表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/46

霊美ちゃんの初めて



「このピザ美味し〜」


ハーフサイズをさらに二人で等分した

シンプルなマルゲリータ。

大して選ばずに入ったイタリアンにしては、

値段も安くて美味しい。

これはかなりの当たりの店だ。


「ん?」


霊美ちゃんがピザの一切れを前にして、

何やら躊躇している。


「あ、嫌いなものとかアレルギーとかあった?

ごめんねー聞くの忘れてた」

「いえそこは大丈夫なの、ありがとう。

ただこういうお料理をあまり食べたことなくって」

「あー⋯」


確かに霊美ちゃんの家は

毎日和食ばかり出されそうだ。


「ちょっと最初は戸惑うかもだけど、

ガッツリ手でやっちゃって」

「え、ええ」


霊美ちゃんがピザを両手で持ち上げて、

上品に先端を少量口に入れた。


「ん〜!」


美味しさが口を閉じていても漏れてきていて、

こっちも嬉しくなる。


「んー、ん?んー!?」

「あらあらあら」


霊美ちゃんがゆっくり味わっていたら、

チーズが離れずに伸びて

楽しそうなことになり始める。

それを皿で受け止められるようにしつつ

様子を見守る。


「んっんっんっ」


霊美ちゃんが伸びたチーズを全て口に入れ終え、

噛みきった。

そしてゆっくりと噛んで飲み込む。


「ふぅ⋯ごめんなさいね、

口に入れたものを噛み切ることが少なくって⋯

麺類とか」

「大丈夫だよー可愛かったし、

ここのピザのチーズよく伸びるね」

「ええ本当に、なんだか演技が良さそう」

「お餅みたいだね」


そんなことを言いつつ食べていたら

あっという間に完食してしまった。


「もう一枚同じやつ頼む?それとも他のにする?」

「そうね⋯こっちのキノコのピザなんか

すごく美味しそうだわ」

「おーいいね、それにしようそれにしよう」


注文してしばし待つと、

メニューの画像よりも厚みのあるピザが来た。


「これは⋯かなりボリューミーね」

「ね、かなり食べ応えありそう」


お互い二枚ずつ取り冷ましながら

一枚目を口に運ぶ。


「う〜ん」


先程のマルゲリータよりもよくチーズが伸び、

パンチの効いたサラミの旨みと

キノコの肉感が口の中に

確かな満足感をもたらした。


「⋯」


霊美ちゃんが目をつぶってしっかりと

ピザを味わっている。とても上品だ。

何度も噛んでそして飲み込んだ。


「⋯美味しいわ、すごく」


ソムリエが下を巻いた時のような、上品な唸り方。

今まで食べたものの中で十指に入ろうか、

或いは人生のフルコースのひと品に

加わろうかという衝撃だろうに、

その慎ましやかな反応には愛らしさを感じる。


「偶然だけど、ここに来てよかった」

「ええ、連れてきてくれてありがとう、

これも運命ね」


多少大袈裟なくらいが丁度いい。

これからの彼女の人生がより

拓けることを心から願う。

できることならそれの力添えをしていたいな。

感慨に耽りながら食べ終え、会計をすませる。


「次はどこへ行こうかしら?」

「そうだねー⋯」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ