30話「オーパーツ・タイプK」
レイジ達の会話をよそに、エクセルはゆっくり立ち上がり頬をさすって声をあげた。
「うぅ若い女の子の私に根性焼きするなんて酷いにもほどがある……ほら見てよこのヤケド……あれ?」
ふしぎなことにエクセルの頬には火傷の跡は残っていなかった、ものすごい熱だったのに。
「ぁあん? なんで?」
「ああ、俺の超能力、サイコビームは炎とか電気が出てるわけじゃなく、あくまで「気持ち」を使っているに過ぎない。熱さを感じるのは言ってしまえば気のせいなんだ、俺が倒してきた敵は「すごいビームが飛んできたから、これは熱いだろう焼けるだろう」という気のせいのもと、俺の気持ちの強さに負け焼け焦げてきたわけだ」
「じゃあ、私の顔にヤケドが残らなかったのは……」
「うん実際に焼くこともできるけど、俺は良い人だからエクセルの気持ちにだけ「熱い」と思わせる焼き方をした。逆に「俺は絶対負けない」とかものすごい気持ちの強さの奴がいたら、そいつには俺の超能力は効かないだろうなぁ」
「レ、レイジ……あんたぁ、なんだかんだ良い人や、ぐすっ、惚れてまうやろ!!」
エクセルは目に涙を浮かべながらレイジの肩をバシバシ叩いて何故だか感動していた。
敵に少しでも親切にする立ち振る舞い、エクセルには一切無い物であるわけだが、そこがレイジ達冒険者と組織OPTの違いであろうか。
「いや別に俺は、悟り能力の説明されたからお返しにに俺の能力も説明したまでだよ」
「レイジがイジメすぎたから、ギャップですごく良い人に見えたんじゃない?」
多分アリシアの言ったソレが正解だろう。
一方エクセルは大きく右手を振り上げ、城に何か合図を送っていた。すると城の壁の一部がボロボロと崩れ、入り口が姿を現す。
「城の入り口を開いてやるからさ、お願いがあるんだ!」
「なんだい」
「私も同行させてくれ、レイジ、もとい君たち冒険者の生き様に惚れた! 大した役には立てないだろうけど、味方になりたいんだ!」
「いいよ」
おいちょっと待てなんだこの急展開は、シェーヌはちょっとキレ気味でレイジに詰め寄る。
「レイジ! なに敵をあっさり仲間にしてんのよ!」
「いや、どうせ敵が仲間になる展開って、そいつ死ぬじゃん、だからいいんじゃない」
「あ、それもそうか」
「うおーい! 何物騒なこと言ってんの!?」
早くも死亡フラグが働いてか、エクセル目掛けて凄い勢いで何かが飛んで”やってきた”ッ!
エクセルの目の前に着陸したのは超巨大ドラゴン! 背中には女が乗っている、エクセルはいきなりの出来事で、ビビリにビビリまくって腰を抜かして倒れこむ。
「ひいいいいっ! ど、ドラゴンだあああ!」
「シェーヌさん、こ、このドラゴンどこかで見覚えが……!」
エルスが言い放った見覚えのあるという発言……そう、このドラゴンは過去に戦った女能力者”ティミミア・ドグマドランマ”の能力によって作られた装甲。
着地早々、ドラゴンの鎧を解除し、傷だらけながらティミミアはスレンダーな身体をあらわにした。そしてエクセルの腕を掴み引き起こし……。
「予感が脳裏を巡り、愛しき者の声により目覚め馳せ参じた……エクセル、気絶していた私にお前の声が聞こえ、す、す、好きなお前に何かあったのではと思い、目覚めて速攻でここに飛んできたという意味だが」
恥ずかしそうに口をごにょごにょとしながらエクセルにそう告げるティミミア。
まさかいきなりこんな強敵が現れるとは、なんたる事だろうか! だが一方のエクセルも冷や汗をかいて明後日の方向を見ながらはぐらかす。
「な、なにかな君は急に……私はこれからレイジ達と本部へ……(ま、まずい、最強の悟り能力があった頃はティミミアなんぞ軽くあしらっていたが、今敵対でもされたら私は死ぬぞ! 今までツンケンした態度で接していたからなぁ、どうしよ)」
「な、何を言ってるエクセル……そのボロボロになった服を見るにお前は戦いに敗れたんだろう? 私も敗れたのだ負けたのだ、敗者に居所無し、共に新しい住処を探しに行こうではないか」
「えっなにそれは……アッー♀」
そう言うとティミミアはエクセルを無理やり抱き寄せ抱えあげる。妙にティミミアの鼻息があらく
エクセルが何か、いやだ、とか、たすけて、とか叫んでいたがレイジ達は特に気には留めない、というかむしろレイジ達に話しかけてきた人物がひとり。
ティミミアの背中に乗ってやってきた赤い髪の女、そいつの名はスカーレット。
トシマにオーパーツタイプZを与え、協力してくれた人だ! エルスはスカーレットの身を案じつつ数日ぶりの再会に驚きを隠せずに居た。
「あ、もうケガは大丈夫なんですかスカーレットさん!?」
「うん、まあなんとか、歩く程度ならなんら支障ないわ、トシマは、ここにはいないようね……まあいいわ、私はあなた達に協力しにやってきたの」
「あたしらに協力? 戦力ならおおかた足りてるとは思うけどノドカとかジャントが内部に入ってるわ、私たちも今この組織の中に乗り込むつもりよ」
シェーヌはスカーレットを見つめながら、ぽっかり入り口の空いた組織OPTの本拠地である城を指差す。
これから最終決戦なのだ、十人で挑めば組織のボスとやらもひとたまりもあるまい。
しかしスカーレットは目を瞑り、静かに首を横に振り、話を続けた。
「恐らくボスに勝てはしないわ、組織OPTのボスからオーパーツを授かり強大な力を得れた者の中には「ボスを倒して自分が頂点に君臨してやる」という考えに至った者も複数居たの、でも誰もがボスには勝てなかった、ボスの能力の前には何者もなすすべは無かったの、死を受け入れるしかない」
「オーパーツを使った連中でもなすすべが無い能力……一体何かしらね」
「私はボスの能力は知らない……でも、ボスへの反逆者の死に立ち会った事があるわ。その時そいつが言っていた言葉は「ボスは、ありがちだが誰もが恐れる力を持っていた、攻略不可能な、力……」とか言ってたわ」
レイジが鋭く突っ込んだ。
「くどいな、能力がどうなのか早く言えばいいのに」
「全くもってその通りの極みね、でもボスの能力はどうであれボスを無力化する方法があるのよ、オーパーツを使ってね! オーパーツのタイプは「K」鍵、錠を意味する「Key」のオーパーツよ! その能力は「能力の封印」ということなの!!」
「な、なんだってーー!!」
一同はスカーレットの突如の提案に驚きの声を漏らす。
他人の能力を封印するという、いかにもな厨設定能力のオーパーツがあるとは!
「病室が一緒だったティミミアからオーパーツの話を聞かせてもらってね、これが一番手っ取り早い策だと思って、ティミミアの話によれば、組織内にはオーパーツを保管している保管室がある、まだ持ち主を設定されてないオーパーツもそこに全てね、これもティミミアにリークして貰った情報のおかげよ、ありがとう」
「いや、大したことはない、スカーレット、そちらこそ「敗北者同士、組織にいる意味はなくなったんじゃない?好きな人とかけおちでもしたら?」という提案をもちかけてくれてありがとう、この前はガラクタ女とか言ってすまんかった」
「おい待てお前らなに仲間みたいになってんだ」
シェーヌは勝手に意気投合する両者に少しいらだった、殺しに来た相手とそう簡単に仲良くするなし。
だがしかしエルスはまんざらでもない様子であった、敵が敵でなくなる、その光景に少し感動をおぼえていた。
「まあまあいいじゃないですかシェーヌさん、なんだか人と人って分かり合えるものなんだなって思いますよ、えへへへ」
エルスは急にシェーヌにぐっと近づき、うでをとりにやにやと笑っている。
「な、なによ急にエルス、は、発情期? あはは……」
「わーーー! ティミミア放せー! 放してったらー! 私はレイジと一緒に旅をするんだー!」
「何を言ってるの!? レイジは私のよ、誰があなたなんかと旅をさせるもんですか!」
「アリシア急に何言ってんの!? 私の!?」
珍しくレイジが声をあらげた、というか裏返った。超能力者レイジも妖精アリシアには弱い。
だがしかし今は盛りあってる時ではない、彼ら四人がやることは……「組織内のオーパーツ保管室に行き、タイプKのオーパーツを手に入れること」なのである。
「エルスちょ、ちょい離れなさいっ、ところでスカーレット、オーパーツを手に入れるまでは分かったのだけれど、一体誰がオーパーツを使うの? 」
「そうねぇ、オーパーツはひとりひとつまで……さらに能力を扱う高い才能がなければ操ることはできない。私には扱うことができないし、ティミミアもエクセルも既にオーパーツを使っている……となればあなた達四人の誰か、もしくは組織本部に侵入している、それ以外のひとに使わせるのがいいわね」
「あ、でも聞くところによればジャントさんがもつプロトスはオーパーツだそうですし、トシマはタイプZのオーパーツを使ってましたよね? となると候補としては私とシェーヌさん、レイジさんアリシアさん、あとノドカさんかウツリさん。犬も扱えるというのならガレンもいけますねぇ」
「うーん、悪いけどその中だと使えるのはレイジとノドカだけね」
「え! なんでですかスカーレットさん!?」
「能力を扱う高い才能……と言ったわよね、レイジの超能力はもともと「人間の中にある生命力を、気持ちと比例させて放つ能力」に過ぎない、本来はせいぜい衝撃波能力よ。でも彼は応用の幅が常人のソレじゃない、これは能力を扱う才能と言って過言ではないわ」
「褒めてくれてありがとう」
「どうも、でノドカは磁力能力を上手く器用に扱えている。引き寄せと反発、触れたものの磁石化、鉄を操る技術……これも高い技術によるものね」
話を続けるスカーレットに、シェーヌがここぞとばかりに光で作った弓矢を見せびらかして自信ありげに言う。
「ほら私もこれ光を物に変えるって凄くない? ほらほら」
「いやそれは能力を使ってるだけに過ぎないじゃない、応用も工夫もないと思うのだけど」
「だって光だよ……属性的になんかすごい強そうじゃん……光だよ……」
しゅんとするシェーヌ、一方スカーレットは慌てて目を見開き頬に手を添えてフォローの言葉を探す。
「あっえっとそう! オーパーツを使える条件はもうひとつ、もともと持ってる能力がオーパーツの性質とマッチしていれば才能が無くても使えるわ! シェーヌならその……えっと「Light(光)」とか使えるようになるんじゃないかしら! すごいわっ」
「別にあたしオーパーツが使いたいわけじゃないしな……」
「う、ごめんなさい、とにかくみんな急ぎましょう! 私が保管室へ案内する! ティミミアはここで待たせることにするわ」
「へ? なんでですか? ティミミアさんのドラゴン能力があれば百人力なのに!」
「エルスとか言ったか、世界の外にも敵はおり、人は世界の中でそれを邪魔されない為に尽くす、宇宙とはもしかすると高い壁なのかもしれない」
「ティミミアさん、どういう意味なんですか?」
「組織には、オーパーツ捜索の為に遠征に行ってる幹部も居る、そいつらが帰ってきて組織側の有利、君たちの不利になられては困るので、私とエクセルが門番の役割を担う、帰還した幹部を説得、もしくは撃退しよう、という意味だが」
「なるほどね、私たちの味方をしてくれるんだね、ええと、ティミミアさん! ありがとね、私はアリシア、この戦いが終わったらまた会おうね!」
ティミミアはいきなり声をかけられ、ぴくっと肩を震わせ、鼻の付け根あたりをポリポリと掻き、目線をアリシアからそらしながら、今にも上がりそうなひくひくした口角をおさえつつ、照れていた。
「ふん、私に裏切りまでさせるとは大した者たちだ、蟻などと言ったことをとても恥じる.
全てが終わったあかつきには、私とエクセルの花道に、アリシアちゃ……アリシアを加えてやっても、いいぞ」
「ふざけるな、アリシアは俺のだ」
「ちょっとちょ、レイジ!?」
ティミミアはフフッと鼻で笑ったのち、スカーレットに視線を移す。
スカーレットもまたティミミアを見つめ、静かに首を縦に振る、そこに言葉は無かった。
「さて行くかみんな、ジャント達の所へな!」
レイジの先導でエルス、シェーヌ、アリシア、スカーレットはそれぞれ相槌をうち、これまた言葉もなく組織へと入っていった。
全てはオーパーツ・タイプKにかかっているのかもしれない、ボスに確実に勝つために!




