18話『粛清ドラゴン』
「げェ~! まじか! きゃあ自分ごろし! 俺の助っ人達がこうもかんたんに、なんなんだこいつらは! おかしい! レイジ以外は雑魚キャラって聞いてたのに~! これは敵わんぜ!」
扉を地面に設置し、別世界に逃げようとするパドラル・ワルドルウォー。
だがテレポートで目の前に現れたレイジがパドラルを蹴り飛ばす。
「ぐぎゃー! ひでぇ、いきなり蹴りやがった~! ていうかアナザーソニアはどうしたんだ!」
「俺が勝った、色々あって湖に沈めておいたよアナザーソニアは」
なんとレイジは何の描写もなくソニアを倒していたようです。
レイジがどんなバトルを繰り広げたかは知らんが、勝った事に変わりはあるまい、だからこそテレポートでここに戻ってきたのだ。
「……レイジ、無事でよかった、とりあえずこいつから組織とやらについての情報を聞き出すとするか」
「そうするか、おい立て」
ノドカの提案に乗り、倒れるパドラルの襟を掴みあげて尋問するレイジ。
「組織について洗いざらい知ってることを話すならば、見逃してやってもいいぞ、パドラル」
「ひィイ、わかった、わかった話す、話すから許して! 俺たちはOPTという組織で、26種類のオーパーツと、それを使役できる能力者を集めてるんだアー!」
「あっさり話したな。なるほど、26種類、アルファベットに対応してるってことか、ではゼットという男が言っていた。DとRの者とは一体なんなんだ、どんな能力者なんだ」
「わかんねぇ、会ったことねぇんだよ能力も詳しくは知らない! だがDの奴はヤバイ程に強い無敵の能力者だ、組織の裏切り者や組織に害する者をぶっ殺して回ってるとんでもない奴だ!」
襟を強く捕まれ、苦しそうにするパドラルに構わず、ノドカが口を開く。
「オプティマス……最良、最高傑作……とにかく至高を表す言葉、か……随分自信家だな。組織には一番上、ボスが居るはずだ、オプティマスとやらの一番偉いボスの能力はなんだ? お前みたいな、世界を行き来できるものさえ支配下におく、そいつはどんな能力者なんだ」
「おま、そんなんDとRの者の能力も知らん俺が知る由もあるわけないだろ、でもよォ誰も勝てねぇ能力だって聞いたぜ。組織OPTの幹部数名が徒党を組んでボスを倒そうと反逆したこともあったが、全員ボスたった一人に殺されたと聞く。絶対勝てない能力なんだァ……!」
レイジは少し焦りを見せ、パドラルを掴むその手を離してしまう。
思うまい、様々な技能を併せ持つ自分の超能力が敗れるなど、思うまい、だがレイジは心底焦っていた。
「げほ、がは、あー、くそ話しちまった、もう俺は組織に戻れねぇ。俺の今の裏切り行為は、組織に居るRのやつが知り得てるはずだ、Rの者は何故だかどんな知識も持っている、知りえるわけない情報も何故か知ってる奴なんだ。そしてRの者に従っているDの者が抹殺しにやってくる……そういう感じなんだ、嫌だぜェ~……」
「まあ俺たちに関わったのが悪かったな~ノドカ達もアリシアもとんだ迷惑だしさぁ、あとソニアっていう人も」
「うう、こ、これはダメもとでの頼みなんだがさァ……俺と手をくまねぇかお前ら、もう俺は組織に戻れねぇわけで、あんたらを始末する必要もないわけだ~戦意喪失ってやつだよ」
「は? 味方になるということか? パドラル、お前がか」
レイジの言葉にこくこくと頷き、オーパーツタイプXの扉を開くパドラル。
「とにかくだ、Dの奴が今ここにきたら元も子もねぇ、あんたら確かに超強いぜ、でも多少は怪我してるだろうし連戦なんてことになったら勝てねぇ……でだ、もうひとつの世界に行こう、あそこならオーパーツもオプティマスも存在しないんだ、休息もできる。俺を味方にするか否かや、作戦会議は向こうでやろうじゃないかって話だァ」
スペアのメガネを取り出し、それをかけながらノドカは口を開く。
「なるほど、パドラルお前は、俺たちにとって都合のいい"場所"を提供してくれるというわけか。確かにお前のように”世界”という概念に近いソレをどうにかできる人間は初めて見たし、お前以外にはなし得ない技と言えるな」
「あ、そうそうそんな感じ、ほら、じゃあレイジさんどうぞこの中へ、なっ」
「あっそっかぁ……俺もちょうど休憩させてもらいたかったんでな、遠慮なく……」
レイジがオーパーツタイプXの中に入った瞬間、パドラルは勢いよく扉を閉めた!
同時に、表情はニヤリと変わり渾身の笑顔と化した、ゲス中のゲス。キングオブゲスリスト、パドラル・ワルドルウォーここにありだ。
「ぶははははは! やったアー! 勝った! 別世界で一生を過ごすんだなレイジ! 抹消したぜレイジをこの世界から! これは倒したと言っても過言じゃアーない、俺以外は別世界から帰ってくるのは絶対不可能だしよオー!」
ノドカは突然のことに多少驚き、パドラルに向かって口を開く。
「おい……」
「どうしたノドカぁー、仲間がやられて声も出ねぇかー、そうかそうだよなぁー今頃あのレイジの野郎向こうの世界でじだんだ踏んでるぜ!」
「俺はじだんだとかそうゆうの踏んだことは、ないなぁ……」
パドラルの耳元で聞こえてきたのはレイジの声だった。
高くもなく低くもないレイジの声がパドラルの耳を貫いた。
「は、へ……?」
「テレポートだ、扉が閉じる瞬間にな。お前、色んな世界のキャラクターを見過ぎて忘れてはいないか、俺の能力を。テレパスで初めて会ったときから全く変わらないお前の邪悪な気が筒抜けだったぞ、お前の悪巧みくらいすぐにわかる」
「はぅあ!」
パドラルは勢いあまってこける、みじめにも地面に頭をぶつけたが、恐怖が大きすぎてそんなことは御構い無しだ。
オーパーツタイプXの扉をガタガタ震える手で開け、中に逃げ込む。
「は、はっはッ、はひッ、うるせ~! 作戦失敗か、クソが! 覚えてろ! 俺にはまだまだ助っ人が居るんだ! 次に会ったらブッ殺すからな、レイジ! ノドカ!」
そう言い残しパドラルは扉を閉めた。
オーパーツはここに残ったままだが、彼はもうひとつの世界に逃げ込んだのだ。
「エクストラビーム!」
オーパーツタイプXに攻撃してみるが、傷ひとつ付かない。
なんと頑丈なのか、レイジは後ろ髪を掻いた。
ならば無理やり動かしてみるかと、念動力をかけてみるが、これまたなんという重量感、全く動かない。
持ち主であるパドラル以外では、とても運べないような仕組みなのか。
「どうするレイジ、この扉の前で待ち伏せしていればあのパドラルという男はいつか帰ってくるやもしれない」
ノドカの提案に耳を傾けるレイジだが、辺りが暗くなっていくのを見て……。
「あんなろくでもないやつの為に時間を費やすのは気が引けるな……。そうだ、アビスと戦った時に使ったウィルトラップを扉にし掛けておいて、次に奴が来た時にダメージを与えられるようにしようかな」
「おお、頭良いなこのレイジって人、ノドカと同じくらい頭良いんじゃない?」
「俺は別に頭よくないよ、本読んでるだけ」
関心を示すウツリをよそに、レイジの眉間のしわは濃くなった。
「ダメか、エネルギー的な物に対するバリヤが働いてるらしい、ウィルトラップをくっつけることができない。この扉は無敵か……もういい、俺はアリシアを探して宿をとるよ」
レイジは心底うな垂れた、疲労もあるし早いとこ休まないと、明日はトシマと合流するイベントもあるというのに。
もう関わり合いになりたくはないなと思いつつ、その扉を無視して、アリシアの所へ向かった。
そのレイジを見送りつつ、ノドカもまた同じような理由、ウツリの治療があるからとさっさと扉から離れ病院に向かう。
「アッ!? なんか私たちが居た食堂が倒壊しとる!?」
「一体どんなバトルを繰り広げたんだ、レイジ……」
全壊した食堂の瓦礫から這い出してきたソニアを見つけたので(結構無事みたいだ)彼女も担いで病院を探し始めた。
そうして、扉の周りには誰も居なくなった。
そうして夜がふけていく。
夜になってもオーパーツは取り残されたままだ、壊せないのではどうしようもない。
そんなオーパーツの近くに、何かが降り立った。
「……グゥルルル……!」
ドラゴンだ、羽根の生えた巨大なドラゴン。
そいつはなんと、先ほどレイジが奮闘してもどうにもならなかったオーパーツタイプXを口で軽々と持ち上げ咥え、大空を高く飛び上がって行った。
そして……。
オーパーツを大海のど真ん中に落とした。
無限に沈んでいくオーパーツタイプXを見降ろし、ドラゴンはなんと口を開き喋り始めた。
「この世界から出ていけ、パドラル・ワルドルウォー……私はオーパーツタイプD粛清は完了した」
オーパーツは深海に沈んで行った……。
一方別世界のパドラルは。
「あ、あれ? 開かない俺のオーパーツが開かないぜ!? マジに開かない! え、なんでだ? 壊されるってことは無いし、誰かが押さえつけてんのか!? いーや、できるわけねエ! なんか水がチョロチョロでてくるだけだしよォ~……開けよォ~扉ァ~! 元の世界に帰れないッ~!」
パドラルが基本世界に帰ってくることは、無かった。
そして日は変わり、新たな日にちの朝へと変わるッ!
「あったぞ! トシマッ! さっき赤い髪した行商人から買った! ポ◯モン赤バージョンだ!」
「マジにッ!? なんであんの!? 」
我々は知っている、メタなネタを押し通す、世界観を無視する彼らを知っているッ!
彼らは水のオーパーツ・タイプWを使う能力者、レイター・ドゥルーフミッグを打ち破ってこの町に辿り着いた少年と狼。
トシマとガレンだッ!!
「さてと、それはいいとして、師匠のおつかいがあったなぁ、たしか内容をメモにして渡されたはず……えーと、どこにやったっけな」
「ヒャハハ、無くしたとか言わないよな? また聞きなおしに戻るか? また俺死にかけるか?」
おつかいのメモを探してバッグをごそごそするトシマにいちゃもんをつけるガレン。
トシマは若干うざそうな顔をしたが、メモを見つけて安堵の表情に変わった。
「あった! えーとなになに……赤い髪をした行商人から買える、お……おぱ、お、ぱ」
「おっぱい?」
「違うッ!! オーパーツだッ! オーパーツと書いてある! あのレイターという女の人が言っていたものだ、オーパーツ、師匠は知っていたのか、オーパーツの存在を!」
「オーパーツおもしれー」
「お前さっきから適当に喋ってるだろガレン、というか赤い髪した行商人て、ガレンがさっき会ったってやつじゃない!? あーもう探さなきゃ、行商人だから早くしないとどこか行っちゃうかもしれんし」
「いやァその必要は無ェみたいだぜ、あの行商人、俺達の後ろをつけてきてやがる」
ガレンがちらりと後ろに目配せしながら話すのにつられ、トシマも後ろを向く。
すると、赤い髪の行商人がどでかいリュックを背負っている行商人が、トシマ達の所へ向かってきたのだ。
もうすでに声が届く距離まで詰めてきたので、トシマはつい挨拶する。
「こんにちは……」
ガレンもトシマにつられて挨拶する。
「こんにちワン」
そんな挨拶の魔法を繰り広げる彼らに、赤い髪の行商人は口を開く。
よく見ると女なのだが、知らない女と遭遇するのは本日二度目なのでトシマはさほど驚かなかった。
「この町はグルンガストと言って、ちょいと町から離れるとグルンガスト教会という建物がある。んで、ギルドがあるよ、今はホライゾンドラゴンとボルケーノザウルスがA級討伐ランクしてるようね」
「え? 急に一体なんですか?」
きょとんとするトシマに御構い無し、言葉を続けるその行商人。
「まあホライゾンドラゴンは先ほど一人の変態そうな変な髪色した少年が討伐しにいったようね」
「トシマ、この人と会話成立してると思う?」
「いやわかんね、俺たちに向けて言ってねぇかもしれね」
頭の上にクエスチョンマークが表示されそうなほど困惑しているトシマの顔を掴み、赤い行商人は喋り出す。
「で、あちらの宿屋にあなたの同業者が居るわ、とだけ伝えておくわね」
「知り合い? まさかソニアさん、ははまさかね。同業者……っていうのはなんのことです?」
「冒険者、あなたたちをひとくくりにして呼ぶには丁度良い呼び名だと思うわ。で買い物していかない? 人形とか買う? 二匹持ってるの、こっちの子はソウ……」
「冒険者……そうか、ジャントとかシェーヌとか、そういう感じの人たちのことかな」
トシマもまた、冒険者のひとりなのだ。
なんとなくだが予感した、このグルンガストという町で、全ての冒険者が集まりそうだと、そして、今ぶち当たっている謎の存在「オーパーツ」に決着がつきそうだと。
トシマは誰の許可もなく勝手にそう思った。
「冒険者たちの居場所を教えてくれたことには感謝します、行商人さん。名前を教えてもらいたいとこですけど、それより先におつかいを済ませていいですか? オーパーツというおつかいを」
そのトシマの声を聞くや否や、セールス感あふれる喋りを止め。
赤く長い髪を風になびかせ、これまた真っ赤な瞳をトシマに向けた。
「そうね、序章は終わり、最終章に入りましょう、我が名はスカーレット。トシマ、そしてあなたたち冒険者達に完結というご褒美を与えてあげるわ、私はその為にここに居る。私もまた冒険者だった"終われなくなってしまった"けどね」
彼女のまたも狂言に近い言葉に、怯むことなくその目を見据えるトシマ、というかずっと顔を掴まれてるので顔がそらせない。
キ ャ ラ ク タ ー 紹 介
ノドカ・ベイツォー
磁力を操る能力『マグネットドライブ』
身体から磁力を発するちから
ウツリ
金属を生成し、形作る能力『サクリファメタル』
その名の通り、しかし出せる金属には限りがある
出しすぎると貧血や体調不良をおこしてしまう
パドラル・ワルドルウォー
能力…基本世界と別世界を行き来できる能力『オープンワールド・ワールドアー』
これはパドラルの体感だが、基本世界にあって、別世界にないものが多いらしい
アナザーノドカ(ノドカ・カズナゴミ)
能力『人間的五大能力』
右手には熱、左手に冷気、右脚に跳躍、左脚に摩擦係数操作、頭には直感能力を宿す
アナザーウツリ(ウツリ・カスミ)
能力『妖術』
神妙刃、追尾シノビアシ、カゲオクリ、憑依
を使う
ソニア
トシマと同じ回転の技術を持つ




