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26つのオーパーツと異能戦争  作者: 真鍋棒
遠方からやってきた幹部達
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54話「ホール・イン・ザ・アース その3」


アクィマはにこやかに笑いを見せ、先ほどへし折った剣の末端を握りしめた。



「クク、私の剣の周りにも隕石は付いている、そこから物や人に取り憑き、取り憑かれたものは隕石になる、隕石は一定の距離を進めば大気圏突入かの如く発火し爆発を起こす、そしてティミミア、お前の寿命はあと『1メートル』だ」



「クゥァァ!」



ティミミアは再び岩石のマシンガンを口から放つ、アクィマとの至近距離で。しかし、アクィマにはもう効かなかった! アクィマの周りを飛び交う隕石は、バリアの役割をも持つ! 石を焼き尽かせ、破壊した!



「さっきは咄嗟の事なので防御し損ねたが、もう防御に狂いは無い……私は完璧だ」



「うおぁぁぁぁ!!」



すかさず竜の腕を思い切り伸ばし、直接アクィマを切り裂き壊してやろうと足一歩だけ踏み出し不意を突いた!



「私がこの手に持ってるこの刃、この刃にも隕石を取り憑かせた」



しかしその攻撃はかわされた、アクィマは先ほどの空中戦のようにティミミアとの距離を変えないまま半円状に高速移動し背後に回ったのだ。



「この刃を、どうすると思うかね?」



「き、さまァ!」



ティミミアは即座に振り向きアクィマを狙い両腕で、攻撃する!



「愚かだ……お前は」



アクィマは刀を地面に突き立てていた。地面の石たちを『無重力状態』に変化させ、そのまま滑り移動しティミミアから距離を取ったのだ。腕の届かない範囲まで! 宇宙空間には摩擦さえも無いのだ、滑るのだ、石さえ!



「おまえが私から逃げることぐらい……承知している……お前が今乗っているソレは、地面ではない、私が潜り込ませておいた『尻尾』だ、いま切り離したんだ、見えなかったか、私の腕の軌道を追うのに必死で……」



「なにッ」



石や岩をドラゴンの装甲に変えるのはティミミアの能力であり、ティミミアの体から離れればソレは元の石や岩に戻る。そして無重力の中で急な形状の変形により、アクィマの足元の石や岩は変形した衝撃で『無重力に乗って吹き飛ぶ!』至近距離に立つアクィマに岩たちが刺さるのだ!



「うぅグゥゥゥ!?!?」



腹部と顎を貫かれ、血を噴き出しながら地面に倒れ伏せるアクィマ。しかしすぐに右腕で地面を突き、起き上がろうとしている!



「運が悪かったな……お前は私を追い詰めたつもりで慢心したんだ、それが油断になった」



「運が……? 悪いィィィ? 私がァァァァ? わたしぃぃぃのォ?」



「!? なんだ……こいつ」



アクィマは起き上がるや否や、顎に刺さった長い石を真下に引き抜いたと思ったら、だらしない顔つきになりティミミアに話しかけ始めた。



「運悪くないよォ不幸じゃないよォわたしぃは完ペキだものぉ〜〜、ラッキーなことばっかりよォ〜〜、なんでもぉ上手くいくんだものォォォ〜〜」



「こ、こいつ気でも触れたのか? ヨダレが垂れてるぞ、しかもこっちに向かって歩いてきやがる……せっかく取った距離をアホのようにまた戻って歩いてきている、アホになったのか、一瞬で」



戸惑うティミミアをよそに、アクィマは開ききったマヌケな瞳でぎょろっと自分の右手に持つ刃の切っ先を見た。



「おっなにか持ってるぞォォォ〜〜わたし、こんなもの手に持ってたっけェェ……」



「なにか分からんが、死ねッッ!!」



ティミミアは近づきすぎたアクィマに右腕の渾身の一撃をぶっぱなす、頭部丸ごと無くなってくれればこの戦いは終わ……。



「この刃はな、エクセルに投げるための物だ」



アクィマの顔つきは瞬時に元に戻った、まるで目が覚めたように。そして寸前になって、能力を使い……ティミミアの腕をあらぬ方向へと吹き飛ばした。



「焦ったよ、私は病気があってね……追い詰められると自暴自棄になっちまう、いや冷や汗が止まらないな」



「この竜の装甲は……元々は石や土などの物質が元だ……だからこのアクィマは無重力を私の竜の装甲の腕そのものに隕石を取り憑かせて、攻撃を防いだ……のか」



「お前が証明したんだよ、その装甲が物質だとな、もう動くな、もう30cmも猶予は無いぞお前には、もう進みすぎた、爆発するぞ」



「左腕がある……!」



「左腕で私を捕らえるには、一歩踏み出さなければならない……お前はもう無理なんだよ」



アクィマはゆっくりと歩みながら、刃の切っ先を思いっきり振りかぶり、走り向かってくるエクセルに狙いを定め、投げた。


その直後に訪れたものは……。



「この女……本当に馬鹿なのか……!」



強い爆発音がしたのち、アクィマをはるか高く飛び越えてエクセルに向かう刃を受け止める物が居た。ティミミアだ。



「ガ……ぶぐ……ォ、ゴ……ぎ」



「こいつ……馬鹿だ、爆発することを選んで、私へ攻撃するよりもエクセルを守ることを選んだ……」



内部から炎上を起こす竜の装甲の中は、いわば灼熱地獄であった。しかしティミミアは爆発炎上してもなおその竜の装甲を、エクセルを守る盾とする為に。着て纏っているままなのだ。



「ティミミアァァァァ!!! うわああああぁぁぁ!!!」



「え、クク……セ、ル……」



臓器は溶けながら融合し一つの塊のようになり、指は殆ど丸まって手のひらはまんまるになり、瞳はグジュグジュに沸騰し、ほおの肉がただれ舌も溶け発声などすればするほど苦しい、死人秒読みの彼女は、それでもなおエクセルの名を呼んだ。



「爆発だけなら戦闘不能程度で終わったことだろうに、竜の装甲を頑なに纏ったおかげで醜くなりながら死んでいくというわけだな、さながらファラリスの雄牛のようだな、狭い檻の中で焼け焦げながら、惨めに叫ぶそのさまは!」



エクセルはティミミアに駆け寄り、涙をボロボロに撒き散らしながら叫んだ、ドバドバ零れ落ちてくる血を見て、もうティミミアは助からないのだと確信した。オーパーツタイプRは、オーパーツ使いが再起不能になった瞬間が理解できる察知能力がある。エクセルは確信した。ティミミアはもう戦えない。



「うぅぅあぁぁ……! ティミミアぁぁ!! どおして竜の装甲を外さなかったんだぁぁあ! 私なんかを護ってええええ!!」



「エクセルを殺すことなど、容易いことだ、馬鹿が……エクセルを守らずに背後から私を攻撃していた方がまだ賢かったぞ……」



アクィマは剣を構え、振り上げながらエクセルに歩みを進めた。



「く、くるな!」



「度重なる攻撃のせいで私は指と左の乳房をエグられた……惨殺してくれる、エクセル」



「ティミミアぁ……逃げ、るんだぁ……熱ゥッウウゥゥ!」



ボロボロになったティミミアを、ドラゴンの装甲の穴、腹部から引きずり出して逃げようとするエクセル。熱を蓄えたその空間から物を出すのは難解だった、エクセルの両腕もみるみる火傷でボロボロになっていく。



「いやだぁぁぁァ、死なないでェェェ!!」



「死ねッ! エクセル!!」



思い切り高く掲げた剣を、エクセルに向かって振るう! だが、ティミミアの竜の装甲がアクィマの前にずりずりと引きずり移動し、アクィマの剣を受けた。



「……なに?」



ティミミアの竜の装甲の背中部分はぱっくりと切り裂かれ大きな穴が空いた。



「なるほどまだ動けるとは……凄い精神力だ、たいしたやつだよ貴様は、だが私の刃はなんでも斬れる。次の一撃はお前の装甲ごと、エクセルも斬れるほど本気で! 喰らわせるッ」



その瞬間、エクセルはティミミアを装甲の中から引っ張り出し外に引きずり出した!! 先ほどまでてこずっているようだったが、なぜ急に引っ張り出せたのか……アクィマは真顔で少し考えた。



「(エクセル……こいつなぜ今『もたついたフリ』をしたんだ? こいつ、私が装甲さえ斬り裂けることは今に分かったことではあるまい、なぜ今、ティミミアを即座に引っ張り出せたのだ? まあ考えても意味はない……私の剣はエクセルをも捉えている、振り下ろせば斬れる、例え紙一重かわせたとしても! 隕石が取り憑く……私は昔精神的に追い詰められすぎて不幸のどん底に落ち、頭に浮かぶもの全てが我が不幸となったことがある、何を思い浮かべてもそれが不幸として実現するのだ



医者から宣告されたのは『重度のうつ病』だ……思い込みが激しくコミュニケーションにも障害ばかり、時たまに精神分裂も起こるし、だが私はチロシンキナーゼ様に出会って全てが変わった……不幸の思考は幸福の実現へと変わった。私はうつのときのような『強い思い込み』をすることでそれを実現させることができる『斬れる』と思えば物理的なものを超越してペーパーナイフでダイヤモンドさえ斬れる! 私の技術は『うつ病』だ! 勝つ、私は勝ってエクセルを今から惨殺処刑するのだ!)」



その瞬間、アクィマの首に岩石が激突した。エクセルが飛ばしたレンガだった。対応できなかった。



「……あっ」



アクィマがバランスを崩して倒れたその先は……ティミミアの竜の装甲! しかも! 竜の装甲にはアクィマが先ほど切り裂いた穴が、あいている! そのためアクィマは竜の装甲の中に引きずりこまれた!



「ぐげぁぁぁぁぁァァアアア!! 熱ヴウウヴゥォオオオあ嫌ッ熱くないッぎ、ギ熱く、ない! ぃぃぃいいいあァァァァ!!!」



倒れて入り込んだ拍子にアクィマの肌は高熱で溶けて竜の装甲内部とくっ付いてしまい出られなくなった。必死にもがき、竜の装甲ごとゴロゴロと坂道を転がっていったのちに……。



「さっきファラリスの雄牛がなんとか言ってたな……その拷問器具ってのは、最後は『それを使って楽しんだ王』がソレによって処刑されたって話だよ、悟りで調べたことがある……当然の報いだ、あと数十センチかな、アクィマお前も」



思い込みで熱くないと思おうにも既に高熱を浴びた後だ、もう遅かった。熱と大爆発。アクィマが投げた刃の切っ先の隕石は、ティミミアの竜の装甲に取り憑いていたのだ、坂道を転がっていったゆえ、その距離は限界を迎えた。



「ティミミア……ごめん、私のせいで……命を」



エクセルは真っ赤な顔で泣き崩れ、火傷だらけの腕でティミミアに抱きつき、懺悔の涙を零した。



「お前らも終わったかよォ〜、さぁチロシンキナーゼを迎え討とうぜ……『全員』でなア!」



急な声にハッとして振り向き顔を上げたエクセルが見た、その人物! ジャント・レッセパッセ!



「俺の白色の鬼神色で治療してやるからよ、ホレ! その火傷の手を見せな! ティミミアとかいう女もズタボロじゃねえか! 時間はかかるけど治してやるから安心しろよなぁ」



ジャントの背後には、遠征組幹部に勝利を収めた冒険者たち全員も健在で立っていた!



「ヒャハハァ、どうなることかと思ったが……」



「みんな勝利を収めることが出来ましたね! 負傷はジャントさんが治してくれますし、あとは大ボス!」



「チロシンキナーゼ! 奴を倒すだけね……」



ガレン、エルス、スカーレットは勝利に安堵し、次なる戦いへと心構えを新たに決めていた。

一方。エクセル、ジャント、レイジはこれからやってくるであろうチロシンキナーゼへと注意深く組織本部を見張っていた。



「私のオーパーツタイプRは、他の25個のオーパーツの『反応』を探知できる……まずいぞ、チロシンキナーゼのオーパーツタイプSは『活動を取り戻しつつある』チロシンキナーゼの意識は戻りつつあるということだ、間も無く向かってくる!」



「ほォ~~、そんな能力があったんか、だからこそ再起不能になったアビスとかマドウとか、そういう奴らをゼットがいち早く探知して回収に向かえたってわけかい……って、目覚めつつある!? おいマジか! いやしかし他の敵幹部を蹴散らし終わった今やってくるということは、まだ好都合だな、空気読んでくれてサンキューって感じでもある、おいみんな! 距離をとれ!」



「誰を最初に狙うのか……それは知らんが、アリシアにだけは手を出すな、いや、誰を最初に攻撃しようと、隙を一瞬でも見せたその瞬間……間髪入れず攻撃を叩き込む!」



その瞬間、シェーヌだけは他と違った反応を見せた。警戒してるのはチロシンキナーゼではないかのような様子を……。



「ねえトシマ、あんたアビスとレイターに襲われたって言ってたわよね」



「え? あ、はいまあ……直接感とかなんとかで、パワーアップして襲ってきたんですよ」



「そう……ふたりだけ?」



「えーと、ふたりだけです、重力のアビスと水のレイター……でも俺すごいんですよ、このピンチにとっさに機転を利かせて……」



「そう……上の階ではヒナタとかいう女が襲ってきたわね」



「俺の武勇伝聞きたいんじゃないんすか」



「ゼットとかいう幹部はヒナタに殺害されたと聞いたし、つまりゼット死後に倒された幹部は回収されていない……バドラルって名の幹部はティミミアに粛清を受け大海に沈んだらしいし、もしまだ幹部が残っているとするならば、あいつしかいない」



シェーヌは突如ノドカの腕を引っ張り自身のもとへ寄せる。慌ててウツリがなにごとかと慌てたのも言うまでもないが、シェーヌはある事柄に『確信を持っていた』



「ちょっと急に何をするんですかっ!」



「ウツリじゃなくてノドカに用があんのよ私は、ねえノドカ」



「なんだい」



「あんた磁力のちからで、憑依とかされてる人間から憑依してるヤツを引き剥がせるんだったっけ?」



「まあできるよ」



「なら迅速に今すぐお願い」



シェーヌがノドカに攻撃を依頼した人物、それはスカーレット! 今さっきまでジャントと共に戦っていた彼女がなんだと言うのか! だが今のシェーヌには底知れぬ『確信がある』!



「うぅわっ!?」



スカーレットは突如ノドカに腰を両手鷲掴みにされたものだから飛び上がった。トシマに対してなんて声をかけようかと悩んでいた彼女には不意の出来事すぎた。しかし問題はそこではない。



「な、なんだ俺が磁力を流した途端、スカーレットの体から何かでてくる! このオーラのような、煙はいったい!?」



「やっぱりな」



シェーヌは完全に姿を現したソイツに向けて、そう言い放った。



「マドウって名前だっけあんた、久しぶりね」



「おや、バレてしまったかやっぱり君には……シェーヌ、直接感溢れる能力者になった僕でも出し抜けないなんて」



その男の名はマドウ・エンリネクライシス! シェーヌが初めて戦った敵幹部であり、ゼットに回収された幹部。オーパーツの名はAuraオーラ

アクィマ・アンデスメロン

能力名「ホール・イン・ザ・アース」

オーパーツタイプU(universe)宇宙の能力を操ることが可能。

「モレ・ザ・アース」

地面に座標のようなものを登録しておける能力、その後どの場所に居たとしても、引力に吸い寄せられるようにこの場所に戻ってくることができる。

「カーペンタ・ザ・アース」

物質あるいは人物に対して衛星のように距離を保ち円を描くように移動できる能力。例え空中であってもそのものに追いつきくっつくことが可能。平衡感覚は常に一定である為、相手が空中で回転していようがバランスを崩すことなく攻撃に移れる。

「ベガ・ザ・アース」

自身の周りに極小隕石が高速移動し続け、バリアのように外敵から身を守る。

「カニガム・ザ・アース」

隕石が高熱を帯び、アクィマを熱治療する回復能力。

「デルドガ・ザ・アース」

隕石が物質あるいは人物に憑依する。物質に憑依すると無重力空間のように破壊されるまで等速直線に飛んでいく。人物の場合はとくに影響なし。しかし共通点として、ある一定の距離を進むと憑依した隕石は取り憑いた本体もろとも大爆発を起こす。

技術「重度のうつ病」

不幸だと思い込んだものはそれが実現し更に不幸へと陥れられたが、その思い込みと実現の力を攻撃面へと活かしている。斬れると思い込めばペーパーナイフでダイヤモンドさえ斬れる。


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