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011 AIによる大失業時代のコメリカに転移

面接の熱気が残るあの日から2日後の午後。


快適な空調が利いたリビングで僕がPCに向かっていると、画面に一通の着信通知が舞い込んだ。差出人は、あのスタートアップの採用責任者だ。


「フィクス、ビデオ通話の申し込みが届いたよ」


『ほらご覧なさい! 口頭連絡(Verbal Offer)のタイミングよ!』


手首のバングルから飛び出したジェミニが、待ってましたと言わんばかりにホログラムを躍らせる。アリタも静かに僕の背後に控えた。


通話ボタンを押すと、画面には笑顔のリクルーターが映し出された。


『やあ、フィクス! 朗報だよ。チーム全員が君の採用を熱望している。ベンジャミン(CEO)も君のビジョンに完全に惚れ込んでいてね。正式な内定の意思をお伝えしたくて連絡したんだ』


「ありがとうございます! 本当に光栄です」


『早速だが、先日話していた条件面の事前すり合わせをさせていただきたい。勤務形態はご希望通り基本リモートワーク、出社は月1回程度。この条件で間違いなかったね?』


『ええ、その条件で合意していただけるなら、私はすぐにでもチームに貢献できます』


画面の横でジェミニが素早く表示させたスクリプトを読み上げながら、僕は頷いた。


『素晴らしい。では、これより条件を明記した正式なオファーレターをメールで送付する。内容を確認して問題がなければ、電子署名をして返送してほしい』


---


通話が終了した直後、僕のメールボックスに一通の暗号化PDFファイル添付メールが届いた。タイトルは『Employment Offer Letter』。


「届いた……! 正式なオファーレターだ」


「マスター、画面の確認をお手伝いいたします」


アリタが隣に寄り添い、僕とジェミニ、アリタの3人でモニターに並んだ契約条件のテキストをじっくりと読み込んでいく。


そこには、条件が整然と並んでいた。


> **【採用条件概要】**

> **1. 役職(Title)および報告先(Reporting):**

> シニアAIアライメントリサーチエンジニア(Senior AI Alignment Research Engineer)

> 報告先:最高技術責任者(CTO)エレナ・ヴァシリエフ

> **2. 基本給(Base Salary):**

> 年俸 260,000 ドル(約3,900万円相当)

> ※支給形態:**Bi-weekly(隔週払い / 年26回)**。毎回の支給額は 10,000 ドル。

> **3. 株式報酬(Equity):**

> ストックオプション 40,000 株(4年間のベスティング期間適用)

> **4. 入社一時金(Sign-on Bonus):**

> 30,000 ドル(初回給与支給時に一記併せて支給)

> **5. 年間目標達成インセンティブ(Target Bonus):**

> 基準額:基本給の 20%(年額最大 52,000 ドル)

> **6. 福利厚生(Benefits):**

> ・基本リモートワーク(月1回程度のオフィス出社)

> **7. 回答期限(Expiration Date):**

> 本日より7日間


「へぇ……! 年俸26万ドルに、入社一時金が3万ドル……! コメリカの最先端AIスタートアップのオファーって、こんなに凄いんだ」


数字の大きさに感嘆しつつ、僕は基本給の項目に書かれたある単語に目を留めた。


「ん……? 給与の支給形態が『Bi-weekly(隔週払い)』って書いてあるよ。これって……月払いじゃないんだね?」


僕が不思議そうに首を傾げると、アリタが静かに解説を入れてくれた。


「はい、マスター。コメリカのテック業界や大手企業では、月1回の給与支払い(Monthly)ではなく、2週間に1回給与が支払われる『Bi-weekly(隔週払い)』が極めて一般的です。年に26回の給与日が存在することになります」


『そうなのよ! 毎月決まった日にドカンと振り込まれるんじゃなくて、2週間ごとに1万ドル(約150万円)がどんどん口座に入ってくる仕組みね。資金繰りがやりやすくて助かるじゃない!』


ジェミニが満足げにホログラムの手を叩く。


「なるほど……隔週で給与が入るなら、物価が高いコメリカでもすごく計画的に生活を作っていけるね」


「基本給に加え、初回には入社一時金の3万ドルも振り込まれます。初期費用の不安は完全に解消されたと言ってよいでしょう」


アリタが手元で素早く生活費の試算を行い、心強い笑みを浮かべた。


「役職も『シニアエンジニア』で報告先がCTOのエレナさん。僕たちのリモート引きこもり生活を守るには、これ以上ない立ち位置だ」


『回答期限は7日以内だけど……迷う理由なんてどこにもないでしょ?』


「もちろんさ!」


僕はマウスを握り、オファーレターの電子署名欄に『Fix』とサインを入力し、送信ボタンを押した。


【契約完了(Offer Accepted)】の画面が表示されたその瞬間——


僕のスマートフォンに、クレジットカード会社からの通知音がピコンと鳴り響いた。


> **【カードご利用枠変更のお知らせ】**

> 就職の確認が取れましたため、クレジットカードの限度額が**プラス50万円**増枠されました。

> 現在の限度額:**100万円**


「来た! 就職祝いのカード枠増額だ!」


『やったわね! これでカードの限度額は100万円にアップ、さらに隔週で給与と一時金が入ってくるわ! コメリカでの完全な勝利よ!』


「おめでとうございます、マスター。これで私たちは、この2027年のコメリカで盤石な生活基盤を手にいたしました」


アリタが深々とお辞儀をし、僕とジェミニは顔を見合わせて笑い合った。


AI大失業時代という過酷な世界から始まった僕たちのサバイバルは、快適な部屋と最高の条件、そして安定した収入を手に入れたことで、次の新しい「生活作り」のフェーズへと進むのだった。


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