12話 最後は笑顔で(香織)
12話 最後は笑顔で (香織)
自然に囲まれているせいか街中から離れたせいか知らないけれど、朝は夏だというのにいつもより少しだけ涼しい気がする。島の新鮮な空気をたっぷりと吸って部活へのやる気を出す。
「今日は午前中と夜に練習。昼はこの島のあの大きな山に登りに行くよ」
松崎先輩が歩きながら大きな山を指差して、優しい笑顔で鬼のような練習メニューを発表する。あの大きな山はパッと見る限り、学校の屋上から見える山より高そうで山の形が急な気がする。
私以外のみんなは今日の練習メニューが当たり前であるかのように受け止めているように見えるけれど、私は全くそうは思わない。普段の部活では朝からこんなに飛ばさないから私にはあまり当然のように受け入れることは容易では無かったけれど、これも現実なので今の私には素直に受け止めるしか無いようだ。
「そういえばだけど、明日は例年通りステージ披露だから。今日の最高の状態にできるように」
合宿は昨日からの二泊三日。今日が二日目で明日が最終日。毎年里見学園の合宿ではこの島の人達にステージを披露するようになっていて、今年から桜咲と合同になったからと言って変えるわけでは無いらしい。今日の午前中の練習と夜の練習はそれに向けての練習ということになる。失敗は絶対に許されない為、今日で完璧にしないといけない。
旅館から歩いてすぐのところに体育館はあった。結構な広さあって学校の体育館より大きい気がしたくらい大きく感じられた。
「着替えたら練習を早速するけど、一年生のチームにもリーダーを作っておいてね」
最終日のステージは個人では無く一年生と二年生の二つに分かれてするらしく、一年生六人の息を合わせなければいけない。その為、毎年少人数でも必ずリーダーを作りリーダーを軸にして練習していくのだという。責任の重いリーダーの仕事は誰もやりたがらないから、いつまで経っても決まらず、最終的にリーダーにふさわしい人物についての話し合いが始まった。
「じゃ、リーダーは楓よろしく!」
そんな大事なチームのリーダーは、判断力と統率力のある楓に決まった。最初の方は楓自身はそのことに反対していたけれど五人で頼みんこんだ結果、リーダーを引き受けてくれた。
体操服に着替え終わってから明日への練習の下準備が始まった。全員で円になって床に座って話し合う。課題曲や、振り付けなどを全部自分達で一から決めなければいけなかった。時間が相当かかると思ったけれど楓の統率力と、みんなの心が一つになったお陰で明日までの基盤は完成した。曲はアイドル界では有名どころの《try⭐︎again》に決まった。振り付けは原作のままやることになったので全員ができると言うことですぐに採用された。
「残りは振り付けのダンスね。ダンスに関してはこの中でダンスが一番上手い人をダンス担当リーダーに採用すべきだと思うの。誰が一番上手い?」
楓が私たち五人の顔をそれぞれ見て言った。私は和泉や莉音の能力を詳しくは知らないけれど、私には確信して一つだけ言えることがある。
「柚葉がダンス担当のリーダーに向いていると思う」
「え?」
一気にシンとなり、その場の空気が一瞬止まったかのように思えた。柚葉は目を開いて私の方を見ているし、他の四人も私の方をじっと見ていた。私だって数時間しか柚葉のダンスを観ていないから詳しく言えることはあまりない。だけど短い時間であったからこそ分かったこともあった。それは、柚葉のダンスが私達三人(楓、保真麗、私)よりも遥かに人を引きつける力が高いこと。観て瞬時にそれがわかったからその力は本当だと私は思う。だから柚葉を推薦した。
「わ、私には……」
「いいんじゃない?柚葉のダンスは絶対的なものだって私達がよく分かってるし、推薦されたにはそれなりの理由があるはずだと思うよ」
戸惑う柚葉に莉音が柚葉の膝の上に手を重ねて言う。きっと和泉も同じ気持ちだと思う。楓、保真麗がその気で無くても今なら私が理由を言えばなんとかなると思う。
「私は昨日柚葉のダンスを間近で観させてもらったんだけど、その時にビビッと感じた。柚葉はダンスの天才だなって」
「やっ!恥ずいんだよ、そういうこと」
「じゃ、柚葉お願いできる?」
「あ、うん……。じゃ、私も頑張る」
乗り気では無さそうだったけれど、不平不満などを言うことなくすんなりとダンス担当のリーダーを引き受けてくれた事だけでも素晴らしいと思った。
いざ練習が始まるとあまり乗り気では無さそうだった柚葉にもエンジンが入って、「そこはもうワンテンポ動かないと」「左足を半歩前かな?」など、的確なアドバイスを私達五人にしてくれた。うまく合わずにバラバラだった六人が楓と柚葉の二人によって、午前中の練習中でもう徐々に仕上がってきた。
「一年生、結構早くに仕上がってるねー。素晴らしいチーム力!」
「ありがとうございます!」
ユア(優亜)先輩が私達のところまで来て私達六人のことを褒めてくれた。(多分、楓と柚葉が居なければ褒められていることなど無かっただろう)優亜先輩は褒めた後に「そう言えば……」と続ける。
「山登りは六人、六人、で分かれて登るんだけどチーム分けが必要で、一年生同士で三人、三人に分かれてくれる?」
「わかりました!」
優亜先輩は「よろしくね!」と言ってスタスタと二年生の輪の方へと戻って行った。さて、今回は保真麗か楓となることが出来るのか?それともなれないのか……。
「じゃ、私達の先チームから行くね。後チームは華子よろしく!」
「了解!」
旅館に戻って新しい体操服に着替えて昼飯を食べ終えると、休み時間無しで山登りに行く。毎日してるゲームの昼のログボが……。と言っても仕方が無いので諦めることにした。
山登りは保真麗と楓とは別のチームになって私、和泉、莉音の三人が一年生。二年生は桜田先輩と里見学園の梅田先輩、石原先輩の三人。今回の合宿になってあまり里見学園の先輩とは話したことが無かったから結構緊張している。
先チームが行ってからしばらくしてから私たちも登り始めることになった。
なんでわざわざ二チームに分けたのかはわからないけれど十二人ならば一緒に登っても良いのではないかと思う。そんな少しの不満の気持ちも抱えつつ、整備されている坂道を登る。
山とはいえど、私たちは体力をつけるために登るのであって、決して山登りが主では無いらしく整備されている山道をひたすらに登るルートを通る。真昼の為、外は暑いと思われたけれど道の両脇に生えている木々が日光を上手い具合に遮ってくれるのでとても涼しく感じる。
私以外の五人は楽しそうに話しているけれど特に話すことが無く、私はずっと黙ったまま山を登っていた。先輩達がチラチラと私の事を見て気にしてくれている雰囲気だったけれど、上手く輪の中に入れる気がしなかった。
「香織ちゃんもさ、話に加わったら?」
梅田先輩が話しかけてくれたけれど、どうも私には上手く話せない気がして、
「あ、いえ………」
どう反応すれば良いかわからずについ誤魔化す形となってしまった。輪の中に入れたら楽しそうだけれど、同じ学校でも無いし里見学園の先輩達とはあまり話せていないから話しかけづらい。
「オリっち、遠慮せんでも良いんよ?ね、話そ!」
和泉は大抵あだ名で呼ぶ事が多いらしく、私のあだ名は《オリっち》らしい。ちなみに、私が見た限りでは和泉を見ると8割くらい笑顔だ。和泉は笑顔で少し輪の中から外れた私のとこに近づいてきて、私を輪の中へと引っ張っていた。
「実はオリっち、ツンツンとしてるクールなイケメンが好みなんだって!」
和泉は私の昨日話した好みの男子のタイプについて話し出した。昨日話した時に、皆の好きなタイプは清純派なイケメンが多くて、私の性癖は少しだけ特殊だったようだ。だから、昨日居た人以外ににバレたらとても恥ずかしい。
「ちょっ⁉︎や、やめてよ……恥ずかしいじゃん!」
私の顔が熱くなって赤くなるのがわかった。そんな様子の私を見てか、他の四人には笑われてしまった。しばらく笑われていたけれど、石原先輩が笑い泣きの涙を自分の手で拭きながら私に言った。
「香織ちゃん、おもしろーい!でも、私にはわかるかな。ツンツンしてる男子ってなんか惹かれちゃうよね?」
「えー、くるみ先輩もそっち側なんすかぁ……意外ですー!」
和泉が笑顔で石原先輩に話しかける。プクッと頬を膨らませて石原先輩が和泉に「そっちでいいんじゃない」と言うと、石原先輩は私の方を向いて「そう思うよね?」と聞いてきた。
「私はそっち側ですね。ツンツンしてる男子って可愛いっていうかなんて言うかで……好きになってしまいそうだなって思います」
「私もだよ!和泉が例外なのかなぁ……?」
私は本音を言ってしまったが,石原先輩はそれに便乗してニヤけながら和泉を見て言った。すると、和泉は顔が徐々に赤くなり「むむむーっ」と言い出した。
「例外じゃありません、清純派の男子のがカッコいいもん!」
今度はその反応に私も含めた五人は笑ってしまった。気がつけば私も普通に皆の会話の中に入る事が出来ていた。「もしかして和泉はこれを想定して……?」私が和泉の方をチラッと向くと,和泉はまだ少しだけ赤い顔を私に向けてニコッとして親指をたてた。
今まで話しかけづらかったけれど、普通に話す事が出来るようになっただけでも私にとっては本当に嬉しかった。
六人で話しながら山道を進んでいると坂道の上のほうにゴール地点が見え始めた。
「そろそろゴール地点に着くよ!」
桜田先輩が坂道の上の方を指差して言った。指差した先を目を凝らしてよく見てみると、そこには先チームの松崎先輩達がいた。
「やったー、ゴールだ!」
迷子になった子供が親を見つけて嬉しくて走って親の元へ行こうとするように、先チームの元へと私達のチームの皆が走り出した。私は足が疲れて今走ると筋肉痛になりそうになるので敢えては走らなかった。皆走って行ったなと思っていたけれど、和泉だけは走らずにゆっくりと私のの隣を歩いている。
「皆、走って行ったのに和泉は走らないんだね」
私が和泉に話しかけると和泉はハァッとため息をついて「半分呆れているんですよ」みたいな顔で私に話しかけた。
「止まってから座り込んで」
「え……?」
「いいからさ」
和泉はそう言いながらポケットから何かを取り出そうとしていた。私は取り敢えず歩道の方に座ることにした。すると一気に足から力が抜けた気がして気持ちよかった。そう感じていると、和泉が私の脹脛のやや下ら辺にヒンヤリとして気持ちのいい湿布を貼った。
「足、疲れてんじゃないの?表情と歩き方でわかるよ。そんなオリっちを置いてくわけないじゃん」
「え……わかっていたの?」
和泉は私の足が疲れてほぼ限界を迎えていた事を把握していたらしい。正直言ってもう歩きたくは無いくらい疲れていた。
「うんわかっていたよ。さ、早く上へ登んないと!みんなを待たせちゃったら良くないからね!」
そう言って和泉は微笑んで私に右手を差し伸べてくれた。その優しさに私は感動した。涙が出るほどのものでは無かった(←失礼)だけど、心にじんと来た。私は左手をゆっくりとその右手に乗せて掴む。その手をグッと引っ張って私を立ち上がらせてくれた。
「ありがとう……」
嬉しくて感謝していて、言いたい言葉はたくさんあるはずなのにこういう肝心な時に限って上手く言葉が出てこない。何とか他のお礼の言葉を言おうとして口をパクパクとしている私を見て和泉はブフッと吹き出して笑い出した。
「アハハッ!どーしたのっ⁉︎おもしろーい!」
和泉は笑いながらも、ゆっくりと歩いてゴールを目指す私の横を歩いてくれていた。最後まで優しくしてもらっているのに、私はそんな和泉に伝えたい感謝の言葉を出せずにいた。
「言葉が、伝えたいのに感謝の言葉が上手く出ない……」
「私は別にいいよ?あなたの気持ちが良く伝わってきているから!さ、オリっちあと少しだよ頑張って!」
和泉に私の言葉が伝わっていたならばそれでよかった。本当によかった。だからゴールまでは必ず歩き通そうと思った。
山から降りると私達は直接体育館へと練習に向かった。降りる時は肩を貸してもらったりして降りてきたおかげで足は無事に回復した。体育館に着くなり、楓は私を含む一年のあと五人を呼んだ。
「さ,練習を始めるよ!見てもらうからには全力で返さないとだからね」
楓は明日のライブのことを余程気にしているらしい。明日への意気込みまで言いながら練習を始めた。
さっきの山登りのせいで身体全体は疲れていて、朝より動くことが難しくなってきていた。それでも何とか私は明日に向けて頑張った。何故頑張ることが出来たかは多分、私以外の皆も私と同じ気持ちに違いないから。だから、頑張った。
それに明日のライブ。昨日、柚葉と一緒にライブをした時の観てくれた方々の笑顔を覚えている。誰もが私達を観て笑顔になってくれた。普段、そんな経験をすることのない私だったから私にはその笑顔がとても嬉しかった。
さらに、私は私の事を観てくれている人がいることをしっかりと実感することが出来た。見えない観客なんて居ないんだ。ファンでは無いかもしれないけれど観てくれてる人がいる。だからその人達の為に頑張れる。
「香織、やけに気合入ってるね!いいと思うよ!」
楓が自分のダンスの振り付けのところを、YouTubeを見ながら言った。
柚葉とかは疲れているのか座り込んで休憩したりしているけれど、今の私にそんな暇は無いと思っていた。最高の演技を見せるには皆の足を引っ張らないようにしないといけないから、何倍も努力をしないといけないと感じていた。他の五人はきっと大丈夫かもしれないけれど、私は大丈夫では無い。体力もないし、歌が上手いわけでもない、ダンスが得意なわけでもない。
「私は最高のライブを届けたい、だから今は頑張るしか無いって感じるの」
「香織ちゃんの言う通りだよ。明日のライブば何のためにするのか、合宿に行く前に教えられたよね。私達の学校では」
莉音が疲れて座り込んでいる和泉と柚葉の前に立って言った。さっきまで莉音は私達の輪から少し外れていたところで一人真面目に練習をしていた。
「私達の合宿でのご飯、あれは島で採れたものでそれを無償で分けて貰っている。それに、アイドルが来るからって旅館の周りを警備してくれている島の人達。この三日間の恩恵をどういう形で返すかってなった時に思いついたのがライブをして、島の人達に笑顔を届けるって事だったでしょ。普段は自分の事とかもあると思うのに私達の事を気にしてくれている、そんな大事な事を忘れてしまっては多分最高のライブは届けられない」
莉音は結構真面目な性格だから厳しい時があるんだよねと、昨日柚葉は言っていたけれど納得してしまう。でも、その莉音の言葉を聞いて柚葉と和泉は顔を見合わせて立ち上がった。
「その通りだね、私すっかり忘れていた」
「私も大事な事を忘れていた。ありがとう莉音!」
その様子を二人の様子を見た保真麗も立ち上がった。この様子を見て私は、「明日は成功できる」と感じた。六人の気持ちが一つになったなら必ず成功できる。六人の気持ちを最初っからまとめてこようと頑張って来た楓はみんなに向かって言った。
「明日までに完璧にしよ!最初っからみんなでやろ!」
合宿三日目の最終日。とうとう本番の時が来た。昨日練習に使っていた体育館は私達のライブを観る人で賑わっていた。体育館の控え室から観客席を見た時にはあまりの多さに驚いたけれど、それと同時に緊張してきた。絶対に失敗してはいけない。そのプレッシャーに押し潰されそうになってしまう。
「香織、顔が硬っているよ?緊張してるんじゃない?」
和泉が私の顔を下から覗き込む。和泉は少しも緊張してないらしく楽しみにしているようかのような笑顔だった。
「アイドルが楽しまなくて誰が楽しむの?アイドルが楽しんで輝いて初めて観客も笑顔にさせることが出来るんじゃないかな?」
和泉は私の緊張して握りしめていた手をそっと包み込んだ。その手は優しい温もりで温かった。その温かさに安心を覚える。
「そうだよ。香織もみんなも楽しも!」
楓が六人の輪の中に真っ直ぐと手を出した。その手の上に、和泉、莉音、保真麗、柚葉が手をのせる。私はみんなのおかげでここまで来ることができた。この合宿は本当に色んなことがあった。教えてもらったことがある、もっと社交的になれた気がする、そして友達もできた、絆ができ六人の間に輪ができた。
「いけるよね?私達っ!」
私が最後にみんなの重ねた手の上に手をのせる。一年生チームの五人とそれぞれ目を合わる。みんな本当に今からのライブを楽しむような笑顔だった。その笑顔を見て私も自然と笑顔になれる。
「最高のライブにしよう!」
「おーっ!」
楓の掛け声に五人で応えて重ねた手を上に伸ばせるとこまで真っ直ぐに伸ばした。
合宿最終日の夕方。あのライブは大成功に終わった。島の人達は私達を見て笑顔になって、私達も最後まで笑顔で終えることが出来た。私達はライブ直後は自分達のことを完璧だと思っていたけれど、二年生の先輩達のライブを観て「先輩達には届かないな……」と思った。それでも最高のライブを届けられたから私の心はスッキリと晴れきっていた。
私達は島から船に乗って私達の学校のある街中の港へと着いた。どうやら里見学園は桜咲学園に結構近くて船までは一緒だった。
「今回の合宿はありがとうございました」
松崎先輩が私達、桜咲学園アイドル部を代表して里見学園の七人にこの合宿においての感謝の言葉を言う。
本当に楽しかった、この合宿。来る前までは楽しくないと思っていた部分もあったけれど本当に色んなことがあった。
一日目から大変だった。柚葉と二人で見知らぬ島の旅館を探してる途中のこと。直接、観てくれている人の事を感じることができた。柚葉の素晴らしいダンスの完璧な能力に驚いた。
二日目は山登りと練習。山登りの時はチームの中で慣れない時に、和泉が私を話の輪の中へ入れてくれた。夜の練習の時は、ライブをやる意味を莉音から教えてもらった。
里見学園の三人に出逢って、人間としてもアイドルとしても大きく成長することが出来た。だから私は感謝している。本当にこの合宿に来て良かったと思う。
「次はいつ会えるかな?」
結衣先輩は少し寂しそうな顔で私達を見ている。他の里見学園の六人もなんだか寂しそうな顔だった。柚葉、和泉、莉音も寂しそうだった。こんな寂しい感じに終わるのは嫌だと思った私は、保真麗と楓の手を引いて三人の前に立つ。
「最後までさ笑顔で終わろう?またいつか会えるよ!オーディションとかさ!だからさ笑ってよ」
私は出来る限りの優しい笑顔を三人に向ける。保真麗と楓も私の言葉にうなづいた。この私達の様子を見て三人とも笑顔になった。
「いつかまた会おうね!楓、保真麗、香織!」
「うん!」
「そろそろバスの時間だよ?もう、行かなくちゃ」
桜田先輩が腕時計を見て言った。もうそろそろだとはわかってはいたけれど、いざとなるとまだ一緒にいたかった。
「じゃ行くよ?ありがと」
そう言って楓が初めにサッとバス停の方へと向かい出した。こんな時もキッパリと行動できる楓のことを尊敬しつつ私も楓の後について行った。
楓がちょうど夕陽に照らされて、楓の後ろ姿が眩しかった。
いつかまた会えるかな……?
最後に後ろに振り向いて里見学園の七人の方を見ると、もうそこには彼女達は居なくなっていた。それを見て私は再び前を向いて歩き出した。
合宿編完結
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