トキシー丸出しエロポスター
「で?何だっけなァ……………時間稼ぎとなんか距離測るんだっけ?」
「…………もう忘れたのかしら………?あなた普段から頭使わなすぎなのよ……………馬鹿は罪よウールネス」
「無線機で喧嘩する程悪くはねェだろ……………」
ウールネスの発言は至極真っ当なのだが、頭にやや血がのぼっている現状のマミィはその事実を正確に受け止めていない。ウールネスを無視し、マミィは棚から頭だけ乗り出すようにして、【ヒーローのモンスター】、【目潰しのモンスター】、【銃殺のモンスター】の攻防を注視する。
課せられた役割の一つ時間稼ぎに関しては、モンスター同士が戦いを続けるこの現状が終わらない限り問題はない。この倉庫内から移動する気配もないので、余計な事はせずにこのまま戦いを継続させた方がいいだろう。
問題はもう一つの役割。【目潰しのモンスター】の能力の射程を計測する事。最初は今まさに戦っている【ヒーローのモンスター】と【銃殺のモンスター】を利用して計測しようと考えたが、どうやらこの2体は〝目潰し〟の力が効かないらしい。戦いの中で耐性ができたのだろうか?多少は眼球に異常が生じているとは思うが、遠目からそれを正確に確認するのは難しい。そもそも戦いが苛烈過ぎて、連結した空き箱を近づけたら即座に壊れてしまいそうでもあるし、やはり【目潰しのモンスター】だけ誘き寄せて、計測はこちらが体を張って執り行うしかだろう。
「けど、どうやって誘い出そうかしら……………」
「こういう時は強ええ化質を放てばいいンだよな?…………けどそれっては弱点の装備とか、共鳴とかでなんとかすンもんだろ?じゃあ無理じゃね……………?」
モンスターの誘導方法は、戦闘演習より先に学ぶ初歩的なもの。ただ教わっているそれは、いずれも弱点がいなければできないやり方である。
そもそも強い化質反応は既に他にもう2つ程、その辺で暴れ散らしているのだ。化質を用いて【目潰しのモンスター】の動きをこちらの随意に当てはめるのはほぼ不可能と言える。
「なら……………モンスターの望みを侵害して気を引くとかになるのだけれど……………」
代案はある。そしてその方法は|強い化質反応を放つこと《もう一つの方法》に比べたら創意工夫の余地があり、要である対象の願いについても見通しが立っていた。恐らく、その方法こそがオペレーターの想定と合致した物であり、もうどう考えてもそれ以外の方法が見当たらない。
しかし、しかしだ。
〝誰とも目を合わせたくない〟その願望は、あまりにもシンプル過ぎて逆に制御がしようもなかった。
「ただ目を合わるだけじゃよォ…………多分ダメだよなァ…………?」
「そうね。そんなのもう2体のレベル4もやってる事だもの。化質反応の強いそっちの方に注意が行くんじゃないかしら……………」
勝算がないとは言わないが、一か八かの賭けであるのは確かだ。というか釣れたとしても他のレベル4まで誘導してしまってこちらの身が危なくなる可能性もあるし、ほぼほぼ裏目に出るような気がする。
分の悪い賭けにはでたくない。とすればレベル4同士の戦いを静観して、機を待つ他ないと、マミィは考えた。
「くっ…………しぶとい悪党共め……………ただちに成敗してやらねばいけないのに…………いや……………」
そんなマミィの判断を嘲笑うように───
「そうだ……………そうだろう……………!カッコいいヒーローとは、悪を成敗する者ではなく、命が散らされぬよう人々に救いの手を差し伸べる者ッ…………!!そんなのダメだ…………人が死ぬのはダメだ……………人をッ…………救わないとッ…………!!」
レベル4モンスター【ヒーローのモンスター】が、突如として戦闘離脱した。
『………………えっ』
「カッコいいオレを待っていろッ!!みんなァァァァァ!!!」
大袈裟に上体を振り、明らかに走り慣れていない不格好なフォームで駆けていく【ヒーローのモンスター】の後ろ姿を、マミィ達は呆然と見つめるしかなかった。
更に───
「もうッいいッ…………!!こんな醜女の内臓を暴いたって……………気持ちが萎えてしまうばかりだ……………探しに行かなければッ!!見目麗しきマドモアゼル!!」
顔をしかめすぎて握り潰された赤点のテストのように、酷い様相になっている【目潰しのモンスター】の顔面。それに見かねた【銃殺のモンスター】は、【ヒーローのモンスター】に続くように、走り去る。
口調は紳士的でも、彼の残虐極まりなく、反吐が出るほどにおぞましい本質は健在。この長い長い戦いは、隆起した殺人衝動が、封を切られる契機を先送りされ続けていたとも換言できる。面の良さを捨て去った、愛想の悪い女など、もう付き合っていられなくなってしまった。
そして残された【目潰しのモンスター】は───
「………………見ナイなラ……………ヨシッ!!」
切り刻まれたかのようにしわくちゃの顔面を、少しばかり緩めて、去っていく【ヒーローのモンスター】と【銃殺のモンスター】の背中から視線を外した。
モンスターとは、元来気まぐれな生き物である。彼らの行動原理は、太い芯が思考回路を貫き、理性を砕きつつ確固たる指針を定めているようなもので…………だからこそ、そこにつけ込めば制御する事が可能であると考える者は後を絶たない。しかし、理性が乏しいという事は、僅かな波風でも影響を受けやすいという事であり、それが彼らの行動原理に干渉しない理屈は存在しない。
静観などという、思考放棄の受動的選択がしっぺ返しを食らうのは自明の理である。
「おおっ!やったぜこれで距離を測りにいけるなァ!!」
「バカッ!!あいつらどう見ても外出て滅茶苦茶しようとしてるじゃない!!あっちなんとかしないとマズいわよ!!」
「………あッ!!確かにそうだなァ!!よっしゃあっち行くぞォ!!」
レベル4モンスターが街に繰り出し暴挙を尽くす。そんな惨事が起こらぬよう引きつけるのも、彼女らに課された役目である。その場で腰を下ろし始めた【目潰しのモンスター】は一旦放っておいて、マミィとウールネスはどっか行きだしたレベル4の行く先に先回りするように走り出す。
***
「でもよォ……………どうやってアイツらの気を引くよ?ただ前に出るだけじゃ無視決められるかもだぜ?」
そもそもの話、【ヒーローのモンスター】と【銃殺のモンスター】は自分達と戦う事への意義を失ったから、戦闘を止めたのだ。何も考えず奴らの前に立ち塞がるのでは意味がないのではないか?ウールネスのその見解は正しい。
しかし、マミィ•ベンキーの脳内では、これを打破する策が舞い上がっていた。
「心配する必要はないわ…………あなたにはここぞという時に花開く、地頭世界No.1のこの私のアイデアがついているわ」
「おン………………そうか………………」
自ら編み出した発想と言うものは、実質以上のポテンシャルを買い被ってしまうものだ。特に自己肯定感抜群の自惚れバカのそれは、確実に高く見積もられている。
そんな彼女の自愛に塗れた豪語に、ウールネスは不安そうに返答する。
マミィはそんなウールネスの様子に気がつく事もなく、早速自らのアイデアを世にぶちまけるべく、ウールネスにそれを投げ渡す。
「………………なんだコレ?…………ゴミ?」
「ゴミじゃないわよソフトクリームよ!!いいからそれ持ってあのコスプレ野郎の前に出なさい」
ソフトクリーム。マミィの認識に則って、ウールネスは渡されたそれの再観察を始める。
確かに、マミィがこれをソフトクリームと言い張る理由は分かる。このゴミの手持ち部分、というか持ち手部分を包んでいるのはソフトクリームのコーンを包む紙だ。長い円錐のそれは、キュートなロゴが散らされた、ピンク色のかわいらしい包み紙。それは間違いない。……………しかし、握り心地はコーンの硬くガタガタの感触ではなく、少し力を入れれば成すすべなく凹む頼りがないものであった。多分その材質は、真打、アイスクリーム部分と同じ………………三段積み重ねられた、グシャグシャの新聞紙だろう。
黒と灰がごちゃ混ぜの、美しさの欠片もないミックスソフトを眺めて、ウールネスは思う。
…………普通にゴミじゃんか……………これ……………
しかし、マミィは相手の言い分を認めないことで数々の口喧嘩を勝ち抜いてきたレスバの鬼。どうせ投げる勝負なら早々に負けといた方が効率的だ。
マミィの指示に従い、ウールネスは【ヒーローのモンスター】の前に躍り出る。
と言っても、ただこれ持って前に出ろだなんて、浅いなんてもんじゃない意図ではないだろう。彼がすべきは、茶番………………即興のコントだ。
ダサいフォームで走る【ヒーローのモンスター】が足を止めた。
日常を満喫するかのように、ゆったり大きく歩むスーツの少年が、自らの進路を塞いだからだ。
彼が表現するのは凡常。ヒーローが守るべきそれを見せつける事で注意を引く。そしてその関心につけ込むように、ウールネスは手に持ったゴミを口元に運んだ。
「あァ〜うっめぇ!!ソフトクリームうっめぇなァ……………!!」
幸福を装う歪な作り笑い。空気を掻き回す舌のうねりは、先の方でゴミに掠め、ウールネスに不快感を送り届ける。
【ヒーローのモンスター】は動かない。呆然と、唐突現れた、ソフトクリーム舐め回し練り歩くウールネスを眺めるばかりで、何のアクションも起こそうとしない。
空気に混じりだす気まずさと、紛れだすマミィへの疑心。答えを求めるように、ウールネスは少し振り返りマミィの方を見る。
棚の影に隠れているマミィの表情は、ウールネスに対して批判的な、「そういうことじゃないと」と言いたげなそれであった。そして息をつき、頭を横に振りながら、マミィはウールネスの手にあるゴミを複製。のち、凛とした目線をウールネスの眼球にねじ込む。
そして、マミィはゴミを床に投げつけた。
人外の膂力にさらされたゴミはひしゃげ、紛うことなき廃棄物と化し、ひれ伏すように床の上で形を崩す。
───からの、間断なき踏みつけ!踏みつけ!!踏みつけ!!!
親の仇を相手取っているかのような、迫力のある動きでひたすらにスタンプ。更には、クリームとコーンの2つに分かれ、離れてしまったそれらを交互に踏みつけにするという……………徹底的な憎しみの発露を、マミィは見事に表現していた。
そのバイオレンスな挙動が不意に止んだ。ウールネスは、地面にべた付きになって静止したマミィの両足を見上げていく。トイレットペーパーのスカートの、裾から膝下辺りまでを目に通し、お目汚しな下着を一気にスキップ。その静謐とした顔つきを、正面から捉える。
その表情は、言葉よりも雄弁に、それでいて端的にウールネスに告げた。
〝やれ〟───と。
「あァーッ!!まっじぃ!!ソフトクリームまっじぃなァッッッ!!」
ウールネスは、手に持ったゴミを握りつぶし、すぐ真下の地面へと投げ捨てた。
───からの、迷いなき踏みつけ!踏みつけ!!踏みつけ!!!
床との衝突で既にボロボロの廃棄物に、何の容赦もなく猛追。床にその汚ねぇ姿を刷り込ませんとばかりに、足を高く上げては叩きつけ、また上げては叩きつけと繰り返す。
無い悪意を演じてのバイオレンスだが、さっきまでの演技と比べたらよっぽど本心に近しい。楽しくはないが興が乗ると言うもの。
そして足元の紙ゴミを、大破というにふさわしい姿に変え終わり……………3歩駆けて、叩きつけた拍子で分離したクリーム部分も同じくバイオレンス!
脚がしびれてきそうな程に踏みつけながら、ウールネスは【ヒーローのモンスター】を横目にする。
その徹底的な………………食物を侮辱する蛮行に対し、【ヒーローのモンスター】は───
「か、か、………………カッコ悪い悪めェェェェェェェェ!!!!」
激昂を始め、昂る正義感のままに、ウールネスに拳を振り下ろす。
「エェ〜ッ!!釣れたァァァ!!?」
ウールネスは本能を30%に引き上げて、【ヒーローのモンスター】を引き連れて走り出した。
「よくやったわウールネス……………!あの変態は私に任せなさい…………!」
【ヒーローのモンスター】がウールネスを追いかけ始めたのを見届けたマミィは【銃殺のモンスター】の元に向かう。
***
「嗚呼…………!!何処だマドモアゼル………………早くその艶めく臓物にキッスを交わし、逢瀬に喜びながらまぐわいたい………………けど、きっと美しきマドモアゼルはこんな空気の悪い場所にはいない……当然だな……」
【銃殺のモンスター】は、人を殺害する事を望み化けたモンスター。…………ライフルでは太刀打ちできない、そんな強大な血の袋を破りたいと願った事がきっかけとはいえ、こうも長々と焦らされればその想いは別の方向へ向く。
彼はこの倉庫の縁に向かって走っていた。目指すのは外。マドモアゼルひしめく太陽の下へと、滾る情感を枯らさぬよう努めて足を動かしていた。
全ては、血に濡れた美女の内臓を眺める為に───
「キャ~!!今すっごいハンサムがたった今すぐ真横を颯爽と通り抜けたわ〜!!今まさに〜ッ!!」
【銃殺のモンスター】の耳と、欲望を横合いからつつく、マドモアゼルの小鳥のような声。この薄暗い倉庫という場所に場違いの………………声が聞こえた。
すぐに後を戻る。そして自分が過ぎ去ってしまった、棚の向こうを確かめるように、【銃殺のモンスター】は棚から顔をのぞかせる。
「キャ~!!こっち向いた〜!!止まっていると更に美しい〜!!かのマミィちゃんに並ぶくら………………ああいやマミィちゃんには流石に劣るけどその半分くらいは美しくてそれって充分過ぎる程に凄まじい〜!!キャ~!!半マミィ〜ッ!!」
声の出どころは言わずもがなマミィ•ベンキー。声を笛のように絞って、低めの声を甲高くして鳴らし、思いつく最大級の褒め言葉を撒き散らす。
「なっ………………なっ………………」
考えなしに己を褒め称える薄い言葉など、風俗で死ぬほど聞いて既に飽きている。男はただ呼び水に乗っかっただけ、視界から滝のように流れ落ちて、己を揺らす、その光景に誘引されるきっかけに過ぎない。
黄金の反射光が縫い付けられたようなブロンドの髪。海と空の境界線をゆっくりと混ぜたような青く美しい瞳。そして、こんがり焼かれたパンのように浅黒い肌。
更には一糸纏わず、大胆に剥き出しにされた乳房!!レディースサイズの茶碗が如き絶妙な加減の大きさに、肌の色に紛れるような美しき乳首。圧巻と言わざるを得ない、その素晴らしきバランスはまさに乳房界の黄金比。
加えてスポットライトを巧みに操る、腹から鼠径部までのなだらかな曲線は、見えぬ本懐への好奇心をくすぐってくる。
───そんな麗しきマドモアゼルが………………なんと10人ッ!!
容姿も体型も瓜二つな美女達が、天文学的運命に導かれ、この倉庫に集っていた。
「た、大挙ッ……………ヌードのマドモアゼル…………!?」
【銃殺のモンスター】は動揺を隠せない。その何の脈絡もない、裸の美女の跋扈に、体を震わせる。
言うまでもないが、今【銃殺のモンスター】の前に立つこの女性達は偽物。〝ミイラ男〟の力で生み出されたヌードポスターだ。
「キャ~素敵〜!!」
【銃殺のモンスター】の興味が、ヌードポスターに釘付けになった事を確認したマミィは即座に黄色い声を上げ、ヌードポスター10枚を、【銃殺のモンスター】か逃げるように走らせた。
「…………っ!!ま、まってくれ!!」
言葉とは真逆の行動。天邪鬼極まる可愛らしき乙女仕草に【銃殺のモンスター】の心は更に揺り動かされる。お約束のような制止の言葉を吐いて、去っていく乙女の背中を追いかける。
「まだだマドモアゼルッ!!もう一枚っ……………キミ達はもう一枚…………脱ぎ捨てるべきなんだ……………ッ!!そう、その焼けるように熱い腹の肉をだッ!!ボクが…………このボクが手伝って差し上げようッ!!」
重ねて言うが、この女性達は本物ではなく、ポスターだ。だから薄っぺらなそれを、倒して床に滑らせるようにして動かす事で、棚の下の隙間をくぐり抜け、【銃殺のモンスター】を撒くこともできる。
「………………嗚呼どこだ!?どこに行ったんだマドモアゼルっ!!?」
10枚のヌードポスターは、【銃殺のモンスター】の視界から外れた瞬間、棚の下に潜り込む事で追跡から逃れていた。まるで幻でも見ていたかのように、たった今目にしていた女性達が、忽然と姿を消した事に【銃殺のモンスター】は当惑する。
そして、破壊音が近づいてくる。
巻き起こる風。天井を溶かす光線。そう、半刻もの間戦い続けた、あのダサスーツの技が迫りくる。
「逃げるなッ!!逃げるなッッ!!カッコ悪いぞ!!お前は今とんでもなくダッサァァァァァイッッ!!」
【銃殺のモンスター】の区画に新たにやってきたのは、スーツ姿の半獣男。そして、そいつを追いかけているのは、キモいポーズで駆け回る【ヒーローのモンスター】であった。
「ウールネス!!」
逃げ惑うウールネスが進路に立つ【銃殺のモンスター】に気が付いたのは、マミィの声掛けを受けてから。そしてマミィが自分に求めている事に気がついたのもそのタイミングだった。
「え、えぇっとォ…………………ぱ、パパァ〜!!」
一瞬の思考から咄嗟に弾き出したのは、ウールネスと【銃殺のモンスター】の関係を偽る言葉。横を通り過ぎていくウールネスを、【銃殺のモンスター】は動揺した様子で見つめる。
「ぱ……………ぱぱ……………?」
突然のパパ指名に、【銃殺のモンスター】が呆けている中、その発言を聞いた【ヒーローのモンスター】はプルプルと震えだし。
「お、お前の………………息子か……………?」
「は?……………いや、違うが……………」
ウールネスの真っ赤な嘘を真に受けた【ヒーローのモンスター】は、【銃殺のモンスター】を追求する。勿論根も歯もない嘘なので【銃殺のモンスター】は否認する。が───
「とぼけるなッ!!誤魔化すだなんて……………お前はっ…………お前はどこまでカッコ悪いんだ……………!!」
「い、いや…………ボクに子供なんか………………」
モンスターは論拠などまるで必要としない。自分の認識が絶対であり、それと違う論は突っぱねて聞かない。
「そうかっ…………つまりは虐待ッ!!お前が子供を愛してやらないから………………お前の息子はこんなにも悪に染まって………………っ!!」
【ヒーローのモンスター】にとって、【銃殺のモンスター】は、食べ物を粗末にするウールネスを持つ、育児放棄のクソ毒親。そう、彼の中で決まりきってしまった。
「成敗だっ!!成敗だッ!!やはり…………お前のような悪を、1秒たりとも放ってはおけない……………ッ!!」
「ちょっ………………待ちたまえっ!!」
【グレートカリバースーパーヒーロースラァァァァァッシュ】
【ヒーローのモンスター】は【銃殺のモンスター】の言葉を微塵も聞くことなく、戦端を開いた。
「なァ、マミィ…………お前なんでヌードポスター複製できんだ?お前の自認で他人を綺麗だとか好きだとか思えたりすんのか?」
「私のじゃないわよその〝トキシー丸出しエロポスター〟は。これはパイロの部屋に飾られてたものよ」
マミィと合流したウールネスはマミィの足元に落ちている、10枚のヌードポスターが気になった。雑談させたら5つの発言の内に自画自賛を2つくらい差し込んでくるような自己愛の塊に、他人の容姿に惹かれる心が残っているのか?そんな疑問を抱くのは当然の事。他人の私物である事を本人の口から明かされたことで、ウールネスの胸の中の気持ち悪さが解けた。
「一時期、事あるごとにこの〝トキシー丸出しエロポスター〟を出してパイロをイジっていたのよ。だからか苦もなく複製できたわ」
「お前らってよくうまくいってるよなァ……………」
カスなんてもんじゃないマミィのエピソードに、ウールネスはドン引き。ただマミィも珍しい事に罪悪感を表情に湛えており───
「あぁいや……………この件に関してはパイロに本気でキレられて、だいぶ問題になって……………猛省してるのよ私。それが疑われないためにもこれ作った事は内密にして頂戴……………」
「まァ、そりゃあマジで揉める時もあるよなァ…………」
「何よ普段の喧嘩が茶番みたいに!!」
***
そして、【ヒーローのモンスター】と【銃殺のモンスター】の一騎打ちが始まった事により、【目潰しのモンスター】は孤立し、計測誂向きの状況が作られた。
「ヒトリは落チ着く……………ココはダレの目モなイ……………ココちイイ……………」
ずぅぅぅぅっと自身にまとわりついていた、不躾極まりないクズ共がようやく離れ、【目潰しのモンスター】はようやく落ち着けるひと時を手にした。もう、誰の目線も受けたくない。誰とも関わりたくない。そんな思いがゆっくりと脳内を揺蕩う。
そんな【目潰しのモンスター】の背中が、フワッとした感覚で覆われる。
「バカね………………あなたは1人じゃないわよ………………何よりも美しいこのマミィちゃんがついてるじゃない…………もう」
【目潰しのモンスター】の背中から、脳へ脊髄へ、中枢神経の端々までもを侵食する、悪寒が走る。
「ミルナっ!!ミぃぃぃるナァァァァァァァァァ!!」
「いいのよ………………?そんなに強がらなくても………………聖母でも形容したりない、この私の優しさに……………胸に飛び込む事に、遠慮をするだなんてもったいないじゃない………………」
「離してやれよイヤがってるじゃんか……………」
【目潰しのモンスター】に抱きつくマミィは、物凄い勢いで暴れられて引き剥がされる。
「何よ!!嬉しいなら素直にそう言うべきよ!!人を思う気持ちを暴力で表現してどうすんの───」
「ミィィィンナアアアアアアアアアアア!!!」
マミィの眼球に内からひび割れるような痛みが炸裂する。柔く繊細な器官を損傷したショックは、饒舌なマミィの舌すらねじ伏せた。
「…………とりあえず、後ろに入れば能力の影響は受けないという事が分かったわね」
バックハグから実験を始動した理由は、能力の効果範囲を調べる第一歩目。【目潰しのモンスター】に接近した時の安置を確かめる為だ。マミィは下まつ毛を分けて滴る目元の血を拭い、息災の両目をぱっちりと開く。そして、10数メートルの距離を取り、再度【目潰しのモンスター】に視線を送った。
「ナンどもッッ!!いわセンナッッッ!!!ミィィィテンじゃネェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
「困り果てるくらい!!あなたは私に見惚れてるのにかしら!?傲慢も大概になさい!!」
〝ミイラ男〟の決死の測定が始まる。




