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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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46 揺らぐ仮説、揺らがぬ味方

「死ね! お邪魔虫!」


 鷹姫が叫びながら、藁人形に釘を打ち込む。

 俺は緊急停止をかけるも完全に間に合わず、呪術は実行された。


「ぐっ……!!」


 果たして、結果は如何に……。



「……あれ? 何とも……無い」


 意外な結果に、俺は途端に拍子抜けした。

 鷹姫の呪いは、結果として何の異変ももたらさなかった。

 改めて体中を触ってみるも、どこもおかしなところは無い。痛い箇所も無いし、特に変調をきたしてもいない。


 俺はホッと胸を撫で下ろす反面、自分で立てた仮説に対する信頼性が揺らいだ。

 

「間違ってたのか……?」


 まさか仮説は正しくなかった?それとも、単純に発動条件が合致していなかっただけなのか……。

 

「五郎。如何した?」


「い、いえ。なんでもありません」


「鷹姫様。お言葉ですが少し慎まれてはどうですか?」


「ちっ、なんで……ブツブツ」


 もしくは……その人によって、“発動特性”があるだけなのか。

 いや、だとしたら何故王国軍の兵士は、同じような魔法を一斉に発動させることが出来る?


 わからない。しかしこれで、魔法に関しては振り出しに戻ってしまったな。

 今日はもう遅いし、一応、明日の戦闘では俺のほうでもう一回試してみる。でも、期待はできないがな。



 ◆◆◆◆◆


 

 翌朝。

 勝山館に籠城する蠣崎軍は、朝の腹ごしらえを済ませ、今日も王国軍と対峙していた。

 全員手には弓、背中には昨日大量に奪取した王国の矢を装備。一丸となって、フルホルメン大佐の部隊を迎え撃つ。


「さあ、今日も我慢の時ぞ。だが、勝利を信じて耐え忍ぶのだ!!」


「御意!!」


 今日も味方の士気に問題は無し、と。

 おかげで、それなりに策をすんなり実行に移せて助かる。

 

「進めい! 魔法も自在に扱えぬ劣等民ごとき、叩き潰せい!」


「おおおおおおお!!!」


 そう感心していると、早速王国軍が剣や槍を持って勝山館に接近。

 しかも今日は、雰囲気が違う。そのまま数の多さに任せ、今にも館ごと蠣崎軍を押し潰しかねない、鬼気迫る勢い。

 昨日の『借箭』が相当悔しかったのか、一気に片をつける気だ。


 つか劣等民だと? あの野郎、なめやがって……。魔法使えるからって調子に乗るなよ。

 

「うう……岩を転がせえ……」


 一方、高所の利を得ているのは蠣崎軍。

 勝山館前の坂を駆け上る王国軍に向かって、厚谷隊が大きな岩を転がす。

 昨日の再現か。ていうか季貞、よく見ると二日酔いしてね?

 

「う、うわああああ!」


「馬鹿の一つ覚えが……。同じ策が、このモルテン・フルホルメンに通用すると思うてか!」


「む!?」


破壊(ブリュッヒエ)!!」


 さすがに昨日と同じ手は通用せず、フルホルメン大佐が魔法で岩を一気に打ち砕く。

 しかしそれは計算のうち。

 

「発射!!」


 岩はただの目隠し。

 死角を幅広く作って、その隙にアイヌの弓兵を配置。そして岩が打ち砕かれ視界が明けた瞬間、斉射。 


「ぐわあああああ!!」


 昨日に引き続き見事な命中率。

 おお、それにしてもよく飛ぶなあ。急ごしらえの蠣崎軍の矢とは質が違う。

 きっちりプロの職人によって拵えた、って感じだな。

 

 とはいえ、いつもより飛んでいく分、むしろ扱いにくて外しそうな気もするけど。

 アイヌはアイヌで驚異の順応性がある。彼らもまたプロの腕前だ。


「くっ、前に進めん!」


 しかも今日は矢の数も過去最多。まるで『レッドク○フ』のワンシーンみたいだ。


「おのれ……第一陣撤退! 撤退!!!」


「よし、門を開けよ! 背中を見せる異国人を、追い込むぞ!!」


 そして撤収し始めた瞬間を狙って、今度はチート能力を持つ俺を筆頭に追撃開始。白兵戦は任せとけ!


「う、うわあああ! 後ろから敵があああ!!」


「そぉりゃ、そりゃそりゃそりゃああ!!」

 

 俺たちはひたすら槍を振るった。

 失速した王国軍に変わって、今の勢いは俺達にある。

 おかげでフルホルメン隊の前衛は、反撃することも出来ずあっという間に散り散りに。


 ただし大佐は逃げ足だけは速く、追うことができなかった。

 ふっ、だがさすが俺。前世と違って、もう武に長けていない俺ではない!

 俺は高らかに勝ち誇った。逃げる敵兵を指差しながら。


「はーっ、はっはっはっはっは!! これが俺の実力だああ!」



「――まったく、不甲斐ないですこと。劣勢の寡兵ごときにやられたい放題とは」


 そんな俺たちの近くから、突然ある1人の女性の声が聞こえた。


「ん……?」


 俺は声のした方角を振り向いた。

 そこには、プラチナブロンドでお嬢様結びの見目麗しい1人の姫騎士。

 大きめの剣を片手に、白い馬に乗っていた。

 

 今度は誰だ……?


鋭利な雷光(シュピッツ・ブリッツ)


「ぐおっ……!!!」


 するとその姫騎士は、雷撃によって瞬時に味方の兵をすべて仕留める。

 

「え……!?」


 あまりに刹那的。

 人一倍、動体視力に優れている俺の目が全く追いつけない。

 そして“気がつけば”、全員その場に倒れていた。

 なんだよ……あまりに呆気なさすぎる。本当に誰なんだ、あんた。


「――あら? 何故貴方だけ立ち上がっているのですの?」


「……」


 だが、これだけははっきりしている。

 この姫騎士、今まで戦ってきた相手の中でも『格』が違う。

 単純に戦闘能力だけではない。どこか、気品漂う容姿と所作。その一つ一つの質が、あまりにハイレベルだ。

 俺は恐怖を通り越して、彼女に見とれていた。


「このわたくしに、相当見惚れてしまったようですわね。そこの貴方」


 普通ならムカつくその言動にも、まったく反論する気すら起きない。

 間違いない、この姫騎士(ひと)は“本物”だ。


「名前が……聞きたい」


「わたくしの名前を?」


「是非……」


「……宜しいでしょう。互いの名を名乗るは人を統べる者の礼儀。ただし……」


「ただし……?」


「名前を知りたいのならば、まず質問したほうから答えなさい。そうすれば教えて差し上げますわよ」


 人を……統べる者。やはり、只者ではないな。

 それにここで名前を教えあったところで、この人は卑怯な真似はしなさそうだ。

 俺は躊躇することなく、名前を言った。


「不破五郎武親、だ。あんたは?」


「わたくしは王国軍第2師団長、ヴィクトリア・カルロッテ・ミュルクヴィズラント、ですわ」

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