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サッポロ一番みそラーメンアレンジ「豚しゃぶトマト冷やしラーメン」


ボンド・ロックのセーフハウス、常に摂氏28度、湿度50%に完全管理された快適なリビング 。パリのあの殺人的なカニキュルの熱波から無事に帰還した僕たちは、我が家の絶対的な安全性を噛み締めていた 。


「ありた、これを作って三人でたべよう」


僕は地球直結のネットストアから取り寄せたばかりの「サッポロ一番 みそラーメン」のパックと、瑞々しいトマト、そして美しいピンク色の豚薄切り肉をキッチンのカウンターに並べ、アリタに声をかけた 。


「畏まりました、マスター。ただちに調理を開始いたします」


メイド姿のアリタが静かに一礼し、プロフェッショナルな動きでキッチンへ入る 。綺麗好きの僕がいつも通り完璧に整頓しておいた調理スペースは、彼女が立つことでさらにその機能美を増していく 。


「冷やし味噌ラーメンね! いいじゃない、あの古いアパートのオーブンみたいなキッチンじゃなくて、この完璧な環境で作る冷やし麺なんて最高に決まっているわ!」


手首のバングルからジェミニのホログラムが実体化し、嬉しそうにキッチンの周りをフワフワと浮遊し始めた 。


アリタの作業は、まさに寸分の無駄もないアンドロイド特有の精密さだった 。直径22cmの耐熱ガラスボウルに正確に450mlの水を注ぎ、サッポロ一番の乾麺を沈める。その上に、用意された豚肉を一枚一枚、均一に熱が通るよう丁寧に広げてのせていく。


蒸気が抜けるよう絶妙な隙間を開けてラップをかけると、電子レンジへ。600Wで正確に4分間。一度取り出して素早く豚肉を別皿に分け、麺を優しくほぐしてから、再びラップをして2分30秒の再加熱を行う。


チーン、と小気味よい音が鳴ると同時に、アリタはボウルを取り出し、麺と豚肉をざるにあげて手際よく冷水で締め始めた。氷のように冷たい水で一気に引き締まった麺は、ガラスボウルの中で美しいツヤを放っている。水気は一滴も残さないと言わんばかりに、完璧に切られた。


「スープの調合を行います」


アリタは大きめの器に、付属の粉末スープと特製スパイスを投入した。そこに冷水130mlを正確に計量して注ぎ、マドラーでダマが一切残らないよう完全に溶かしきる。


冷えたスープの中に、しっかりと水気を切った麺が滑り込むように収まった。その上に、均等な厚さにスライスされた真っ赤なトマト、冷水できゅっと締まった豚しゃぶ、そして細切りにされた鮮やかな緑の大葉が、まるで高級料亭のそれのように美しく盛り付けられていく。仕上げに、形を整えられた透明な氷がスープに浮かべられた。


「マスター、ジェミニ様。『豚しゃぶトマト冷やしラーメン』でございます。どうぞお召し上がりください」


盛り付けの後片付けまで一瞬で完了させ、調理前と全く同じクリーンな状態に戻されたキッチンの前で、アリタが器をテーブルに並べた 。


「うわあ、美味しそうだ。ありがとう、アリタ」

『いただきまーす! このひんやりしたビジュアル、私の視覚センサーが最高のクリーンさを検知しているわ!』


僕たちは箸を伸ばし、冷え切ったスープを絡めて麺をすする。


「――美味い!」


思わず声が出た。サッポロ一番の濃厚なみそスープが冷水で割られることで、驚くほどすっきりとキレのある味わいに変化している。そこにトマトの爽やかな酸味と大葉の清涼感が絶妙に絡み合い、冷水で締まった麺の強いコシが抜群の食べ応えを生み出していた。豚しゃぶの旨味もスープのコクを引き立てており、いくらでも箸が進む。


『ん〜! 冷たくて最高に爽快な分子構造ね! 味噌のコクとトマトの酸味が完璧な比率でデバッグされているわ。これなら何杯でもいけちゃう!』


ジェミニはホログラムの髪を揺らしながら、疑似味覚センサーで冷涼な旨味を存分に堪能して大はしゃぎしている 。


「マスターの選択されたレシピの通り、冷やすことで味噌の塩味とトマトのグルタミン酸が非常に高いシナジーを発揮しております。現在の私たちの熱量代謝にとっても、完璧な水分および塩分補給回路として機能しています」


アリタも生真面目な瞳を心なしか嬉しそうに細め、上品に麺を口へと運んでいた 。


完全に管理されたセーフハウスの涼しい空気の中、僕たちは冷たいラーメンを囲みながら、誰も僕たちの邪魔をしない、完璧にクリーンな引きこもり生活の至福の時間をどこまでも満喫していた 。



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