密室の中の二人
難なく観覧車に乗ることができた。
金属でできた床に足をつけた時から、
特別感が訪れる。
ただ。
「⋯」
霊美ちゃんが無言で隣に座った。
しかも密着状態で。
こういうのって、
普通対面で座るものじゃなかったっけ?。
「あ、あの⋯」
「何かしら?」
隙間を開けたらその分詰めてくる。
「こういうのは、後で私の部屋でって⋯ん!」
視界が突如霊美ちゃんに覆われ、唇が塞がれる。
『ちゅぱ』
「堪え性がなくてごめんなさい。
でも、今解消しないと、
除霊に集中できそうになくて」
霊美ちゃんの腕が後頭部と腰に回され、
ゆっくりと椅子に仰向けになる。
「もう⋯仕方ないなあ」
霊美ちゃんを抱きしめ返し、体が重なり合う。
体温が中和され、
抱きしめている感覚がやがて薄れていく。
やがて二人という境界も薄れ、
一つの存在になったように感じる。
観覧車から見える景色を未だ目にしていない。
この目から見えるのは、霊美ちゃんだけだ。
彼女は目を閉じて、
ゆっくりとこちらに近づいてきている。
「ん」
優しく唇が触れ合う。おいしい。
霊美ちゃんの体勢は辛くないだろうか。
少しだけ腰を引き寄せる。
霊美ちゃんの体重を感じる。
相変わらず霊美ちゃんは主張をしない細い体だ。
羨ましくなるのと同時に心配にもなってくる。
『ぱ』
至近距離で見つめ合いながら、久しい息をする。
お互いの吐息が混じり合い、
決して新鮮とは言えない空気。
でも、世界で一番吸っていたい空気。
「んむ」
体を寄せ合い、押し付けるように唇を重ねる。
そうすると、
霊美ちゃんの長いまつ毛が私のまつ毛に当たる。
そんな小さなことが大きな幸せに感じる。
なんだかもう、どうなってもいいかもしれない。
準備運動で舌を動かした。
『ガコンッ』
突然ゴンドラが揺れた。
そして減速し始める、もしかして。
二人同時に起き上がると、
観覧車が地面に到着していた。
急いで立ち上がりゴンドラから出る。
入れ替わりで次の人たちが
入っていくのを一瞥する。
「「⋯」」
手を繋いで観覧車の前で棒立ちする。
満足するまでイチャイチャはできた。
しかしさらに向こうへ手を伸ばした故に、
名残惜しさも強かった。
そして家に帰った時の期待感も高まる。
だが依頼をこなす前に気をやるようではダメだ。
「連絡来るまで、しばらくのんびりしてようか」
「ええ⋯そうね、
しばらく何に乗っても何も感じないだろうし」
全く同じ感想を抱いている自分がいる。
『ピロン』『ピコン』
霊美ちゃんと同時にスマホが鳴る。
「ちょうど連絡が来たわね」
『憩いの森のベンチで休憩することになったよー』
なぜ字面でも言葉尻に伸ばし棒をつけるのだろう。
「憩いの森なら近いわね、急ぎましょうか」
「うん!」




