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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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44 団結と綻び

 戌の刻。

 勝山館に集結していた将兵たちは皆、麓の上ノ国の街の方角を望んでいた。

 勝山館周辺には、松明がいつもより多く焚かれている。


 街灯も何もないこの時代、夜間は非常に暗く、松明が無ければ隣の人の顔を判別することもままならない。

 そこで策をスムーズに成功させるために用意した物であった。

 幸い、王国軍も松明かそれに似たものを焚いているため、これから俺たちが不審な動きをするとは思っていないはず。

 そもそも地形的に麓からは見えないし。


 それにあの有名な川中島の戦いで、武田信玄が採ったとされる『啄木鳥戦法』が上杉軍によって看破された理由は、飯を炊く煙の量が多かったからという“いつもと違う不審な動き”を察知されたからだ。

 敵に不審に思われないことは重要だ。


 もっとも川中島の戦いの話も、創作のニオイが強いって話だけどね。


「いよいよ、にござるな」


「はい」


 もう負けられない。プレッシャーが重くのしかかる俺たち。

 だがそれが、背水の陣を敷いた蠣崎軍の団結を強固にしていた。

 王国軍の陣地に正対する彼らに一切の綻びなし。

 

 ただし、2人を除いて。


「何故、某が小童(こわっぱ)の策に従わねばならんのだ……」


「同感です広益様。何故誰も、豆坊主ごときの策に異議を唱えなかったのでしょう。不愉快です」


 あーあー、これだ。例によって広益のオッサンと鷹姫。

 この一大決戦の場で、意地こいて俺の策を受け入れたがらない頑固で無駄なプライド。

 近くで聞いたせいで、せっかくの緊張感が台無しだ。 

 

「五郎。敵の様子は?」


「え、あ、はい。たぶんまだ大丈夫です」


 おっと、そんなことに気を取られている場合じゃなかった。

 敵の動向にも注視しておかないと。万が一にも察知されたら、策のほうまで台無しになるからな。


「しかも、あたしの(・・・・)守継様となんであんなにしょっちゅう、くっついているのでしょうか!? それもあたしの許可もなしに!!」


「鷹姫殿?」


 なんだ? 鷹姫がまた暴走し始めたぞ? 

 ってヤバい! こんな大声が王国軍の耳に入ったら、せっかくの計略が何もかも失敗になるぞ!!

 

「先の蝦夷の乱だって、守継様がいなかったら何もできなかったくせに!! ああ! この疫病神!! 妬ましい!!!」


「鷹姫殿、落ち着かれよ!」


 ほっ……。父上、相変わらずナイスな抑え役。

 このまま放置していたら、それこそ敗北決定だったよ……。


「今は戦の最中に御座る。ここで仲間割れを起こしては、今後の戦運びに大いなる支障が生まれよう」   


「ちっ、豆坊主の一族はなんでこう……」


 げ、舌打ちしたぞコイツ。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってか。俺だけじゃなく、一族全員に恨みつらみが出てきたようだな。

 それになんか、時間を追うごとにどんどん凶暴になっているような……。いや、あるいはこれが本性なのか……。


「鷹姫様は、何をおっしゃってんだべ?」


「そったらもん、オラに聞かれてもわからん」


「まあ、鷹姫様だから……」


 おいおい、味方の兵士たちにまで呆れ返られてるぞ鷹姫。やべえ、ガチで不安になってきた……この戦い。


「ていうか蝦夷の乱って……あたしたちもいるのに……」


「なんか怒りっぽい人だね~」


 そしてリシヌンテが客観的な評価をする一方で、レスノテクは、同じアイヌが起こした戦いを『乱』と呼ばれショックを受ける。


 静けさを保たなければならない場面で、急に騒がしくなる蠣崎軍。

 すると今度は勝山館の中から、酒に酔った1人の男が出現した。 


「うい~っ。しょうだじょ~、怒りっぽいのはよくねえじょ~……にごじゃる~」


「備中守殿!!?」


「いかがなされた、備中守殿!?」


 え? あれってもしかして、季貞!?

 べろんべろんじゃないか。どんだけ飲んだらこんなに泥酔できるんだ……?

 すると彼の近くにいた重季が、やれやれと言わんばかりに季貞を介抱。そして驚愕の発言を口にする。


「……備中守。お前は昨日も飲み過ぎておったな」


「なんと!!?」


 季貞、あんたってそういうキャラだったのか……。

 ていうか、命懸けの戦場で酒飲んでる余裕あったのか……。

 そもそもどこに、それだけのアルコールを保存する場所があったんだ?


「ええじゃないか、ええじゃないか~。おお、孫八郎殿が8人に見えるじょ~……」


「……いつものことながら、頭が痛い」 


 さっき言ってたこと訂正。

 新たな綻び発見。名前、厚谷季貞。

 季貞よ、俺を助けたときのカッコよさはどこいったんだ? あんたの覚悟に惚れたのに、幻滅してしまったぞ……。

 ああ、折角の張りつめた雰囲気が完全に消えてしまっている……。


「ていうか泥酔って、まだ戦いが始まってすらいないのに……」


「なんかノーテンキっぽい人だね~」


 そしてアイヌの2人も、似たようなセリフを繰り返す。

 ダメだ……今回のギャンブル、絶対失敗する……。


「ま、まあ、大事ないだろうよ。少し経てば此奴も本調子になるだろう」


 重季、だから適当なこと言うなっての。そんな体たらくの戦国武将目の当たりにして、信じられるかっての。

 てか本気で命賭ける気あんのか? 俺はどうしようもない不安に襲われた。

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