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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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34 白熱する両者

「な……」


 さすがにリシヌンテが放った一撃は、蠣崎軍と王国軍双方にとって衝撃であった。

 ――ただ1人の例外、レスノテクを除いて。

 

「レスノテク……?」


「――もっとも、怪しげで強力な攻撃技術持ってるのは、こっちもだけどね」


 レスノテクは驚かないどころか、飄々とした態度で胸を張って勝ち誇っている。

 まさかこの子、すでにリシヌンテの一撃のことを知っていたのか?


 これはもしかして……いやいや。それは有り得ないだろう。

 俺は頭の中で色々な仮説を思い立ったが、すぐに打ち消す。

 

「つくづく小賢しい連中ですね。こんなに思い通りにならない戦いは、久しぶりですよ」


 一方、アストリッドは歯軋りしながらイラついた表情で、レスノテクとリシヌンテ、2人を睨み返す。

 久しぶりって、アストリッドは戦争では苦戦したことが殆ど無いってのか? 嘘臭いセリフだな。


「それはどうも。こっちは必死なんだからね」

 

「負けないよ~!」


 何にせよ頼もしいなあの2人は。そして他のアイヌの人たちも。

 それに引き換え、和人は頼りにならないな。あっさり次々やられていくんじゃ、しょうもない。

 でも、このままじゃ和人の誇り(プライド)に傷がつく。だったら俺が中心になって、誇りを取り戻してやる。


「……母上、もう十分です」


「大丈夫なのですか?」


「大丈夫です。俺の闘志にも火がつきましたから」


 母上のマッサージの甲斐もあって、体の痛みはだいぶ治ってきた。右肩に微妙な違和感はあるが、今戦う分には気にならないだろう。

 それより、俺もアイツにはやり返したいことが存分にあるからな。

 

 俺は鎧を直し、刀を抜いて立ち上がった。そして咆哮を挙げた。


「アストリッド! 覚悟ォ!」


 咆哮と同時に、俺の足がアストリッド目掛けて一直線に駆動する。

 いい感じだ、体が軽い。これなら十分にやれるぞ。


「シスター・アストリッドには、指一本触れさせません! 立ち止まりなさ……キャアアアア!」


 アストリッドを守るため、聖職者兵が俺の進路を遮る。

 だがそれは無意味。一度勢いがついた俺は止められない。俺は槍で修道女達をたちまち蹴散らしていく。

 

「ふおおお!」


「来ますか、少年」


 邪魔者がいなくなり一気に距離を縮める俺。単純にいけば、このままスピードで彼女を押せるはず。

 しかし、そう単純にはいかなかった。


「――幻影(トルーク・ビルト)


「む?」


 俺は明らかに無防備なアストリッドに、一太刀浴びせる。

 悲鳴を上げる彼女。同時に、アストリッドの体からは大量の血が出る……はずであった。

 ところが、彼女の体は幽霊のように俺の目の前からスッと消えていった。


「……は?」

 

 俺はアストリッドがいた位置を茫然と見つめる。

 手応えはあったはずなんだが、これは一体……。まさか――  


残虐なる鎖(グラオザーム・ケッテ)


「ぬふっ!」


 一瞬の思索にふけっている隙に、突然後ろから魔法の鎖が俺の首を絞めつけた。苦しさのあまり、俺ももがき始めずにはいられなかった。


「これもブレンダの報告通り、所詮は猪武者でしたね」


「……」


 ビンゴ! さっきのは分身だったんだ……。 

 しかし、わずかなタイミングで分身を創り上げるとは、コイツもチートが過ぎるぜ……。

 ――ま、俺もだけどな。


「ふん!」


「あら」


 俺は剛力を誇る腕力で鎖を掴み、強引に引きちぎる。

 どうやら、うまく引っかけたことに油断して、魔力の供給が十分じゃなかったようだ。

 もっとも、本人はあんまり驚いてないみたいだけど。


「それを言うなら、この鎖も所詮はヤワな代物だったな」


「……猪武者の分際で、何をほざくか」


百裂裂き(エタラカ・マキリ)


「キャアアア!」


 だが一度油断すると、すぐには取り返せない。俺と戦いを繰り広げようとして、背後から大量の白刃を浴びるアストリッド。

 この魔法は……リシヌンテのだな。


「いいぞ、リシヌンテ!」


「ふっふ~ん、えへん!」


 

――――――――――――――――――――――――


 名前 アストリッド・フォーゲルクロウ


 HP 3205/8737


――――――――――――――――――――――――


 

 急所にあたったらしく、HPが一気に減っている。

 不意をつくこの戦い方、リシヌンテも相当ベテランだな。見た目に似合わず。

 

「蝦夷もなかなかやるもんだな!」


「達者なものだ……」


「ぅ……ウオオオオオオオ!!」


 敵の部隊長に大ダメージを与えたリシヌンテ。

 攻撃が派手だったこともあり、生き残った蠣崎側の兵士達から歓喜の声が。

 くそう、カッコいいじゃねえか。俺も後で、2人からアイヌ流の戦い方教えてもらおうかな……。

 

 俺は斜め前に立っているレスノテクとリシヌンテを見つめながら、そう思った。


「ふふっ、ふふふふふふふ……」 


 しかしホッとのしたのも束の間。アストリッドのいた方角からは、不気味な笑い声が聞こえてきた。


「なんだ? こんな血みどろの戦場で、笑っている……?」

 

「――まったく、つくづく小賢しい割に、愚かな連中ですこと……」


「は?」


「さっさと降伏すれば、身の安全は保障してあげましたのに……ふふふふふふ」


 笑い声の主はアストリッド本人。彼女の周りには、いつの間にか聖職者部隊の兵士が全員集まっている。雰囲気が随分怪しくなってきた。

 それに、愚か? 言ってる意味がよくわからん。自分の土地守るためなら、全力で戦うのは普通のことだろ?

 ちょっと苦戦したからって愚痴ってるとか、そっちのほうがよっぽど愚かじゃん。


 しかし程なくして、俺たちはアストリッドの言葉の真意を思い知ることになる。


「――もう、あなたがたの命運は決しました。今すぐこの場で全員埋葬(・・)してあげます」


「なんだと?」

 

 埋葬? どういう意味だ? 

 そっちだって、かなり疲弊しているじゃないか。そんな余裕、あるとも思えないけど。

 だが次の瞬間、俺たちは彼女たちの膨大な量の魔力に圧倒せざるを得なくなる。


「ふふふ、これを見て恐れおののくがいいですよ」


 そう言ってアストリッドは、草むらの下の地面に杖を刺し呪文を唱えた。


『天にまします聖女神様よ、かの不届き者を希望ごと押し潰し給え。崩壊する大地フェアファル・ボーデン……!』

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