第45話 確信の踏み込みと開かれた扉
静まり返った山奥の別荘。
長野県警が周囲の包囲を完了させた直後、無線の向こうから、周辺を探索していた地元の捜査員による押し殺した声が入った。
『報告します。別荘から数百メートル下った林道で、枝葉と偽装網で隠された車両を発見。……照会の結果、千葉西署の田口刑事の車両で間違いありません』
その報告が、中島の全身の血を沸騰させた。
安達の車から見つかった鈴木幸子の毛髪。
そして、小諸の山中に隠されていた田口の車両。 間違いない。
行方不明の三人は、絶対にこの建物のどこかにいる。
中島は長野県警の捜査員たちと力強く頷き合い、大きく息を吸い込むと、重厚な木製の扉を力強く叩いた。
――ドンッ、ドンッ、ドンッ!
「長野県警です! 安達正志、開けなさい!」
怒号が山間に響き渡ってから数秒後。 内側から鍵の外れる鈍い音が響いた。
緊張に包まれた捜査員たちが腰の警棒に手をかける中、扉はゆっくりと開かれた。
「おやおや。千葉の刑事さんが、こんな遠くまでご苦労なことです」
そこに立っていたのは、周囲を取り囲む無数の警察官の姿などまるで眼中にないと言わんばかりの、平然とした顔つきの安達だった。
口元には薄気味悪いほどの笑みすら浮かべている。
「安達正志……! 貴様の所有するこの建物に、捜索差押許可状が出ている。中を改めさせてもらうぞ!」
中島が令状の紙面を安達の鼻先に突きつけるが、安達は微かに肩をすくめただけだった。
「どうぞ、お好きに。私は何もやましいことなどありませんから」
その言葉を合図に、中島と捜査員たちが靴のまま一斉に別荘の奥へと雪崩れ込んだ。
吹き抜けになった広々とした居間へ踏み込んだ瞬間、中島は思わず息を呑み、足を止めた。
後に続いた刑事たちも、異様な光景に顔を引きつらせる。
薄暗い居間の壁一面に、大小さまざまな数十台もの映像装置が埋め込まれるように並んでいたのだ。
電源の入ったいくつかの画面には、別荘の周囲の森や、駐車場に展開する警察車両の様子が複数の角度から映し出されていた。
「……安達。この無数の画面は一体何だ。何を監視している!」
中島が鋭く睨みつけると、背後に立っていた安達は悪びれる様子もなく、涼しい顔で言い放った。
「監視だなんて、人聞きの悪い。これはただ、私が個人で楽しむための映像装置ですよ。防犯も兼ねて、大自然の景色を眺めたりするための、ささやかな趣味です」
刑事たちが放つ怒りの熱と、安達の纏う異常な冷気が、居間の中で激しく衝突していた。
続く




