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やる気スイッチ



「はぁ⋯はぁ⋯」


霊美ちゃんに肩を貸しながら

アトラクションを出る。

彼女の足は産まれたての

子鹿の脚のように戦慄いていた。


「だ、大丈夫?」

「え、ええ、ただちょっと、脚に力が⋯」


アトラクション付近の集団から離れて

改めて霊美ちゃんを見る。

心拍数が上がっているのかほんのり

顔が赤くなっており、

息を荒らげながら脚を震わせている。

なんかちょっと、えっちだ。


「怖いだけかと思っていたけど、案外楽しかったわ、

寿命は縮んだだろうけれど」

「えー、なら絶叫系はやめとこうかな」

「何故?」

「霊美ちゃんとずっと一緒にいたいから」


我ながら照れくさいことを言った。


「⋯私も同じ気持ちよ」


肩を貸していた腕が離れ、手と手が繋がれる。


「すみれさん、いつものことかもしれないけれど、

今日はかなりサービス旺盛ね」

「霊美ちゃんとテーマパークにいるからかな」


今すぐにでも、霊美ちゃんとキスしたい。

付近を見渡し往来の人数を確認する。

アトラクションから離れたからか

そこまでの人数ではない。

広場ではないので皆目的地を

目指して前を向いている。


「霊美ちゃん」

「え?」


親指で霊美ちゃんの顎を引き、つま先立ちになる。


『ちゅ』


ほんの一瞬、

だけどしっかりと感触が残る塩梅でキスをした。

周りでこちらを見る人はいない。

耳まで赤くした霊美ちゃんを除けば。

霊美ちゃんは何も言わない。

ただ据わった目でこちらを見ていた。


「⋯二人っきりになれる場所ってあるかしら⋯」


手を引っ張られ歩き出す。

まずい。

このままだと依頼とテーマパークが

おじゃんになる半日イチャイチャコースだ。

「ごめんごめんごめん!

ちょっとふざけすぎちゃった」

「もう遅いわ、トイレ、トイレへ行きましょう。

多目的トイレがいいわね」


勝手に話が進んでいる。

イチャイチャするのは大歓迎だけど、

今この時間はまずい。


「この後、ことが済んだら私の部屋で、ね?」


咄嗟に思いついたことを耳打ちする。

途端に霊美ちゃんの歩みが止まった。


「約束よ」

「う、うん」


据わったままの目には、

否定させない凄みがあった。


「次はどこに行こっか」

「そうね、近い場所から順々に巡りましょうか」

「そうしよう」


シームレスにいつもの霊美ちゃんに戻るのが、

ちょっと怖い。

その後は、ジェットコースターに乗ったり

レストランで昼食を食べたりした。

佐倉からの連絡はまだない。


「次はどこ行こっかー」

「そうね、お昼の後だし、

落ち着いた乗り物がいいわね」

「ならあれとかいいんじゃない?」


丁度よく、目の前に観覧車がある。


「いいわね、行きましょうか」

「うん!」


この時の私は考えもしていなかった。

今日の霊美ちゃんと二人っきりになることが、

どういうことかを。



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