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26つのオーパーツと異能戦争  作者: 真鍋棒
冒険者集結
21/63

21話『チェンジドラゴン・ディスクリプション その3』

一方スカーレット、ティミミアの攻撃力を直前に察して大きく横に飛び攻撃をかわしていた。

ティミミアとの距離2~3m、逃げ出すことも立ち向かう事も出来る絶妙な距離感、愛しの相手でもないのにこの絶妙さ、嬉しくないこと限りなしだ。



「やはりここは私が! トシマ、とその仲間たち! ここは私がやる! だからなるべく逃げて! この戦いは、私のせいで起こったもの! やっぱり巻き込むわけにいかないったら!」



すぐに体勢を立て直しティミミアに突っ込んで行ったのは、スカーレット!



「裏切り者めが! 処刑を受けたくてたまらないかァ! 単身突っ込んでくるとはアホの化身よ!」



ティミミアは翼を大きく羽ばたかせ、地面に散らばる岩石や家屋の残骸を吹き飛ばして攻撃する!



「うぉわぁー! スカーレット危ない! なんてめちゃくちゃな攻撃なんだ!」



トシマは大声をあげながらガレンを掴み、その背後に隠れることでなんとか攻撃を防いだ。

ノドカは先ほどと同じく磁力をなんかして壁を作りエルスはなんかハードネスして防御した。



さてスカーレットは!



「私の能力は!」



なんとスカーレットを見ると、彼女の手に触れた瓦礫や残骸がことごとく消えてしまうではないか!

それにより飛んできた物は全て消し去り、攻撃を受けることなくそのままティミミアに突っ込む!



「やるな裏切り者、そうかお前の能力は「手に触れた物を消す」能力だったな!」



「違うわね! 正確には「手に触れた物を亜空間に収納する能力」!」



そしてスカーレットは空高く飛び上がり、両手を前に差し出し、ティミミアに向ける!



「そして収納したものは、いつでも取り出せる! 返すわティミミア! あなたに一矢報いる為に今まで溜め込んできたガラクタと一緒にまとめて倍返しでね!」



スカーレットは空中で能力を発動、手で触れ消したきた瓦礫や残骸を一気に放出し、ティミミアにぶつける!



「なにィー! このガラクタ女がァー!」



その残骸の猛襲に耐えきれず、飛行していたティミミアはバランスを崩し地面に落ちた。

だが、そのドラゴンの外殻に傷など一切ついては居ないのはこれまた驚きである。



「ハッ残念だったな、私の外殻は確かに、そこいらのガラクタを元にしてその寄せ集めで作っている。しかしだ、そうして出来上がった外殻は、私のオーパーツが更に更に強化してくれている……同じガラクタをぶつけてもビクともせん!」



「くっ……小さなガラクタの寄せ集めじゃ大した攻撃力にはならない……! かと言って私の能力、一度に収納できる物は「自分の体積、体重以下の物だけ」だから自分自身が亜空間に逃げ込むことはできないし、更に攻撃力になりそうな大きな物は収納できない……」



「分かっているじゃないか自分の弱みも雑魚みもな。我らがボスに従い、オーパーツ使いにさえなれてたら、お前のガラクタ以下の能力も少しはマシになってたかもな」



「悪に従って支配されてる者は、冒険できないったら!」



スカーレットは再びティミミアに向かって走り出す!



「人間がドラゴンに適うと思うかァ!? ドラゴンをヘビやワニ、ハチュウルイなんかだと思うなァー!」



ティミミアもその巨大な爪をつきたて、スカーレットに向かって猛ダッシュする。

スカーレットはその爪の攻撃を見極め、寸前でよけ、その手をティミミアの体に触れた!



「なにッ!」



その瞬間、ドラゴンの外殻のほんの一部が消失したのだ。

そこ目掛けてスカーレットは高く足を振り上げティミミア本体の腰部に攻撃をした!



「オアアア! 痛い!」



「よし! あなたのその外殻は瓦礫の寄せ集めだと言ったわね! パズルのピースのようなものよね、全体はまとめて消せないけれど、ピースのひとつひとつは私の能力で消す事ができるサイズ! 少しずつ削り取って、丸裸にしてあげるわ」



「や、やった! スカーレットさんは強い! さぁみなさん! 私たちもすぐに加勢しましょう!」



スカーレットの優勢に感激したエルスは、ダッシュで加勢に向かう。

トシマ、ガレン、ノドカも加勢に向かう、今この状況は優勢だと言っていい!



「ごめん、ごめんガレン、噛まないで、死ぬ」



走りながらもトシマはガレンの復讐を受けていた。


一方のティミミアはなにひとつ焦った態度を示すことは無かった。

むしろ余裕の動き、至近距離に迫られている状況、加勢もやってくるこの状況、ティミミアは著しく余裕の動き。



「なんだお前、人間がドラゴンに適うと思ってるのか? お前今、爪を避けて、懐に潜り込んだことで安心してるんじゃあないよな? 安心する場所は一切ないぞ! ドラゴンには特に!」



「がはっ……!」



ティミミアの牙と爪が当たらない懐に潜り込んだスカーレットの、腹部を何かが貫いた。

彼女を貫いたとても太くて固くて大きいモノ……そう。



「尻尾だよ! 人間になくてドラゴンにあるものォー尻尾! 油断したな、大きな翼に隠れ尻尾の動きが見えなかったかな? 一撃で死んだな、炎のように一瞬の煌めきをありがとうよ、いや線香花火なみのショボさだったがね」



スカーレットは倒れた、もう動かない、喋らない。




「はうあ!」



先頭を走っていたエルスはその足を止めた、鮮血に染まった尻尾をヒュンヒュン振り回すティミミアを見て、その足はすくんだ。

トシマは、ノドカは、絶句した。



「組織を裏切った者は死ぬ! これはウンメイ、サ・ダ・メだ」



ティミミアは渾身の力で大きく羽根を羽ばたかせた! 残り四人を全員吹き飛ばす気だ!



「うおおああぁ! また風だ突風だ! うわぁぁぁあ!」



今度は瓦礫などは飛んでこないものの、風の強さが竜巻並だ、たまらず全員吹き飛ばされた!

……かと思われたが、ただ一人、その場に立ち尽くし、微動だにしない人物が!



「なッ、なんだお前、私の羽の風を受けて吹き飛ばんとは、なんだ!」



「覚えておくんだな、俺はノドカ・ベイツォー……お前に道徳を教えてやる、人を殺めるということが何よりも罪深く、そして、決して救われない事なのだという事を教えてやる」



「なンだ、このノドカというやつ"動かしにくい"! 動かせん! 吹き飛ばん! いけすかんやつだ!」



ノドカは両足と地面に磁力を目一杯送り込み、このうえないほどの"踏ん張り"をしていたのだ。

ノドカはスカーレットを死に追いやったティミミアという女を許す気は無いらしい。

いや、ノドカだけじゃない。



「ガレン、ちょっと本気出していいか、こういうのは多分俺のキャラじゃないんだろうけどさ」



同じく吹き飛んできたスカーレットの力なきそのからだをうまいことキャッチしたトシマ。

それをゆっくりと地面に寝かせ、ティミミアをにらみつける。



「ヒャハハ、いいんじゃぁねーの。俺も心底あの女、いけすかんやつだと思えてきちまったぜ、なんでかはようわからんがな」



「シェーヌさんは私を命懸けで守ってくれました。そしてあのスカーレットさんも、私たちを守ろうと戦ってくれていた。もう守られるだけで終わりませんよ、私はエルス、シェーヌのお供のエルスじゃなくて今は! エルスただひとり! 戦います!」



四人の心はひとつになった、反撃開始だ!



「私の風を耐えたぐらいでなんだ、なにがノドカだ、そうかお前磁力を操るとか言ってたな! ならこの牙でめちゃくちゃにしてやろう!」



ティミミアはその顎を大きく開け、ノドカに突進してきた。



「俺がこの地面に立ち尽くしていたのは、お前から「動かしにくい」だとかいう感想をもらうためじゃないぞ」



「ン、まさか仲間の死の恐怖で、立ち尽くしてしまったとか言うんじゃぁないだろうな!」



するとノドカは「反発」を利用して地面から離れ、高く飛び上がる。

そうするとノドカが居た地面から黒い砂のようなものが大量に姿を現した!



「ム、これは砂鉄かッ、なるほど貴様集めていたな、地面に立ち尽くしながら……! 足元で磁力を操って集めていたな、この砂鉄を!」



「そういうことだ、そして砂鉄は俺の磁力操作で形を作れる!」



その言葉通り、砂鉄は空中でひとつに集まり、球体になった。

鉄の塊……つまりは巨大な鉄球だ。

言わずもがな、ノドカは落下しながらこの鉄球に「反発蹴り」を繰り出し、ティミミアに向かって蹴り飛ばした!



「ブフッ!」



それはティミミアの顔面にぶち当たる。

空中で避けようとしたが間に合わず、無抵抗な喰らい方をしてしまった!

鋼鉄的巨大な一撃! 例え鎧に身を固めた戦士や頑丈に作られた歴戦の戦車であっても、この巨大な鉄球を喰らえば無事では済まない!



「これが策のつもりかァ、何度も言わせるな、人間はドラゴンには勝てない!」



ティミミアは顔面にめり込む鉄球に、その腕についた爪で攻撃する。

するといとも簡単に鉄球はバラバラに砕け、その破壊の衝撃で、破片のいくつかがノドカ目掛けて吹き飛ぶ。



「ぐああぁっ!」



「回りくどい自滅をしたわけだなゴミが! さぁーあとは三人か!」



「ぐっ……うぐ、血が……」



ノドカはまだ息があった。ノドカの能力である磁力はノドカの体から離れると、一定時間で磁力が消滅するのである。

先ほど鉄球の破片がノドカにぶつかる直前に磁力が解け、小さな破片のみのダメージで済んだのだろう、だが体中に切り傷をつくり、血が滴っていた。



「ノドカ下がって! 俺がやる、あとガレンも!」



「わ、私も!」



次に前に出てきたのはトシマ&ガレン、そしてサポートにエルス!

三位一体でティミミアに向かう!



「まとめて歯向かってくるか、まるで尺の足りなくなった漫画本のようだな! まとめて私に殺されに行って、お前らにとってのバッドエンド、完結編ということか!」



「うぅ、トシマさん見てくださいあのドラゴンさんの顔! ノドカさんの大技を受けた筈なのに!」



よく見るとティミミアの顔面、鉄球を受けた筈なのにそこに傷など無かった。

彼女のドラゴンの外殻は鋼鉄の攻撃すら容易く防御してしまうのだ、攻撃力も同様、鉄さえスナック菓子のごとくめちゃくちゃに砕けるのである。

超越的な威圧感、それを感じずには居られない相手だ。



「うおおガレン、前の戦いでは俺の能力の全容は見せられなかったが、ここで披露してやる! 俺の持つ技術は渦巻、回転! 気を放出し、回転力でボールを形つくる!」



その言葉のごとく、トシマは気で作り出したボールを手に生み出した。そしてその気のボール、それをティミミアに向かって投げる!

しかしティミミア、もはや何度目かわからないが、またも嘲笑する。



「渦巻? 回転? なんだそのチンケな能力は、鼻くそみたいなもんだな、スパイラル的か? 当たっても精々炸裂してダメージを与える程度だろう、避けるまでもないという意味だが」



ティミミアはそのボールをずつきで迎え撃つ、大した大きさでもない。おそらくは気の圧縮により作り出した簡易型の爆弾ってところだろう。

回転というパワーは確かに強い、ドリルやらスクリュー、時として熱となり電気となりエネルギーとなる、しかし人間の技術がドラゴンに追いつくわけがない。

我々が住む世界の人類は未だドラゴンを見つける事すら出来ていないのだから……。ティミミアの頭に回転ボールが触れる、その瞬間爆発がおこった。



「やはりな! だがその程度の爆発、見ろ! 私はビクともしてないぞ! ずいぶんもったいぶって能力を発動したようだが……いいか、戦いってのはジャンケンじゃないぞ。後出しすれば勝てるとでも思ってないか? という意味だが」



トシマは、無言のままもう一発の気のボールを作り出す。

そして、うっかりしたような顔でティミミアを見つめ、喋り出した!



「あ、ごめん俺の能力、正確には渦巻じゃなくて「螺旋」だった!」



「螺旋? なんだ、どっちみちくるくる回転してることに変わりはない言葉じゃないか、階段的か? トシマとやら、お前頭悪オブェベッ!?」



突如ティミミアが奇声をあげながら後ろに仰け反った。

どうやら頭にダメージを受けたようだが……。

そんなティミミアを見てガレンは笑い、言葉を続ける。



「ヒャハハ、渦巻は水平方向のみ、ようは二次元的な回転だわな。でよ、トシマの能力は螺旋、水平方向の回転に加え、垂直方向へ力が働くワケだわ、三次元的な回転、それが螺旋だぜ」



「グボェ……なンだ、まさかその螺旋の力というのは、私の外殻を、通り抜ける攻撃ということか。私のドラゴンの頭部は破壊されてはいない、純粋にダメージだけが、私の頭をかち割った……だとォ」



トシマの能力、技術が判明! 気を放出し、持ち前の技術で回転して圧縮させ……。

さらに螺旋という特殊な技術を使い「相手のどんな装甲も通り抜け、内部にダメージを与える力」をもっているのである!

相手の防御能力に一切影響を受けることなく相手にダメージを与える能力、攻撃力に関しては無限大とでも言えそうだ!



ところで肩が弱いトシマが、なぜ敵に向かって球を投げて、到達できたのか? その秘密は、螺旋の力だった。

トシマが力を加えずとも純粋に一方向に進んでくれるというわけである!

直線的な軌道しか描けないのが難点だが、重力の影響を受けず直進してくれるので狙った所には狂いなく飛んで行くのだ!



「もいっぱあぁぁぁつ!」



トシマは、仰け反りフラフラするティミミアにもう一球をぶち込んだ!

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