↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/63

36話「オール・タイム・ロウ その3」

「なるほど、プロトス自身は死んでも、オーパーツは物質。その物質としての役割は生きてるというわけね」



「戦いは……既に始まってるぜジュニエイトォッ!!」



ジャントはその剣を片手に走る! プロトス本来の能力はこの剣にもある! よって少量の鬼神色『カラードライフ』しかないジャントでも鬼神色の能力は健在ッ! 白色、精の鬼神色で体力を徐々に回復しつつ……突撃する!



「鬼神色……黒! 破壊だ!」



「無駄だ、ぬぅん!!」



鈍重な音が辺りに何度もこだまする、ジャントはあらゆる手でジュニエイトに攻撃を仕掛ける、ジュニエイトは軽々と全てを腕か足か剣で弾き飛ばす。



そんな戦いを繰り広げるうち、双方は双方に対して疑問を抱いていた。

ほんの少しの疑問でしかない、問うまでもないかもしれない疑問。



ジャントは思っていた。

時間を止めるという無敵の能力がありながら、なぜジュニエイトの肉体はこうも見事に鍛え上げられているのだろう。こんなチート能力を持っていれば肉体の鍛錬などほぼ不要、だのに彼女の肉体は日々欠かさぬ鍛錬を物語っている。

生まれた時から筋肉質、超身体能力、なんていう都合のいい新生物でもなんでもなくただの人間のはずだ。それなのに何故。

ジャントの今持ってる気がかりただのそれひとつのみだった。



「鬼神色、灰色! 鋼により刀身を巨大化させる! オラッ!」



「こざかしい、それも無駄!」



一方ジュニエイトもまた思っていた。

このジャントという男、さっき植物で自身の腹部を守っていたようだが……なぜ腹部を守った? 頭部を攻撃される可能性も十分にあった。なのになぜ腹部を守ったのか。



「ゲハッ! うぐッ!」



「ム?」



鋼の鬼神剣を弾き飛ばされ、ジュニエイトと距離を取りつつ着地したジャントだったが、突如咳き込み、悶える。だがすぐに前方を見据え、剣を構えた。

よく見れば、口元に血が滲んでいる。



「ジャント、力を使いすぎているんじゃないかしら? 血が出ているわよ」



ジュニエイトはそう喋りながら、口の中の生臭さを感じた。唾液がいつもより多いような……。

そう感じ少し目線を伏せ、地面を見ると、赤色の斑点がいくつか。



「血……? 誰の?」



次に、膝が少しばかりガクつく。ジュニエイトは自覚した、この地面に滴る血は私のもの、私は今ジャントから『攻撃』を受けているッ!

同時に、ジャントを見る目も更に鋭くなる。こいつは何か……何かしている!



「カハッ……なん、だ?」



「何うろたえてんだジュニエイトォっ! お前の相手はこのジャントだぜェ!!」



「うぅぬぅ!!」



ジャントはなおも突撃してやってくる。次の手は鬼神色の電気! 一体何をしているのか、これまでのランダムな攻撃達に何か意味があるとでもいうのか? その謎を明かすこともできずジュニエイトは剣と素手でジャントの剣を弾き返す、無論電気も。



「ジャント! 私に何かしているわね! そしてそれは、あなた自身もただで済む技ではない、道連れを狙っているのか!」



「それは質問か!? だが戦闘中のクエスチョンはNGだぁ! 答える必要ナシ!」



「ゲフッ……わたしはあなたの鬼神色の内容は全て知っている、報告されたから、あなたの戦いの全容は全て報告された。あなたの鬼神色は全て分かり切っている、私に通用する鬼神色など……」



「ヒヒ、お前との戦いでェ、初めて俺が形成的有利になったわけだな!」



ニヤリと笑みを浮かべるジャントに、血管を浮き出たせ睨みを付けるジュニエイト。



「何をしているか分からないが……」



ジュニエイトは突如大剣を投げ捨て、ジャントに向かって突っ込む! 体を身軽にした突進、先ほどから見せている戦法だが、健康状態のジャントでもその速度にはコンマ数秒隙を見せてしまうほど!



「能力者を殺せば、能力の効能も消える。取り潰し殺して、ボスに献上してやるわ」



「そう来たか、だが俺がお前に対して攻撃を『開始』したのはお前が思ってるよりずっと前からだ! プロトスを失った後、それからすぐに攻撃は始まっていたんだぜ! 俺たちはお互いに、もう限界なんだよォ!」



刹那(その瞬間)ジュニエイトの腹部には鈍痛が起こり、一瞬だけ焦点が合わなくなった。それもあってかバランスを崩し、地面に転がり落ちた。

先ほど叫んだジャントも膝をつき数滴の血を地面に垂らす。



「ゲホッ……どうせなら教えといてやるぜ、ジュニエイト、お前の体をむしばむ攻撃の正体をな……!」



「ぐぐぐ……きさま、勝ち誇って……いるのか」



「いいや、俺は相棒を失った……俺は負けていたのさ、お前を倒せても、プロトスは俺を置いて長い旅に出てしまった、この戦いは引き分けみたいなもんだ」



「ソレを、勝ち誇っているというのだッ!」



ジュニエイトは座った姿勢のまま自身の鎧の鎖を引きちぎり、渾身の力でジャントに投げつける。



「おおっとォ!」



すかさず剣を前に突き出して防御、鎖はジャントの剣の刀身に巻き付きその威力を失った。



「悪あがきはよせよな、無駄な体力の消耗は我が身を砕くぜ……」



「フフ、避けるか逃げるかすればよかったものを……」



「なにッ!? ぐはあっ!」



ジュニエイトが投げた鎖は突如爆発を起こした、両末端部分に爆弾が装着されていたのだ。そしてその爆発火力と、砕けた鎖の金属が容赦なくジャントを襲う!



「うげっぐあぁ!」



その瞬間、ジュニエイトは渾身の力で踏み出し、ジャントに向かって跳躍する!

ジャントを押しつぶすように上空から降ってくるジュニエイト。爆発の痛みに苦しみながらもジャントは条件反射的に剣をジュニエイトに突き立てた!



「剣を使ってくると読んでいたわ、あらぬ方向から敵が来れば咄嗟に手に持つ武器を振りかざす、当然のこと、しかし私に武器は通用しない!」



ジュニエイトは突き立てられた剣の末端に腹で『着地』していた。

時間を止めるジュニエイトの体を持ってすれば、鋭利なものの上に常駐するのも容易い事なのだ。



「そして! この状態ならジャント! 無防備なのはあなた1人!」



「なッ、こいつ、鎧の一部が槍になってやがる! さっきの鎖といい、こいつの体にはあらゆる武器が隠されているのかッ!!」



「そう! お前のように悪あがきをするものも確実に仕留める為に! ジャント、あなたのタフな根性、確かに見届けた!!」



「う、うっうおわああああ!!」



ジャントは咄嗟に剣を振り回しジュニエイトごと横にバタンと倒してみるが、ジュニエイトもまた剣をしっかり握っている。

二人の直線距離は変わらないッ! ジュニエイトの槍は無情にも……届く距離!



「ジャント! 私は分かったぞあなたが何をして私にダメージを与えたのか! 煙だな! 火と植物で煙を起こし、私とお前自身の『肺』をめちゃくちゃに壊したわけだな!」



「ご、ご名答……勘がなかなかいいじゃねぇか、お前は匂いを感知し呼吸もする普通の人間だ。わずかな微粒子であるならばお前に届く……というわけだ、燃焼系の煙で人の気管に直接害を与えるなんて生まれて初めてだったぜ」



「だがそれもここまでだな! お前のその技はあくまで『同士討ち』! 引き分けにしかできない技! しかし、この私がお前を殺せば! 『私が勝ち』なのだ! 引き分けか負けしか選択肢の無いお前は最初から、負け犬ムードだったのだジャントォッ!」



「そうか、そう思うかジュニエイト! この俺が引き分けで満足するような奴だと!」



「もう口を開く必要は無いッ! この槍をお前の首に突き立て、息の根を止めるのだからな!」



「俺は鬼神色を使っているぜ! それは茶色! 地面を崩し……助っ人を呼ぶためにな!」



「地面……? ふん、何も異常は無いぞ私達の周りの地面には……」



「み……みず、水だ! 水を、頼む!」



「ふん、よくわからんが錯乱しているな! 死への恐怖、肺と喉の損傷。結果、命の源である水を欲し始めたわ!」



有り余る嘲笑。その直後、ジュニエイトの体の周りに半透明な水の膜が張られた。

ジュニエイトにとって初体験だが、ジャントは、そして我々はこの技を知っている!



「アクアトップコート!」



それこそ防御魔法使いエルスの水の防御技! アクアトップコート!

地面が揺るがされたことで、レイジ一行は見えないバリアを地面を掘ってかいくぐることに成功したのだ。バリアは表面的、一枚の壁に過ぎない。地面を掘ってしまえば、そこにバリアは無いというわけだ!



「ジャントさん、いきなり水をくれだなんて、無茶振りにも程がありますよ!」



「ゴフッ! よくやった……エルス! さぁ決着をつけようぜ、鬼神色は黒だー!」



「決着だと、笑わせるなァッ!」



ジャントは鬼神色の黒を使い……地面に穴をくり抜き空けた! ちょうど人が1人入るようなスペース!

遠距離でも発動するエルスの魔法なら、通る!



「そこに落ちろジュニエイトォォォッ!! エルス、アクアトップコートを解除しろぉぉ!」



「わ、わかりました!」



「がぼォッ!」



ジュニエイトはその小さな穴に落ち、そして! アクアトップコートの水はその地面に貯まった!

体力の弱まったジュニエイトは、浴槽に沈められた赤ん坊の如く、そこから脱出することは叶わなかった。



「いくら時間を止めれようが水に沈められて呼吸はできないよな、ジュニエイト。お前は強かったぜ、だがよォ……『普通の人間』だったんだよ、過去に何があったかは知らん、だがその異常なまでに鍛え上げられた体、顔に似合わぬ無情さ、強さに執着しなきゃいけねーワケがあったんだろうがよ……もう深く目を瞑れ、次に目が覚めてからまた頑張れよ」



「ゲボッゴボボッ……ジョル……ディ、コポ……」



ジャントは倒れ伏せながら、プロトスのことを想い、そして目を閉じた。



ジュニエイトが脱落したことで無力化されたバリア、すかさずレイジとシェーヌ、エルスが駆け込み、シェーヌはジャントを抱きかかえる。




「バカね、無茶するわよまったく……」



「シェーヌさん、少しの間寝かせてあげましょう、ジャントさんの戦いは終わったんですから、ね」



「プロトスの生命は俺の超能力でも感じ取れない……本当に、死んだのか」



駆け付けた三人は、ジャントをそっと眠りにつかせ、そして残る敵に戦闘態勢をとる。

ジョルディ、残る敵は彼1人のみ。

キ ャ ラ ク タ ー 紹 介


淳・ジュニエイト(じゅん じゅにえいと)

能力名「オール・タイム・ロウ」

身体に触れたものの時間を『コンマ数秒程度止める』能力。

オーパーツはタイプT (Time=時間)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。