肩の荷が降りる
「女の人同時でキスするのは変なこと?」
突然佐倉がこの場にそぐわないことを言った。
思わずキスの動きを止めてしまう。
「そこは別に、変なことだとは思わない、けど⋯」
「けどー?」
「なんか⋯ムズムズする⋯」
こっちが裏で依頼をこなしているのに、
雰囲気が作られ始めている。
まさか色々焚きつけるための
口上だったんじゃないだろうな。
「んむっ」
『ちゅぱ』
いつもよりもやや強めに唇を吸われる。
「今は除霊に集中しましょ」
「う、うん」
除霊に集中するも、
やはり二人の話し声は聞こえてくる。
「どこら辺がムズムズするの?」
「ちょっとやだもう⋯」
「言ってみて、それか手で触って」
「やだぁ⋯」
流石に何をしているのか
ちょっと気になり始めてきた。
「よそ見しないの」
「ごめんっ⋯ぱ、なふぁい」
「よろしい」
キスしてる人とは
別の人を意識するのはだめだよね。
霊美ちゃんに集中しよう。
「ここらへん?」
「んーん」
「じゃあここ⋯?」
「違うけど⋯目が据わってて怖いよぉ」
「ここは?」
「⋯うん」
「そっか⋯ところで肩の調子はどう?」
「あっなんか軽くなってるかも!」
霊美ちゃんと目を合わせて、ゆっくり唇を離す。
そして桐谷の肩の方を凝視する。
「いなく⋯なってる」
「除霊成功ね」
桐谷の肩を見ていた視界の端で、
佐倉がこちらを見た。
除霊成功のハンドサインを送る。
「やったー!」
「え?なんかそういう治療法とかあるの?」
「うんうん、万病に効くかもー」
霊美ちゃんと付き合ってから体の調子がいいから、
あながち間違いでもないかもしれない。
「⋯今日なぎちゃん家ご両親遅いよね」
「え、うん」
「家に行ってもいいかなー?」
「えー、今日の美来なんか怖いからやだー」
「いいじゃーん」
他愛のない会話を始めたので
霊美ちゃんの方を向き直る。
「一応、今日すみれさんのお家に
ご両親はいらっしゃるかしら?」
「え?た、多分いる⋯と思うけど」
「やっぱりそうよね⋯」
「あーでもいないことも多いかもー⋯」
「なら⋯思う存分できるわね」
「う、うん」
何ができるか考えるのは
頭の中でも野暮だと思った。
「なぎちゃん家も行きたいし今日はもう帰ろっかー」
「確かにね、足も心配だし」
「ありがとねー、
もう歩けるからおぶらなくても大丈夫だよー」
「平気平気、園の外までは運んであげる」
「ったく⋯そういう所だよ本当に」
「え?なんか言った?」
「なんでもー」
なんで私はこの距離で聞こえたのに
桐谷には聞こえなかったのか。
聞き流すこともまた才能⋯か。
桐谷は佐倉をおんぶして森を出ていった。
「私達はどうする?今から私の家来る?」
「いえ⋯少し考えさせて」
霊美ちゃんが顎に手を当てて考え事をし始める。
こんな場所でまとまった思考ができるのはすごい。
「⋯もし除霊が本当に終わったのなら、
明日の予定は丸々空くことにならないかしら?」
「あー確かに、どうする?明日私の家来る?」
「私は行きたいけれど、
すみれさんの予定はどうかしら?」
「大丈夫だよー、バイトもないし」
「なら⋯一日中できるってことね」
「う、うん」
こちらの想像だけに任せると変な気分になるので、
考えないようにする。
霊美ちゃんはピンクな場所で物事を考えられたり、
冷静な顔をしてピンクなことをよく考える。
もしかしたらいつもピンクなことを
考えているのではないだろうか。
失礼な考えだが割と間違っていないかもしれない。
「行きましょうか、なんだかお腹がすいてきたわ」
「私も私もー、どこ行くどこ行く?」




