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28話 クラブに誘われて

教室に戻るとパンを貪る。何人かは昼食を終えていて談笑している姿が目に入る。僕は一人で昼食タイムだ。馬鹿のせいで戻って来るのが遅れたからね。


「遅かったわねリバル。それに服もボロボロじゃない」

服がボロボロなのは主にアメリアさんのせいだよ。何もできずにただ一方的にズタズタに斬り裂かれたんだから。


「ミーシャ、模擬戦見てたんだろ?服はアメリアさんのせいだから」

「ああ!そういえばそうだったわね。じゃあ戻ってくるのが遅かったのは?」

どうしようかな。正直に言うべきか、それとも濁すべきか。悩んでいるとミーシャが教室を見回して察したような表情に変わった。


「いいわ、何となく分かったから」

僕だけじゃなくライナスも遅れて戻ってきたのだから大体想像がついたらしい。というかライナスの率いていた純血派のみなさんがボロボロになっていたらまあ分かるよな。


「でも無事に戻ってこれてよかったわ。あの男の事だから複数人で囲んだりしたんでしょ?」

ミーシャが少し声を抑えて話しだす。ライナスの性格をよく分かっているようだ。


「まあね。でも途中でシグルドさんって人が介入してきたよ」

「シグルド?オールウィン公爵のことかしら?」

「そうそう。確かそんな家名だった気がする」

「ガッチガチの純血派じゃないの……どうして学園にいるのかは分からないけれど、少なくともマトモな理由じゃないでしょうね」

オールウィン公爵だと分かるとミーシャは極端に嫌そうな顔を見せた。嫌われ者なのかな。


「純血派の筆頭だって言ってたけど、ミーシャの家は純血派じゃない貴族ってこと?」

「当たり前よ。あんな凝り固まった考えの奴らと同じにしないで欲しいわね。アタシやリナ、シンクはみんな寛容派って呼ばれる派閥ね」

寛容派……初めて聞いた単語だ。名前からして平和的な感じがする。まあ僕を相手に普通に接してきている時点で純血派じゃないだろうとは予想してたけど。



そうこうしてるうちに授業は滞りなく終わった。僕の服がボロボロになっているのもライナス達純血派の生徒が傷だらけになっているのもお構いなしだ。先生は何も気にすることなく授業を進めていた。

案外こういった事は多いのかもな。どうしても貴族同士のぶつかり合いだってでてくるだろうし。



授業が終わると終礼と呼ばれる時間がある。連絡事項の伝達に使われる時間らしい。ちなみ僕は休み時間の合間に新しい制服に着替えておいた。予備を学園長室に貰いに行くのもちょっと恥ずかしかったけど。

まあ当然だよ。ボロボロの制服を着たやつが廊下を歩いてたら視線はモロに受けるんだから。



「今日もお疲れ様でした。ということでどうだったかなリバル君。初めての学園生活は」

「色々ありましたが良くしてくれる方が沢山いたので楽しかったです」

ほんとに色々あったけどね。アメリアさんの唐突な臨時講師着任にアホみたいに連戦させられた模擬戦、そしてライナス達純血派からの襲撃。普通の奴だったら多分心折れてるんじゃないか?



「それなら良かった!どうしても貴族と平民には隔たりがあるから多少衝突する事はあると思うけど、ここは実力主義の学園だ。だから実力で見返してやればいいからね!」

「は、はい」


熱血教師め。僕が辛うじてライナス達よりも多少腕に覚えがあったからなんとかなったものの、もしもライナス達より弱ければあの場で殺されていたかもしれないのに。脳天気な人だ……。


でもライナス達のような一部の生徒以外は概ね普通に接してくれていた。エリクと仲が良さそうにしていたのが原因だろうけどね。皇族と仲良くしている謎の平民、みたいな立ち位置だろうけど。



「さて、本日もお疲れ様でした!気を付けて帰るように」

「「「ありがとうございました」」」

起立して礼をすると各々鞄を手に教室を出ていく。なんだかいいなぁこういう生活も。僕も寮に帰るかと鞄を手に取ると机に影が差した。誰かが僕のそばに来たようだと顔を上げる。


「このあとどうするんだリバル」

「ん?エリクか。どうするって寮に帰るけど」

「クラブ活動の事は聞いていないのか?」


なんだそりゃ。先生からも聞いていないし生徒会長からも聞いてないぞ。


「そうか、知らなかったのか。ならば一緒に来るか?」

「え?どこに?」

「俺が入っているクラブだ。今日は見学してみるといい。肌に合うと思ったらそのまま入部できる」

エリクが入っているクラブか。どんなものか興味はある。だが忘れちゃいけない。エリクはこの国の皇子様だ。このクラスならまだ僕の存在が周知されているからいいけど、クラブ活動となれば他のクラスだっているだろう。

そんな中に平民が飛び込めばどうなることやら。


「いやぁ……でもなぁ」

「なにか心配事でもあるのか?」

「そのー僕って平民なわけだし、他のクラスの人もいるんだろ?エリクに迷惑がかかるんじゃないかと思ってさ」


僕は正直に話した。するとエリクは苦笑いを浮かべて口を開いた。


「なるほど、そういう事か。安心しろ。俺が入っているクラブにも平民はいる。商人の息子だっているぞ」

「へぇ、貴族だけじゃないんだ」

「ああ。だからお前も安心して見学できるぞ」


平民と貴族が入り混じったクラブか。なかなか珍しい事もあるもんだね。


「それならちょっと顔を覗かさせて貰おうかな」

「ああそうするといい。一応この学園ではクラブ活動への加入が義務付けられているからな。俺はてっきりもう生徒会への打診をされているかと思っていたが」


あぶねぇ!このままクラブ活動をしなければ生徒会に入れられる可能性があったのか!うわ、これもしかして策略じゃないか?

サリアさんが何も伝えてこなかったのは、後々生徒会に入れようと考えていたとか……有り得そうだ。



「ちなみにどんなクラブ?」

「魔法剣術会だ」

なにそれ面白そう。魔法が全然使えない僕にとってはハードルが高そうだけど、面白そうなクラブだ。


「へぇ〜いいねそれ。でも僕魔法が使えないけど大丈夫そう?」

「問題ない。魔法と剣術を学ぶクラブだからな。上級生から教えてもらえばいい」

ならいいか。エリクのお誘いを受けるとしよう。ただし、同じ教室にいるクラスメイトが聞き耳を立てているだろうことは想像に容易い。そんなに気になるなら一緒に見学に行きたいって言えばいいのに。



エリクの護衛もとい側付きの生徒と共にクラブルームへと足を運ぶ。道中ちらほら視線を感じたが今更である。


「ここが魔法剣術会のクラブルームだ」

「案外普通の教室なんだね」

他の教室と何ら代わり映えのしないドアがある。皇子がいるからと特別扱いしていないのがよく分かる。


エリクがドアをノックして入室すると僕も倣って入室する。中では数人の生徒が談笑していた。エリクの入室と共にピタリと会話は止まる。


「遅れてすみません。今日は見学者を連れてきたが構わないでしょうか?」

「あら、見学者ですか?珍しいですね殿下」

一番奥の席に座っていた髪の長い女性が立ち上がるとペコリとお辞儀をする。割と背が高くてエリクと同じくらいはありそうだ。


「先輩、おられたのですか。何度も言いますが俺は下級生ですので畏まる必要はありませんよ」

「そういう訳にはいきませんわ。殿下は殿下ですもの」

ほう、上級生らしい。後輩といえども皇族には敬語が普通のようだ。じゃあ僕ってどうなんの……?めちゃくちゃタメ口なんだけど。


「殿下こそ私に敬語を使う必要はございませんわ」

「先輩に対して無礼な振る舞いはできかねますね」

「ふふふ……ではお互いに敬語ということでよいでしょう?」

「むむ……」

エリクの負けだな。先輩のほうがいい落とし所にもってきている。


「それよりもそちらの方が見学者ですか?」

「ええそうです。彼は今日入学したばかりですのでクラブには加入していないんです」

「なるほど……噂の新入生ですか」

また出てきたな噂……。どんな噂されてるのか気になってきた。ま、とにかく挨拶しておこう。


「初めまして、リバルと申します。魔法剣術会がどんな活動をしているのか分かっていませんので、本日は見学させて頂きたく思います」

「私は魔法剣術会の会長を努めております、エリザベス・リリウムですわ。見学は大歓迎ですので是非楽しんでいってくださいね」

家名がある。まあ当たり前のように貴族令嬢ですよね。というかすっごく美しい人だ。アメリアさんも大概美しかったがエリザベスさんもいい勝負をしている。


「リバル、この方は公爵家のご令嬢だ。失礼がないようにな」

「こ、公爵?……手が震えてきた」


またど偉い人だ。エリクが加入するクラブなんだからそりゃあ上級貴族が属しているのも当然、か。というか言われなくても失礼な事をする訳がないけど。

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