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ギャルズメロディー1期   作者: キスよりルミナス
新ユニット結成編(楓、香織編)
23/29

23話 新ユニット結成、中編(楓)

23話  新ユニット結成、中編(楓)



 

 「私達五人でユニット……ですか」

 「そうだよ、あなた達五人でユニットを作るの」

 私は優亜先輩のセリフをまだ受け止めきれない。

 《ミュージックスターズ》の新ユニットともなれば、相当な期待を背負うことになる。この事務所でユニットを作るのであれば、何であろうと成功しなければならないということはわかる。

 ただ、ここの五人でユニットを作って成功をする確証は無い。自分達に能力が無く、成功する可能性が0%と思っているわけではない。だが、成功できるかと言われれば怪しい。

 今の時代に売れているアイドルといえば、〇〇46、〇〇○48などの大人数で構成されたグループがほとんど。ユアユイみたいに二人ユニットとして活動して成功してきている例は、今の時代では非常にレアなケースである。

 そのような時代による要因ともう一つ。私達で作るユニットのメンバー五人全員がは全員が一年生。

 他の四人がアイドル部に入る前に何をしていたかはわからないが、少なくとも鈴音と香織は、中学で初めてアイドル部に入った感じで、小学校の時にダンススクールや歌の教室に通ってはいなかったらしい。

 

 つまり、単純に考えて成功する可能性より失敗する可能性が高いということになる。


 「私達五人で大丈夫なんでしょうか」

 私はこの質問をして返ってくる答えが何か大体予想がついてはいたけれど、先輩に尋ねてみる。

 「大丈夫だよ、なんとかなる」

 私の想定していた回答を結衣先輩は笑顔でする。このような質問をされた場合、否定をしてはやる気を損なわせるだけなので、普通の人ならばここで元気づける行為をする。

 私はそのように元気づけられるのも悪くは無いと思うけれど、それよりも何か別の答えを求めていた。

 

 「出来るかどうかの可能性の話をしているんじゃない。やらなければいけないんだよ」


 優亜先輩は真剣な眼差しで私のことを見ている。今まで世の中を経験している優亜先輩は決して甘くはなかった。結衣先輩も同じなのだろうけれど、きっと、私達を勇気付けるためには、あのように答えればいいと考えてくれたのだろう。

 「社長は今までのあなた達の業績を見てきているの。その結果をふまえての社長の判断だから、あなた達には大いなる可能性があるということなんだ。挑戦してみなきゃ実力ってものはわからないよ」

 優亜先輩は今度は私だけにではなく、他の四人の顔も見ながら言った。

 優亜先輩のセリフはズシリと来たけれど、私の待っていた言葉はもしかしたらこのような感じなのかもしれない。

 「わかりました、全力を尽くしてこれから頑張ります」

 優亜先輩と目を合わせて、しっかりと気持ちの伝わるように言った。人としての礼儀だからというのもあるけれど、気持ちが伝わらなければ、先輩達は私達の事が不安になるだろうと思ったからである。

 「うん、その調子だよ。でね、細かいことは後日もう一度集まってもらって話すことになるんだけど、それまでに決めておいてもらいたいことがあるの」

 結衣先輩がゴソゴソと自分のカバンの中をあさりながら私達に言う。少し難しい顔をしてカバンの中をガサゴソと何かを探していたけれど、やがて「あったあった」と言って中から一枚の紙を取り出した。

 「明後日までに新ユニット結成に向けてこの紙に必要な事項をいくつか書いて欲しいの」

 結衣先輩は柚葉に「よろしくね」と言って、その紙を渡した。明後日までに終わらせなければならないとなると、これに関して一旦五人で集まることが必要な気がするが、五人の予定が合うか心配になる。

 「ごめんね、今日のところは解散にして明後日でいい?私達これからお仕事があって……」

 優亜先輩は腕時計を見て「やばぁ……」と言って荷物を持って結衣先輩と部屋を出て行った。

 「本日はありがとうございました。頑張ってください」

 と私達は言ったけれど、先輩達はその言葉にいちいち返している暇なんて無いのだろう。手を上に挙げて答える先輩達は事務所の廊下をスタスタと走って行ってしまった。

 



 

 「私達のユニットかあ……、結構楽しみかも!」

 私達、桜咲組は初めてのことに相当なプレッシャーを感じているが、柚葉は私達とは違ってとても楽しそうである。

 まあ、もし私が里見学園に居たらその気持ちがわからないことは無いと思う。自分達の先輩が、ユニットを組んでいて日本のトップアイドルならば、自分もいずれかはそうなりたいと憧れるに決まっている。

 一方の私達は、(勝手な私の推測だけど)先輩達が部活に来ることがほとんど無くなって、これからに対する不安な気持ちが心の中にあった。それが、今回のユニットに関して不安な気持ちにさせてしまう原因になっているのだろう。

 「ちょっと私は不安かも……」

 ここの五人でユニットを作れることへの嬉しさや楽しみという気持ちもあるが、どうしてもこれからに対する不安な気持ちの方が大きい。

 何があろうと全力で頑張っていこうとは思うけれど、私の豆腐メンタルでどこまで耐えることができるか気になる。

 「東田、どうしてお前がここに居るんだ?」

 その声に顔を上げてみると、数メートルのところに学ランを片手に持ってワイシャツ姿の笹岡が立っていた。

 私は笹岡がここ、《ミュージックスターズ》の事務所に居ることが純粋に気になる。笹岡が何かの仕事をやっているなんて、本人からも噂でも聞いたことが無いからここに居ることは、私にとっては完全に謎である。

 私の後ろではコソコソと保真麗達が話しているが、それは一旦スルーをして尋ねてみることにした。

 「それは、こっちのセリフだよ、どうしてあなたがここに居るのよ?まぁ別に居ても良いけどさ……」

 あれから笹岡をつい意識をしてしまって、普段通りに聞くことが出来なくてツンデレっぽい口調になってしまった。

 「ああ、そうか……。にしても、お前なんか表情が暗いな」

 私の口調のことには特に気になってはいないらしく、笹岡はツンデレ口調には反応していなかったが、私の表情が暗いことを指摘した。

 今、鏡を見ているわけでは無いから自分の顔がどんな表情をしているかなんてんからないけれど、今の自分の心境だけでどんなに暗い顔をしているかわかる。

 「あなたには関係ないでしょ……」

 心配されたことへの少しの嬉しさと、関係無いのに何故関わってくるのかという少しの腹立たしさという二つの気持ちが混じりあって、気持ちがモヤモヤとしてスッキリとしない。

 私の言葉を聞いて、普段冷静な笹岡は珍しくムッとした表情をしている。こんな表情をしている笹岡なんて珍しいなと思いながら笹岡を見ていると、笹岡は「ま。関係ないよな」と言い言葉を続ける。

 「ところでお前、今から時間あるか?」

 突然何か言い出したかと思えば、何の用なのだろう。ユニット関係のことで頭の中はパンクしそうなのに、こんな時に限ってどうしてそんな事を聞いてくるのだろうか。

 「んー、まぁあるけどさ……」

 「俺と街ん中歩かね?」

 「はー、何言ってんのよ⁉︎」

 唐突な提案に私は素で反応してしまったけれど、笹岡は表情を変えない。こんなことを、みんなの前で言われて少し恥ずかしい。

 「デートだよ、デート」

 「もうコッソリと付き合っているんじゃないかな?」

 という言葉が聞こえてくるけれど、聞こえてきて余計に恥ずかしく感じる。

 みんなの前だし本当は恥ずかしいから断りたいけれど、笹岡に誘われることなんて滅多に無いからついて行ってあげてもいいかという気持ちになる。ただ、笹岡と一緒に歩いてデート気分を味わいたいとかいう気持ちでは無いことはしっかり伝えなければ……。

 「わ、私は良いけどさ……。皆ごめんね、先に帰っていてもらえる?」

 私は四人の方を振り向いて頭を下げて謝る。保真麗がニヤッとして「うんうん、お二人の時間だもんね。じゃ、私達は帰るね」という意味深そうな言葉を告げて、残り三人を連れて事務所の出口から出ていった。

 「行くんでしょ?いこーよ」

 私は四人が見ていない事を確認して笹岡の横に並ぶ。笹岡は「ああ、行くか」と言って歩き出した。

 歩き出した笹岡の隣に並ぶと、笹岡の方が男子だし歩くスピードが少し速く、私は少し速めに歩がなければいけなかったけれど、それでも良いと思えていた。





 嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混じり合いながら、街中を笹岡について行って着いた場所は、休日にある撮影帰りに寄るLoFt近くのスタバだった。

 お昼の時間だったけれど店は空いていて運良く待たずに席へと案内された。

 「誘ったのは俺だし、俺の奢りだ」

 笹岡は席に座ると涼しい笑顔を浮かべて言う。誘ったのが笹岡とは言えど、付き合っているわけでも無いから申し訳ない気持ちになる。

 私だってお金を持ってきてないわけでは無いし、スタバの商品は、食堂のコーヒーと比べると本当に高価に感じるので奢ってもらうのはちょっとなぁ……。

 「いいよ別に……個別で払お?」

 「気にすんな、どうせ今日の仕事でまた金は入ったんだ」

 奢りの件は断ろうとしたけれど、笹岡が本当に奢って良いと言うのなら遠慮はしなくていいだろう。

 それにしても、今のセリフで気になる点が一つだけある。

 「今日の仕事って何のこと……?笹岡って仕事とかしていたっけ?」

 さっき、笹岡は確かに『今日の仕事でまた……』と言っていたはずなのだが、仕事って何のことなんだろう……。

 私が尋ねると笹岡は一瞬ハッとしたけれど、またいつも通りの涼しげな顔に戻って話し始めた。

 「もう言ってしまったなら仕方ないか……。なぜ俺が《ミュージックスターズ》の事務所に居たのか想像がつかねーか?」

 少し前の自分の記憶を辿って、なぜ笹岡が事務所内に居たかを考える。

 そして、香織達と《ミュージックスターズ》に行く前に笹岡に会った時の事も思い出す。『俺もお前に構っている暇なんて無い』そう言って笹岡は私達が行こうとしていた方向を先に歩いて行った。

 この一見関係なさそうな事を二つのことを頭の中で並べてみる。そして考えてみた結果、少し信じ難いようなことが最終結果として頭の中に浮かんだ。

 「もしかして笹岡って《ミュージックスターズ》の関係者か何かなの⁉︎」

 私が驚きで思わず大きな声が出してしまったため、周りの席のお客さんが私達の方の方をチラッと見る。そのことに気づいた笹岡に、顔をしかめられて「おい、静かにしろ」と小声で注意された。

 笹岡は、下にズレた眼鏡を上げてから声のボリュームを少し落として話し始めた。

 「あぁそうだ。今は週に一回だけ仕事をするために通っている。仕事と言っても新曲の作曲、ラジオ番組に出演……他にもあるけれど簡単な例として挙げるならこれくらいか」

 笹岡は特に表情を変える事もなく私だけに聞こえる声で話した。一方の私はと言うと驚きで声が出ずに、口をパクパクさせるしかできなかった。

 「そんなに驚く事か……?」

 「お、驚くことだよ……」

 今度は大きな声を出さないように注意しながら言うけれども、心の中の興奮は全く抑えられない。頭の中は少しのパニックを起こしていて、未だに状況を完全に呑み込むことは難しい。

 「お前失礼だな。……まぁ無理もないか」

 笹岡が芸能界の関係者であることは、完全に予測外だったからどうしても受け入れ難い。

 普段、冷静(冷徹かも…?)な人間が、万人に向けて笑顔を作るために曲を作ったり、ラジオ番組に出演して楽しそうに話すなんて考えられ無かった。

 笹岡は頼んだコーヒーを飲んでから、突然のことに混乱中の私に言葉を続ける。

 「ま、前置きはどうでも良くて俺がお前をここに呼び出した理由を話そう」

 今の笹岡の言葉によって思い出したが、私はデートをしに来ているわけでは無いのだ。笹岡が事務所の関係者であることで頭がいっぱいではあるが、なぜ私を呼び出したのか理由は気になる。

 もしこれで告白とかなら私としては嬉しいことだけれど、呼び出した本人である笹岡は特に恥ずかしがる仕草を見せていない。

 この時点で察してはしまったけれど、どうしてもまだその可能性を信じてみたかった。

 

 

 あれ………?私は何故、あり得ないはずのその可能性を最後まで信じているんだ……?別に好きなわけじゃないのに、それでも何かワンチャンあれば良いなと心の中で思ってしまっている。



 「実はだな、ユアユイの二人と社長に頼まれたことがあってな……。新ユニット結成にあたって、リーダーになりそうである《東田 楓》に、オファーした原因、新ユニットのこれからについてを話してきてほしいと言われたんだ」

 さっきまでの期待するだけ無駄な願い事を、すっかりと忘れさせてしまうくらいに驚かされた。

 新ユニットのリーダーは、今まで実績のある香織か保真麗が指名されるものかと思っていたから、自分が候補に挙がっていることは想像出来なかった。社長や先輩達に新ユニットのリーダー候補に、私の名が挙がっていることは嬉しい。

 「な、なんで私なの……?香織や保真麗の方が適任だと思うんだけどな……」

 笹岡の顔を見ながら私が独り言のように言うと、笹岡は溜め息をついて「俺に聞くな、社長かユアユイの二人に聞いとけよ……」と言い返されてしまう。

 ごもっともな事を言われてしまい、「そうだよね……ハハッ」と悪い空気にしないために、適当に愛想笑いをするしか出来なかった。

 「ま、少しは話してやるよ。お前らが《ミュージックスターズ》に招待がかかったのは、この前のライブイベントで社長が心を動かされたからなんだ」

 そこから、私達が招待された理由、私がリーダー候補に挙がった理由が語られた。


 

 《ミュージックスターズ》の社長はあのイベントの主催者側で、イベントに香織と保真麗を招待をした。二人がCDデビューした時にそのCDを聴いて天才的な歌声に感動したから。

 それで招待をしたら私と鈴音も来た。私達が香織や保真麗に全く引けを取らなかったらしく、私と鈴音も二人と一緒に《ミュージックスターズ》に招待された。

 柚葉の方は今までのオーディションでの実績とユアユイの二人が認める実力者であったために、社長が私達四人と共に招待した。

 また、私がリーダー候補に挙がった理由としては先輩達が合宿の時の私を見て、社長に提案したんだとか。社長は新ユニットのリーダーは誰でも良かったので、先輩達二人の意見を推す形になった。


 笹岡の長い説明をまとめるとこのような感じである。

 「それで、今の現状に至ると……」

 「あぁ。頑張れよ新ユニットのリーダー」

 「まだ決まったわけじゃ無いけどね……」

 笹岡の言葉に私がそのように返すと、笹岡にとっては予想外だったのか不思議そうな顔をした。私は普通に返したつもりだったけれど、笹岡からしたら何か予想外だったのだろうか。

 「笹岡……?どうしたの?」

 「いや……、お前がリーダーになるって思っていたから、なんか……意外っていうか……」

 どうやら笹岡は私がリーダーになるものだと思って話していたらしいけれど、私は自分にリーダー役を務めることが難しいと判断しているのでもう少しゆっくりと考えたかった。だから今回は一旦考えることにして、五人で集まった時にゆっくりと話し合おうと思っている。

 「まぁいい、あと、ユアユイの二人がお前らに配らなければならないプリントを一部持って行っていなかったらしいから、そのプリントを渡しておくよ」

 鞄から手持ちの小さい鞄から、人数分×二枚のプリントを私にくれた。そのプリントには《ミュージックスターズ》についての説明と、これからのスケジュールを載せたプリントだった。

 どちらも重要な感じであるため、もしこのプリントを貰い忘れていたとなるとなんと恐ろしいことだろう。

 「あ、ありがとう」

 私がお礼を言うと笹岡は「別にいいよ」と言って、コップに少し残っていたコーヒー飲み干した。

 「じゃ、これで用は以上だ。お前の準備が出来たら行くぞ」

 「あ、わ、ちょっと待って」

 笹岡を待たせては悪いと思った私は慌ててコーヒーを口に流し込む。「別に焦んなくてもいいけど……?」と笹岡は言ってくれてはいるが、お言葉に甘えて奢って貰えるのだから急がないといけない気持ちに駆られる。

 急いでコーヒー流し込んで席を立ち、コーヒーのカップを返却口に返しに行く。

 「悪いな急がしてしまって」

 「いや、そんなこと無いよ」

 「じゃ、会計は個別で良かったんだっけ?」

 笹岡は涼しい笑顔を浮かべて唐突に私に言ってきたので、つい「うん」と返してしまいそうになる。私だってこれが冗談だとはわかっているけれど、

 「はぁ〜。なに言ってんの?お、ご、り、……だよね?」

 と、かわいこぶって笹岡の顔を見て言う。

 「わかってるよ。にしても、お前のやつちょっと高いんじゃねーのか?」

 「そんなことないよ〜」

 笹岡はレシートを見ながら薄笑いをしている。普段の生活ではあまり見ることの出来ない一面で、ギャップが少しだけ大きくて、思わず心がキュンとなってしまう。


 

 それと同時に私は、笹岡とこのように楽しく日常を送れたらな……、付き合えたら楽しいだろうな、と心のどこかで思ってしまっていた。

思ったよりも新ユニット結成の回が長くなってしまって三話分に渡ってしまうことになってしまったー。


 内容のおかしなところや誤字脱字などがありましたら報告よろしくお願いします

 Twitterのキスよりルミナスもよろしく。

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