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【番外編完結】確かに愛はあったはずなのに  作者: 篠月珪霞


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5

「それでは、マリエル=アドリエ子爵令嬢を側妃として決定いたします。異存はございませんね?」


反対者は1人だけ。言うまでもなく、フィリクである。苦々しい顔をしているのが横目にも見て取れた。


議長の言葉に、他に異を唱えるものはいない。アドリエ子爵はもの言いたげだが、高位貴族がほぼ全員一致の賛成では何も言い出せまい。

何せ、先日の執務室での騒ぎは、両陛下の耳にはもちろん、貴族の間にも広まったらしいし。

自ら墓穴を掘ったことにも気付いていないのなら、救いようがない。


「側妃の決定に異存はございませんが、私の方からよろしいでしょうか?」

「どうぞ、妃殿下」

「アドリエ嬢の後宮入りは即日でいかがでしょう? 後継は早い方がよいかと」

「公爵家への養子縁組の手続きを終え次第、即日ということですね」

「その通りです。そして、王太子妃教育を並行して、彼女に。その間の執務は私が代行しましょう」

「…マリエル=アドリエ子爵令嬢を正妃前提の側妃にということでしょうか?」


前回の議題では、候補を挙げるかという段階で止まっていたので、改めて提言した。


「はい。そして、期限を設けたいと思います。仮に教育が修了しなかったとしても、離縁は2年後。最長期間としてです。もちろん、進捗次第で早まるのは問題ないかと。この条件を含めてこの場で決定を」


私の提案に、議場に集まった貴族たちが周辺と囁き合っている。

概ね受け入れられる方向で。


「王太子妃殿下のご提案に対する表決をとります。反対の方は挙手を」


ぱらぱらと挙がるが、全体の数として見るまでもない。

議長が両陛下にも確認をとり、議決となった。


──この日、私とアドリエ嬢の行く末は決まったのだ。










そして、先日の、毒物混入の件も調査結果が出た。

毒を入れたのは、国王の第二側妃の元侍女。当然私は彼女を知っている。職務に忠実で真面目な侍女だった。

王太子妃付侍女として回された人員だったという背景までは、知らされていなかったが。

おそらく第二側妃の指示だったのだろうが、証拠がないため、実行犯のみの処断となったのは残念である。


正妃には、フィリクしか子がいない。対して、側妃には王子と王女がいる。いずれも優秀な。

側妃の身分も、正妃に劣るとはいえ、高位貴族だ。

現時点で、十分に王位を狙える位置にいる。フィリクが失脚でもしない限り、の話ではあるにしても。

私が子を宿したことで、焦燥感に駆られでもしたのか。いやに直接的な手を使ってきたものだ。


幸い後遺症はないし、決意する切っ掛けになったので、そこまでの恨みはない。

ただ、危害を加えられたことは事実だし、ささやかに、社交界に事実を流布する程度にしておこうかと思う。












アドリエ嬢の養子縁組、後宮入りは滞りなく行われた。

他でもない、私が主導で手続きしたのだから、不備などあるわけがない。

当の本人は、議会の決定を告げられ、諦めたように受け入れたらしいと聞いた。この期に及んで反発するほど、愚かでなくて幸いだ。

彼女の代わりの秘書官、王太子妃教育に携わる教師も手配済み。

しばらくは様子見かしら。たぶん、私の見る限り、予想を超えることはないだろうけれど。


社交界の方も、思った以上に反響があったようで、巡り巡って私にも詳細が届いているほど。

第二側妃の王子と王女たちは肩身の狭い思いをしているとか。面罵されるより、陰で何を言われているか分からない方が精神的にダメージを受けるだろうし。

なまじ優秀なだけに、周囲に鈍感にもできていないのが却って仇になったのかもね。

王位を狙っていただろうに、今回の件で王位から遠ざかったことに、第二側妃は歯噛みしているとかいないとか。

噂は噂でしかないが、事実無根ならともかく、紛れもなく事実であるから、評判だとか人望とかに割と響いたりする。

第二側妃の元に、どれだけの人が残るのか。私は高みの見物といきましょう。


そして、殿下はというと。

アドリエ嬢に想い人がいるというのと、王太子という立場から、彼女は決して手に入らない花だと理解はしていた。

私との婚姻も、自身の責務故に拒否しなかった、いや、できなかったことが、その表れでもある。

通常、側妃でさえ、伯爵以上の身分が必要とされる。子爵家では、王家に嫁す妃の後援には権力、財力共に不足だからだ。


それ以上に、相愛の相手がいるというのが、フィリクにとっては大きかっただろう。

思いがけず、密かに愛している相手を迎えることになり、浮かれる気持ちになるのは分からないでもない。彼女を悲しませたくない一心で、側妃に反対していたとしてもだ。

多少の後ろめたさや罪悪感より、彼女を迎える喜びの方が大きいのね。結果的に苦しめることになっても。


「──この書類、すべて王太子執務室に返却して」

「かしこまりました」


とはいえ、回ってきた書類の不備が多すぎる。気分が高揚するのはいいとしても、仕事に支障をきたすようでは話にならない。

今までは、多少の誤字や数字の間違いは、私の方で訂正して各所に回していた。

しかし、これからはそんなフォローをしてやる義理も義務もない。仕事が滞ろうが、私の知ったことでもない。

自分の仕事以上のことは一切しないと決めている。


今日は、フィリクとアドリエ嬢の初夜だ。

…本当に、もう何とも思わないものね。














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― 新着の感想 ―
フィリク、言動も行動も優秀とはとても思えない。人身掌握できてないもの。 側妃の子が優秀なら、則妃が余計な事しなければ、フィリクより優秀な側妃の子供たちにお鉢が回ってきたかもしれないのに。 フィリクに子…
第二側妃一人?勝ちが
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