15話 友達への想い(楓)
15話 友達への想い(楓)
昨日久しぶりに夏の炎天下の中を長く遊んでいたためか、日焼けで皮が剥けてヒリヒリする。気がつけば肌が前より健康的な色になってしまってアイドルとして恥ずかしい。だが、私はそんな気持ちを抱えながらでも《HOT beetle》の公式発表の会見に出ないといけない。
桐山さんは日焼けした私を見て「健康的でいいですね。子供は元気が一番だからね」とフォローをしてくれたけれど、田崎先生は「アイドルなのに日焼けして大丈夫なの?」と心配していた。元アイドルだけあって、そういうところは結構気にかけているらしい。
「結構緊張するんだよなぁー、すごい会見だとわかっていても」
最新ブランドの《HOT beetle》は、マスコミから注目されているらしく結構ワイドショーでも話題が頻繁にあがる程だ。マスコミ・専門家達は、今の日本のトップアイドルや若手の急成長アイドルの中から誰が《HOT beetle》の専属アイドルになるか候補をたくさん挙げているが、勿論その中に私が入っている訳では無い。本州の左側にポツンとある私のいる九州は《ユアユイ》の二人以外誰も注目されていない。(と言うより、《ユアユイ》の二人が注目浴びすぎて九州勢は残念なことに)
まさかの展開にメディアとかは驚き、絶望などを隠しきれないかもしれないけれどそれが現実なんだ。すまん、マスメディアの皆さん……。
「緊張する事なんてないよ、私のブランドなんてまだまだ無名だから」
桐山さんはキッチリとスーツを着こなしていて、律儀な真面目社員とかの役が板につきそうな見た目をしている。一方の私は、こんなに暑い中なのに桜咲学園の制服を着ている。桐山さんは「そんな無理しなくていいよ、熱中症になるから」と止めてくれたのだけれど、田崎先生が「正式な場だから少しだけ我慢してね?」と言っていたので仕方無くブレザーを着ることに。唯一の救いはホテルの館内がとても涼しくブレザーを着ていても丁度良いくらいの温度に調節されていたことだ。最初、半袖で入った時は「なんだ、この寒さは?」と思うくらいに感じたくらい冷房が効きすぎていた。
桐山さんは自分のブランドがどれほど注目されているか知らないのかもしれないけれど、あなたとても注目されているんですよ⁉︎
会見をする場所は街中にある《オールド・オータニ》というホテルの大きなホールだ。理由は桐山さんと私にとって、このホテルは会見をできる場所の中ではとても近いところにあるかららしい。ただ、こんな街中の大きな所で記者会見するのは人が集まるからでしょ?
取り敢えず桐山さんの気遣いに感謝しつつも、「意外と自分の都合もガッツリ入れてくるところがあるんだ……」と思ったりもしている。
「じゃ、そろそろ時間だし会見へと向かうよ東田さん」
「は、はいっ!わかりました」
桐山さんはスタスタと歩いて行くので私はそれに早足でついていかないと置いてかれて行ってしまう。会見をする部屋に近づくに連れて、大人の人の声やカメラらしき音の調整音が強くなっている気がする。しかも、数は多分異常な程に多いと推測できる。
数歩前を行く桐山さんが会見の部屋に入ると一気にパシャパシャとカメラのシャッター音がする。大群のコウモリなどが飛び立つような音がうるさいくらいに、私へと響いてくる。私ももう入るんだ……。
私が中に入った瞬間、より一層カメラのシャッター音は大きくなった。何故私にそんなに注目するんだ……?
「わ、東田さんが帰ってきた!」
「東田さん?どうしたの⁉︎」
会見が終わって遅れて部活に行くと、香織とかの教えてるメンバー以外のほぼ全員(十人くらい?)にワッと周りを囲まれた。
「凄いじゃん!東田さん」
「《HOT beetle》の専属アイドルになったって本当?」
いろんなことを聞かれて自分が人気者になったみたいで嬉しいけれど、少しだけ面倒くさかった。
「じゃ、私は着替えてくるんで……」
と言って、私はなんとか輪の中から逃げ出した。
更衣室に入り私は部活のジャージに着替えようとした。着替えようと制服を脱いでジャージを着ようとした時に私はこれに対し急に思いが溢れ出た。
部活の時にたまに着ていた(ほとんど体操着で部活をしている)、オーディションに出る時にも着ていた、ガチ練習していた時にも着ていたこのジャージ。これを持ってたった四ヶ月しか経っていないのに、時が早く感じるのと同時に、今はこのジャージに感謝の気持ちを感じている。これを着て練習すれば気が引き締まり、体操着の時より圧倒的に良い演技ができる。
悔しい時はこのジャージの襟元で涙を拭いて、暑い時は襟元で汗を拭いて……。そんなことを共にしてきたこのジャージだからこそ、オーディション本番の時は着ているだけで安心感をもらった。
だけど、もう本番では確実に着なくなる。
ブランドのドレスの方がこの使ってきたジャージより圧倒的に美しいし、派手で豪華。それに私は桐山さんの思いを《HOT beetle》のドレスを着ることにより観客に伝えなければいけない。だから私は衣装に助けてもらう番ではなく、衣装を助ける・光り輝かせる番なんだ。そう思うと少し寂しくもあった。
「ありがと、私のジャージ。これからも練習では使わせてもらうよ……」
私は自分のジャージをギュッと抱きしめた。これから《HOT beetle》を引っ張って行く者として、決して誰にもこんなところは見せられない。
「楓?遅いよ?」
ジャージに思いを馳せていると、ガチャリと音を立てて更衣室のドアが開いた。
この声の主は香織だ。
「うわぁーーーっ⁉︎い、今着替えてる途中なんだけど!」
私は急いでジャージの上をスポッと被って着た。その私の様子を香織はジト目で見ていたけれど、私が着替え終わって笑顔を見せると香織はフフッと微笑んだ。香織は、私の着替えている前の横長いイスまで歩み寄ってきてそこに腰掛ける。そしてどうしたのかと思った私と目を合わせると彼女は、何も言うことなくただ上目遣いをしながら私と目を合わせていた。なんだか気分的にムズムズと歯痒い場面があるので私は香織の隣に座った。
「……どうした?」
「私さ、ハッキリ言って嬉しいんだ。楓が《HOT beetle》の専属アイドルになったこと」
「ありがと……」
「私さ、たまに陰から見てたんだよ?楓がガチ練習してるとこ。保真麗からも話は聞いていたし、楓にどうか良いことがありますようにって祈っていたよ?」
「そ、そうなの……?」
「そうだよー、だって楓は私の憧れだからさ」
突然言われたことに何か裏があるのかと思ったけれど褒めてもらえて嬉しかった。今の香織が言ったことは普通の人が言うと、御膳立てみたいな感じで悪いイメージがするけれど、香織が言うと全て本音に聞こえてくるから聞いていて気分が良い。それは私が、本当の感情を包み込んで本当の事を隠して言ってくる人より、何事も隠さずに言ってくれる方が私は人間として好きだからかな……?
「それよりさ、楓……」
突然に香織が呟いた、と同時に香織が私の左手に香織の右手を絡めて握ってきた。香織は顔を紅くして目線の高さが一緒のはずなのに敢えて上目遣いを使ってくる。
「どーしたの?」
こう言う事を行動をとる時、大抵香織は何かの要求があるときだ。
この前も昼休みに香織と二人で話している時に、私がパンを買ってムシャムシャと食べながら話していると、パンを指差して今と同じ要求のサインをしてきた。香織が可愛いからどうしても拒否ることが出来なかったのが悔しいけれど、それはそれでいいかとも思う。香織からの要求サインがどういうものかは解っていたけれど、今回ばかりは私でもわからない。
「………楓ってさ、今度のペアオーディション誰と出てるか決まっているの?」
「え、あー。あれか………」
来週の夏休みが終わる二日前にある大きなイベント。学生アイドルの中での夏の甲子園と呼ばれるくらい有名な大会で、《ペア部門・トーナメント》の開催なのだけれどアツく盛り上がるイベントだ。
急にこの話を持ちかけてきたって事は、香織はペアを組む人がいなくて困っているはずなのだと私は予測する。
「一緒に出たい……楓と」
「ごめん、そのオーディション私は保真麗と出る約束していて……」
断ることは心苦しいし残念なのだけれど、前々から保真麗と約束をしていたので今になって裏切ることなんて出来ない。保真麗とは同室だし仲というのは大事だから今回は仕方ないと思うしかない。
私に断られてのに屈託のない笑みを浮かべていたけれど目は少し潤んでいた。
「ごめんね、別の人を探してみるね。保真麗と一緒に頑張ってね」
香織は、そう私に告げて立ち上がり寂しそうな顔をして早足で更衣室から出て行った。その時は、私はただその後ろ姿を見つめるしかできなかった。
あれから私は香織と話す機会は結構減った。普段なら寮の廊下とかですれ違ったらそこでつい話してしまうくらい話せていたのに、今ではあっても気まずくなってお互い目も合わせずに素通りしていくことしかできなかった。
今では保真麗と一番話すし、一番気が合うから保真麗とペアを組めば誰の時よりも上手く息の合う気がしているからペアを組んだ。ただ、私があの時にどうやって返していればこんな空気になら無かったのか、ということについて悩んでいる。
今日も香織とのことを悩みながら部活していた。
ダンスレッスンの時に左へのターンをしようとした時に、上手く回れずに左足を捻ってバランスを完全に崩してしまった。倒れる、と思ったけれど桜田先輩がすかさず、倒れそうだった私を抱いて支えてくれた。
「大丈夫?怪我とかない?楓ちゃん」
「すみません、レッスンに集中出来ていなくてつい……」
ここ数日、香織とのことを考えていてレッスンに集中できていなくて、高い確率で毎日怪我をしてしまう。きっとそれは桜田先輩はわかっていだはずだ。だから今もすぐに倒れそうだった私をすぐに支えて助けてくれた。
私は桜田先輩に丁寧に頭を下げて謝りながら「すみません……」と言って罪の気持ちを全面的に表したのだけれど、桜田先輩はご不満なのかイマイチ冴えない表情だった。
「ここ数日さ、楓ちゃんずっと何か考えてるよね?練習に集中出来てない気がするよ?」
「え、そ、そーですか?私は別に……」
「悩み事があるんでしょ?」
その桜田先輩の『悩み事』という言葉にドキリとして、チラッと近くにいた香織の方を見てしまう。すると香織はさっきから私の方を見ていたのか、私が振り向くと自然と目が合ってしまった。目が合うことすら気まづい気持ちになって私の方から目を逸らしてしまった。
今は桜田先輩と話しているんだった!
急いで桜田先輩の方を向くと、桜田先輩は私と香織を交互に見つめて「隠さなくてもいいのにぃ〜」とニヤけ始めた。
バレてしまったのは仕方がないから桜田先輩には打ち明けるしか無いようだ。
「桜田先輩、ちょっと相談事が……」
「廊下で話そっか」
桜田先輩が優しさで温もりのある手で、私の手を握って優しく微笑んだ。
もうすぐで九月になるとは言っても、八月でも夏なので廊下は地獄のように蒸し暑い。廊下の大きな窓からは真夏の太陽の光が差し込んで来て眩しいし日光自体も暑い。
「で、相談事とはなぁに?」
桜田先輩は身長が低いため基本見上げて話すことが多いけれど、俯いている私を抱きそうなくらい近くで覗き込むようにして見てきた。
「実は私、今度のペアオーディションを香織に誘われて……。だけど、私は保真麗と前から約束していたから断ったんですけど、それから香織と気まづい感じになって……。どうしたらいいのかなって」
こんな些細なことで香織を手離したくなかった。私はもっと彼女と一緒に、部活も日常生活もしていたかったのに私のせいでもう離れてしまうんだ。せっかく出来た友達をこんな事で手放すことになるなんて絶対に嫌だ。
「よく言えたね、本当の事。私、すっごく嬉しいよ。楓ちゃんが本当のことを話してくれて。一人で今日まで考えて来たんだよ?きっと辛かったよね?でももう私がいるからね、私にあなたの辛い気持ちを全部吐き出してみて」
桜田先輩は私の頭を優しくそっと撫でてくれた。母性愛の強い桜田先輩の優しい言葉に、香織が私から離れていってしまうのではないかという怖さ・辛さが溢れ出てきたので、つい目蓋の裏が熱くなってしまう。それから我慢出来ずに一滴の涙が私の左目から零れる。それを機に両目からも涙が溢れてくる。
こんな姿を他の人に見られるわけにはいかない。どんな時でも私は強がってなきゃいけない、メンタルの弱い自分だからこそ絶対に他人には心苦しい時の涙は見せれない。
この前、保真麗に泣いているのが見つかった時も私は近くにあった小説を持って咄嗟に思い付いた嘘で誤魔化そうとした。あの時は完全にバレていたのかもしれないけれど、もう先輩までには迷惑を掛けれない。
「すみません、先輩!」
「待って!」
走り出しそうとした私の右手を桜田先輩がギュッと掴んだ。桜田先輩は明らかに心配そうな顔で私の顔を見つめてくる。そしてそっと私の左の頬に、私の右手を掴んで無い方の手を当てて「あなた、泣いてしまっているよ」と言って私の涙を手で拭ってくれた。
「メンタルの弱いあなただからこそ、逃げちゃダメなんだよ?ほら座ろう」
もう逃げられないんだ……。私は廊下の床に座る桜田先輩の横に大人しく座った。
「あなたはどうしてそんなに泣いているの?」
「今まで辛かった……。せっかく出来た友達が私から離れていってしまいそうで怖いくて辛いんです……」
私は人が離れていく怖さ・辛さを知っているからこそ、せっかく友達になれた人達を手放してしまうのでは無いかという不安に駆られてしまう。
「なるほど……。そんなに泣いてちゃ他の人に見られて心配かけちゃう。私の胸の中でたっくさん泣いていいよ」
桜田先輩は泣きじゃくる私をそっと自身の身体に引き寄せてくれた。
この感じ……。
一瞬だけ桜田先輩と小学校の時のとある担任が頭の中で重なった。
※※※※※
小学校の頃。クラスの女王様みたいな女子との意見がぶつかり合ったことによって、私はイジメを受け始めた。
最初の方は護ろうとしてくれた人もいたけれど、皆は自分自身が可愛いが故に虐められたくなくて徐々に私から離れていった。前まで仲間だったのに急に虐める側になっていく元友達を見るたびに、私は人が離れていく怖さ・辛さを味わってきた。
そこで誰に頼れずに、毎日泣くことを我慢せずに号泣しながら担任の先生の助けを待っていた。
その時の担任の先生は、
「そんなに泣いてちゃ他の人に見られて心配かけちゃう。先生に抱きついて泣いていいよ」
と言ってくれていた。
私は先生達や親からの厚い加護を受けて虐められる事も減っていった。私が大人に甘えすぎていたため、私のメンタルは相当弱いものへと仕上がっていった。前までは耐えることのできていたことでも、号泣して先生から優しくされるのを待つまでに弱いメンタルを持っていた。
ただ、そんな生活を続けていたある日のこと。担任の先生が突然に学校を辞めてしまった。
原因は私があまりにも先生に頼り過ぎたせいで先生が不安になったのと、私へ時間を費やしすぎて教師の仕事もあったせいで過労になって辞めたくなったのだと。その時は詳しい理由がわからなかったけれど、親がひたすらに元担任の先生の家族に謝っていたことだけは小さい頃の私も覚えている。
「うちの子が迷惑を掛けてしまい本当に申し訳ありません」
その一言が今でも私の頭から離れない。
そしてその時から私は誓った。
メンタルはどれ程弱くてもいいから、もう誰にも心配をかけさせない。そのためには自分の弱っているところ(主に泣いているところ)などは絶対に他人に見せない。
※※※※※
あの時は一体どれくらい泣いたんだろう……。私は床に寝転って座っている桜田先輩のお腹辺りに顔を埋めてずっとや泣いていた。私が泣き止むまでは誰も来なかったと言っていたので安心した。
それからも桜田先輩と話し合って私は香織に今の気持ちを全て伝えることを決意した。
部室の鍵を返していたら遅くなって更衣室で私が着替えようとしていた頃には、もうみんな着替え終わって出て行くところだった。
「私、残っていい……?」
香織が更衣室の椅子にちょこんと座って残っている。どうして残っているんだろうと思っていると、香織が顔を赤くしてさっきより大きな声で続ける。
「残っていい……⁉︎」
「いいけど……」
香織は俯いて何も言わない。私はサッサと着替えて制服に着替える。
本当だとこんな状況じゃいけないんだとはわかっているけれど、いざ香織を目の前にするとどうしても動けなくなる。私がどうしようもできずにただ香織の方を見つめていると、香織の方から話しかけてきた。
「なんかごめんね?楓さ、私のことを考えてくれていたんだよね……」
「あ、いや…………私の方こそごめん。あれ以来香織にうまく接することが出来なくて……。私、本当はあなたに離れて欲しくないの」
その言葉に反応した香織が私の方を少し驚いた顔をして見る。その後に「そう…」と笑みを浮かべて立ち上がり、私の方へと一歩ずつゆっくりと近づいてくる。
私の近くに来ると私の手を両方恋人繋ぎする。今の香織の顔がいつもの何かを要求する顔だった。「復縁したいです」とか言ってくれないかなと期待していると更に香織は顔を近づけてくる。
「わっ、わっ⁉︎ちょ、な……んっ……」
私の唇にそっと香織の柔らかい唇が触れる。私は香織の突然の行動に、一瞬何が起きたのかの状況整理が出来ずにその場で硬直してしまった。
「楓……?」
優しく微笑む香織を見てやっと今起きたことの状況整理をすることが出来た。
香織はさっき、私に……キスを……?
「キ、キスッ……したのはどーゆーこと……?」
「誓いのキス。私はあなたから離れないよ、っていうキス。決してイヤらしいためのキスでは無いから」
何も無かったかのように普通の顔して、えげつないこと言ってくる香織に驚きを隠せなかった。
「ちょっと⁉︎ど、どーゆー?」
「だから、離れないって言ってるじゃん?私はあなたから離れないよ」
「香織……」
そうか、きっとこれが本当の友達なんだ。私が昔、失くしてしまった忘れ物は必ず戻ってくるんだね……。
香織が私の手から手を解いて私に抱きついてきた。香織の少し小柄な身体から感じる、その温かい気持ちの温もりはこれからも私は忘れられないはずだ。
私も香織を抱いてしばらく二人で何も言わずにその場で抱き合ったままだった。
結局、香織は里見学園の柚葉とペアを組むことに決めたらしい。
私と保真麗のライブを終えて、私は控え室の方へと戻ろうとしていた。保真麗は田崎先生のところに行くらしく先に戻っていてとのこと。廊下を歩いていると二人組の女子がこちらへと向かってきていた。
「二人とも、お疲れー!」
「次は香織と柚葉か……二人とも頑張って!」
「ありがと、楓」
少し前までこんなやりとりすらもうまく出来なかった自分が恥ずかしくなるくらいなんとも無かった。あの時、香織は誓ってくれた。だからもう大丈夫だ、私は一人になんてならない。
完全に通りすぎていったのを確認して、聞こえないくらい小さな声でそっと「頑張ってね、香織」と言った。
「サァ、私も戻るかぁー」
「ちょっとお姉さん!」
保真麗も帰っているだろうし戻ろうと思ったその時、後ろから声をかけられた。声的には女子小学生かな……?と振り返るとそこには小学四年生くらいの女子が息を切らして立っていた。顔つきはどこか香織に似ていて髪型までも一緒だった。
それにしてもこの子、ここまで息が切れているということは相当全速力で走ってきたのだと思う。
「どうしたの?」
その女の子は答えることなく息を整えていた。息が整うと私の方を見上げた。その子はどこか心配そうな不安そうな顔で私を見ていた。
「お姉ちゃんについて聞きたいことがあるんです!」
「お姉ちゃん……?」
私の身の回りで妹持ちとか居たっけと思いながらもその子の話を聞いてあげた。その子は少し戸惑っていたけれど覚悟を決めたのか、やけに真剣そうな表情で話し始めた。
「はい……。私は上林 香織の妹の、上林 琴音です。私、香織お姉ちゃんについて聞きたいことがあるんです!」
「かっ、香織の妹ーーーー⁉︎」
百合がメインの作品ではありませんが、そういうのもありだと思います
ちょっと会話がメインになりがちだったけれど許して
Twitterのキスよりルミナスもよろしく




