第十七話 100万円で仕入れられるものもある1万円で仕入れられるものもある
「早く起きろ」
朝の5時に、叩き起こされた。
性懲りもなく飲んだ酒で、まだ頭がついてこない。
けれどその10分後には、もう真っ黄色のホロのついた宣伝カーに乗っていた。
やっぱり商店街の軒先をすり抜けて走っている。
「あのぉ、市場の手伝い、すればいいんですか?」
「いや、今日は客として市場で座ってろ。軽井沢骨董市に出るんだろ。だったら立派な業者さんだ。あんたが今後どんなものを仕入れたいのかは別にしても、今はなんでも、とりあえず仕入れろ」
「いや、でもお金が」
「昨日の1万円があるだろう。100万円で仕入れられるものもある。1万円で仕入れられるものもある」
おやじさんの「いよー」という声でちゃちゃちゃと一本締めをして、競りが始まる。神田骨董館の「業者市場」は、活気にあふれていた。あちこちからどんどん声が上がり、どんどん商品が競り落とされていく。
みんは後ろのほうの隅っこで、ちょこんと座っていた。
「おー、これは一箱500円だ。おい、お姉ちゃん、これ買っとけ」
「あ、はい」
みんはまた「お姉ちゃん」にもどったらしい。
「女の時代だぞー、若いぞー、みんな、あのお姉ちゃんも業者さんだ、覚えておいてやってくれ」
みんはぺこりと頭を下げた。
それから、500円とか千円とか、とにかく安いダンボールが出ると、800円とか覚えたての「センマイ(1250円)とか、ちょっと発句より上を言って落とした。
その値段で、2箱とか3箱とかがまとめて¬落ちたりもする。
¬¬ダンボールに入ったまま、ほとんど中身を見せない箱を「ノゾキ」と言う。何が入っているかは、帰ってからの「お楽しみ」だ。
要は、出した業者にとって「いらないもの」が入っている。
箱の上のほうには、見てくれのいい商品が入っていて、底の方はとんでもないガラクタしか入っていない場合もある。
だけど、その時のみんにとってはガラクタだって立派な商品だ。
「1万円で買えるものもある」のだから、1万円で買えるだけ買おう、と思った。
終わってみたら、18箱がみんの商品になっていた。
公衆電話から電話をして、虎郎に迎えに来てもらう。
「いやぁ、良かったですよ、今日はまだちり紙交換行ってなくて」
ポンコツライトバンは空っぽのままだった。
すでに夕方である。
こいつ、さぼっていたらしい。
「すごいですねぇ、まるで骨董屋さんですねぇ」
虎郎は、無邪気に喜んでいる。




