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五章 七話

翌朝。


翠川家の道場には、昨日よりも張り詰めた空気があった。

朝食の時点では、まだ賑やかだった。

門下生たちはよく食べ、紫乃はよく動き、八重乃は穏やかに全体を見ていた。


叢雲とレオも、昨日ほどではないにせよ、

それぞれの門下や娘たちを見て時折満足そうに頷いていた。

だが、道場に入ると、空気は変わった。

正式な手合わせ。


翠川家とアドレメリア家の合同稽古、その仕上げ。

今日は、マナアーツの使用はない。


木刀と訓練用レイピア。

純粋な剣技のみ。

叢雲が道場の中央に立つ。


「此度の手合わせは、技を競うものにござる」


続いて、レオが言う。


「アーツによる補助は用いぬ。身体、目、足、呼吸、間合い。

 それらのみで示したまえ」


門下生たちが一斉に礼をする。


「はい!」


フィリアは道場の端に座っていた。


隣には八重乃。

少し後ろには紫乃。


フィリアの膝元には、簡易観測端末が置かれている。

昨夜、リヴァルへ報告した通り、観測は続ける。

ただし、今のところ異常はない。


半精化反応なし。

マギアス反応なし。


未分類マナ反応も、警戒値以下。

フィリアは一度だけ端末を確認し、それから道場へ視線を戻した。


最初は門下生同士の手合わせだった。


翠川側から一人。

アドレメリア側から一人。


木刀と訓練用レイピアが向かい合う。


礼。

構え。

開始。


フィリアには、すべてが見えたわけではない。

それでも、昨日よりは少し分かる気がした。


翠川側の門下は、足を使って距離を潰す。

アドレメリア側の門下は、細い剣先で距離を測る。


木刀が弾く。

レイピアが突く。

引く。

踏み込む。


止まる。

勝敗は一方的ではなかった。


翠川側が勝つこともあれば、アドレメリア側が勝つこともある。

叢雲は翠川の門下へ、短く指摘する。


「打つ前に肩が動いた」


「はい!」


「足はよい。だが、目が遅い」


「はい!」


レオはアドレメリアの門下へ、穏やかに言う。


「剣先が焦った。君の足はまだ届いていなかった」


「はい!」


「今の受けは悪くない。だが、受けた後に止まった。次の点を探したまえ」


「はい!」


織葉とクリスティナは、それぞれ自分の家の門下だけでなく、

相手側の動きも見ていた。


口を挟みすぎることはない。

ただ、時折、短く助言する。

織葉が木刀を持つ門下に言う。


「足音が大きいです」


「はい!」


クリスティナが訓練用レイピアの門下へ言う。


「突く前に綺麗に構えすぎですわ。綺麗なだけでは、間に合いません」


「はい!」


手合わせは進む。

勝敗はほぼ互角だった。


どちらかが圧倒するわけではない。

翠川には翠川の強さがある。

アドレメリアにはアドレメリアの強さがある。


その違いが、道場の中央で交互に示されていく。

フィリアは見学しながら、少しずつ息を整えていた。


昨日は、ただ圧倒された。

今日は、少しだけ見方を覚えた。


足を見る。

肩を見る。

呼吸を見る。

剣先を見る。


それでも、分からないものは分からない。

八重乃が横で静かに言う。


「見ようとしていますねえ」


フィリアは小さく頷いた。


「はい。でも、ほとんど分かりません」


「それでよいのです。昨日より、分からない場所が増えたでしょう」


「増えました」


「なら、よく見ています」


フィリアは少しだけ笑った。

その時、道場の空気がまた変わった。

門下生同士の手合わせが終わった。


叢雲が中央を見る。

レオも同じように視線を向ける。


織葉とクリスティナが、互いに一歩前へ出た。

門下生たちの間に、静かな緊張が走る。


フィリアにも分かった。

これは、ただの締めではない。

合同稽古の仕上げ。


翠川織葉と、クリスティナ・アドレメリア。

両家の次代を担う二人の手合わせ。

織葉は木刀を手にする。


クリスティナは訓練用レイピアを構える。


マナアーツは使わない。

雷も、炎もない。

花も、紫電もない。

ただ、木刀。


ただ、細剣。

純粋な剣技だけ。


それなのに、フィリアは喉が乾くのを感じた。

昨日、叢雲とレオの軽い打ち合いを見た。


あれもすごかった。

ほとんど見えなかった。

けれど、今なら分かる。

あれは、本当に挨拶だった。


道場の中央に立つ織葉とクリスティナは、まだ動いていない。

それだけで、空気が違った。


「始め」


叢雲の声。

次の瞬間、フィリアには何が起きたのか分からなかった。

音がした。


木刀と訓練用レイピアが触れる音。


一度。

二度。

三度。

いや、もっと。


体は見える。

織葉の体は見える。

クリスティナの体も見える。

二人とも、道場の中央にいる。


動いている。

それは分かる。

だが、手元が見えない。

木刀がどこを通ったのか。


レイピアがいつ突かれたのか。

いつ受けたのか。

いつ逸らしたのか。

フィリアには見えなかった。


「……え」


声が漏れる。

門下生たちは息を詰めている。

叢雲は黙って見ている。

レオも黙って見ている。


紫乃の笑みは消えていない。

けれど、目は真剣だった。


八重乃も、穏やかなまま、道場の中央を見ていた。

フィリアだけが、完全に置いていかれていた。


速い。

そう言えば簡単だ。


けれど、ただ速いだけではない気がした。

織葉が動く前に、クリスティナがそこへ置いている。


クリスティナが突く前に、織葉が角度を変えている。

それが分かるような、分からないような。


いや、分からない。

分からないのに、怖い。


昨日までの手合わせでは、二人ともどこか余裕があった。


門下生へ教えるための動き。

相手を傷つけないための動き。

見せるための動き。

今は違う。


勝ちを取りに来ている。

フィリアのような素人でも、それだけは分かった。


木刀が鳴る。

レイピアが鳴る。

足音は小さい。

呼吸もほとんど聞こえない。


なのに、道場の中央だけ密度が違う。

織葉の木刀が消えたように見える。


クリスティナの細剣が光の線のように見える。


その線が、交わる。

外れる。

戻る。

また交わる。


フィリアは瞬きをするのが怖くなった。

瞬きすれば、一手どころか、三手くらい進んでいる気がした。


「見えません……」


フィリアが呟く。

八重乃が静かに答える。


「ええ」


「本当に、見えません」


「今は、それでよいのです」


「皆さんは、見えているんですか」


八重乃は少しだけ微笑んだ。


「見えているものと、見えていないものがあります」


その答えの意味も、今のフィリアには分からなかった。

道場の中央で、二人の空気がさらに変わる。

クリスティナの姿勢が低くなる。


織葉の肩が沈む。

門下生たちが、ほとんど同時に息を止めた。


次が来る。

それだけは分かった。

何が来るのかは分からない。

だが、何かが一段上がる。


そう感じた瞬間。

ピッ。


小さな電子音が、道場の端で鳴った。


場違いな音だった。

稽古の音ではない。

木刀でもない。

レイピアでもない。


フィリアの膝元。

簡易観測端末。


織葉とクリスティナの動きが、同時に止まった。

ぴたりと。

木刀と訓練用レイピアが、互いの寸前で止まっている。


道場中の視線が、フィリアへ向いた。

フィリアの顔から血の気が引いた。


「す、すみません!」


慌てて頭を下げる。


「通知を、切っていなくて……」


手元を探る。

端末を持ち上げる。

画面を開く。


最初は、ただの観測ログだと思った。


充電残量。

周辺反応。

簡易記録。

そのどれかが鳴ったのだと。


だが、表示されていたのは違った。

未分類マナ反応。

既存封印反応パターンと部分一致。


照合率、上昇中。

反応源、未特定。

位置情報、不足。

継続観測、必要。


フィリアは画面を見たまま、固まった。

叢雲が静かに問う。


「フィリア殿」


レオの声も続く。


「何が出たのかね」


フィリアは唇を動かした。

すぐには声にならなかった。

もう一度、画面を見る。

表示は変わらない。


半精化反応ではない。

マギアス反応でもない。


シェルターからの通信でもない。

持ち込んだ簡易観測端末が、現地で拾った反応。

フィリアはようやく顔を上げる。


「……え?」


自分でも、間の抜けた声だと思った。

けれど、それしか出なかった。


「封印反応……候補?」


フィリアの声は、道場の中央まで届いた。

その瞬間、織葉とクリスティナは完全に構えを解いた。


木刀が下がる。

訓練用レイピアが下がる。


門下生たちの間に、ざわめきが広がりかける。

だが、叢雲が一度だけ視線を向けると、それはすぐに収まった。

レオもアドレメリア側の門下を見る。


誰も動かない。

誰も口を挟まない。


道場は、音を失ったように静かになった。

フィリアは端末を両手で持ったまま、慌てて立ち上がろうとした。


「すみません。すぐ、席を外してリヴァルさんに報告を」


その肩に、そっと手が置かれた。

強くはない。

ただ、立ち上がろうとする動きを止めるには十分だった。


八重乃だった。


「フィリアさん」


声は柔らかい。


「緊急のことなら、ここにおる者たちも役に立つかもしれません」


「でも、これはシェルターの」


「上に報告するのでしょう?」


「はい」


「なら、ここで連絡する方がよいでしょう」


フィリアは息を呑む。

八重乃は道場を見渡した。

叢雲。

レオ。


紫乃。

織葉。

クリスティナ。

そして、両家の門下生たち。


「隠してから話すより、聞いてから動く方が早いこともあります」


その言葉に、叢雲が静かに頷いた。


「母上の申す通りにござる」


レオも続く。


「我らが客人を迎えた以上、この場で起きたことを他人事にはせぬ」


フィリアは端末を握り直した。

本当なら、静かな場所へ移動するべきだと思った。

リヴァルへ正確に報告し、指示を受けるべきだと思った。


けれど、この場にいる者たちは、ただの見物人ではない。


翠川家。

アドレメリア家。

武芸者の家。

この土地を知る者たち。


この街を守る者たち。

フィリアは小さく頷いた。


「分かりました。ここで繋ぎます」


端末を操作する。

通信先はリヴァル。

数秒。

画面にリヴァルが映った。


背後には、オペレーション室の光。

フィリアはすぐに口を開く。


「リヴァルさん。定時外報告です」


『聞く』


リヴァルの声は短かった。

フィリアは簡易観測端末の表示を送る。


「持ち込んだ簡易観測端末が、未分類マナ反応を拾いました。

 既存封印反応パターンと部分一致。

 照合率上昇中。

 反応源は未特定。

 位置情報は不足。

 継続観測が必要と表示されています」


リヴァルの目が、送られたログへ移る。


『半精化反応は』


「ありません」


『マギアス反応は』


「警戒値には達していません」


『通信系の異常は』


「ありません。

 シェルターからの連絡ではなく、こちらの端末が現地で拾った反応です」


『了解』


リヴァルは数秒黙った。

その数秒で、画面の向こうの端末に複数の情報が開かれていく。

フィリアには、その全てを読み取れない。


だが、リヴァルの目が止まっていないことだけは分かった。


確認している。

照合している。


切り捨てるものと、拾うものを分けている。


『封印反応候補として扱う』


リヴァルは言った。


『確定ではない。ただし、無視はしない』


「はい」


『現在、シェルター側でも半精化疑い個体の捕縛が進んでいる。

 リオンがもう一体を捕縛。

 シェスターとイルルも一体を捕縛している』


フィリアの肩が少し揺れた。


「シェスターさんとイルルさんも」


『うん。

 一時抑制は成功している。

 正式な解除には君のライトが必要だが、

 今すぐ戻らないと崩れる状況ではない』


リヴァルは淡々と続ける。


『ただし、こちらの戦力は削げない。

 ガイはまだ前線復帰不可。

 リオンは防衛更新と外周警戒から外せない。

 一輝も設備側に必要だ。

 追加戦力の派遣は現実的じゃない』


フィリアは端末を持つ手に力を込めた。

リヴァルは、フィリアだけに話しているつもりなのだろう。


いつも通り、状況を整理するように言葉を並べている。


『現地に織葉、クリスティナ、ミス・シノがいる。

 翠川家とアドレメリア家もある。

 土地の情報を持つ者もいるはずだ。

 こちらから人を送るより、現地協力を仰いだ方が早い』


道場の空気が、ほんの少しだけ変わった。

叢雲は黙って聞いている。


レオも、目を細めて画面を見ている。

紫乃は静かに微笑んでいる。


織葉とクリスティナは、得物を下げたまま、まっすぐ通信画面を見ていた。

リヴァルは続ける。


『輸送ドローンを出す。

 封印解除装置と精霊抑制装置を送る。

 到着までの間、君は観測を続けて。

 反応の変動、照合率、周辺ノイズの変化を記録。

 単独調査はしない』


「はい」


『それから、翠川家とアドレメリア家の当主に通信の時間をもらって。

 封印解除について説明し、協力を要請する』


フィリアは一瞬だけ黙った。

リヴァルはそれを、確認の間だと思ったらしい。


『フィリア?』


「あの」


『何』


「その……すでに、聞いていらっしゃいます」


『誰が』


フィリアは道場を見た。

叢雲。

レオ。

八重乃。


紫乃。

織葉。

クリスティナ。

そして、門下生たち。


「両当主も、八重乃さんも、門下の皆さんも」


リヴァルは一瞬だけ黙った。

画面越しの沈黙。


フィリアは少しだけ肩をすくめた。


「手合わせ中に端末が鳴ってしまって……

 その場で報告した方がよいと、八重乃さんが」


リヴァルの視線が、画面の向こうでわずかに動いた。


『なるほど』


その声に、動揺はほとんどない。

ただ、情報の置き場所が変わっただけ。


そういう反応だった。

レオがそこで一歩前へ出た。


「リヴァル君」


『レオ卿。失礼しました。状況整理を優先しました』


「謝罪は不要である」


レオの声は穏やかだった。

だが、目は真剣だった。


「むしろ、よいものを聞かせてもらった」


叢雲も静かに進み出る。


「リヴァル殿。翠川叢雲にござる」


『お初にお目にかかります、ミスター・ムラクモ』


「うむ」


叢雲は画面越しに深く頷いた。


「今の一連、見事であった」


リヴァルは少しだけ目を細める。


『見事、ですか』


「結果を聞き、状況を分け、手持ちの戦力を数え、次の手順を組む。

 その速さ。

 武芸とは別の到達点を見た思いにござる」


レオも頷く。


「同感である。剣を振るわずとも、場を制する者がいる。

 君はその類であるな」


『僕は必要な整理をしただけです』


「その必要な整理が速いのだよ」


レオは愉快そうに、しかし真面目に言った。


「我々は剣の道を見てきた。だが、今の君の判断には、また別の練達がある」


門下生たちも、誰も声を出さなかった。

ただ、画面を見ていた。


先ほどまで織葉とクリスティナの手合わせに息を呑んでいた者たちが、

今度は別の種類のものを見ている。

戦わない者の強さ。

リヴァル・アニムという指揮官の形。


織葉は木刀を下げたまま言う。


「主任の指揮下にあることは、こちらも変わりありません」


クリスティナも続く。


「ええ。わたくしも同じですわ」


紫乃が穏やかに笑う。


「おばさんも、必要なら動くわ」


叢雲は三人を一度見た。

それから、リヴァルへ向き直る。


「こちらの状況も悪いわけではござらん。

 翠川、アドレメリア、共に門下もおる。

 調査には協力いたそう」


レオも頷く。


「差し支えなければ、輸送ドローンの荷に調査用の機材も含めてくれたまえ。

 封印解除装置だけでは、初動で不足が出るやもしれぬ」


『協力いただけるなら助かります』


リヴァルは即座に返した。


『封印解除装置、精霊抑制装置に加えて、簡易調査機材を送ります。

 マナ反応の詳細測定用、地脈ノイズの分離用、携帯式の記録端末。

 扱い方はフィリアに共有します』


フィリアは慌てて頷く。


「はい」


『現地に到着次第、まずは反応の再現性を見る。

 今鳴った条件を記録して。

 手合わせ中だったなら、道場内のマナ活動、

 人数、時刻、周辺温度、地脈ノイズも残しておいて』


「はい、記録します」


『織葉、クリスティナ』


織葉とクリスティナが同時に姿勢を正した。


「はい」


「はい」


『君たちの手合わせが反応の条件に含まれた可能性もある。

 今すぐ再開しろとは言わない。

 ただ、後で同条件を再現する可能性はある』


織葉が頷く。


「承知しました」


クリスティナも表情を引き締める。


「必要であれば、協力いたしますわ」


『ミス・シノ』


紫乃が微笑む。


「はい」


『現地の人員整理をお願いします。

 門下生全員を巻き込む必要はありません。

 ただし、目撃者としての記録は必要です』


「分かったわ。騒がせすぎないように整えておくわね」


『お願いします』


リヴァルは最後に、叢雲とレオへ視線を戻す。


『ミスター・ムラクモ、レオ卿。詳しい説明は機材到着前に行います。

 通信時間をいただけますか』


叢雲が答える。


「無論」


レオも微笑む。


「こちらこそ願おう」


『では、十五分後に再接続します。

 それまでにログを送ってください。フィリア』


「はい」


『焦らなくていい。

 今必要なのは、反応源を決めつけることじゃない。

 反応が出た事実を崩さず保存することだ』


「分かりました」


『通信を切る』


画面が暗くなった。

道場には、まだ静けさが残っていた。


木刀。

訓練用レイピア。

門下生たち。

両当主。


八重乃。

紫乃。

織葉。

クリスティナ。


全員が、先ほどまでとは違うものを見ていた。

フィリアは端末を抱えたまま、息を吐く。


「すみません。手合わせを止めてしまって」


織葉が首を振る。


「止めるべき時でした」


クリスティナも頷く。


「ええ。あれは仕方ありませんわ」


レオは叢雲を見る。


「叢雲殿」


「うむ」


叢雲は門下生たちへ向き直った。


「本日の正式手合わせは、ここで一時中断とする」


門下生たちが一斉に返事をする。


「はい!」


「ただし、解散ではない。

 各自、見たもの、聞いたものを記録せよ。

 憶測は不要。

 事実のみでよい」


レオもアドレメリア側へ言う。


「同じく。余計な尾ひれはつけぬこと。

 記録は剣と同じである。曲げれば役に立たぬ」


「はい!」


紫乃がすぐに動く。


「記録を取る子はあちらへ。水を飲んでからにしなさい。

 焦ると字も呼吸も乱れるわ」


八重乃はフィリアの肩から手を離した。


「ほらね」


「え?」


「ここで繋いでよかったでしょう」


フィリアは道場を見た。

すでに人が動き始めている。

騒ぎではない。

混乱でもない。


役割を持った動き。

フィリア一人で抱えていたら、きっともっと遅かった。


「はい」


フィリアは頷いた。


「よかったです」


八重乃は穏やかに笑った。


「芽は、一人で森にはなれませんからねえ」


フィリアはその言葉を聞きながら、端末を握り直した。


封印反応候補。

まだ、何も分かっていない。

けれど、もう一人ではない。

翠川家。


アドレメリア家。

そして、シェルター。


それぞれの場所で、それぞれの者が動き始めていた。

十五分後。

道場の中央には、先ほどまでの手合わせとは違う緊張があった。


木刀も、訓練用レイピアも、すでに片付けられている。

門下生たちは道場の端に分かれ、各自が見たものを記録していた。


余計な憶測は入れない。

事実のみ。


叢雲とレオの指示は明確で、それに従う門下生たちの動きも早かった。

紫乃は水を配りながら、落ち着かない者の肩を軽く叩いて回っている。


「焦らないの。見たことだけでいいわ」


「はい、紫乃様」


「音が鳴った時、誰がどこにいたか。そこだけで十分」


「はい」


八重乃は道場の上座側に座り、静かに全体を見ていた。

フィリアは簡易観測端末を膝の上に置き、通信端末を開く。


画面にはリヴァルが映っていた。


『ログは受け取った』


リヴァルは淡々と言った。


『道場内の人数、時刻、温度、周辺マナノイズ、手合わせ直前の反応変動。

 必要最低限は揃っている』


フィリアは頷く。


「はい」


『輸送ドローンはすでに出した。

 封印解除装置、精霊抑制装置、詳細調査用の機材を載せている。

 到着までは、現地でできる範囲の確認を進める』


叢雲が画面に向かって頷いた。


「承知した」


レオも続く。


「リヴァル君。まず何を見るべきかね」


『最初は、反応が出た道場です』


リヴァルは即答した。


『封印反応候補が出た場所を確認する。

 ただし、道場が反応源だとは見ない。

 ここで拾っただけの可能性が高い』


「拾っただけ……」


フィリアが繰り返す。


『地脈や湯脈の反応が、特定条件で観測端末に乗った可能性がある。

 道場内に封印反応の核があるのか、

 外から流れてきた反応を拾ったのかを分ける』


「では、先ほどの手合わせを再現しますか」


織葉が尋ねる。

リヴァルは少し考えた。


『完全再現はしなくていい。

 マナアーツは使っていない。

 手合わせそのものが反応源なら、軽い条件再現でも揺れるはずだ』


クリスティナが訓練用レイピアを見る。


「剣技だけで、ですわね」


『そう。危険な強度でやる必要はない。反応を見るだけだ』


叢雲は短く頷いた。


「織葉、クリスティナ殿。軽くでよい」


「はい」


「承知しましたわ」


二人は再び道場の中央に立った。

先ほどのような張り詰め方ではない。


得物を構える。

礼。

軽く踏み込む。


木刀と訓練用レイピアが触れる。


数度。

音はした。


だが、フィリアの端末は鳴らない。


表示は揺れる。

道場内のマナ活動。

人数。

動作。


周辺ノイズ。

けれど、封印反応候補の警戒表示は出なかった。

リヴァルが画面越しに言う。


『止めて』


織葉とクリスティナは得物を下ろした。


『同条件の完全再現ではないが、

 少なくとも剣技の接触だけで即時反応するわけではない』


「道場そのものでもなさそうですか」


フィリアが聞く。


『現時点では、道場は反応源ではなく観測地点の候補だ』


リヴァルは断定しない。


『次は、周辺の地脈ノイズを見る。九尾に関係する場所を順に確認して』


「九尾関連の場所、ですか」


『赤い鳥居、狐像、小社、九尾神社本社。

 街全体に散っているなら、どこでノイズが強くなるかを見る』


八重乃が静かに頷いた。


「それなら、案内できますよ」


『お願いします』


八重乃は立ち上がる。


「では、まずは近いところから見て回りましょうか」


叢雲が門下生たちへ向き直った。


「道場の稽古はここまで。

 以後、調査の補助に回る者と、通常の片付けをする者に分ける」


レオもアドレメリア側へ指示を出す。


「余計な騒ぎは起こさぬこと。

 街の者には、合同稽古後の確認作業と伝えればよい」


「はい!」


フィリアは端末を抱え直した。

調査が始まる。


そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ重くなった。

だが、横に織葉が立った。


「フィリア殿、こちらへ」


反対側にはクリスティナもいる。


「端末を持ったまま歩くなら、足元にもお気をつけくださいませ」


紫乃も後ろから笑う。


「おばさんも一緒に見るわ。

 人が多いところでは、端末より人の顔を見る方が早いこともあるから」


八重乃が先頭に立つ。


「では、行きましょう」


翠川家の門を出ると、温泉街は昼の顔をしていた。


湯気が上がる。

人が歩く。


店先には九尾の狐を描いた暖簾が揺れている。

土産物屋の前には、尾を九つ広げた狐の小さな置物が並んでいた。


赤い鳥居は、街の中にいくつもある。


路地の入口。

橋のたもと。

石段の脇。

小さな社の前。


フィリアはその一つ一つに近づき、端末を確認した。


反応は出る。

出るには出る。

だが、強くはない。


「微弱なマナノイズがあります」


フィリアはリヴァルへ送る記録を確認しながら言った。


「でも、封印反応パターンとの一致は低いです」


『位置を決めつけないで。数値だけ記録して』


通信越しのリヴァルが答える。


『赤い鳥居や狐像が、単体で反応源とは限らない。

 街全体が同じ信仰で繋がっているなら、どこでも似たノイズは出る』


「はい」


織葉は周囲を見ていた。


「鳥居は、古いものと新しいものが混在しています」


クリスティナも狐像を観察する。


「造形もまちまちですわね。信仰の対象というより、

 観光用に寄せたものも多いですわ」


八重乃が頷く。


「ええ。

 長く残るものは、形を変えますからねえ。

 祈りだけではなく、商いにもなる。

 商いになるから、また残る」


紫乃が店先の九尾まんじゅうを見て微笑む。


「こういうのも、残り方の一つね」


フィリアは端末を見る。

表示は揺れている。

だが、決定的な反応ではない。


いくつもの場所で似たような微弱ノイズ。


九尾の名残。

街に染みついたもの。


けれど、封印反応の核ではない。

一行はさらに進み、九尾神社の本社へ向かった。


長い石段。

赤い鳥居。

観光客と、地元の参拝者。


電子案内板の横に、古い石狐が座っている。

拝殿の前では、湯気をかすかに含んだ風が流れていた。


フィリアの端末が、少しだけ強く震える。


「反応、上がりました」


織葉がフィリアの横に立つ。


「封印反応ですか」


「近いです。でも……」


フィリアは表示を確認する。


「照合率は上がっています。

 でも、反応が広がっています。

 ここが中心、というより、ここにも流れている感じです」


リヴァルが画面越しに言う。


『九尾神社本社は候補に入る。ただし、核としては弱い』


レオが拝殿を見上げる。


「街の中心ではあるが、封印の中心とは限らぬということか」


『はい。信仰の中心と、反応源が同じとは限りません』


叢雲は低く唸る。


「なるほど」


八重乃は拝殿を見ていた。

その表情は穏やかだった。


だが、いつもより少しだけ遠くを見ているようでもあった。


「九尾神社の本社は、街のための社です」


八重乃が静かに言った。


「人が祈り、人が集まり、湯の恵みに礼をする場所」


フィリアは八重乃を見る。

八重乃は続けた。


「けれど、まつられとる社は、別にあります」


「まつられとる社……」


「灼将を守り神としてまつった社です」


八重乃は山の方へ視線を向けた。


温泉街の向こう。

青い山。


その上にある、まだ見えない場所。


「山頂の奥社」


その言葉に、場が静かになる。

読者なら、きっと思っただろう。

やはりそこか、と。


けれど、フィリアたちは今、ようやくその場所へ辿り着いた。

道場で出た反応。

街中の鳥居や狐像に残る微弱なノイズ。


九尾神社本社で上がったが、核ではなかった反応。


山の火を受け止めた灼将。

湯脈。

地脈。

街の信仰。


それらを重ねて、ようやく見える場所。

八重乃は穏やかに言う。


「本社は、街のため。奥社は、山のため。そう伝わっています」


「山のため……」


フィリアが呟く。


「昔、この山は火を持っていました。

 灼将はその火を受け止め、湯として流した。

 ならば、その者を守り神としてまつる場所が、

 山の上にあることには意味があるのでしょうねえ」


リヴァルはしばらく黙っていた。

画面越しに、送られてきた数値を確認している。


街中の反応。

本社の反応。

道場の初回ログ。

地脈ノイズ。


湯脈の方向性。

そして、八重乃の伝承。


『信仰そのものを根拠にはしません』


リヴァルは言った。


『ただし、祀られた場所が地脈上の固定点だった可能性はある。

 封印維持、あるいは観測点として機能していた可能性もある』


レオは小さく笑った。


「伝承を切り捨てず、かといってそのまま信じもしない。君らしいな」


『必要な情報として扱っているだけです』


叢雲が頷く。


「ならば、山頂奥社を確認するべきでござるな」


『はい』


リヴァルは短く答えた。


『ここまでの情報なら、山頂奥社を外す理由がありません。

 封印反応の本命候補として扱います』


フィリアの胸が少しだけ強く鳴った。

本命候補。

つまり、そこにあるかもしれない。


次の封印が。


「誰が行く」


叢雲が問うた。

リヴァルはすぐには答えなかった。

通信画面の向こうで、少しだけ考える。


『大人数では行かない方がいい。反応を乱す可能性がある。

 まずは確認班を小さく』


「ならば、拙者が行く」


叢雲が静かに言った。

織葉が顔を上げる。


「父上」


「奥社は翠川が長く見てきた場所にござる。

 道を知る者、土地を知る者が同行せねばなるまい」


紫乃がすぐに叢雲の横へ寄った。


「では、私も」


叢雲は紫乃を見る。


「紫乃」


「叢雲さまの脚を見ます」


声は柔らかい。

けれど、譲る気はまったくなかった。


「山道でしょう。

 奥社まで行くのであれば、古傷に負担がかからないよう見ておかないと」


「歩けぬほどではない」


「それは知っています」


紫乃は微笑んだ。


「でも、私が見たいのです」


叢雲は黙った。

数秒。


武芸者としての威厳と、夫としての処理能力がぶつかっていた。

最終的に、叢雲は小さく息を吐く。


「……好きにせよ」


「はい」


紫乃は満足そうに笑った。

レオがそこで一歩前へ出る。


「叢雲殿が行くのであれば、私も同行しよう」


クリスティナが振り向く。


「お父様もですの?」


「無論である」


レオは当然のように頷いた。


「この場にはクリスティナもいる。

 加えて、叢雲殿が古傷を抱えてなお山へ向かうというなら、

 私だけ本社で茶を飲んでいるわけにもいくまい」


「お父様、それは親としてですの? それとも武芸者としてですの?」


「両方である」


即答だった。

クリスティナは額に手を当てる。


「隠す気もありませんのね」


「隠す理由がない」


叢雲が低く頷く。


「レオ殿が同行されるなら心強い」


「こちらこそ。叢雲殿の歩みを久方ぶりに見る機会でもある」


「山道で競うつもりはござらんぞ」


「はは。今はな」


「今は、とは」


レオは楽しそうに笑うだけだった。

織葉が一歩前へ出る。


「私も行きます。山道は把握していますし、護衛も必要です」


クリスティナも続く。


「わたくしも参ります。フィリア様の護衛としても、観測補助としても」


フィリアは端末を抱え直した。


「私も行きます。反応を見るには、この端末が必要ですから」


リヴァルは画面越しに全員を見た。


『ミスター・ムラクモ、レオ卿、

 ミス・シノ、織葉、クリスティナ、フィリア。

 この六名で確認班とします』


「六名は小さくないのではありませんか?」


クリスティナが言う。


『全員が動く班ではない。

 観測中心はフィリア。

 護衛と実働は織葉、クリスティナ。

 ミスター・ムラクモは土地と奥社の確認。

 ミス・シノはミスター・ムラクモの補助と周辺警戒。

 レオ卿は現地判断と護衛補助』


レオが感心したように笑う。


「役割の切り分けが早いな」


『必要なので』


叢雲は頷いた。


「異存なし」


紫乃も微笑む。


「おばさんも、その役で構わないわ」


『八重乃殿』


リヴァルの声に、八重乃が静かに顔を上げた。


「はい」


『本社側に残っていただけますか。

 街側の反応、門下の整理、奥社に関する追加情報が必要になった場合、

 こちらにいていただく方が助かります』


八重乃は穏やかに頷いた。


「ええ。老木は根元に残るのも役目ですからねえ」


「祖母上」


織葉が少しだけ心配そうに見る。

八重乃は笑った。


「織葉ちゃん。山へ行く若木が、

 根元の心配をしすぎるものではありませんよ」


「……はい」


八重乃はフィリアへ視線を移す。


「フィリアさん」


「はい」


「山頂の奥社へは、古い参道を使うとよいでしょう。

 観光用の道より人は少ない。

 けれど、足元は悪いです」


「分かりました」


「分からないものを見に行くのは、怖いことです」


八重乃は優しく言った。


「けれど、見に行かなければ、根は分かりません」


フィリアは端末を握る手に力を込めた。


「行きます」


リヴァルの声が通信から届く。


『単独行動は禁止。

 反応が強くなっても、社や周辺構造物には触れない。

 まず観測。

 次に報告。

 封印解除装置が到着するまでは、開ける作業はしない』


「はい」


織葉も頷く。


「承知しました」


クリスティナも続く。


「心得ましたわ」


叢雲が低く答える。


「翠川の奥社、無用に触れさせはせぬ」


レオも頷く。


「こちらも心得た」


『通信は維持します。途切れる場合は、その時点で戻ってください』


「承知」


紫乃が叢雲の腕へそっと触れた。


「では、行きましょうか。叢雲さま」


「紫乃。支えはまだ要らぬ」


「支えていません。触れているだけです」


「同じでは」


「違います」


叢雲はまた黙った。

レオが愉快そうに笑う。


「叢雲殿。よき補佐がいるな」


「……過分なほどに」


紫乃はにこにこしていた。


「まあ、叢雲さまったら」


織葉は目を伏せた。


「母上、調査です」


「ええ。調査よ、織葉ちゃん」


クリスティナがフィリアへ小声で言う。


「出発前から濃いですわね」


フィリアは正直に頷いた。


「はい」


八重乃がそのやりとりを見て、静かに笑った。


「濃い根ほど、山道では頼りになります」


その言葉に、フィリアは少しだけ肩の力を抜いた。

九尾神社の本社を離れ、一行は山へ向かう古い参道へ進んだ。

赤い鳥居の列が、街から山へ続いている。


温泉街の湯気は、少しずつ背後へ遠ざかる。


石段。

木々。

古い苔。

足元の土。


叢雲は脚に古傷があるとは思えないほど、静かに歩いた。


速すぎはしない。

だが、遅くもない。


歩幅は一定で、足音も乱れない。


紫乃はその半歩横にいる。

支えるわけではない。


けれど、段差が変わる場所、石が濡れている場所、

苔の深い場所では、必ず先に視線を落としていた。

叢雲も、それを拒まない。

拒まないまま、自分の足で進んでいる。


レオは少し後ろを歩きながら、その様子を見ていた。


「叢雲殿の歩みは、昔から変わらぬな」


「変わったでござる」


叢雲が答える。


「脚を傷める前は、もっと雑であった」


「雑、か。あれを雑と呼ぶなら、私も若い頃はかなり雑だったな」


「互いに、若かった」


「今も若いつもりではあるがね」


叢雲が少しだけ笑う。


「では、今よりさらに若かった」


「うむ。それでよい」


二人はまた、妙なところで頷き合った。


フィリアはその後ろ姿を見る。

昔、互いに傷を残した二人。


その傷を恨まず、若気の至りのように笑う二人。

今は娘たちを見守りながら、同じ山道を歩いている。


武芸者は、やはり少し分からない。

けれど、その分からなさが、今は少し頼もしくもあった。

織葉は先行しすぎない位置で周囲を見ている。


クリスティナも反対側に立ち、木々の間や石段の先へ視線を配っていた。

二人とも、得物は持っていない。


けれど、いつでも動ける。

そういう空気だけがある。

フィリアは端末を見る。


表示される数値は、まだ安定しない。


未分類マナ反応。

封印反応パターンとの照合率。

上昇と低下を繰り返している。

方向は表示されない。


位置も特定できない。

それでも、山へ向かうたび、

ノイズの質が少しずつ変わっているように見えた。


「反応が、少し変わっています」


フィリアが言う。

通信越しにリヴァルが答える。


『数値を送って』


「はい」


フィリアはログを送信する。


『上昇と言うより、街側のノイズが減っている。

 余計な反応が落ちて、封印反応候補が見えやすくなっている可能性がある』


「つまり、近づいているんですか」


『その可能性はある。ただし、断定しない』


「はい」


織葉が振り返る。


「足元、少し悪くなります」


参道はそこから細くなった。

観光用の整えられた道ではない。

石段は古く、ところどころ欠けている。


木の根が浮き出し、苔が湿っている。

紫乃が叢雲へ視線を向ける。


「叢雲さま」


「問題ない」


「分かっています」


紫乃は微笑む。


「でも、少しだけゆっくり」


叢雲は一拍置いてから頷いた。


「……うむ」


レオが楽しそうに言う。


「叢雲殿、よい采配を受けているな」


「レオ殿」


「何かね」


「貴殿も娘御に同じことを言われたら従うであろう」


レオは即答した。


「従う」


クリスティナが振り返る。


「お父様」


「何だね」


「そこは少し考えてくださいませ」


「考えるまでもない」


クリスティナは深く息を吐いた。

織葉は小さく呟く。


「この親あって……」


「織葉様、それ以上はいけませんわ」


「言うてへん」


フィリアは、少しだけ笑った。

笑ってから、端末を見直す。

表示が、また変わる。

照合率が少し上がった。


警告音はまだ鳴らない。

だが、反応は確かに濃くなっている。


山の空気は、街とは違っていた。

湯気の匂いは薄れ、土と木と苔の匂いが強くなる。

赤い鳥居はところどころに残っている。


新しいものではない。

塗り直されてはいるが、形は古い。

それが、山の奥へ奥へと続いている。


フィリアは息を整えた。

ここから先に、奥社がある。


守り神として祀られた灼将の社。

街のためではなく、山のための社。

封印反応の本命候補。


一行は、山頂へ向かって進んでいった。

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