47話「ブラッドアームバニッシュ その2」
「なるほどな、血を操る能力で自分の傷口を守っていたというわけか……血の硬質化、こいつは傷口と、血に濡れた部分は金属に匹敵する硬度を持ちやがる」
「彼の能力が露わになったことはこちらとして大きいことだけど……彼の場合『血がもつ性質を全て操ることができる』というのが厄介だわ。つまり『どこまで出来て、どこからが出来ないのか』が全く判断できない」
「するってえとつまり、後付け設定のごとくポンポン応用という名の新技能を繰り広げてくるってワケかよ」
「ええ、自分以外の血も操ることが出来る可能性もあるわ……!」
構える2人にガイルゼは飛びかかる! 銃と刃の傷が複数あるはずだが体力への衰えは見られない! 血は興奮と怒りの象徴! 戦いという快楽と興奮が血に便乗し、ガイルゼへのドーピング的役割を果たす!
「鬼神色・黒!!」
だが迎えうつは黒の鬼神色! 物質の破壊作用をもつ攻撃系最強の鬼神色は……!
「ウぐオオォォォ!!!?」
ガイルゼの右腕の発達したマツボックリ風装甲を解体し壊したッ!
「我が血で作り上げた装甲がァ!!」
「手に気を取られてる場合じゃないぜ!」
「ヌ、しまった!!」
2撃目、それは鬼神色の灰色……鋼の鬼神色、巨大化した鋼の巨大刃は、ガイルゼの比較的細身となったその腕に振り上げられ!
ガイルゼの右腕が吹き飛んだ!!
「なんだとォォォおぐオァァァ!!」
ガイルゼの切断部からは想像を絶する出血が無尽蔵に吐かれ、常人なら致命傷であろうことは確実である。
「だが血を操る能力者、出血で死ぬとは思えねえ……追撃で首も落としたい所だがここは奴の出血が収まるまで距離を取るぜ!」
ジャントは素早く飛び退き距離を取り様子を見る。この流れのままなら勝利は近いが、焦って反撃を喰らえば元も子もない!
「オ、オアォォ……腕が、う、で、が……!」
悶え苦しむようにも見えるガイルゼだが、彼の腕の切断部からは細い管のようなものが無数に伸びていく……!
「あれは……血管ね! 吹き飛んだ腕をアレで回収して繋ぎとめようとでもいうのかしら、だけどさせないわ!」
スカーレットは腕の復活はさせまいとガイルゼの吹き飛んだ腕へと向かう! スカーレットの亜空間への収容能力があれば……ガイルゼの腕を亜空間へ閉じ込めることが出来る!!
「いや待てスカーレットォ! あいつの狙いは腕じゃないんじゃねーか!? あいつの血管は、みるみる伸びて今は全部上を向いていやがるぞ!!」
一体なにをする気だ、と言葉を続けようたした矢先、ガイルゼの血管から血が噴き出す!! 噴水のように勢いよく噴出されたその血は! さながら雨の如く! 自らを天災だとでも言うかのごとく! ジャントとスカーレット目掛けて降って落ちてくるのだ!
「うおああぁぁぁ! まずい! あいつの能力は血だ! 触れたらどうなるかわかったもんじゃないぜ!」
しかし傘もなく、無数の雨粒を防ぐ術は無いように……ジャント達にはなす術も無かった。その血に込められたガイルゼの『攻撃』は!
「熱だッ! この血全てが高熱だ! ぐああっ防げねえ! 焼ける、焼けちまう! うわあああ!」
高温度に達した血の雨であったのだ、しかし血の沸点はおおよそ水と同じく『100℃』熱湯を散らばり噴射したとしても、大した威力にはならない嫌がらせ程度の茶目っ気であろう……。
しかし忘れてはならないのが『血の硬質化』の能力。固体となった鉄にも勝るとも劣らない能力的金属血液の沸点は『1500℃』に達する! これは鉄の沸点に匹敵する! さながら飛び交うマグマ! 圧倒的火山地帯的猛攻をジャント達は受けているのだ!
「近づけない! 私の亜空間の能力では防ぐことはできない、ううっ……!」
異変に気付いた瞬間、大きく距離を取ったスカーレットさえも、数粒の高熱血液を喰らい、大きく負傷していた。
「この腐れ野郎ォォォー! こんな雨がなんだ! おらああああ!」
鬼神色の鋼! 鋼の巨大剣を『傘代わり』に利用して身を守り特攻するジャント!
「フン! 馬鹿が!」
しかしガイルゼは胸の傷からも血管を捻り出し、そこからまたしても血を噴き出す! お次は、ジャントの足元を狙って!
「なっ……足が、足が凍って動けねぇ!」
「次は冷凍血液の瞬間接着剤と言ったところかな? お前と地面を氷で固定した! そしてくらえィ!」
ガイルゼは地面に滴った自分自身の血液を操り寄せ集め、血液製の『斧』を作り出した! そしてそれをジャントにブン投げる!
「ぐあああァッ!!」
ジャントの胸部に、その斧は刺さる!
「ジャントォ! 彼はもう高熱血液を降らすのを止めているわ! 血液に尽きがくるからでしょうけど、だからその鋼の剣を降ろして、反撃してッ!」
「もう遅いわ、あの斧は血液、ジャントに刺さったことで、ジャントの血液とも繋がった! クク、血の繋がりとでも言ってくれようか」
その時、ジャントに刺さった斧は爆発を起こした。斧だけではない、ジャントから出血したその胸部からの血も! 爆発を起こしたのである!
「ジャント!!」
「がはっ……強い……!!」
ジャントはその場に力なく倒れる。
「このままでは負けちまう……!」
度重なる出血、力が入らず、ジャントは起き上がるまでに何呼吸かおかねばならない。
「グオッ!」
とどめをくれてやろうと歩み寄るガイルゼは、突如仰け反った、胸に一発の衝撃。それも心臓部。
「ダメか、心臓を狙っても……!」
「フ、赤い女の銃撃か、俺の胸部全体は血のプロテクターで覆われている、射撃は精密だがなまぬるいぞ」
「血の流れ、血の大元は心臓……そこを突けば彼の能力は終わると踏んだけれど、想定済みってわけね、とにかくジャントはやらせないわ! 私が相手よ!」
スカーレットは銃を構えながらガイルゼの『吹き飛んだ腕』へと駆ける!
「血の雨が止んだのをいいことに、俺の腕を狙いに行ったか! グハハ愚か者めが!」
「なにッ!?」
スカーレットはその瞬間、足で踏みつけたモノがあった! それは、密かに地面に張り巡らせられていた……ガイルゼの血管ッ!
「血の雨は血液の消耗が激しいから長時間は行えん……その弱点を補ったのが、今お前が喰らった技だ、血管は地面を伝って伸びていた! 俺の腕を回収する為にな!」
踏んだ瞬間ガイルゼの血管からは血が噴き出る、その瞬間、爆発!!
赤血球ひとつひとつが火薬でもあるかのごとく、理不尽な爆発がスカーレットの体を宙に舞い上がらせた!
「ぐああああっ!」
「足を爆発され吹き飛び、次は頭が地面に着地するぞ……そこにも俺の血管は張っている! 死ねえ!」
「ヤバいッ、頭から落ちるのは、まずい! 手で着地して手を犠牲にして生き延びるしかない……!」
スカーレットは手を前方に突き出し、ひとまず急所を避ける着地を試みる!
「とも、限らないわ!」
その時、スカーレットは亜空間を開き、ガラクタ達を一斉に放出! 亜空間から飛び出るガラクタの勢いを噴射口の如く利用して、飛び上がった!
「なにイ!」
その勢いのままガイルゼの腕の落ちてる場所に着地! 即座にガイルゼの腕を亜空間に封じ込める!
「ふん、ざまあみなさい!」
「俺の腕をよぉくもおおおお!! 陥没させてくれるウ!!」
「おっと待ちなぁ! 次は左腕を吹っ飛ばしてやるぜ!」
この騒動の間にジャントは立ち上がり復帰! 鋼の鬼神色で巨大化した剣で、スカーレットに走り向かわんとするガイルゼに迎え撃つ!
「馬鹿めが! 俺にその剣は効かん、凍結させてくれる!」
ガイルゼは即、鋼の剣に自身の血液を飛び散らせ、素手で掴み取り瞬時に凍らせる!
ジャントは剣が氷で固定され、またしても丸腰に……!
「馬鹿めはおめぇだ! 鋼の剣は囮だ、鬼神色を解除して鋼の外殻をテイクオフ!」
すると元の剣がすっぽりと引き抜かれ、ジャントは空高く剣を掲げ次の鬼神色を提示する。
「喰らえっ! 黄色の鬼神色、電撃だ!! その鋼と血液を伝ってスムーズにスタンしな!」
電撃! 血液は液体であるため、電気をよく通すのだ。
「ウヌオオオオッ!!」
電撃をまともに喰らい、後方に吹き飛ぶガイルゼ。例え血の装甲があろうとも、水分を有する生物であることに変わりは無い。電気は通りダメージになっている!
「へ、電気は効くってことだな! このまま電気で追い詰めて、ショック気絶、最悪心停止にさせてもらうぜ!」
そう言いつつガイルゼと向き合い間合いを計るジャント。電気もしくは悪の鬼神色なら奴にも通用する。
直接斬りつけなくては効果は発動しない為、ガイルゼの腕力に取り殺されない為のヒットアンドアウェイが必須となるのだ。
「ウンガアァァア! 殺すゥゥゥ!!」
「へ! 一目散に向かって来やがったな! 自分の血の自慢の防御能力をあっさりと破られた、精神的動揺ってやつか、クールじゃないな!」
突っ込んでくるガイルゼのガラ空きの胴体に電撃を帯びた剣を振り抜くジャント。
「なっ、効かねぇ!? こいつ電気を当てたのに一切怯んでねぇ……」
「オオオリャアアァァァ!!!」
動揺するジャントの首に、渾身の腕力で鉄拳を見舞う。
しかしジャントは咄嗟に腕でその鉄拳を受けきり、攻撃をもろに受けることは……無いかと思われたがしかし!
「しまっ……ブッぐわぁぁ!」
その腕力を受け切ったゆえ、拳を受け止めた腕から僅かなる出血。その血はガイルゼの能力に呼応して爆発を起こした!




