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【番外編完結】確かに愛はあったはずなのに  作者: 篠月珪霞


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2

それから3年後、私たちは結婚した。

学院卒業後、予定通りに。義務と責任を果たすためだけに。


──正直に言えば。


在学中に、婚約は解消になるではないかと思っていた。むしろそれを期待していた。

もしそうなったとしたら、胸が張り裂けるように辛いという感情を知ったかもしれない。私は傷物として結婚自体が難しかったかもしれない。

だが、きっと楽にはなれた。

責任も義務も問題ではなく、自分の感情から、きっと解放されただろう。

いつまでも、自身を覗き込んで、どこが悪かったのか、何故愛されないのか、何故自分では駄目なのかと、不毛な問いを繰り返すことはなかっただろう。


一度だけ、母に聞いたことがある。

この婚約を解消することはできないのかと。


怒るでもなく、宥めるでもなく、ただ諭してきた。

そして最後に。


『あなたの幸せのためなのよ』と。


私の幸せとはなんだろう。確かに殿下を慕っている。愛してはいる。

けれど、決して愛してくれない相手を愛することが、幸せなのだろうか。


同じ想いを返してくれなくとも、お互いを尊重することはできる。お互いを気遣うことはできる。

恋や愛のような情熱がなくとも、穏やかに情を育むことはできる。

いや貴族の婚姻など大半がそうではないか。政略結婚が当たり前なのだから。

そうやって、夫婦になっていくのではないだろうか。

もちろん、破綻する関係もある。上手くいかないのだって、仕方のないことなのかもしれない。

しかし、始めから、上手くいかないことが目に見えている関係の男女が、結婚する確率はどれくらいだろうか。


──初夜でも。

会話もなく、相手を思いやる言葉もなく、ただ義務だけで身体を重ねた。

お互い、初めてだったはずだ。

終わってすぐに身体を離し、広い寝台で私に背を向けた殿下。

後継者を作ることは義務だ、とかけられたのはそれだけの言葉。


口付けはなかった。必要以上に触れることもなかった。私には、痛みしか残らなかった。

お前を愛することはない、など巷で流行っている小説のようなセリフを吐き捨てられなかっただけ、よかったのだろうか。






──それから月に1度。

愛も情もない交わりは、私の心身に多大な負担を強いた。苦痛に感じ始めるのも早かった。


愛している人に抱かれているのに。

愛している人に触れられているのに。


心が悲鳴を上げている。

私に何の感情も持っていない殿下が触れるのに、嫌悪感を持ち始めていた。


私を何とも思っていないくせに。

他に愛する人がいるくせに。


愛しているはずの殿下を、そんな風に思うようになった。













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