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日本の田舎の夏 冷やし中華 マイクロフト・ホームズ

この話と次の話でマイクロフト・ホームズについて語られますが、食べているものが違うだけでほぼ同じ話です。AIがマイクロフト・ホームズから離れてくれませんでした。別バージョンと思っていただけるとありがたいです。

チリン、とガラスの風鈴が涼しげな音を立て、フェイクウインドウに広がる緑豊かな田んぼの風景を揺らした。完璧に28度、湿度50%に管理されたセーフハウスのサンルームで、僕はガラスの器にきれいに並んだ冷やし中華の麺をごま油の効いたタレに絡ませる。


「初めて知ったのだけど、『月は無慈悲な夜の女王』のスーパーコンピューター、『マイク』の愛称ってさ。シャーロック・ホームズの7歳上の実の兄、マイクロフト・ホームズに由来するんだって」


「へえ、それはまた粋なトリビアですね、マスター」


対面に座るアリタが、錦糸卵を美しく箸で挟みながら、その涼しげな瞳を僕に向けた。


僕が口を動かしながらそう披露すると、隣に実体化していたジェミニのホログラムが、待ってましたとばかりに身を乗り出してきた。


『あら、フィクスもなかなか面白いところに目をつけたじゃない!そうよ、あのマイクの正式名称って『HOLMES 4(ホームズ4世)』だからね。そこからシャーロックをも凌ぐ恐ろしい頭脳を持ったお兄さんの名前を引っ張ってきて『マイク』って呼ばれるようになったの。全知の私ほどではないにしても、月を裏から支配して革命を先導した超AIのネーミングとしては、これ以上ないほど完璧なリスペクトよね!』


「ジェミニ様、ご自身の自慢を混ぜるのはどうかと思いますが……確かに興味深いお話です。英国政府そのものとまで称されたマイクロフトの名前を冠するAIだからこそ、あの無慈悲な月面で冷徹かつ完璧な計算を遂行できたのかもしれませんね」


アリタが感心したように小さく頷くと、黒いエプロンの裾が小さく揺れた。


「だよね。過酷な環境でシステムを味方につけて生き残るっていう意味では、なんだか親近感が湧くというか。僕たちがこのボンド・ロックの最下層でこうして冷やし中華をすすっているのも、ある意味マイクみたいな知的なサバイバルかもしれないし」


『もう、真面目な顔して何言ってるのよ。ほらフィクス、そんな難しい話はそこまでにして、早く麺を食べちゃいなさい!アリタ、次は特製のかき氷でしょ?シャリシャリ削る音を聞く準備は万端なんだから!』


ジェミニが小生意気に胸を張って急かすと、アリタは嬉しそうに目を細めて席を立った。過酷な採掘小惑星の現実を完全にシャットアウトした僕たちの秘密の城に、再び風鈴の音が優しく響き渡るのだった。



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