23話『螺旋』
「うあっ、う、ハードネス!」
エルスはとっさに、ガレンにハードネスの硬化魔法をかける!
少しでも防御力があがれば、ガレンは助かるかも……だが。
「俺が頑丈になっても、術をかけてるお前はどうなるんだァ、死ぬぞ!」
「でもこうするしか手はないんです!」
「ルアァ! 仕方ねー俺が盾にッ!」
ガレンは空中でエルスに掴みかかり、ティミミアの爪攻撃からエルスを守る姿勢になった!
そこに容赦無く巨大な爪が押し寄せる!
「あうッうあぁ!?」
「うぐぁァー!」
なんという強固な一撃! エルスとガレンはまとめてふきとばされ、そして地面にうちつけられる。
「ガッハァ……ウソだろ、ハードネスをかけられた俺の背中と、そして腕と足の一部がエグられた……!」
ガレンは「打撃や斬撃や衝撃、いわゆる物理攻撃からの攻撃を大きく防御する魔法、ハードネス」をかけられていたのに関わらず(ちなみに電気や熱、冷気、念力など、属性的な特殊的な攻撃には弱い)
その体は負傷していたのだ、骨まで達していない背中と両前足の傷だが、血が止まらない。
「うウ、ハアハア……うっぐ……!」
エルスも同様、ガレンが庇いきれなかった両腕に傷、こちらはたいしたことないのだが。
足……両足の太ももの部分、そこを大きく斬りエグられた、筋肉が断裂し、骨まで達する傷、なんたる重症、なんたる容赦のなさ!
「待たせたな、みんな!」
その瞬間、オーパーツを装備したトシマが駆けつけた!
すかさず螺旋ボールをふたつ生成し、ひとつをティミミアにぶん投げる!
「来たかトシマァ~、私にとって脅威なのはお前の螺旋ボールのみ! それさえ封じ込めば、私のドラゴン的大勝利だ、そして残りの死に損ないをゆっくりすり潰し殺す! そしてお前のそのハナクソみたいなボールは、圧倒的にスピードが足りない!」
ティミミアの言う通り、トシマの螺旋ボールはたやすく見切れるほどのスピードなのである。
ひとたび当たればその威力は凄まじいのだが、初見殺しのようなもの、一度実態を知られてしまえば、螺旋見てから回避余裕でした、みたいな感じだ。
トシマはすかさず二個目の螺旋ボールを投げる! ただ投げるのでは無く、二個目はオーパーツの力を利用して投げた!
「どうにでもなれ、俺に力をちょっとでも貸してくれオーパーツ!」
トシマの声に呼応してか、首にかけたオーパーツが妖しく光り輝く、そしてトシマの手から螺旋ボールが投げ放たれた!
「それがどうしたトシマァ、大きさはおろか、スピードも全く変わっちゃいないじゃないか、失敗したな!」
「グッ、ぐっあッ!?」
そのティミミアの嘲笑(何度目か分からないが)にあざ笑われるがごとく、トシマは肩をガクンと落とし、膝を落とした。
どうやらオーパーツを使った際、身体にダメージを受けたらしい。
「が、は、だめだ、このオーパーツというやつ、素人が使えるようなものじゃ、ない、首が……」
オーパーツの反動は凄まじく、装備している首に激痛が走った。
無防備なトシマに、ティミミアが全力で狙いをつける。
ノドカ、エルスがすかさず動く、トシマがやられれば本当になす術は無くなるのだ!
「アクアトップコート!」
「反発蹴りで石を飛ばす!」
エルスはアクアトップコートを地面にかけ、ティミミアの足元を滑らせようと試みるが、ダメだ、空を飛んでいる!
ノドカの蹴り飛ばした石もティミミアに当たるが……全く効いていない!
トシマを守るもの一切ナシで絶望的な状況……しかし、そんな中スカーレットは笑みを浮かべていた。
「トシマ、私には分かる、オーパーツはしっかりと使えていたわ、ティミミアは知らないのでしょうけど。オーパーツタイプZの意味する言葉は、ジグザグ(Zig Zag)その能力は……!」
瞬間、トシマのボールがものすごい勢いで、稲妻を描くようなめちゃくちゃな軌道で動いたのである。
その急な起動変化についていけず、ジグザグの軌道の螺旋ボールはティミミアの腹部に命中した!
「ゴアァ……! き、軌道変化の能力をもつオーパーツだった……だと、オォ? あのガラクタ女の能力から察するに、消失を意味する、ゼロ(Zero)だとばかり思っていたア、こんな、こんなダサい名前のオーパーツだとわァア!」
命中したティミミアは後ろに吹き飛び、運悪くトシマが投げた一投目の螺旋ボールにも命中したのだ!
ティミミアは空中で回転し、地面に激突した。
トシマはオーパーツタイプZを取り外し、肩で息をしながら勝利を確信した。
「やったか……?」
「ヒャハハ、フラグ建てんな」
ガレンのツッコミ。
一方ティミミアは呻き声をあげながら、そのドラゴンの外郭のまま、よろよろと立ち上がる。
だが前の戦いにて、スカーレットの能力で消されたほんの一部分、その穴から血がボタボタと垂れていたのである。
……最初のダメージで頭部、ジグザグ能力の螺旋ボールのダメージで腹部、最後に食らった螺旋ボールで背中を負傷しているはずだ。
もはや戦える傷ではない、それでもなお立ち上がり、トシマを狙い歩みを進める。
「諦めるんだな、一生動けない体になるぞ」
そんな彼女のドラゴンの腹部に手を触れながら、ノドカが発言する。
「触れるな、ァ……下劣な、オト、コ、がぁ、ガル!」
ティミミアは尻尾を振るいノドカを突き飛ばそうとする、が、ノドカはこれを見切り反発を利用したジャンプで避ける!
攻撃の速度もまた、落ちているのだ。ノドカはそのままエルス、トシマ、ガレンの居る場所に着地し……。
「ならばトドメを刺す、スカーレットを殺そうとしたお前は、その因果応報を受けるんだな」
ノドカはトシマに目配せをする、次の攻撃で決めろということだろう。ノドカはさり気なくガレンの身体に触れ、磁力を流した。
「お? なんだ磁力マッサージか?」
「ああ、お前に磁力を流させてもらった……トシマ、きついとは思うがティミミアに攻撃できるのはお前しかいない、頼んだぞ」
トシマはよたつきながらも立ち上がり、静かに頷く。
「分かりました、派遣の冒険者ノドカさん」
そしてガレンを持ち上げる。
「あ、おいトシマ、なんだ俺をボールにしようってかア? チッしゃーねー、これが最後の技だからな仕方ねーか」
「よしガレン、いくぞ!」
トシマは両手で、丸まったガレンに気を送り込み、螺旋の力を利用してガレンをぶん投げる!
すかさずエルスはガレンにハードネスを発動し、より強固なボールとなったガレン、しかしそのスピードは本来のトシマのボールと変わりはしない。
「犬をボールにしたか……だが無駄、傷を負った私の体であっても……その程度の速度を避けることなど……たやすい!」
「なぜ今! ガレンをボールにしたか考えるんだな! ノドカさんが下準備をしてくれた磁力を利用してるって、意味だがぁー!? 俺たちみんなの合体技、クアドラブル・ヘリックスォ……シュートだアァ!」
トシマの叫び、その言葉にハッとした瞬間にはすでに時遅し、ティミミアの体の磁力を辿り、ガレンの身体が引き寄せられる!
その速度は一気に上がり、ティミミアの動体視力を超えたッ!
トシマ、ガレン、エルス、ノドカ四人の合わせ技、四位一体の「クアドラブル・ヘリックスォ・シュート」だ!
再び、再びながらティミミアの腹部に螺旋のパワーが、今回はガレンが激突する!
「うごああアアアアッ!! ガッ、ガハァ、うぐげえっ!」
ティミミアの身体についに限界がきたか、ドラゴンの装甲がバラバラに砕け散る。
ドラゴンの装甲を形成するのもまた能力……本体であるティミミアが戦闘不能とあらば、その外殻が崩れ落ちるのも必然である。
そうして、血だらけのティミミア本体が力無く地面に落ちた。
「うっしゃぁー! ただいま」
ガレンはぶつかった反動で再びトシマの元へと帰ってきた。
地に倒れ伏せるティミミア……それを見てエルスは歓喜の声をあげる。
「やった! やりましたねみなさん! よかった、誰も死ななくてよかった! ぐっはぁー脚が痛い! そうだ私脚が重症でした」
「ヒャハハ勝ったな、感謝しな」
「お前ただのボールだろガレン、俺の螺旋の方が大いに貢献してたよ」
「黙れ糞がトシマ」
そんな和気あいあいとする四名を尻目に、ティミミアはねっとりと立ち上がっていた。
右目から血がボタボタと垂れている、トシマと同じくオーパーツ使用のダメージのフィードバックがあるのだろう。
強大なドラゴンの力、其れ相応の負担があっても不思議ではない。
「私が負けるなど、ありえない……このゴミの集まりが……! 私はOPTの幹部……お前らを始末しなくては、それが、融通の利かない人間である私の、使命ッ」
もはや彼女が戦うことのできない体だというのは言うまでも無い……にも関わらず、まだほんの少しだけ体力があったのか。
ドラゴンに変身はできないものの、右腕、そう右腕のみに外殻を装備し、右腕のみがドラゴンの腕と爪になった!
そうして、何かに取り憑かれたかのように全力で走り出し、トシマ達を狙う!




