別軸の
「遊園地の定番の一つと言ったら〜」
「幽霊屋敷よね、これは知ってるわ」
ちょっと違う気がするけど可愛いからヨシ。
お化け屋敷の装丁は仏像や十字架、
お墓など恐怖よりは畏れといったものを
感じさせるものが多い。
虫や不衛生なもののような本当に
怖いものが出てこないあたり、
コンプライアンスというか
線引きがちゃんとしている。
大人の事情というセーフティありきで、
怖いもの見たさで入る人が多いというのは
少し面白い。
「あ、見て見て、
なんかホラー映画のコラボ期間らしいよ」
「カルト宗教をテーマにした映画なのね⋯
なんだか意表を突かれそうな感じがするわね、
すみれさんはこういうのって平気?」
「うーんそういう映画とかあんまり見ないけど、
まあリアル幽霊にも遭遇してるし
今更現実で怖いものなんてそんなに」
「きゃああああ!」
「だ大丈夫すみれさん!?」
「だだだ大丈夫ぶぶ」
年甲斐もなく大声を出して足がすくんでしまった。
「な、なんかさほら?
いつもとホラーのテイストが違うからさ?
ちょっと力みすぎて変な力入っちゃってさ?」
「ええ、ええ、そうよね」
ダメだ、霊美ちゃんを全肯定の
慰めマシーンにさせてしまった。
今の私マジでダサい。
何とかこの惨状を打開しなければ。
「ま、任せといて!
もうこのアトラクションでは驚かないから!」
勢いよく立ち上がり勇み足で前に進む。
「あつまってすみれさんそこは」
「うわあああああ!」
「ついさっき驚いたところと同じ場所⋯」
「ぜえ⋯はぁ⋯」
な、何とかお化け屋敷から出られた。
あわよくば激しいボディタッチを
期待していたのに、
格好悪いところしか見せられなかった。
「た、楽しかったねー!」
この期に及んで虚勢を張る。
こうなったらとことんまで行ってやろう。
「本当に!?私も楽しかったわ!」
「え、う、うん」
思ったよりも大きな反応が帰ってきて驚いた。
「すみれさんが怖がっていたから
言うのを躊躇っていたのだけど、
正直個人的にはすごく面白かったわ、
あれが欧米のホラーなのね」
「あー⋯」
私が驚いていた部分が、
霊美ちゃんには面白さとして刺さったわけか。
これは面白い観点の違いだ。
「霊美ちゃんが喜んでくれるなら、
驚いたかいもあったね」
「驚くだけじゃもったいないわ、
新しい発見のためにもう一度入らないかしら?」
「うん!そうしよっか!」
「ぎょおおおおおお!」
私たちは今回転している。
自分を軸に回転しているのではなく、
大きな回転する台の上で、
また更に回転する乗り物に乗って
複雑に回転している。
言うなれば、コーヒーカップに乗っている。
「こういう落ち着いた感じもいいわね」
「ねー、乗り物酔いとか大丈夫?」
「平気よ、
三半規管が強いことが数少ない自慢だもの」
「もっと自慢できるところあるって〜」
コーヒーカップには大体、
支柱の着いた円盤がカップの中央に置いてある。
それを回すとカップの回転が強くなり、
よりアトラクション感が強くなる。
それを回してみたい。
でも霊美ちゃんは落ち着いたコーヒーカップが
好きそうだし、手を加えるのが忍びない。
「⋯ねえすみれさん」
「うん?」
「この真ん中の丸いのを回すと、
回転が速くなるのよね?」
「なると思うけど⋯」
「⋯えいえい」
霊美ちゃんが円盤を可愛くつまんで
少し回転させた。
「⋯変わらないわね」
「回転が足りないとか?」
「えいえいえい!」
霊美ちゃんが勢いよく円盤を回すと、
コーヒーカップがそれに乗って回転を増してきた。
「おーきたきたきた」
「うふふ、楽しいわこれ」
霊美ちゃんがどんどん回転を加速させていく。
「⋯へへ」
ちょっとキてるかもしれない。
「そーれそれー!」
「⋯」




