テーマパークでキス
憩いの森と書かれた門をくぐって、
やや開けた広場に辿り着く。
憩いの森というだけあって、
老若男女が休憩をしている。
自然が多くマイナスイオンに
満ちていそうな空間だ。
「彼女たちはまだ見えないわね」
「隠れながら入り口を見張ってようか」
「ええそうね」
門を行き交う人々の中から佐倉達を探す。
「あ」
一際目立つ二人組が門をくぐった。
小柄な桐谷が一回り大きい佐倉をおぶっている。
佐倉の指示か近くのベンチに
座らず森の奥へと進んでいった。
「奥に別の空間があるみたいね」
「抜き足差し足忍び足⋯」
森の木々に隠れた道を進むと、
また少し開けた広場に出る。
今度は老若男女が休憩してはいない。
見渡す限りの若女。
最低一組の集団がまばらに親交を深めている。
先程の空間が公序良俗に
乗っ取った場所だとすれば、
ここはその反対の場所なのだろう。
桐谷が俯きながら佐倉をベンチまで運んだ。
そして佐倉の靴を脱がせて診始めた。
近づくと声が聞こえ始めた。
「だから言ったんじゃん、この靴歩きにくいよって」
「ごめんごめーん」
本人の計算通りか、靴擦れを起こしているようだ。
桐谷のために体を張っていると本人が知ったら、
どう思うだろうか。
「これでよし、何か欲しいものある?」
「大丈夫ー、一緒に座ろー?」
桐谷は居心地悪そうに佐倉の隣に座る。
それもそうだ、
なんせ周りは同性が
あんなことやこんなことをしているのだ。
私たちだって直視は憚られる。
「どうしたのなぎちゃん?」
「ううん、周りの人がやけに…その⋯」
桐谷は俯いてはいるものの、
時折視線が周りのカップルに注がれている。
全く興味がない訳では無いらしい。
観察しているうちに二人の背後に上手く回り込む。
どのカップルよりも一番近い距離を保ちながら、
木で身を隠す位置だ。
桐谷の肩を凝視する。
「どうかしら?すみれさん」
「うん、この場所の影響かかなり小さくなってるね、
あと一押しでいけそう」
「なら早速⋯」
「⋯うん」
仕事とはいえども、待ちに待った二人だけの行為。
手を伸ばしてその先へ向かうことはないけれど、
今手を繋いで行う
それを全うしない理由にはならない。
「ん」
「んー」
木に寄りかかり霊美ちゃんを待ち受ける。
『チュ』
似たような音が周囲で聴こえる中で、
はっきりと主張するように音を出す。
幽霊に届くよう祈り、二人に聞こえないよう祈る。
「む」
『ちゅ』
早速効果があったのか桐谷に動きが見られる。
「ね、ねえそろそろ行かない?なんかここ変だよ…」
「まだ足痛いー、それにどこが変なのー?」
「だ、だって女の人同士が⋯その⋯」
「それのどこがへんなのー?」
「いや場所が⋯」
「んー、そういう場所なんじゃないー?
だめだったらとっくに誰かが注意してるだろうしー」
「そ、そっか⋯」
納得できるようなできないような理論で
桐谷が口をつぐんでしまう。
「女の人同時でキスするのは変なこと?」




