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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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45 計略実行

 誤字修正(2014年9月20日)

 中山館→中野館

 ちょっとしたひと騒ぎはあったものの、なんとか元の士気を回復させ、計略用の配置につく蠣崎軍。

 館の割と近くにいる王国軍は、見える範囲の限りでは勝利を確信してかどこかくつろいでいる様子。

 

「越中守さん。敵は油断して警戒を怠っております」


「ふむ、まさに好機と見た」


「うい~……ふふふ。慌てふためくといい、異国の(つわもの)よ」


 季貞もまだ酔いから完全には抜けきってはいないが、だいぶ正気を取り戻した様子。ふう、一時はどうなるものかと思ったぜ。


「では南条越中守。命令を」


「承知した」


 そして守継は、麓の王国軍野営地に向かって、大声で号令を下した。 

 

「今ぞ!! 出陣だあああああ!!!」


「おおおおおおおおおお!!!!」


 法螺貝が鳴り響く音。勇壮に轟く太鼓の音。そして戦意溢れる兵士の掛け声。

 それらを聞いた王国軍は、突然のことに狼狽えるものが続出した。

 

「て、敵だあ!!」


「迎撃か!?」


「馬鹿な!? 相手は寡兵のはず……」


「まさか伏兵か!?」


 おうおう、慌ててる慌ててる。実際は一兵も館から出てないってのに。

 指揮系統の混乱が続き、王国軍はまともに身動きが取れない様子。


「じゃあ皆いくわよ! 弓兵放って!!」


「私らも続くのじゃ!!」


 今度はレスノテクとハシタインを筆頭に、勝山館から一斉にアイヌの矢が放たれる。

 明かりで普段の夜より見えやすいとはいえ、驚異の命中率を記録した。


「ぎやああああ!!!」


「矢だ! 矢が飛んできたぞ……!!」


 ふう、残量の少ない矢を上手く効率よく使ってくれている。

 これは想定よりも良い形に持ち込めそうだ。

 王国軍の混乱はピークに到達。若干ながら敵前逃亡を始める者もあらわれる。 


 とそこに、聞き覚えのあるあの男の声が聞こえてきた。 


「静まれい! 何を動転している!」


 あいつはフルホルメン大佐!

 あれ? でもあいつなんでここに? 兵糧庫に引っこんでたんじゃないのか?

 遊撃でもやってんのか? 個人的に。


「向こうが弓矢を使うのならば、こちらも弓矢で応戦しろ!! これ以上の兵の損失は抑えねばならん!!」


 ぷぷぷ。それこそこちらの思う壺。大佐、上手く罠にかかってくれたであります! じゃ、後の皆さんよろしく。


「皆の者! 降ろすのじゃ!!」


「うい~……じゃんじゃん降ろせ~ぃ!」


 今度は季貞と父・武治を筆頭に、あらかじめ作ってあった例の藁人形を、地面の上に立たせるように勝山館の前に吊るした。

 そしてフルホルメン大佐は、その藁人形に向かって矢を放つように指示を出した。


「むう、想像より兵は多いか……。放てい! とにかく敵の前衛を少しでも多く削るのだ!」


 明かりが灯されているとはいえ、勝山館の外壁付近はほぼ闇の中。おかげで、王国軍は藁人形を人間であると誤判定し、矢は次々と藁人形に命中。

 俺の考えた策によって、蠣崎軍がどんどん相手の飛び道具を奪っていく。

 そして藁人形は時間を追うごとに、次第にハリネズミに変身するがごとく全身に大量の矢が突き刺さっていく。


 

 ◆◆◆◆◆



 半刻ほど経ったころ。

 王国軍側の弓兵の動きがストップした。

 大方、目の前の敵兵が作り物だとわかって、こちらの策略に気づき止めたのだろう。

 だって、藁人形だからその場から自分で動けるわけないし、矢が何本刺さろうが“死ぬ”わけでもないのだから。


 まあ想定の範囲内だ。『借箭』は見事に大収穫。籠城戦のために必要な武器はこれで揃った。

 

「やったな、五郎」


「ええ、大成功です」


 ふうっ、王国軍も予想外の被害に、戦術の立て直しを図ってくるはずだ。

 後は弓兵で応戦しつつ、タイミングを見て奇襲だ。

 とにかく兵力を削って削って、削りまくるぞ!


「まだまだ持ちこたえられそうね」


「うい~……祝い酒にござるー」


 この勝利に喜びを見せつつ安堵の表情を浮かべる蠣崎軍。

 ただし、2人を除いて。


「ぐぬぬ、小童(こわっぱ)の策が功を奏してしまうとは……」


「同感です広益様。ったく、どこまでも小賢しい豆坊主め……」


 はいはい。キャラ通りの反応、ありがとうございます。

 でも本音を言えば、もうちょっと素直に喜んで欲しいよなぁ。

 やはりここは次なる策を以て王国軍を退け、認めさせるしかないか。

 いや、それでも頑として認めなさそうだけど。


 次なる策? 実はさっき言ってた仮説にまつわるものなんだけど、それは……


「ふふふふふふ……。斯くなる上は、この藁人形であの豆坊主を葬り去りましょうか」


「!?」


 て、鷹姫!? それはイカン! もし俺の仮説どおりだったら、俺死んじゃう!

 俺は焦った。


 なぜ焦っているのか? それは仮説の内容に原因がある。

 俺がその仮説を考えるきっかけになったのは、先日の中野館の戦いのこと。 

 本来、ミュルクヴィズラント王国をはじめ異世界人にしか使えなかったはずの魔法。


 ――「白刀弾(レタル・ニペック)!」


 ――「百裂裂き(エタラカ・マキリ)

 

 しかし、なぜかリシヌンテはそれを行使していた。

 暫くの間その理由がわからなかったが、今朝になってようやく思いついた。


 魔力は個人個人の体内で生成されるのではなく、『空気などを介して外部から供給されるもの』であると。

 この仮説によれば、もし日本列島をはじめ東アジアの国々が異世界と融合しなかったら、リシヌンテも魔法を使えなかったはずなのである。

 つまり、融合した異世界から魔力を含んだ空気が流入。それによって、俺たちも魔法を発動することが可能になったということ。


 もちろん、だからといってやり方が間違っていれば、魔法は発動することはない。

 だが仮に、たまたま発動方法と上手く合致してしまえば、一体どのような魔法が繰り出されるのか予測不能。

 だから、ここで俺を呪術の対象に藁人形に向かって釘を刺せば、本当に死んでしまうかもしれないのだ。


「死ね! お邪魔虫!」


 って、なに悠長に説明してんだ俺! 冗談抜きで、自分の命がピンチだってのに! 

 鷹姫、すでに人形に釘を刺し込む準備できてしまってるぞ! 早く止めないと!


 地面を思いっきり蹴りだすように、俺は鷹姫に向かってダッシュ。彼女を止めに行った。

 しかし、時すでに遅し。釘は既に、藁人形の胸の部分に今にも刺さろうとしていた。


 果たして、俺の仮説は当たっていたのか? それとも否か?

 前世の自殺時と同様、走馬灯のように回想が脳内を駆け巡る。 

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