29話「ジョルディ&ジュニエイト」
レイジ達が快勝を収めた一方で……ジャント達は!
「さぁてどこに行ったもんかねぇ、この広い部屋、扉も何もあったもんじゃあないぜ。どこへ進んだモンかなぁ」
ジャントは大剣プロトスを地面に突き立て、首筋をぽりぽりかきながら路頭に迷っていた。
どうにもこの部屋、進むべき場所がない、ゴールというわけでもあるまいに。
「あのォ~ジャントさん、進む場所なら俺たちのすぐ後ろにありますねぇ」
「おいトシマてめーそれ俺達が来た道じゃねぇか逃げようとすんなや」
トシマとガレンのコントがまた始まった。
そんな中ノドカは地面にべったりと張り付き、何かやっていた。
「おーん? ノドカどしたぁ小銭拾いか?」
「ジャント、今俺の磁力能力を地面に送ってみた……この下に鉄の反応がある。つまり、この下に何かがあるのは確実だ、恐らくは地下室」
「なにっ! 磁石ってどうも主人公には向いてねー能力かと思ったが結構使えるじゃあねぇか! よし、じゃあ早速悪の鬼神色で地面をぶち壊すとするか!」
ジャントが大剣を大きく振りかぶり、破壊の色「黒」のパワーをプロトスに送り地面を狙う!
だが、その一瞬無防備のジャントにウツリが突っ込んできた!
「ぐあばあああ! いきなりなんだあああ」
ウツリもろともぶっ飛んでジャントは地面に転がった。
起き上がりつつジャントとウツリは同時に顔を見合わせ口々に叫ぶ。
「なっなんだあ~オメーはあ~! 俺のこと好きなのかあ~!?」
「いや危なかったから! ジャントさんの周りで物騒な音がしてたからつい! ケガは無い!?」
「なっ、音ぉ? 俺には聞こえてないぜ! ケガっておま、あえて言うならさっきのタックルで足を挫いたわ」
「それはごめんなさい! 言い忘れてたけど私耳が良いんです!」
「ああ~ん耳がイイだと? だからお前だけ俺の周りの音が聞こえたと? そんな都合のイイ話があるかァ?」
ウツリの耳が良い自慢の、次の瞬間……ジャントが”立っていた場所”に爆発音が鳴り響く。
爆発の音はよっつ、何も無い空間に爆発が起き……ジャントは助かったことになる。
「ウソやん……」
「ほらね!? ほらね!?」
「ジャント、今僕たちは攻撃を……”すでに攻撃を受けている”!!」
プロトスの言葉に反応し、ジャントは黒色のままの剣を振りかぶりながら即座に立ち上がり叫ぶ。
「誰だ真っ先に俺を狙いやがってちくしょう! かかってこいやァ!」
「ガレン! お前イヌだから鼻が効くだろ、敵の位置とか分かるか!?」
「ああ~ン!? まあ嗅覚はない事は無いぜッ! 敵の位置は……あっちだ!」
ガレンが右前足を、この巨大部屋の壁に向けたッ!
敵はそこに居るまたは、そこから来るッ!
即座にジャントは自慢の脚力で飛び上がり、そこを狙う!!
「黒の鬼神色、悪な剣で破壊させて貰うぜェ~!!」
ビンゴ! ジャントが飛び上がった瞬間、ガレンが示した位置には隠し扉があり、そこから人間が現れた!!
重装備に身を包んだ褐色肌の黒髪ロング女! ジャントと同じくらいの大剣を持っているのが見た目的におぞましく、しかし無表情で現れたその女は、ジャントの奇襲に気がついていない!
颯爽とジャントの前に突然あらわれ、名乗りや初ゼリフのことでも考えているのだろう、なんとマヌケな事か! 上空からのジャント一太刀、喰らうがいい!
「うっ、おおッ!?」
しかしジャントの剣は……その女に効かなかった! 無防備に近い頭部を狙ったのに!
かと言ってガキン、とかそういう音も鳴らなかった、全くの無音! ジャントの剣がこの世に存在しないかの如くの無音で、その女の頭部に触れたまま剣は動かないのだ!
「て、てめー何をしやがった! どんな能力使ってんだ!」
即座に剣を離し、次は剣に「赤色」を灯らせる! 炎の剣!
「防御出来たぐらいで図に乗るんじゃねぇ! 灼熱でも喰らえや!」
ジャントは全力で振りかぶり……多大なる熱と炎を帯びた剣でその女を突く!
「あれー?」
ジャントからマヌケな声が漏れる、剣が女に突き刺さらない。触れてはいるんだが。
防御できたとしても炎が彼女を包み込んだはずだが、けろっと無表情してる。
そんな涼しい顔の彼女は、視線も頭も動かすことなくボソボソと喋る。
「暑い」
暑かった。
ジャントは彼女から飛んで来たグーパンを顔面にまともに食らって激しく吹っ飛ぶ。
その勢いたるや鳥人間コンテスト。(意味不明)
「ぐはあ~! なんで効かないんだよ!」
トシマはガレンにまたがり螺旋ボールを作りながら、その女に向かう!
「こいつはあのティミミアとかいうドラゴン女と同類か! 人間サイズだが物凄い防御力を持ってる! ならば俺の螺旋ボールが通用するはずっ!」
「ヒャハハ! 重装備ゆえにトシマ、オメーの亀みたいな速度のボールでも通用しそうだな!」
「亀じゃねー! トータスじゃなくてヘリックスだこのヤ」
この野郎、と言いかけたトシマの周りで、爆発が三つほど起こった。
ジャントを襲ったあの爆発と全く同じだ! 軌道もなく突然起こるッ!
その攻撃にバランスを崩し地面に転がるトシマとガレン。
「ぐあー痛ってぇ! 螺旋ボール消えちゃった!」
「トシマてめー爆発にビビって俺に螺旋ボールぶつけたろ! すげぇ回転してずっこけたわ!」
「すまんごめん!」
「氏ね!」
トシマとガレンを攻撃したのは、重装備の女では無い!
新たに空から降って現れた男が居たのだ、青龍刀のような剣を持つマフラーを付けた男!
「奇襲成功エクスプロージョン! 待ってたゼ、ジャント御一行サマよぉ! 名乗らせてもらうっ! 俺の名はジョルディ! そして!」
「ジュニエイト」
重装備の女もボソリと名乗る。
「俺たちこそチロシンキナーゼ様の最後の砦! いや二人だから双子山ってところか! そうだよな? アハハハハ」
「山も谷もない女で悪かったな」
「お前に言ってねェ~ゼ!! フンまあいい、いくぜジャントとその仲間共ォ! チロ様が求める”直接感”のジャマはさせねェ~!」
ボソリと反論するジュニエイト。
敵は2人居たのだ、ジョルディとジュニエイト。
効かない防御と見えない爆発。
ジョルディが口走った言葉の中に出てきた「チロシンキナーゼ」という名前!
これがボスの名前に違いない! タンパク質みたいな名前だがこいつがラスボスに間違いないだろう! そして目的の名は”直接感”ッ! 一体何に対しての直接なのかは不明ッッ!
「ぐくゥっ……ごァバ、あばばば……この私がやられるだなんて……げブッ」
一方組織本部の外! 地面を哀れにも這いずり回るその女の名はエクセル。
自慢の白装束的シスター衣装は哀れにもボロボロに焼け千切れ、見るも無残な着の身着のまま感を出していた。
「あのレイジとかいう奴ら……許せんぞ、必ず、必ずしかるべき報いを……!」
「しかるべき報いを……なんだって?」
そう声をかけてきたのはレイジ、這いずり回るエクセルを見下ろし、冷たい目線を投げかけた。
その腕の中にはアリシアも居るし、シェーヌとエルスもすぐ後ろに立っている。
エクセルはレイジに敗北し、無残にもこうして追い詰められたというわけだ。
「返事が無いな、しかるべき報いを〜? なんだって〜?」
今度はエクセルのそばに腰を落とし、左腕でアリシアを抱きかかえたまま、右手でエクセルの頭を、髪の毛を鷲掴みにして耳元で声をかける。結構大声してる。
「あ痛ッ! いやそのっなんでもないって! なんでもないったら、私の完敗だよ!」
エクセルの心境としてはこうだった。
なっ、なんだよこいつら〜! 私は恐らくレイジに撃破されてから10分は気絶してユメの中だったってのに、私が目を覚ますまで待ってたってのか〜!?
私の事をイジメて楽しもうってクチなんか!? こいつら結構陰険だ! だ、だが私の悟り能力ならこんな土壇場からでも超人的な幸運で乗り切れるはずだ! こいつら全員血祭りにあげてぶっ殺してやる〜!
さぁオーパーツよ答えれ! 私が今助かって、レイジ共を血祭りにあげるにはどうすれば良いッ!?
「……そのまま必死に地べたをごきぶりみたいに這いずり進め」
よし答えがかえってきたぞっ! なんか言葉が汚いしレイジの声に似てた気がしなくもないがこれで私は助かるッ!
「私の勝ちだァ〜ッ! てめーら全員血祭りじゃボケーッ☆」
「やれやれだ」
レイジはエクセルをつかむ手を離し、ため息をつきながら肩を落とした。
そのままぐんぐん進むエクセルをじーっと見つめる。
「ぎゃあアンッ!! 痛い痛い痛いッ痺れるウウッ!」
「ウィルトラップを仕掛けておいた……さっきの言葉は俺の声だ、それぐらい気づけ……お前のオーパーツは既に機能していない」
「ぎにゃあああッ! た、助けて助けてッ痛い痛いッ!! な、なんで私のオーパーツが動かないのさァ〜!」
レイジの技の一つ、ウィルトラップに引っかかった者は痺れと痛みを継続的に味わうのだ。
そしてエクセルは苦しみながら自分のオーパーツがくっついている部位、額に手をやると、オーパーツはボロボロに砕けていた。
「あっあっあっあれェ〜! なんで壊れとるのぉ〜!?」
「壊したからだよ、お前が眠ってる間にな」
レイジはエクセルにまたも近寄り、腰を落としウィルトラップの攻撃を解いてやった。
「グクッ、技を解いただと? 情けのつもりか! 私の能力だけ無力化しておいて……命は助けようなどと! いいか、我々崇高な組織はな……ウ熱ッ! あっつウゥッやめてっやめて!」
レイジは右手に”サイコビーム”を出す際の念動力熱エネルギーを溜め込み、その人差し指のみをエクセルの顔に押し付けた。
「命を助ける? なんでそう誤解しちゃう? それはそうとあの城をどうにかしろ、中に入れない、お前が操れるんだろうエクセル」
「ギャッ! 満15歳の柔肌にこんなことしていいと思ってんのかぁ! 顔にヤケドなんてしたら一生残っちゃうし隠せないよ! どうすんのさぁ! こんな若い子イジメて楽しいのか将来性考えろ馬鹿ぁ! 心とか痛まないのかぁ!」
泣きわめく口うるさい彼女に、アリシアはムッとした表情で声をかける。
「フーン……自分の能力に自信がある癖に、命乞いはシッカリできるのね。それより私たちみんなに謝ってよ」
「え、あ、謝る!? 分かったよ、ごめんごめん、ごめんなさーい! もう二度と逆らわないから見逃してよ、ほら私若いんだからさ、こんな所で死んだら報われない人生だよ? そんな事していいと思ってるのかな、少なくとも主人公がやることじゃな……」
シェーヌは光を具現化しナイフを作り出してエクセルの額に突き付ける。
「口数多いしうるせぇ」
「わーっ! 何すんのさ! 私の額のオーパーツは脳に食い込んでるんだからマジで危ないよそういうのやめてよ!」
「知ってるわよそんなん、レイジから聞いたわ、早く謝れって」
「え、さっき謝ったじゃない……」
レイジは一層強くエクセルの頬に指を押し付ける。
「熱ゥ〜! あっづい! やめ、やめてってばぁ! ど、どうしたらいいの、うわあああん」
本気で泣きだしてしまったので、レイジとシェーヌは(ほんのちょっぴりだけ)気の毒になってきた。
ということで、軽く本題に入ろう、レイジが指をエクセルから離し喋り始める。
「質問なんだが、こうして俺たちがのんきしてる間、あの城は全く俺たちに攻撃をしてこないが……お前が操らないと動かない仕組みか? アレはなんなんだ?」
「あうぅぅぐ、ひっく……あれはオーパーツだよ、あの城はオーパーツタイプC……キャッスル(城)のオーパーツなんだよ、操ってる人間の名は「ルゥザー・ミスホーチュン」というただの男だが、直接感に耐えられず完全にモノと化したんだ……」
「なに? 直接感? なんだそれ何に対しての直接? 間接感もあるのか?」
レイジが気にしたのは直接感という言葉、恐らくコレ単体では意味は伝わらないであろう。
ぜひとも間接的な説明をお願いしたいところである。
「組織のボスが求めているもの……それが直接感、曖昧な表現に止め置いてるけど、ようは人でないものになろうとしているんだ、直接能力になり人で無い感情を味わう。それが直接感」
「なるほど、で、あの城は直接感というやつなのか? まさか、その直接感とやらで「城を建てる能力」だったのが「自分が城になる能力」になっちまったとでもいうのか?」
「そ、その通りだよ、それが直接感なんだ。もうあの城はモノでしかない、私の合図なしでは1ミリたりとも動かない」
レイジの割と適当な推理は意外にも当たっていた、直接能力となる。と言えば分かりやすいであろうか。
人でないものとなる、ソレがボスの狙いなのだ。
「じゃあ何? 私の光の能力なら、直接感とやらで私が光人間になったりするっていうの? なにそれロギア系かなにか? ていうか直接感って、能力が進化するとでも言うの?」
「そこんところだが、私にもようわからん……だが直接感というのは生命エネルギー的な物で、人体に注入されまくることで、あのルゥザーという男は城そのものになったんだ」
レイジは腰をあげ、立ち尽くしながら城を見据えた。
「となるとボスの能力は、エネルギーの操作的な物か……?」
エルスは、シェーヌのケガの手当てをしていたようで、それが今(応急処置ではあるが)おわったようだ。
「レイジさん、エネルギーとひとえに言っても火力、電力、沢山ありますよ。もしそれら全てを司る能力なら、この上ない万能パワーかもしれません!」
「そうねぇ、というかエネルギーって言葉自体、ものすごく広い意味を持ってるわけだし? ほら、あの詳しくないけど位置エネルギーとか? 言っちまえばブン殴る力もエネルギーわよ?」
「語尾が変だぞ、そうかでも確かに……俺の超能力に匹敵……いやそれ以上もありうるか
とにかくジャント達への加勢が必要かもな、ボスは未だ俺たちに力も姿も見せていない未知なのだから」




