19話「チェンジドラゴン・ディスクリプション その1」
ここは、やや広大な町「グルンガスト」
ノドカという青年とウツリという少女がここの食堂で食事を取っていて、レイジという青年と妖精アリシアがたまたまこの町へやってきた。
そうして、町はずれにあるグルンガスト教会(跡地)ではシェーヌとエルスという少女が戦いを繰り広げていた。
さらにもっと遠くの草原へ、ジャントという青年とプロトスというスライムが「ホライゾンドラゴン」という魔物を討伐しに行った。
そうして今、トシマという少年とガレンがこの町にたどり着いたという。
だがこれらの出来事は決して偶然ではなかった、なるべくして彼らは集まりつつあったのだ。
総勢10人の冒険者たち、組織OPTとの全面戦争が始まる。
能力と能力はぶつかり合いやがて、結果がどうであれ終局と化すのであろう。
「もうすぐ終わる、あなたたちにとって初めての最終回よ」
そんなトシマは、いきなり赤い髪と瞳の女に絡まれていた。
名をスカーレット、赤色という意味をもつ、それだけ理解してくれれば良い。
しかし完結という名のご褒美だとか、終われなくなった冒険者だとか、彼女の言ってることは意味不明だ……が。
師匠からのおつかいの内容は「赤い髪の行商人からオーパーツを手に入れること」つまり彼女はオーパーツを持っている!
「あ、あの……オーパーツくれませんか……?」
「あ、そうね、ちょっと待ってて」
あっさり交渉成立、その表現に尽きる。
スカーレットはトシマの顔を掴む手を放し、虚空に向かって手を伸ばした。
すると空間に歪みが生じ、その虚空から何かを取り出してみせたのだ。
「これ……私が手に入れることができたオーパーツ。確かタイプはZだったかな、お代は結構よ」
そう言うと赤い髪の行商人は、あっさりとそのオーパーツと呼ばれる代物をトシマに手渡した。
その形はなんの変哲もない、首にかけるアクセサリーのようだった。
稲妻のような形の金属の板が垂れ下がっていて特徴的だ。
「これが、こんな小さいのがオーパーツ……? てっきり、あのレイターっていう女の人の腕についているような、ゲテモノを想像してたんだけど」
「ヒャハハ、あんな物騒なもの持ち帰りたくねーよ」
「うん、そうだね、これなら首にかけて自然に持ち帰れるし、でも師匠はなんでオーパーツとやらをおつかいさせたんだろう……あ、すいません申し遅れました、俺はトシマで、こっちの犬はガレンです」
スカーレットという女、いきなり掴みかかってくるから敵かなにかかと不安になったが、あっさりとお使いを済ませてくれた。
敵意というやつは無いようだ、ならば気前よくしなければ、なるべく人には好印象、恨みを買わずに大皇寿、それがトシマの人生モットー。
しかしその行商人は、トシマの丁寧な自己紹介に対し、少し微妙な表情をしながら、答えた。
「わざわざどうも、私のスカーレットは偽名だから申し訳なくなってくるわ。こっちだけハンドルネームで名乗っているのに、あなただけ本名で名乗ってくるこの感じ、申し訳ないわ」
「えっ、偽名ですか……別にいいですけども」
「悪気は無いの、今ここにあるのは自己紹介だけ、さて、あなたの師匠に頼み込まれた私の役目は、あなたたち五つの冒険者をひとつの場所に結びつける、ただそれだけ。私の役割的な余地というやつはもう、無いわね」
「え!? 師匠に頼まれて俺たち冒険者をひとつの場所に!?」
「ヒャハハ聞いたことそのまま口に出す必要ねーだろ」
「うるさいなガレン、黙っててどうぞ。あれ、俺たち冒険者は四組のはず……あ、もしかして五組目の冒険者ってスカーレットさん?」
「馬鹿言わないでったら……言ったでしょ、私はもう終われなくなった。冒険の途中で、冒険をする意味を失った者なの……それはまるで、最終回まで書き上げられなかった永遠未完の物語の主人公のように。そんな私があなたたち冒険者の中に加わるなんてありえないったら……安心して、五組目の冒険者は既に町に居るから……」
まさか師匠の頼みで冒険者たちをひとつの場所に集めることをしていたとは。
トシマの師匠は一体何者なんだろうか、オーパーツのことを知っていたようだし……なんとも謎の人物である。
一方でトシマは、彼女のものかなしそうな表情を見るにつけ、何か言葉をかけてあげようとしたそのとき。
「ぬわあぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉん!!」
「キツかったですねシェーヌさん今日は~……」
トシマとガレン、スカーレットの間にシェーヌとエルスが現れたのだ。
どうやらマドウとの戦いが終わったあと、徒歩でこのグルンガストに帰ってきたのだろう。
「アッ、ちょっとシェーヌさん、犬がいますよ! ほらーお手お手っ」
「いやまず私が病院行くのが先でしょうがよ」
……いきなりエルスがガレンに絡んできた。
「ウボェーなんだアこの女は! 馴れ馴れしく触ってくんじゃあねえぜー!」
「シャベッタァァァ! シェーヌさんなにこれちょっと見て! いや聞いて! 喋りましたよ!」
「ハァ? なによ喋る犬なんてトシマのパートナーのガレンくらいのものでしょ」
「いや、俺がそのガレンなんだが。こっちの、たびたび女とよろしくやってるラノベ主人公みたいなやつがトシマな」
なんたる偶然か、ここにトシマとガレン、シェーヌとエルスというふたつの冒険者が集ったのである。
「あ、トシマじゃない、顔立ち幼いのに結構モテるのね~別にあんたの好きでいいけど、女は泣かせちゃあダメよ?」
「シェーヌ…さんでしたよね? お久しぶりです、あはは……」
あらぬ誤解を受けてるな……ガレン、一回だけ死んでくれないかな~、トシマは思った。
そんな四人の集結を見て、赤い行商人スカーレットは少しだけ笑みを浮かべた気がした。
「四人揃ったようね、いえ……あと二人来るかしら」
そんな意味深な発言をする妖しい雰囲気の彼女に、シェーヌは声をかける。
「で、あなた一体誰? トシマの友達? 彼女?」
「いいえ、私はただの能力者のひとり、あなたたちみたいに冒険してた頃もあったわね」
「ふぅんそうなの、ところであなた手が震えているけど、何か怖いの?」
シェーヌの言葉に驚き、一歩後ずさりをするスカーレット。
そうして、両手を後ろに回し組んで、その震える手を見えないようにした。
そうしながら、目をぐっと細めながら口を開く。
「流石冒険者ね、その観察力……人の雰囲気を察せる直感でも持ってるのかしら。怖い……まぁそうね、実を言うと私、オーパーツを集めている組織OPTの幹部のひとりだったの」
衝撃の事実、この行商人もまた組織OPTの幹部のひとりだったのだ!(過去形だけど)
「ええ、俺を襲ってきたレイターとかいう女と同じ組織の!? 幹部!?」
「マジに? 私たちに喧嘩ふっかけてきたマドウとかいう男と同じ組織の? 幹部?」
シェーヌとトシマが似たような事を言い出した、その後お互い顔を見合わせ……。
なるほどそっちも似たような戦いを……と納得したのちスカーレットに顔を向け戻す。
「そう、行き場を失って途方に暮れてる時に勧誘されてね、強大な能力でも手にすれば、私の終わりなき冒険に何か変化でもあるかな、なんて。でも途中で我に返って逃げてきた、突拍子もない突然的な力は必然的に逃げなのよ。その時にトシマの師匠に出会い、あなたたち冒険者を支えるサポートキャラとして今こうしているの、逃げるついでにそのトシマに渡した「オーパーツ・タイプZ」を盗んでね。OPTのボスは多分私を恨んでる、だからきっと今取り出したオーパーツの反応を探って、ヤツが私を殺しに……」
その行商人がそのセリフを言い終わるより前に、彼女の背後から髪の長い女性が歩いてきた。
長身で、目つきのキツイ女性、鼻と頬にギザギザのラインが入り、スレンダーな美人さんが。
「あれっ、シェーヌさん、あのスレンダーな女の人、こっちに向かってきてません?」
トシマがそれに対して答える。
「ん?ああ、向こうで全壊してる建物があるし(食堂)多分、あれに関して駆けつけた兵団のひとじゃない、かな?」
それに対してガレンがつっこむ。
「ヒャハハ、スリットのあるスカート着けて、ネイルのきっついあんな兵隊居るわきゃねーだろ」
そんな彼らのやりとりなど気にせず、そのスレンダーな女性は、何か喋りながら近づいてくる。
「愛とは悟りの境地の向こう側にある代物だな、私は雌の龍、ならば怒り狂わなければならない。愛しの命はもはや宿命、過程失くしてそこには実行だな……! よって、死ね」
「うッ、お前は……!?」
スカーレットはその声にハッとして振り返り、その女を視認するやいなや。
驚愕か恐怖かによって漏れ出た声をあげながら、商人の命である商品の入ったリュックを投げ捨て大きく後ずさりし、その女を睨みつける。
「現れたか……"ティミミア"!」
「きやすく名前を呼ぶんじゃない裏切り者の分際で、Zのオーパーツを返せ、ガラクタ女が……」
険悪なムードをピリピリさせている両者を見るに、トシマ達は察した。
このスカーレットを殺しにきた刺客というのが、このスレンダーな女だろう、名をティミミアと言うらしい。
スカーレットという我々の協力者を震え上がらせ困らせた張本人、さて皆にとって、トシマにとっても好印象なわけがない。
「あのティミミアって女が、あなたを殺しにきた奴なんですよね? 話を聞くに、あなたは師匠の協力者だ、だから倒すべき敵は、あのティミミアなのが分かる!」
「トシマァ今回ちょっとマジになってんじゃアねーか? 珍しいなぁオイ」
「ガレン、彼女は手が震えながらも俺にこのオーパーツを託してくれたんだ。いいか、本質は分からないが、師匠の為に俺たち冒険者の為に、ここまでやってくれる人なんだ、悪い人なワケがない、とおもう!」
「ヒャハハ、思うだけか、まぁいいんじゃねーの? 自分が思ってもねーことに必死になるよりも、今のお前みたいに自分が思ってるってことを、納得する為に戦ってるヤツはどこの世界でも超つえー……と、おもうぜ」
ティミミアの前に、トシマ、スカーレット、ガレンが並び立った!




