26話『サトリオール・グラジオールとザ・キャッスル その2』
両手の人差し指を立て、くるくるくるくると回し、わざとおぼつかない足取りでフラフラ動くエクセル。
ものすごい挑発だ、煽りだ、沸点が試されてるのか。
「あぁ! うざいわね煽るんじゃねーっつうの! ねぇみんな! レイジは私が責任持って面倒見るからあんた達は私らに構わず城の中に行って!」
シェーヌが大声で全員に呼びかける! エクセルが跳ね返したせいとは言えレイジの怪我はシェーヌの光の矢の仕業だ。
であればシェーヌが残るのが妥当か、責任を追及してる場合とも思えないが……!
単身エクセルに突っ込むシェーヌを追いかけ、ノドカが口を開く。
「シェーヌ、本当に大丈夫か? 少女とはいえオーパーツ使いの幹部、全員で着実に撃破した方が」
「だまらっしゃい新入りィ! こちとらパニクってんのよレイジごめーん! それに城にはジャントが一人でのりこんでんでしょ? まぁ誰にも見られない内に死んでるキャラとも思えないけど、大ボスに向かってるあいつの方がよほど危険のことよ」
「そうか、武運を祈る」
「いつの時代の人よあんた」
走りながらの話し合いを終えるとノドカはウツリの手を引っ張り、城の内部を目指す。
トシマとガレンも全力疾走、立ちはだかるエクセルを押し退けてでも中へお邪魔させてもらう勢いだ!
「ふふん最強のレイジがやられてパニクってるって感じ? 怒りに燃えてる感じ? 悔しかったらかかってこーい☆ 私は絶対死なないもんね~☆」
エクセルとしては、仲間をやられた残り物軍団がやけくそで突っ込んできて、私を攻撃してくるかな?
とか思っていたが……ノドカ達が取った行動は。
「みんな城へ乗り込め! 女の相手はシェーヌとエルス、レイジとアリシアが受け持つ!」
まさかの総スルー。
相手にされない女エクセル。
「ふぁ!? ええっ何それは、ちょ、待てい!」
反応したときには時すでに遅しで、ノドカ達が城の内部へ消えていった後だった、しかも入り口は巨大な城の自動修復で修理され、ほぼ無くなりつつあるしエクセルが追いかけるのは無理となった。
「うおっ!」
それにエクセルの背後から襲い来るものも多数。光の矢が頬をかすめた。
「いっけないまた跳ね返されたらとか考えたら手元狂っちまった、次は当てるわよコノヤロー」
「シェーヌさん大丈夫です、次は私の防御魔法が皆さんを守ります!」
「助かるわ、エルス……さぁとっとと決着つけさせてもらうわよ!」
「し、しぇーぬ……」
「うおっ!? いきなり何!? ていうかレイジあんた動いて平気なの!?」
「そうだよレイジ! 無茶しないで、私たちに任せてよ!」
「アリシアがそう言ってくれるなら頼もしいことこの上ない、が……俺なら平気だ、なんか念力的なアレをして少しは動ける……」
「一応の説明すら省いてんじゃないわよ、何気にあたしら初会話よね」
「本当だな、そう思うと傷口が広がってきた……」
「なんでよ!」
四人はなんとか戦えるようだ、形成で言えば四対一、どちらが有利か……考えるまでもあるまい。
エクセルは何やら懐をゴソゴソと漁りながら、別段焦るでもなく寧ろ余裕溢れる表情で口を開く。
「シェーヌ、能力は光。エルス、能力は防御魔法。レイジ、能力は多種多様の超能力。アリシア、能力は炎。はぁレイジはともかく、個々の能力はしょぼいのにこう集まられると厄介だなぁ、全員一度にブチ殺すとなるとたぶん一分じゃ収まらんぞ~?」
淡々とした流暢な独り言タイム。エクセルはずいぶんこちらの情報にお詳しいようだ。
アリシアはどうもそのことが気にかかり、エクセルに話しかける。
「私たちの事に随分詳しいのね? 一体どうして?」
「ん? あぁアビスとかマドウから聞いたんよ……あんたたちの情報は組織に開示されてるからねー」
「なんだか嫌な気分……」
「わたしは物知りなのでね~☆ なんでも知っとるのだよん」
なんか喋り方がムカつく、そう思ったシェーヌは弓を即座に構える。
「うん余裕ぶってるなこの女、とりあえず弓矢で仕留めておこう」
どの世界にもいるものだ、本当は余裕などないのにハッタリで余裕ぶる者や人が。
そんな奴は一度ブン殴られると脆いもの、シェーヌの場合は鉄拳制裁ではなく弓矢一閃だが、我々冒険者を殺しにかかってくる組織の一員なら即死を味わわせるのもまた一興。
「あ! そうだ! わかったぞこいつら四人をブチ殺す方法が!」
「だまらっしゃい戯れ言は終わりよライトニングアロー!」
弓はひいた、あとはこの矢を持つ手を放せばエクセルはお陀仏……!
かと思われたそのときその瞬間!
「うおおっ! なになになんか石が飛んできたっ!」
シェーヌに向かって複数の石が飛んでくる! そうだ、完全に忘れていたがエクセルの背後にあるこの城……石を飛ばして攻撃してくるのだ!
意思をもっているのかだれかが操っているのか、もしそうならこのエクセルとかいう女のしわざに違いあるまい!
「ハードネス!」
攻撃が飛んでくるのはシェーヌに向かってだけではない、レイジ、アリシア、エルスも狙われている!
レイジとアリシアはエルスの防御魔法で無事だが肝心のエルスの無事が確保されていない!
「サイコビーム!」
即座にレイジが前に出て飛んでくる石群を撃ち落とす! これぞチームワーク。
「レイジさんありがとうございま……あ、私たちって初会話です?」
「うん、傷が開いてくる」
「だからなんでですか!?」
「それは冗談だけどしかし、多分だけどあのエクセルとかいう女がオーパーツ使いとするならば……」
レイジは恐ろしい実態に気づきつつあった、このエクセルという女は武器を持ってはいない……だがそれは間違いであった。
シェーヌもまた鋭い目線で城を見ながら口を開く、あの城は……!
「あの石を撃ち出す要塞的な城、もしかすれば”あの城そのもの全体”がエクセルとかいう女のオーパーツって事かもね」
「シェーヌ、お前も気づいたか……考えにくいことだが、そもそもオーパーツの実態は全く分からん。あの城そのものが武器、なんてこともあると思う、怖すぎだけどね」
「ええっじゃあ私たちは四人で城を破壊するんですか!? 私に至っては防御しかできないんですけど」
「大丈夫ですよエルスさん、あのエクセルという能力者そのものを倒せばあの城も無力化するはずで……あっ私とエルスさんって初会話ですよね」
「あっ本当ですねアリシアさん、うっ傷口が」
「いや傷口ないでしょ!」
先ほど記述した戦局は訂正させてもらう、シェーヌ達四人VSエクセル、と城。四対一+城。さてどっちが有利なのかいよいよわからなくなってくる。
「ええい何会話してんだ! いてまうぞこらー☆」
ここは喫茶店ではない、ので。容赦なくエクセルの攻撃は続く、それも城から石を飛ばしてくるなんとも異様な攻撃が。
その攻撃をなんとか防御回避しながらレイジが口を開く。
「それともうひとつ、多分だがあの女……人の心が読めるかもしれない」
「心を読む……? するってぇと何かい? あんたの気察知能力みたいな感じ?」
「いや俺よりも上位の能力だろう、相手の考えてることまで事細かに分かるのかもしれん。だからこそ俺たちの攻撃はあっさりかわされたり、初見なのに関わらず攻略されたりした……」
「なるほど……じゃあそれをどうするの?」
「わかりましたよ私! シェーヌさんレイジさんアリシアさん、無心ですよ無心! 何も考えずにあのエクセルという女の子を倒せばいいんですよ! ね? レイジさん!」
「え、うんまぁね」
「でもレイジ、何も考えないで戦うなんて可能なの? 私みたいな単純に炎を出すような能力ならいいけど。レイジの能力は気を使う、集中力を使う……それって心を読まれたらまるわかりなんじゃないかな」
「アリシアの言う通りだ、俺の能力は何も考えず……なんてことはできないだろうな」
とここで前髪をたくし上げ、カッコよく弓矢を携えながら前進するシェーヌの姿が!
「しょうがないわね……あたしが特攻してやるか!」
「なるほど何も考えてなさそうな人間なら」
「ぶっ殺すぞレイジ」
そう言いつつも全速力で特攻! シェーヌにはスピードがある!
「うおっ!?」
だが石が飛んでくる! 城の石が飛んできてこれはキツイ!
「何も考えずに突っ込んでんのに石なんて捌けるわけないでしょー!」
「あっはっは何やってんのこのシェーヌとかいう女、頭足りてないんじゃないの☆」
「ぐぬぬ……ダメだわどう足掻いてもあの女をぶち殺すことしか考えられない……!」
「く、エクストラビームで石を撃ち落としていきたいが距離が遠すぎる!」
レイジもすかさず走りシェーヌのサポートに向かう、しかし傷口が痛い。
「シェーヌ下がっていろ、俺が戦う、大丈夫だきちんと術はある」
「いやいやあんたさっき心を無心にして戦うの無理とか言ってたじゃん!」
「いや嘘だ。気察知の応用で俺の心に念力的な力をかけて、心そのものにモヤをかける。俺の精神に異常をきたすことなく、相手から心を読みづらくすることができる!」
「そんなんあるんなら最初から言えっての、まぁいいわ私がサポートに回るわよ。石を撃ち落とすくらいなら私にもできるしね」
バトルスタイル変更! レイジがエクセルに向かいシェーヌが城の攻撃を対処する。
一方エクセルは、心底笑いを堪えているような奇怪な表情のまま立ち尽くしている。なぜ彼女はこんなにも余裕があるのか不明だが……。
レイジの無心の特攻は容赦なく襲ってくる! サイコビームをうちはなちながらテレポートで翻弄しつつ距離を詰める! 様々な方向から飛んでくる光線には成す術もあるまい!
「おっとあぶないこわいこわい」
しかし当たらない! どこに着弾するのかわかりきっているかのように、最低限の動きだけで特に焦る様子もなくかわしている。
絶対的な自信が彼女にはある、人の心を読める。ただそれだけでここまで高慢に振る舞い余裕を出せるものなのか?
「くっ……ならばくらえ!」
レイジはテレポートでエクセルの背後に現れ足に念動力を込めた蹴りをくりだす! 死角からの一撃!
「ぐ……ぐふっ」
しかしエクセルがとった行動は……即座にレイジに振り向き”ペン”をレイジの首に突き刺すというもの。
いつの間にペンを……レイジが来るのがわかりきっているかのような神がかり的なタイミングで。
「おお、当たった」
当のエクセル本人は今この状況が完成したことに多少驚いていた、意外そうな表情をしている。
芝居かもしれないがなんとも不思議な女。
「レイジイィィィィ!!」
シェーヌがすかさず光の矢を放つが、エクセルは空いた手で手鏡を取り出しまた反射。
「ふふんどうだい最強の能力者レイジさん? 最強だろうが無敵だろうが所詮は人間……神には勝てないのだよん☆」
「かはっ……か、み? お前は神だとでもいうのか……」
レイジはペンをもつエクセルの腕を掴みペンを抜く、物凄い出血が地面に滴る。
このままではレイジは……。
「悪いけどレイジ、君は今この戦いで死ぬんだよ、これは運命的なもの……予測とか宣言とか決意じゃなくて運命」




