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28話「サトリオール・グラジオールとザ・キャッスル その4」

「うっ、うあッぁあああアアァ! レイジをどうしたのッ返して! レイジを返せええエェ!!」



こんな表情と様子のアリシアは見た事が無い。

凛とすました、清涼で癒しの権化のような彼女はもう既に居なかった、気は荒ぶり激昂し、炎を抱き爆発するホムラの物の怪と化した!



「フーン、レイジのやつ最後の力を振り絞ってテレポートしたか~☆ 愛する仲間に無様な死体を、見せないためにっ! くぅ~泣けるね~シリアスだね~☆ しっかしあいつ私のペンどこにやったんだ?」



エクセルの言葉はアリシアに聞こえてはいなかった、またアリシアの言葉もエクセルには聴こえてなどいなかったのだ。

ただ直進しながらアリシアが放つ無数の火球がエクセルに容赦無く襲いかかる!



「ちょアリシア怖ッ! おっとそんな事言ってる場合じゃなかったわ! 私もライトニングアロー!」



アリシアの火球とシェーヌの光の矢の集中砲火! 名付けるならば「バーニングトワイライト」ッ! 熱き炎と眩しき光、二つの輝きが悪を討つ!



「わお、見た目的に絶望だなこれは」



まるで平坦な土の上を歩く一匹のアリが、無数の雨に打たれるがごとく光景、この猛襲に耐え切れる訳がない。

ものすごい反射神経を持ってしても、ほとばしるほどの幸運であっても、避けられるのはせいぜい数秒程度だろう。


雨を避けると同義、それがこの技バーニングトワイライト!



「うわっ熱ゥ! あっつ! ちょっと待ってやめてー」



エクセルは直撃こそしなかったが爆散する火球の熱に、着実に追い詰められていた!



だが! その熱さえ嘲笑うような、とどこおる視線というやつをエクセルは向けていた! シェーヌ達に!



「おいおい忘れてもらったら困るんだけど、私が今行ってるのはレイジだけを殺す事じゃあないよ。言ったはずだよ☆ お前たち四人をぶち殺す方法が分かった! ってね☆」



そうは言っても爆撃音でシェーヌ達には聞こえるまい。

だが、聞こえるか聞こえないかは全く関係がない。


どう耳を塞ごうが、目を閉じようが、裸足で逃げ出してみようが……真実と結果というのは必ず訪れ、突きつけられ、理解せざるを得ないのだ、それが悟りの境地だ、この世の現実だ。



「カハッ……」



次の瞬間、かすれるような声が聞こえた。


それはエクセルではない。


かと言って、一人だけ防御魔法の加護を受けていないエルスでもない……。



その声の主は……シェーヌだった。



「な……にィ……!」



「うッうわあああぁシェーヌさん! シェーヌさんどうして! なんで!」



エルスの悲痛な声が響く、シェーヌは口から血を吐いて膝をつき呆然としていた。

シェーヌ自身も、自分に何が起こったのか理解するまで、数秒かかった。



「シェーヌ!? ぐっ……エクセル! あなた一体何を……」



アリシアも仲間の負傷により、正気に戻り返る。

とにかくエクセルの仕業に間違いはない、光の矢の猛襲が止み少しばかり余裕が出てきているあの憎きエクセル!


アリシアは正気であるがそれでもなお怒りは冷めやまぬ!

どうしてくれようか、レイジを返せ、シェーヌに謝れ、そういった感情が嫌でも頭を交差する!


だが、次に聞こえた音は、アリシアがエクセルを討った音ではない。


ぐしゃ。


というとても生々しい音、それでいて直接的な音、すっと耳に入るような……ある種の爽快感を感じるような……。



「くあっ……」



アリシアの声だった、そうして先ほどの音はアリシアに攻撃が直撃する音だったのだ。

エクセルの背後にそびえ立つ城、ソイツが放つレンガ攻撃。

エルスは動揺した、何故防御魔法が意味を成していないのだ、と。



「あっそんな、アリシアさん……!? 私の防御魔法がっ……! 切れちゃってる……シェーヌさんのことで動揺したせいで……!?」



エルスがシェーヌの負傷に気を取られたほんの一瞬、防御魔法が弱まったその一点への一手。

アリシアの頭部、顔半分ほどのサイズのレンガが直撃し、アリシアの頭部はその端正な顔立ちを失い歪み、赤黒い血を出し地面に体ごと、ぼとッと落ちて動かなくなった。


一方でシェーヌは。



「ゴボッ……喉に、私の喉を狙ったのね……エルスの防御魔法がゆき届いて居ないほんの一点……呼吸が出来なくなるため鼻の穴と口だけは防御魔法が……張っていない」



シェーヌは立ち上がる事もままならない状況で、自分が受けた状況を理解した。

エルスの防御魔法は健在だった、それなのに攻撃を受けたのは「口の中」であったのだ。

アリシアが放つ火球の熱が原因だった、度を過ぎた温度により爆発が起こり……とても小さな石のツブが、凄い速度でシェーヌの喉を通り、脳の神経を揺さぶる程のダメージを与えたのだ。

こんな、こんな不運な事があるものだろうかッ! こんな”まぐれ”が何度も!



「えーと後は防御魔法使いだけか~☆ しっかし防御しか能がないなんて君もしょぼいよねぇ、あとあれだ、アリシアとかいうレイジの相棒もさぁ、火を出すだけで居る必要とかないじゃん☆」



「わ、わたしの、わたしの仲間を悪く言わないで!」



「あらら~? 足震えてるよ大丈夫? 今まで仲間と徒党を組んで私に襲いかかってたもんねぇ1人じゃ心細いよね~☆ あんたら冒険者って何がしたいのかもわからんし、相棒とやらが居る意味も不明だし私達の邪魔はしてくるし……ほんっと面白くない群像劇気取り集団だよね~☆」



根本から否定していくスタイル。



「現にほら、レイジが傷を負ったのはシェーヌの光の矢のせいでしょー? そしてそのシェーヌはアリシアが起こした爆発のせいで致命傷、アリシアがレンガを避けなかったのは……エルス・アナボゾン、君のつっかえない防御魔法を頼りにしてたからじゃーないのかな? 君達は数が多いだけで、ただお互いの足を引っ張りあって挙句、今こうしてドン詰まって一生! 先へは進めない状況になってるじゃん! あははははははっ!!」



「うっ、うぅっそんな……そんな!」



エルスは絶望した、いや、状況が絶望だからこそ当然である。

レイジが致命傷を受け、それから三分たらずでシェーヌもアリシアも負けた。



「エルスだけは精神的に殺しちゃったかな? まあいいや物理的にも殺しておこう、やれー城☆」



エクセルが振り上げたその右手、その合図が通じ城からレンガが射出される。合図の為の、その為の右手。

エルスは膝をつき、声をあげてむせび泣き、もはや避ける事などかなわなかった。



「エルス、泣い、てるんじゃあ……ないわよ」



まだ諦めてないものは居た、それがシェーヌ……朦朧とした意識を味わいながら、脳を揺さぶられる感覚に弄ばれながら……。

膝で体を支え、その右手を思いっきり振り上げ、エルスに飛んでくるレンガをキャッチしていた。エルスの為の。その為の右手。



「シェーヌさん……!」



「アリシアの炎は私を傷つけた、だけじゃ、ない……アイツを救ってくれたわ……」



「んあぁ? アイツって誰さ、てかまだ生きてたのか君は」



右手の指はあらぬ方向に曲がり、少しばかり赤く染まっちまったがシェーヌは気にしない。(意識がはっきりしてないおかげで痛覚が死んでるのかもしれないが)


エルスは新たに涙を零し、シェーヌの安堵感に包まれる感覚を味わいながら立ち上がる、もう泣いても蹲ってもいられない!


そしてエクセルはシェーヌの言葉に耳を傾ける、やれやれ何を言っているのやら。



「私の言葉の答えは……ソイツに直接、聞いたらどうよ」



「え?」



シェーヌはほくそ笑みながらエクセルの背後を指さす、つられて目線を移すエクセルに見えた者……。



「サイコ、ビーム!!」



その男レイジ。放つ光線が出る右手とエクセルの距離ほんの数ミリ。

エクセルは何の言葉も放つことなく高熱に焼かれ吹き飛んだ。



レイジは生きていた、死んではいなかったのだ!



「うそ……勝った、勝ったんですか!? 私たち! ね、ねぇシェーヌさん! レイジさん!」



「あっはは……よくやるわレイジ、あんた死にそうじゃない」



シェーヌは草の茂みに身を任せごろんと寝転がった。

そして少し離れた黄土色の地面を指さす。



「何よこれ」



地面には文字が書いてあった……「人の死は息が止まること」と。

ひとつだけではない、地面にいくつも、近くに生えている木にも。なんとレイジの腕にも。「人の死は息が止まること」といくつもいくつも。



「俺が念動力で書いた」



「そうじゃなくて」



レイジはペン先がズタボロになったペンを投げ捨て、アリシアに向かって歩みを進める。



「いちかばちかだった、確実に死に至らせる能力なら俺でも勝てないと思ったからな。だから、あの女の中での「死の定義」を変えることを思いついた」



レイジはアリシアを抱きかかえ、髪を撫で、自身の衣服で血を拭ってあげた。



「息と命は伝統的に深く結びついていると考えられていた、とどこかで聞いたことがある。一説によれば息が止まることを死だと考えることもあるそうだ、だから俺はサブリミナルを利用した。あの女の中で「死とは息が止まることなのだ」と認識させた、文字を至る所に気づかないレベルで書いてな」



「いや私は気づいたけど今、ふつうに」



「成功するか未知数だったけどそれしかなかったから俺はテレポートで奴の死角に逃げ延びた後、全力で息を止めそのまま気絶していた。死んだ奴ならあいつの能力の把握から漏れたというわけだな、俺から攻撃される可能性を全く注意していなかった」



「いや出血で死ぬでしょ! レイジさん、なんで生きてるんです?」



レイジは首を少し傾けて、エルス達に見せる。見るに痛々しいが、炎で焼かれたような跡が大きく残っていた。



「アリシアの飛び散った炎が俺の傷を焼いて止血してくれたようだ、本当に運が良かった、うん。しかし念動力でペンを浮かせて速筆で文字を書くなんて死にかけながらやるもんじゃないね、死にそうだ」



レイジが淡々と説明を終えたそのとき、アリシアはゆっくりと目を覚ました。

赤黒く染まってしまった顔半分の痛々しさをかき消すように、大きく開いた右目はレイジを見て、うるうるしく希望に満ち溢れた。



「レイジ……帰ってきて、くれたの?」



「ああ、アリシアの炎のおかげでな、ただいま」



キ ャ ラ ク タ ー 紹 介


エクセル・ウェザーコック

能力名『サトリオール・グラジオール』

あらゆる事を悟り、理解する無敵の能力

オーパーツはタイプR (リアリゼーション)

額部に装備、オーパーツの能結針が脳に食い込んでいる。



登場したオーパーツまとめ


A(Aura)オーラ

B(?)

C(Castle)キャッスル

D(Dragon)ドラゴン

E(?)

F(?)

G(Gravity)グラビティー

H(Human)ヒューマン

I(?)

J(?)

K(Key)キー

L(?)

M(?)

N(?)

O(?)

P プロトス

Q(?)

R(Realization)リアリゼーション

S(?)

T(?)

U(?)

V(?)

W(Water)ウォーター

X(Xenobiotica)ゼノバイオティカ

Y(?)

Z(Zig Zag)

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