27話 『わかれみち』へと (香織)
27話 『わかれみち』へと (香織)
12月になってしまい冬本番となり、夕方なんてすぐに暗くなるわ、厚手の上着を着ていたも寒いわで、なかなか好ましくない時期だ。このような季節があと3ヶ月続くと考えると本当に気分が重くなる。
私は今日も、夜8時まで新ユニットのメンバーで練習をして、西鉄福岡駅の近くの人の混んでいるバス停から、時間を遅れて来るバスに乗って寮へと帰る。
このような生活がここ1ヶ月続いているせいで、身体が疲れていて授業中眠くなってしまうのは仕方がないな、と自分の心の中で納得する。
新ユニット結成をしてから早くも1ヶ月が経っている。ユニットを結成すると同時に本格的な練習が始まっていて、平日は放課後から夜8時くらいまで、土日の朝から夕方の時間に、《ミュージックスターズ》の所有しているスタジオで練習をすることになっている。スタジオへの練習に行く交通費は、事務所側が出してくれているので、お金のことを気にせずにユニットとしての活動をすることができている。
そんな感じで、楓、柚葉、保真麗、鈴音、と私の五人でのユニット活動をしている。《Cosmicrown》の本格始動となるのは来週のクリスマスで、警固公園におけるイベントで初ライブをしなければならない。使う曲も新しい曲、振り付けも1からと大変な事は多いが、自分が小学生の頃に何もしてこなかった分、今のユニット活動に対してやりがいを感じている。
私はリーダーであるのに、今日は練習で多くのミスをしてしまい気分が重いため、窓側の席に座り、街頭や建物の灯のおかげで夜も明るい街中を眺めて、気分をスッキリさせたいと思う。
「次のクリスマスのイベント緊張するなぁ……」
自分がこのユニットのリーダーであるため、何かあれば大概のことの責任は私が負わなければならないと思っているので緊張している。
「私も一緒で緊張してしまっているわ……。でも、楽しむのが大切だって柚葉も言っていたし、楽しむことにしよ……?」
バスの隣の席に座っている鈴音が、私に寄りかかって眠りかけながら、眠そうな目を擦りながら言う。今はこんな様子である鈴音であるが、鈴音と同じクラスである楓の話によると、鈴音は授業中もしっかりと起きてるいるうえ成績も安定させているんだとか。いつかの朝礼で、日常性の維持が大切だとかを校長が偉そうに話していたが、その話は本当のようである。
私(ザ・不真面目)は、授業中に寝てしまうことがあるけれど、真面目である鈴音は、こんなに遅くまで予定があっても日常性をしっかりと維持できていて、授業をしっかりと聞いている。ユニット活動をし始めてから、私達(柚葉も含めて)は学校の成績は下がり気味ではあるが、鈴音は何ら変わらないらしい。
「そうだね、アイドルはアイドル本人が楽しまなくちゃいけないもんね」
私に寄りかかって半分眠りについている鈴音の頭を撫でながらそっと囁くように言った。
アイドル本人が楽しまなくちゃいけない、そんな事はわかっているのだけれど、それすらも、実際にできるかどうか不安になってしまう。緊張して楽しむどころではなくなりそうである。
「きっと……できる……よ……」
そう言うと鈴音は完全に目を瞑って眠りについた。鈴音が肩によりかかっていて、左の手が動きづらくスマホゲームが自由に出来ないけれど、起こすのは良くないので、鈴音に寄りかかられたままの状態で降りるバス停までボーッとすることにした。私は学校近くの降りるバス停に着くまで、今度のクリスマスのライブについての考え事ばかりしていた。
鈴音は通学生であるため、私達とは別のバスに乗り換える必要があったため途中のバス停で降りた。
保真麗、楓、私の三人で辺りがマンションや寮の電気の灯りしかない中、寮に着いた。「今日も疲れたー」なんて喋りながら寮に入ると、寮の玄関にあるホワイトボードに一枚のプリントが貼ってあることに私は気づいた。
「ホワイトボードにお知らせ……かな?」
男子寮は騒ぐ人達が多く本当にうるさいため、規則を厳しくするためにホワイトボードに、お知らせとして規則の追加を告知するプリントが貼られることが多いらしい。一方の私の生活する女子寮はといえば、周りが本当に大人しくして良い子だから、規則が厳しくなることなんて全くない。そのため、お知らせとしてホワイトボードにプリントが貼られることなんてまず無かった。そのため、少し不安になりながらも、どんな規則が追加されるのかなと少しの好奇心を持ち、貼ってあるプリントを見る。
「えーっと……年末年始の帰省についてのお知らせ……か……」
プリントによると今度の年末年始は寮には残れないんだとか。正確には12月27日から1月4日の間は寮から帰らなければならないんだとか。
「そっかぁ、この期間中はみんなと会えないんだね……」
保真麗が私に後ろから抱きついて私の肩に顔をちょこんと乗せて言った。保真麗の言う通りこの期間中は皆に会うことが出来ない。それはそれで悲しいのだが、それ以上に大きな問題が発生せることに私は瞬時に気づいた。
あの二人と会わなければいけないのか……。
「香織?どーしたの、暗い顔して……」
そのことに関して深く考えそうになっていた私を、楓が心配そうな顔をして覗き込んできた。楓に私の暗い部分を悟られないようにするため、私は、表情が固くなりかけていた顔にすぐに笑顔を作って「何でもないよ!」と答えた。
しかし、楓は何かまだ私の事を疑っているようで、心配そうな顔のまま「それならいいけど……」と言い私の方を見ていた。
楓は結構鋭い勘を持っているため、もしかしたら私の暗い部分を勘付いていしまうかもしれない。保真麗にバレている部分なんてほんの一部だけであるので、これ以上情報が漏れるのさえ防げばそれで良いのだ。
せっかく出来た、楓や保真麗などの大切な友達にとって私が大切な存在でありたかった。大切な友達には距離を置かれたくなかった、小学生の時の過ちなんて二度と繰り返しを起こさない、そう自分の中に決めていたから。
「私、先に部屋に戻っておくね」
「待ってよ!香織ちゃん!」
私は二人から離れるようにして走って部屋に戻ろうとしたが、私は走り出して5歩、6歩のところで保真麗に呼び止められた。
「いつでも相談しに来て良いんだよ?」
「大丈夫だよ、私は」
保真麗も先ほどの楓と同じような表情をして私の事を見つめている。その表情を見るだけで謎の罪悪感に包まれた気分となり、心の中がチクッと痛む。これ以上二人に、自分のことを心配させないように、さらに深いところに入られないように、私は寮内の自室へと走って帰った。
結局あの後からもどうすることもできずに、クリスマスの日を迎えることになってしまった。
昼は仕事の予定は無く、楓、保真麗、鈴音、柚葉の五人で天神のクリスマスを味わうことにした。伶良も誘ってみたのだけれど、陸上部のメンバーでクリスマスを楽しむらしくコッチには来ないんだとか。前まで、周りからは少し距離を置かれていた伶良だったけれど、ここ最近は周りと距離が近くなって楽しく過ごせているんだとか。それなら友達としては本当に嬉しく思うけれど、クリスマスも一緒に遊びたかった。
今日がCosmicrownにとっての最初のイベントである。
リーダーとしてメンバー全員を引っ張っていかなければならない。こんな事は当たり前のことなのだけれど、実際してみようと思うと結構難しい。大変なリーダー役を軽々と引き受けるようなものでも無かったなと少し後悔の念を抱きながらも、仕方ないと自分に言い聞かせることにした。
「今日は夜7時からここでライブするんだっけ……?」
ROUND1で遊び終わった私達はライブをする警固公園に戻った。Cosmicrownの練習で天神には週に6日来ているので、行き帰り道の途中にある警固公園は、普段から目にしているため慣れたつもりでいたけれど、イルミネーションが飾られていくうちに別の公園に進化していっている気がした。
今まで雨やらなんやらで光っている場面を見れることは無かったけれど、今日は酷い寒さのかわりに素晴らしい快晴を手に入れることができたため、夜になればイルミネーションは点灯するだろう。
ROUND1を出る直前は、「結構遊んだし、もう夕方近いよね?イルミネーションが点いているかもね」なんて話していたが、外に出ると明るかった。不思議に思い時間を見るとまだ夕方の4時だった。
私達の遊びに行ったROUND1は、思った以上に人は少なくてカラオケ、ボーリング、しっかりと遊ぶことを満喫できた。
クリスマスだし、人が多そうだとは思ったけれど、よく考えるとクリスマスである。クリスマスにタバコの臭いのするゲーセンや、クリスマスとは場違いそうなボーリングに人々は行くであろうか、いや行かない。そのような意見でまとまったため、ROUND1へと遊びに行くことにした。
「今日のライブの曲って新曲だよね?誰か作ったんだろう……」
保真麗が、ライブのステージが組み上げられている公園を見ながら言った。《ミュージックスターズ》の社長さんからは、今日のライブで使う曲は新曲であるこの曲が、Cosmicrownの代名詞になるだろうと言われた。
事務所内で、この歌を作っているのは私達と同学年の人だとかいう噂を耳に挟んだけれど、もしそうなら本当の天才だな、と感じたことを思い出した。クリスマスならではの冬の冷たい感じのメロディー、クリスマスのカップルを描いたような歌詞。読めば読むほど歌詞に込められた深い意味が伝わってきて、頭の中で歌詞の風景が想像できる。
「あの曲、私、結構好きだわ」
鈴音が保真麗の隣に並んだ。鈴音って恋とか全くしないイメージなのに、恋愛ソングとかわかるんだ……。意外……。
「んー、鈴音ちゃん。わかってるじゃーん」
保真麗が隣に並んだ鈴音に甘えた声を出してギュッと抱きついた。鈴音は保真麗に抱きつかれると顔を赤くして、「こ、こういうこと慣れてないから恥ずかしいんだけど……」と恥ずかしがっていた。保真麗は鈴音の頬を突いて、「可愛いねぇ〜、鈴音ちゃん」と、恥ずかしがる鈴音をいじっていた。
「ね、ねぇ……。保真麗って百合女子だったりするの……?」
柚葉が私の隣で、保真麗のことを眉をひそめて見ていた。柚葉は学校が違うし、柚葉は保真麗に彼氏が居る(私の幼馴染み……)ことも知らないし、保真麗が普段の練習でこのような態度であることが多いしで、柚葉から保真麗は百合女子であると思われてもおかしくないだろう。あのような様子だと認めてもいいくらいではあるのだけれど、保真麗の本性は知らないし、それに関しては本人の口から言わない限り否定をするしかないだろう。
「た、多分違うんじゃないかな……?」
「なぁんだ、てっきりそうかと思ってしまったよ」
柚葉が何を期待していたのかは知らないけれど、何故か少し残念そうに見えるのは気のせいだろうか……。まさかだけど、柚葉ってそういう性格では無く、単純に疑念が湧き上がっただけだよね……?自分にそう言い聞かせて、柚葉の今の態度の意味を頭の中で勝手に解釈した。
「香織、ちょっといいかな……?」
頭の中で更なる想像を膨らませようとしていたら、不意に楓に呼ばれた。楓の方を見ると楓は言いづらそうに私の方見ていた。急にどうしたのだろうと気になった私は「どうしたの?」と声をかけた。気分でも悪いのならどうしようかと心の中に不安が募ってしまう。
「ライブの終わった後、私のところに来てくれる……?」
「え、はい……」
この流れから来てこのセリフ……。まさか楓……私のこと好き……なの?勝手な妄想なのかもしれないけれど、時が一瞬止まってしまったかと思うくらい緊張する。楓は真剣な表情をしていたから、もしかしたら本当に告白なのでは……。
あれ……?なんで告白されることを期待しているの……?
その理由が何なのか、今の気持ちがなんなのか分からない私は、昼になってから曇りかけている空を見上げた。その空の感じはまるで私の心の中を表しているようだった。
※ ※ ※ ※ ※
夜になると周りが一気に寒くなるのを感じる。というより、この真冬の夜にアイドルの衣装は身体が凍ってしまいそうだ。
イベント会場である警固公園は色鮮やかなイルミネーションが数多く点いて、今日だけはまるで夢のような世界だった。若いカップルもいれば、新婚そうな二人、親子で来ている人達、友達同士でこの幻想的な世界を楽しんでいる。そんな中、私達はライブをすることになる。
公園の時計を見ると長針が11を過ぎていて、もう少しで19時になろうとしていた。
ライブをするステージの前に設けられたパイプ椅子には多くの観客が集まってきてくれている。席は想定より多く設けたと社長さんは言っていたけれど、席は完全に埋まっていて空席が無く、立ち見をする人まで居る。
「みんな私達のことを見にきてくれたんだ、嬉しいよね!」
柚葉は満面の笑みで喜びを表している。が、私はどうしても緊張してしまって、体がカチカチに固まってしまった気がする。(寒さもあるけれど、それよりも緊張の方が強い……。)
「リーダー、固くなってるねー」
「香織ちゃん、リラックスだよ、リラックス!」
「香織、緊張よりも私達は楽しまなきゃいけないわ」
控室の椅子に座って、緊張で地面を見つめていた私に、楓、保真麗、鈴音が声をかけてくれる。その言葉に私が顔を上げると、メンバー4人が私のことを笑顔で見つめていた。
「……そうだよね、みんな……」
Cosmicrownのリーダーである私が何をやっているんだろう……。こんなんじゃ、リーダー失格じゃん……。責任に追われる毎日の中、自分がCosmicrownを引っ張って来ていると思っていたけれど、みんなが一緒になってこのユニットを引っ張ってくれていたんだ。それなら、リーダーである私がそのみんなの気持ちに応えなきゃいけないじゃん!
「みんな!行く準備できてる⁉︎」
私は椅子から勢いよく立ち上がりみんなの顔を見た。みんなの自身に満ち溢れている顔、伝わってくるやる気、本気で観客のみんなを楽しませたい、喜ばせたいという気持ちが伝わってくる。
私は……私達は、四人と息を揃えて、拳を作った右手を高く挙げて、私達のユニットの掛け声を言う。
『光り輝け、私達のCosmicrown!』
※ ※ ※ ※ ※
曲が終わる時には、観客がライブの始まる前の三倍くらいいた。大きな拍手とみんなの笑顔。アイドル部をやっていたこと、私がこのユニットのリーダーをやっていたことを素直に誇りに思えた瞬間だった。アイドル部に入っていたなければこんな素晴らしい光景を見れることは無かっただろう。
「みなさん、今日はありがとうございました!みなさんのクリスマスがいい時間でありますように!」
私は観客席に向かって感謝の言葉とクリスマスの鉄板であるような言葉を贈った。そこからまた歓声と拍手が上がってとても嬉しかった。
私が観客席の方に向かって手を振っていると、私の目の前を何か白いものがふわりと落ちてきた。
「これって……!」
福岡では、こんな季節にはあり得ないだろう。北海道とかならわかるけれども、九州ではまずあり得ないことである。それなのにこれは……。
「雪……?」
先程から曇っている空から雪がハラハラと軽やかに地上に舞い降りてくる。その雪に興奮して、若いカップル、子供の親達も子供と同じくらいはしゃいでいる。私の隣では保真麗も同じようにはしゃいでいたが、楓がそっと注意してくれたおかげで保真麗もはしゃぐのをやめた。はしゃいでいる人を他人事のように考えている自分も、実は珍しい雪に興奮してしまっている。
降ってくる雪が掴めそうに思い、雪を降らせる暗い空に左の掌を広げて腕を伸ばしてみる。
そのようにしていた私を、後ろから柚葉がちょんと突いて「香織」と現実に引き戻してくれた。そうだ、まだ、ライブ終わってなかった。クリスマスにはあの言葉が必要だよね。
「みんなー今日はありがとう!メリークリスマス!」
観客席に手を振りながら私達五人はステージを降り、控え室へと向かった。
※ ※ ※ ※ ※
そういえばライブ終わったから、楓のとこに行かなきゃいけないんだっけ?そう思い、保真麗と話している楓に声をかけようと近寄った。すると、視界の奥の方、向こう側に武琉の姿が見えた。
私は武琉と話したくなってつい二人から少し遠ざかり、遠回りをして武琉の後をついていった。警固公園内の光のタワー(クリスマスの木をイメージしてるのかな?)の所で武琉は立ち止まった。そして、スマホを触り始めた。これはきっと、保真麗とデートをする約束でもしているのだろう。なら、それまでの間だけでも……。
「武琉……今、暇なの?」
私に声をかけられた武琉は、少し驚いていたようだが、「香織に伝えなきゃいけないことがあってな……」と少し言いづらそうに話す。
今は雪が降っているので路面が濡れている。それに夜であるので、イルミネーションの光が見事に反射して、武琉をより一層美しくそして艶やかに見せてくれる。
そんな武琉を見るとどうしても自分の気持ちが抑えられなくなってしまう。今、武琉と私は二人きり。保真麗も楓と話しているだろうし、周りを見渡しても鈴音と柚葉の姿も見えない。
「武琉……」
私は一歩一歩、武琉の整った顔を見つめながら武琉に近づいていく。武琉は「どうしたんだ?」と今からどうされるかも分かっていないで私に優しく問いかける。こんな純粋なところも可愛らしくてたまらない。
「好きだよ」
私は武琉に抱きつき少し背伸びをして武琉の顔に自分の顔を近づける。武琉は私の突然の行動に顔を赤くして焦っていた。こんな表情も最高に可愛いくて、私の脳内がグズグズに溶かされそうになる。武琉の黒い瞳に、武琉のことで頭がいっぱいになった私が映っている。
「ちょっ、まっ……」
武琉が何か言おうとしていたが、私は武琉の唇にそっと自分の唇を重ねて、武琉に何も言わせなかった。この前の楓みたいに武琉の唇は柔らかくていつまでもしていたかった。なんだろう、コーヒーでも飲んだのかな?武琉の唇からほのかに伝わってくるコーヒーの風味。全く周りの目が気にならないくらい、私は今、この瞬間のこのキスのことで頭がいっぱいだった。
保真麗に見つかってしまうと取り返しのつかなくなることは私にはわかっているため、ある程度するとそっと唇を離した。武琉は今にも溶けてしまいそうな、とろけた顔をしていて吐息が色っぽいなと感じる。
このままずっと見つめ合えることができたらいいのにな……と心の中で思うが、そんなことは叶わないことだとわかり、抱いていたのをそっと解いて、私は半歩後ろに下がった。
「香織、ここにいたのね?結構探したんだよ?連絡も入れたし……」
「楓……。ごめん、忘れていた」
楓が私と武琉の近くに来た。隣には少し気まづそうにしている保真麗もいる。もしかしたら、さっきのキス、見られていた?そう考えると急に罪悪感に襲われてしまう。が、してしまったことは仕方ないし別に後悔なんてしてないから良いやと自分の中で自己完結する。
「でね、今から話すことなんだけど、事実を話すから全てを受け止めて欲しいの」
楓は真剣な表情で私のことを見ている。なんか、楓からの告白があると期待していたが、そんな様子では無いようだ。癌があると患者に告げる時の医師のような顔をして、楓から言われたので私も緊張してしまう。
にしても、私なんかしたっけ……?
楓は目を瞑り大きく息を吸って息をはく。そして、目を開けて私のことを見つめて話し始めた。
「香織、今度家に帰るよね?」
「うん……」
ん?別に何も普段の会話と変わらないような……。ここで、一気に表情が明るくなって「みんなで初詣に行こう!」とか言い出すのかな?そんな適当なことを想像していたけれど、私の想像をしていたことは起こることなく楓は続ける。
「香織……。単刀直入に言うね。実はね、あなたの今の家族、あの二人は本当の家族じゃないんだ……」
その場の空気が瞬間的に凍った気がした。私は自分の耳を疑ったけれど、楓、保真麗、武琉は表情が何一つ変わっていない。
「ど、どういう……こと……なの?」
警固公園を出した理由は、別にハロウィン関連の事と一切関係ありません。
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