助言と指摘
時折、小説の編集を挟んでおりますヽ(´o`;
ご迷惑をおかけして、申し訳ありません‥‥<(_ _)>
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その後、叔父叔母から今後のことで幾つか助言を頂いた。
叔母曰く。
「君が『日和』の血を引いていることをくれぐれも彼等に悟られないように。今よりも面倒な状況になりかねないからな」
勿論ですよ。誰がこれ以上状況を悪くしたいと思いますか。
そして叔父が追い打ちを掛けるがごとく告げる。
「さっきも言った通り、あれの説得に失敗した。彼等は高等科の所属。校舎棟は違うけど、今日のように昼休みを狙って来訪する可能性は高い。学園として怪異個々の動きに干渉は出来ない。だから、毎回自分たちが動くにも限度がある」
冷静に、状況を纏めていく声に一つ一つ頷く。
最もだった。
「だから、手を打って来た。明日の昼前には尋ねてくる筈だよ」
……誰がですか?
その時の苦みを噛み潰したような叔父の表情は世にも恐ろしいものだった。
言わずとも知れた。おそらく、その人物に助力を請うことは本意ではないこと。
しかし、そうしなければならなかったこと。
総て、自分の為だ。
そこまで思い至ればこそ、ただ頷くことしか出来ない。
怖かっただけではないのである。そこは大切なので強調しておきます。
そうして、理事長室を出た頃にはすでに日が傾き始めていた。
うん。何と言いますか……半日以上サボった計算ですよ。
緊急避難措置だと主張したい。
明日からが、勝負である。平穏な道筋を探していきたい。
友人もできた。
面倒事ばかりでもない。まだ、諦めるのは早い。
相手方の意図がいまいち掴み切れなかったにしても、今後のことはまだ分からない。
今はとりあえず、叔父の打ってくれた手を信じて待ちたいと思う。
長い廊下を抜けて、一度教室へ寄ってから下校することにした。
濡れてしまった制服など持ち帰らないといけないものもある。意識して透明度を高めながら歩いていく先に、夕刻の光が差し込んでいる。
目の前に広がる異景に、今更ながら納得していた。
廊下を転がっていく首。弾んで、壁にぶつかる動作を繰り返している。
ぼんやりとした影が窓の外を飛び交い、血塗れの手がガラスを割れない程度に打ち叩いている。
うん、痛いだろうね。あれは。
改めて見ると、まさに怪談学園である。
其々の怪異の動線を観察しながら、邪魔をしない様に通り抜けていく。
階段もすごいことになっていた。
十三段目で出番を待っている白い手。
まるでハンドクリームの宣伝に出てくるようなそれだった。
肌理の整った綺麗なそれを避けつつも、やはり上からバウンドしてくる首。
これは少し危なかった。
辛うじて避けたけれど。
何だか夕方になると皆元気だね。やはり夜行性に近いのだろう。
何とか、教室に帰りついたところで思いがけない出迎えにあった。
若干油断をしていたこともある。
少し透明度が下がっていたようだ。
頭上から、ばさりと被さる様に落ちてきたのは黒い影。
至近距離で確認すれば、それは髪の束だった。綺麗な濡れ羽色の髪である。
蝋の様に白い手が、首へと伸びてきた。髪の隙間から、艶めいた微笑みが覗く。
これは、天井下がりだね。多分。
そういえばホームルームの時に天井から吊る下がっていた人がいたのだ。
重力を無視した凄いやつがいるな、と。怪異とはいえ、つい目が行っていたのも事実で。
そしてこの状況はつまり、襲われていると言っていいのだろう。
何も怪異が人しか襲わないということではない。
怪異同士、主に夕刻を過ぎると力試し的行動に出るモノもいるのだと事前に聞いていた。
そうそう。思えば、瓢箪君もいたではないか。彼が一番手だった。
まあ、校内とはいえ校庭の傍に拠点を構える彼だからこそとも言える。
帰りも会えるといいな。
彼の怪異としての在り方には毎回のことながら感心しているので。
そういえば、今朝は涙目を堪えていたな。うん。
経験値を積んで是非とも立派な怪異に成長してほしい。
「……あなた、なんでこの状況でそんなに暢気なの……」
ああ。苛立っているよこれは。
物思いに耽っていたせいで、肝心の彼女に対する対応が遅れてしまっていた。
先に謝罪を挟んでおきたい。普段からこんなに痛い子ではないのだ。自分は。
内心の焦りもあったのか、少し口が滑った結果。
つい、指摘してしまったのである。
「それでは駄目。君は本当に怖がらせる気はあるの。甘いよ」
「……なっ、」
まさかの反応だったのだろう。心中を察する。悪いのは自分です。
普段から母や父の痴話喧嘩めいた騒動に接しているせいか、剣呑な雰囲気や張りつめた状況であればある程に思考が醒める様になってしまった。
今回その弊害を受けるのは、目の前に吊り下がった彼女だ。
「気付いていないかもしれないけど、まず腕力が締め落とすのに不足しているように見える。少し苦しいくらいでは反撃されかねないよ。それと、溜めが短い。夕刻の学校内でシチュエーションはばっちりでも登場が早すぎて生かし切れてないよ。最後に、その髪だ」
しぱしぱと瞬きを繰り返す彼女は、よくよく見るとかなりの美少女だった。
おお、これは思いがけない発見。
そんな感慨に浸りながらも、最後まで言い切った自分は大概酷い。
「とてもフローラルな香りがします。恐怖心も和んでしまうよ、それでは」
精神面を打ち砕かれた様な悲壮な顔をして、彼女はしゃがんで動かなくなる。
この時も、天井に足を付けたまま。天井に体育座りをする少女。
一生で何度見れるか分からない光景である。
そんな感慨を抱きながらも暫く見上げていた。
さて。通常心理に戻って来たところで罪悪感が物凄い訳ですが。
間をおいて謝罪を上に投げかけてみたものの、声が届いていない様子だった。
美少女の怪異としてのプライドを傷つけてしまった。
これは……全面的に自分の非だ。
とりあえず、もう少し待ってみようかな……
纏めた荷物を手に、教壇の横で彼女の回復を待っていると。
がらり、と扉が開いた。




