25話『サトリオール・グラジオールとザ・キャッスル その1』
冒険者10名がグルンガストという町から旅立って、およそ徒歩3時間。
道中とくにトラブることもなく、ついに辿り着いたようだ、組織OPTの本部に……!
まあ10人もゾロゾロ歩いていたら基本的に魔物であっても近寄りがたい感じだ。
それはいいとしてこの組織本部はご立派にも、広大な草原のフィールドのど真ん中に巨大な城が建っている。
周りに草むらと木々しかない、というか目立つこんなところによく城なんて建てたものだ。
あとほんの数十m歩けばいとも簡単に組織本部へと辿り着ける……冒険者一行に緊張走る。
エルスとシェーヌはその大きさに驚きを隠せなかった。
「すごく……大きいです!」
「はぇ~……しかし妙ねあの城、入り口が無くない? 窓も無い……みたいだし」
次にノドカとウツリが口を開く。
「窓がひとつもないのは妙だが……もしかして俺たちが見ているのはこの城の「こっちの面は裏」なんじゃないか?」
「なるほどノドカ、あの城の外面をぐるっと一周すれば入り口が見つかるってこと、かな?」
「そういうことだな」
一行は足早にその城に近寄ってみる、城の周りには誰もいないようだ、幸運か。
しかし入り口が無いことには中に攻め入ることはできまい、とりあえず一行は入り口を探そうと城の外側を伝って歩いて行った……だが。
どの方向から見てもこの城、窓も門も、穴のひとつも空いちゃいないのだ。
とても西洋的な外見のこの城……さては見掛け倒しの巨大な像かなにかか?
トシマとガレンは城の壁に触れながら口々に言う。
「うーん、こうしてしっかり触れるから、幻とかじゃあないと思うんだけどなぁ」
「オーン、まさかとはおもうが、地下へと続く階段か穴がどこかにあって、そこから城の内部に入れたりしてなァ」
「ゼルダの伝説みたいだな」
次に口を開くのはジャント、その相棒のプロトス。
「なぁみんな、ちょいと聞いてくれ、もしこの城の中に入れたとしたらそれは、生きてまた無事にこの外の世界に帰れるかは、分からないだろ?」
「ジャント、どうしたの急に改まって……」
「ちょっとな、俺たちが絶対生きて帰れるように、おまじないでもしようかと思ってさ」
みんなが生きて帰れるように、おまじない?
それはなんだと気になって、他9名ジャントに注目する。
「みんなで1人ひとつずつ、未来へのデカイ旗を立てよう、そうすりゃ少なくともこの戦いは生き残れるぜ」
「ジャントナニイッテルノ、旗なんて誰も持ち合わせてないよ」
「プロトスあまいぜ、旗っちゅうのはだな……」
ジャントが腕を組み自信ありげに説明しようとしたとき……。
トシマが自信無さげにぽつりと発言する。
「まさかその、漫画とかで言う所の……フラグってやつですか? 死亡フラグとか」
「お? やるねぇ! その通りよ、もちろん死亡フラグじゃなくて生存フラグさ。みんな嘘でもいいから、自分が抱えている謎や未来への布石を大声で言うのさ、そーすりゃ展開的に死なねぇ」
レイジは心底ため息をついた、なんと根拠のないことか。
「やれやれ、根も葉もないまじないって感じか。しかしせっかくの提案だ、やってみてもいいかもな」
シェーヌは結構乗り気で声を張り上げる。
「アハハ面白そう、やっぱジャントくらいの変態になると考えることが違うわ。さぁみんな円陣組みましょ、そして未来への抱負を語るんだったっけ?」
「変態は余計でい、自称するのはいいが呼称されるのはなんかちょっと違う。あと抱負じゃなくてフラグな「このキャラはまだこの謎を抱えているから死ねないゾ!」という生存フラグを立てるんじゃ」
「僕みたいなスライムにも未来への抱負なんてあるんかな」
「無いなら作るだぜプロトス、俺たちは勝機を作ってきたからこそここにいる、うん」
なにやら半ドヤ顔で何か言ってるジャントだが、んなことは気にせず10人は円陣を組み、1人ずつ声をあげる。
レイジとアリシアから、生き延びるためのフラグというやつを。
「え、えぇと、あぁ~そうだアレだその、俺はまだ超能力の全容を明かしてないんだった~、えぇとなんかビッグバン的な技をこれから覚えそうだからなぁー、がんばります」
「私はまだ誕生の経緯を皆さんに詳しくお話してないから、レイジでも知らないし、えっと
それを明かすまではちょっと生き延びちゃうかなぁ?」
トシマとガレンもまた一歩前に出て虚空に向かって口を開く。
「俺はこの、オーパーツタイプZをスカーレットさんに返さなきゃ何がなんでも死ねないなっうん」
「ヒャハハ俺は何だろうなぁ、なんで犬なのに喋れるのかってのは是非明かさなきゃよォなァ」
「ほんとだな、ガレンなんでお前犬なのに喋れるの? ちょっと教えてくれよ」
「謎にしとかなきゃ生存フラグにならねーだろ言わねーわ!」
二人の微笑ましいコントを横目でにやにやしながら見たのち、シェーヌとエルスが手を繋ぎながら前に出る。
「この戦いが終わったら結婚するんだあたし……」
「ちょっとやめてくださいよシェーヌさん縁起でもない! じゃあもう私からいきますね
私には好きな人が居ます、とっても大好きです、尊敬もあるけど……恋愛対象としても見れる気がします、その人にシッカリ告白するまでは……」
「うを……結構大胆な子になったわねエルス、じゃあ私は故郷に友人残してきてっからなぁ、奴が居なかったら私は冒険者になれなかったな~」
ずいぶん意味ありげに語る彼らだが、内容の真偽のほどは……いや、八割は嘘だろう。
大剣と化したプロトスを抱えジャントが真っ白な髪をなびかせ、明後日の方向を見つめながら低めのテンションで語りだす。
「そうだ、俺とプロトスが出会ったあの日……あの事件、あれが俺を冒険への道へと駆り立ててくれた……! あの戦いは死ぬ直前まで明かすつもりはねぇ」
「あ、その内容だと僕は何も言わなくていいみたいだね」
最後にノドカとウツリ、あまり冗談を言うタイプじゃないノドカもここは頑張らざるを得まい。
「オーパーツは俺が全部作った……俺が黒幕だったのだ、なぜ俺がオーパーツなどという狂気に走ったのか、いずれ、話そう」
「ええと私はじゃあ、うーん……あっそうだ、なぜ武器の形を頑なに鎌に固定しているのか明かしてなかったっけ、よしこれで行こう!」
ここで今、全員に生存フラグが立った(?) これで、この戦いを無事に生き残れるはずだ(ジャント曰く)
しかし瞬間、まるで彼ら10人のフラグ立て大会が終わるのを待っていたかの如くこのタイミングで異変が!
城に異変が現れた、轟音を立て、城の一部が隆起し、何やらジャント達冒険者に向かっているように見えないでもない。
城の外装、多分石? が出っ張ったところで一体なんやねんと思うであろうが、嫌な予感を感じ取るものが数名。
レイジ、ガレン、シェーヌ!
「何か……撃ち込んでくるな! 俺の近くは念動力で守ることができるが……!」
「エルス! ハードネスで何人かは守れる!?」
「はいなんとか! シェーヌさんとジャントさんは守れる範囲です! 私自身はレイジさんに守ってもらうことにします!」
「ヒャハハ、トシマなんとかしろ~」
「いや待ってあの石が飛んでくるとして、俺の防御は銃弾みたいに小さい物しか防げないんだ!」
「わ、私の鉄の能力は使えないですかね? なんかこう、伸びた鉄を回転させて防御壁を作るみたいな」
「アッ確か君はノドカさんの相棒ウツリさん! それ採用! ガレンも後ろに隠れて!」
「アイアイサー」
予想的中、城の外装を担っているレンガ群が冒険者メンバーを狙って撃ち込まれてくる! 十数発ほどのレンガが一気に連続で! すでに攻撃を受けている、果たして能力者の仕業か。
「ちィ、なんとか攻撃は防げたが……ん、ジャントが居ないぞ?」
レイジがジャントの消失に気づく、はてさてどこに消えたのか……!
「上だぜ! 今あのレンガが撃ち出されたもんで、あの城に穴が開いた! 今なら浸入できる、鬼神色・灰、鋼パワーだオラー!」
なんと抜け目ないやつ、ジャント! 強靭な脚力でレンガ群の攻撃をかわせるとは、そして落下しながら鋼の鬼神色で巨大剣を作り城の穴が開いた部分にぶちこむ!
豪快な音と共に城にどでかい穴が、これなら簡単に浸入できる!
「ぬ、やべぇな、地面から岩や土を吸収してみるみる入口を塞いでいるぞ、生きてる城ってことかこりゃあ? おーいみんなぁ! 急がないと入れなくなるぞ! 渾身の力で攻撃したのに、レンガが撃ち出されて脆くなっていた所以外はビクともしてねぇ!」
ジャントは一足先に城の内部へ潜入していった、中に何人のオーパーツ使いが居るのかは不明で不安だが、内部に入らなくては話も進まない! 一行は全員全速力で走る!
「よしガレン俺をのせてくれィ! 瞬足で城を目指すぞ!」
「しゃあねーな! おら乗りやがれィ!」
やはりスピードじまんのガレン&トシマが一番乗りか、まだまだスペース的に余裕のある城の入口を目指す!
だがしかし事が起こったのは突然! ガレンが城に入ろうとした瞬間、なんか蹴られた!
「ぐピィ~ッ!」
吹っ飛ぶガレンとトシマ、トシマは蹴られてないのでなんとか着地、倒れるガレンに駆け寄る。
「大丈夫かガレン!? ん、よし血は出てないな、じゃあバイバイ!」
「おい待てテメーこら!」
しかし駆けるトシマの前に現れるは女! 真っ白な修道服みたいなもんを着た動きづらそうな女。
可愛げのある幼さを持つ女、こいつがガレンを蹴り飛ばした本人で女!
「私はエクセル、よろしくね」
「ごめん俺ら急いでるんで! じゃあね!」
以外にも城の内部に入りゆくトシマをスルー、案外まぬけなのかこのエクセルとかいう女は。
「うごぱァ~!」
だがまぬけなのはトシマだった! 直りゆく壁に気が付かず顔面を強打! 反動で後ろに吹き飛びエクセルの目の前に転がり戻ってくる。
エクセルはそうなる展開を分かりきっていたかの如くトシマには無反応。とくにしゃべることもなくガレン、トシマ、そして城の入り口を目指す冒険者達を迎え撃とうという、門番の役割的な雰囲気を出していた。
「悪いが邪魔されては困るんでさよならだ! サイコビーム!」
だが今はしっとり相手をしているひまはない、レイジは気を集約した光線サイコビーム(エクストラビームよりも威力は低いが反動もすくなく、走りながら撃つには丁度いい技)を打ち放つ。
「あぶなーいっと」
「なにっ!?」
レイジの光線はよけられた! しかしこの女の子、反射神経が良いとか移動能力が速いとかそういうワケではない。
レイジがサイコビームを放つ前に、すでに横に飛んでよけていたのだ、光線がくる軌道を分かり切っていたように!
「エクセルとか言った? 残念だけど私たち急いでるからどいて! ライトニングアロー!」
レイジの背後からシェーヌが光の矢を放つ!
このエクセルという女、レイジの光線を避けた瞬間であるため、着地した瞬間のぐらつき状態だ!
格ゲー風に言うと着地狩りと言ったところか。
「ええと次は胸に手鏡か」
頭を抱えゴロゴロ転がり悶絶するトシマを放っておいて、修道服から小さな手鏡を取り出すエクセル。
シェーヌの光の矢がエクセルを狙う! 光速とまではいかないが高速であることに変わりなし、果てさてエクセルとやらにはここでご退場願おう。
「ぐ、ぐはッ……!?」
「あーなるほどなるほどこうなるのか~、一番めんどくさいレイジを仕留めれてラッキー☆」
「え? レ、レイジ? なんで私の後ろを走っていたレイジに私の……”光の矢が刺さっているの”!?」
反射。光は鏡に反射してしまうもの……シェーヌの能力の本質は光、弓も矢も光で作られたお手製。
具現化した代物だからと言って光そのものの性質が変わってしまったわけではなし。 その反射した光の矢はレイジを貫いたのだ!
「ぐ、ぐく、ごはッ……!」
余りにも突然すぎて念動力による防御も、テレポートによる回避も全く出来やしなかった。腹部を綺麗に貫かれ、血を垂らしながら膝をつくレイジ。
よもや鏡ひとつでここまで運良く事が運ぼうとは、このエクセルとかいう女……強運の持ち主か!?
「ふふん☆ 結構あっさりレイジ撃破☆ さぁ残りの、えっとジャントとプロトスには逃げられたから……7人! さぁ残りの七人の皆さんはどうするの~?☆」




