↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/206

53 女神との定例報告会

 その日の夜のこと。不破家は全員、徳山館に泊まることになった。


 ある一室で、スヤスヤと眠る俺たち。そして相も変わらず、例によってあの(・・)2人の女神が俺の夢に登場した。



 ◆◆◆◆◆ 



「……おっ、今回は割りと早めの再会だったようだね……」


「――アンタさ」


 当然のごとく現れるミネルヴァとフレイアを前に、「2人って案外暇人?」などという感想が思わず出る呑気な俺。

 だって、前回会ってからまだ1年も経ってないから、そう思うのも無理はないよね?


「この前しゃんとしなさいって、言ったばかりでしょーが!!」


「ぶほっ!!?」


 すると突然、ミネルヴァが俺の顔に向かってビンタを炸裂。

 その細身の容姿からは想像もできないほどの威力で、俺は横に倒れた(夢の中の世界ではあるが)。

 

「いってぇ……何すんだよ!」


「それはこっちのセリフよ! アンタこそ何ボサっとしてたのよ!」


 烈火のごとく怒るミネルヴァ。痛む頬を抑え、俺は直ちに理由を脳内で探る。


 ああ、王国との戦争に負けたことに不満があったということか。

 でもあれ、戦力差的に仕方なかった結末だったような……。


「そこを何とかしなさいよ! 何のためにチート能力与えてやったと思ってんの!」


 ああ、そういえば俺(こっち)の思考は2人には筒抜けだったっけ。

 でもあれ、1人2人がチートしてどうこうなる問題じゃ無かったような気がするんだけど……。

 というか、あのヴィクトリア王女に勝てる見込みがあるとでも思ってたのか? 


「そういう場面で勝つのが、主人公ってモノでしょうが」


「いやいや、創作の世界じゃないんだから、そんなホイホイと上手くいきますかってんだ」


「うるさい! そんなこと言ってたら、いつまでも世界を征服できないわよ!」


「こっちだって苦労してんだよ! いくら女神だからって、上から物言って……」


「あ、あの! け、喧嘩はやめてください!」


 ずるずる口論にもつれ込んでいく俺たちを制したのは、蒼髪の女神フレイア。


「ふ、フレイア……」


「す、すまん……」


 やばいところだった。このまま夢の中で冷静さを失う所だった。ありがとうフレイア。

 それに比べてミネルヴァは……駄女神だ。


「とにかく武親さんに訊きます。貴方はこれからどのような指針を以て、世界を征服していくおつもりですか?」


 これまでの会話の内容から、俺たちが具体的にどのような行動をとったのかは、リアルタイムで伝わっている。

 つまりこれは、俺自身に対する意識の確認と言ったところか。

 ということは、慶広と新たに目指すことになったあの(・・)目標を言えばいいんだな。


「――日本と『ミズガルズ』にある王国が連合して、一緒に世界征服する。特に内政にも力を入れながら。……でいいかな?」


「それは、上手くいきそうですか?」


「さっきの口論でも言ったが、そんなホイホイ上手くはいかないのが世の中さ。でも目的を果たす以上、俺達がなんとかするしかねえよ」


「アンタに出来るの? 心配だわ」


「余計なお世話だ。つか、同じ転生者の慶広もいるんだから、黙って見てろってんだ」


 そもそも、ミネルヴァたちのほうから俺に頼み込んできたんだろうが。

 それに、冷静な役回りの慶広がいるから大丈夫。

 悔しいけど、向こうのほうが戦い方も政治も一枚上手だし、影響力もある。将来の蠣崎家の後継者候補との間にパイプがあるだけ、まだマシだ。


「でも、同じ勢力に2人も転生者がいるなんて驚きでしたよ」


「……?」


「本当ね。まさかあのアフロディーテと九天玄女も、転生者を送り込んでくるなんてね」


 あれ? そういうのって、神様同士が集まって合意した上で送ってるのかと思ってた。

 でも今の話しぶりから、結構各自の裁量任せな面も強いみたいだ。

 

「まあ、稀にみる緊急事態ですから、送ることは送るのでしょうけど……」


「効率性を求めた結果、ってとこかしら」


「どうでしょう? 聞いたところによりますと、一部の間で自分の立場を上げるために、転生者を別に送っているという噂があるみたいなのですが」


「なにそれ。そんな勝手な理由で人の運命を操作するとか、あり得ないんだけど」


 察するに、自分勝手な神もいるってことか。

 確かに神話を覗いてみると、過ちを犯す神々の話はちらほら散見できるから、可能性としてはある。

 しかし運命を操作……そんなメタ的な発言を平気でするとは、改めて2人は女神であると再認識させられる。

 ミネルヴァの態度ばっか見てると、すぐに忘れそうになるけど。


「なんか言った?」


「いや。ところでそろそろ俺、抜けてもいいか?」


「ええ。構いませんよ」


「ふん。そろそろちゃんと、カッコいい場面見せてよね」


 ふう、ようやくグッスリ眠れるぜ。

 ただでさえ夢を見ている間というのは、眠りが浅くなっているからな。そのうえで痴話喧嘩してるんから、当然疲れも出る。 


 しかしながら今回、またしても不安な点を1つ残す形となった。

 今の話って、要は他の大名や国に転生者がいるかもしれないってことだよな。しかも、統一的な意思が存在しない状態で。

 王国との戦争前に慶広が懸念していた事項が、いよいよ現実味を帯びてきたぞ。 



 でも当面は、内政と王国との外交に力を注ぐべきだろう。

 元服から1年足らず。ここまで2度の戦が起こり、残りは戦後復興に時間を食って、ここまでまともな経済政策に参加したことは無い。


 だがこれからは、そちらに尽力する余裕も出てくる。

 そもそも日本として認識されているのかすら怪しい辺境の蝦夷地を、わざわざ侵略してくる大名もいないだろう。

 苦戦したとはいえ、コタンシヤムの乱の迅速な鎮圧から武装蜂起するアイヌもあらわれるとは考えにくい。

 つまり、こちらから戦を仕掛けない限り戦は起こらない。

 よって、本当の世界征服はここから始まるといってもいい。


 見てろよ、全世界の猛者ども!

 これから俺たちがあんたたちの全てを! この手に収めてやるよ。 




 ――そしてここから、中央から遠く離れた蠣崎家がいよいよ日本中を席巻することになるのは、数年後のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。