『人間を雇うのをやめよう。AI職人はワークライフバランスに不満を言わない』と書かれている」** `[00:24:50]`


* **「実際の課題を自分で行っている学生でさえ、盗作検知ソフトによって『AIでズルをした』と冤罪をかけられ、将来が台無しになる恐怖に怯えている」** `[00:31:15]`


* **「応募して2分も経たないうちに自動不採用メールが届いた。人間が選考していないのは明らかだ」** `[00:00:14]`


* **「大学に何十万ドルも払ってきた全人生が、良心のないコンピュータープログラムによって瞬時に拒絶される」** `[00:01:00]`


* **「複数の企業が同じサードパーティ製AIツールを使っているため、1社で低い評価がつくと、別の会社に応募してもAIがその評価を引き継いで自動不採用にしてくる」** `[00:03:37]`


* **「採用ツールを利用して100件以上に応募したが全て即座に不採用にされた。年齢(40歳以上)や障害を理由にAIが自動差別しているとして集団訴訟が起きた」** `[00:07:00]`


* **「企業がAIで選考するなら自分もAIを使って5日間で78件自動応募し、ビーチで過ごすことにした」** `[00:08:13]`


---


「……想像以上だね。単に仕事が減っているだけじゃない。『システムに人間性が完全に無視されている』という無力感が、人々を追い詰めているんだ」


『「人間を雇うのをやめよう。AIは不満を言わない」なんて看板が街に掲げられているのよ? 7年間休日返上で尽くした社員が5分の電話でクビになり、AIツールの誤判定で冤罪をかけられる。これがまさに、スーパーの帰りに話していた「第1フェーズ」の正体なの。制度にもAIにも見捨てられた人々の中で、静かな怒りと不満が限界まで蓄積されているのがよく分かるでしょ』


「マスター、動画サイトやSNSにおける『AI不満』『解雇』『生活苦』関連ワードの投稿数は、前年同期比で**340%増加**しております。また、これらに比例するように、損害額が数千円程度の小規模な窃盗・不正アクセス被害の件数が急増しております」


『当然よ、フィクス! ——AIによる大代替時代における「第1フェーズ」のまっただ中なんだから!』


ジェミニが指先を滑らせると、空中モニターに最新の経済・雇用統計データが立体グラフとなって展開された 。


『表面上の失業率は一見すると低水準に見えるけれど、実情は惨憺たるものよ 。企業が人件費削減のためにホワイトカラーや事務職、一次プログラミングの労働者をAIへ一斉に置き換えたでしょう? 解雇された人々がいくら求人に応募しても、企業が導入した自動選考システム(ATS)によって、0.1秒で機械的に弾かれちゃうの 。人間と面接することすら叶わない応募者が何千人と溢れているのよ』


「人間性が完全に無視された機械的な拒絶か……。それは精神的にも追い詰められるだろうね」


僕はコーヒーを一口含み、深く頷いた 。


「ですがマスター、深刻なのは求職活動そのものを断念する人々の急増でございます」


壁際から静かな足取りで進み出でたアリタが、美しい動作で補足データを提示した 。


「公的統計のからくりとして、過去4週間以内に求職活動を行わなかった者は『失業者』の定義から外れ、『労働力人口外』へと分類変更されます 。結果として分母が縮小し、雇用が回復していないにもかかわらず、表面上の失業率だけが下がって見えるという現象が起きております 」


『そうなの!』とジェミニが声を張る 。


『しかも、単なる定年退職世代だけじゃなく、25歳から54歳の「働き盛り(プライムエイジ)層」の労働市場からの離脱が劇的に進んでいるのよ! 一度解雇されたあとに再雇用されたとしても、以前よりはるかに低い給与水準にリセットされるか、最低賃金に近いAI運用監視のような職しか残っていないの 』


「高学歴な専門職や20代の若手層までもが、ファストフードやレジ打ちの仕事にすら採用されず、貯金を切り崩して限界を迎えている……まさに嵐の前の静けさだね」


「はい。そのため、街中では監視カメラの死角を突いた小規模な盗難や、セルフレジでのバーコード偽装といった、捕まりにくい『ステルス型微罪』が常態化しております 」


得意げに胸を張るジェミニと、几帳面に一礼するアリタを見つめながら 、僕は来るべき大激動の時代へ向け、静かに思考を研ぎ澄ませていくのだった。


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