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16話 寮に案内されて

結局僕は学園に入学する事を選んだ。レオリックスさんは弟子にしたいなんて言ってくれてたけど、あくまで僕の意思を尊重すると言ってくれた。


でも卒業したらレオリックスさんのもとで学びたいな。模倣剣術の奥義ともいえる技を組み合わせるやつ、僕も習得したい。


アメリアさんはあの後何度も卒業したら自分のもとへと食い下がってきた。それも両肩を掴まれて、だ。

その度にレオリックスさんに引き離されていた。


残念美人、というものなんだろうか。あれだけ綺麗な顔立ちなら引く手数多にも思えるが、性格に難があるのかもね。



閑話休題。


入学できる事は決まったが、詳しい話をしたいとのことでいま僕は学園長室にいた。もちろんサリアさんもいる。何故かミーシャとアルカもいるけれど。


「さてと、まずは試験合格おめでとう」

「ありがとうございます」

「一応もう一度自己紹介しておこうかい。あたしはガーベラ・サテライト。ここの学園長ってやつだよ。それで入学において必要な物品があるんだがねぇ、あまりお金がないだろう?」

「え、ええまあそうですね……」

あれだよな、教科書とか木剣とかその辺りがいるんだよな多分。ほぼ自給自足でやってきたから多少はまだお金が残ってるけど、これからの食費を考えたらあまり使えないんだよな。


「そこでだ、面白いものを見せてもらった代わりにその辺りは全て無償で支給させてもらうよ」

「面白いもの、ですか?」

「ああそうさ。六聖との戦闘はなかなか見応えがあったからね。レオリックスもあんなくたびれたおっさんに見えるけど剣聖と言われるくらいだから普通はマトモに戦えるような相手じゃないんだよ」


レオリックスさんの動きは人外じみていた。縮地とかいう技なんてどうやって習得したのかも分からないし。まあ他人からすればそんなとんでもない速度で動くレオリックスさんの攻撃を防いでいた僕も大概なのかもしれないけど。


「正直助かります。あまりお金に余裕はなかったので」

「入学金はそこのサリアが立て替えるらしいから後で感謝でも伝えておいてくれ」

「え?」

入学金……そうだ。これだけ有名で人気な学園なんだから入学金も相応に高いはず。それを立て替えるなんてサリアさん……よっぽど僕を入学させたかったんだろうな。


「ありがとうございますサリアさん」

「構わない。君ほどの才能を山の中で腐らせるのはこの国にとっても大きな損害だ」

「そう言って頂けるのはありがたいですけど、僕にそこまでの価値はないかと思います」

「君が思っているより模倣剣術というのは希少価値が高い。とにかくお金に関しては気にしなくてもいい」

サリアさん太っ腹だなぁ。あ、いや見た目じゃなくてね。流石は貴族令嬢ってところか。

凄い偉い立場の娘さんだって聞いてるけどそれなりに高いはずの入学金を気にもしないらしい。


「住むところはどこか決めてるのかい?」

「え?あ、そうか……」

そうだったよ。完全に忘れてたけど住むところないじゃん……。


「何も考えていなかったようだね。寮があるからそこに住めばいい。家賃とかそういうのは気にしなくていい。ま、食事は自分でなんとかしとくれ」

「何から何までありがとうございます」

「最初はサリアが面倒を見るっていうから任せるつもりだったけどね。アンタみたいな才能は手放したくないからあたしも力になってあげるよ」


元々はサリアさんが言い出したことだしな。僕に学園へ通うように勧めたのは。まあでも学園長のお眼鏡に叶ったようで嬉しいな。



「とりあえず寮に案内、の前にこれを渡しておくよ」

そう言って学園長から渡されたのは制服だった。


白を基調とし、青色の刺繍でラインが何本か入ってある。胸元には剣のシンボルが縫い付けられてあった。


「サイズが合わなかったら困るからここで着てみな」

「それもそうですね」

僕がその場で着替えようとするとサリアさんが慌てたように僕の腕を掴んだ。


「待て待て。学園長はこの場で着てみろとは仰られたが服の上からでいい。というより一応私も女なんだが君には羞恥心というものがないのか?」

「あっ……すみません」

忘れてたわ。一人でいることが長かったから無造作に着替えるところだった。あぶねー、サリアさんと学園長の目の前でまっ裸になりかけたじゃないか。


とりあえず言われた通り服の上から袖を通すとサイズはピッタリだった。


「ジャストサイズみたいだね。よく似合ってるじゃないか」

「なんだが変な気分ですねこれ」


制服なんて着たのは初めてだ。なんというか貴族になった気分になる。制服も質のいい糸を使っているのか肌触りがいい。平民が着るような服ではないことは確かだ。



制服を着ると実感が湧く。

これから沢山の剣士見習いに混じって学んでいくのか。父さんに剣を教えてもらって、後は全て独学だった。でもこの制服を着るといよいよ本格的に剣を学ぶのだという気持ちになる。



「自前の剣があるならそれを使いな。なかったら見習い用の剣を用意するよ」

「いえ、僕はこれがありますので」

腰に差した剣をポンポンと二度ほど叩く。父さんから貰った剣だがまだまだ使える。それほど高価な物じゃないかもしれないけど、僕には十分すぎる代物だ。


「そうかい。じゃあ後はサリアについて行きな。寮まで案内してくれるよ」

「分かりました。これからよろしくお願いします」



学園長室を出るとサリアさんと一緒に寮へと向かう。

校舎から少し離れた場所に建てられてある寮は、想像以上に立派なものだった。


五階建てでパッと見第二校舎かと思える大きさだ。


「ここが二学年用の寮だ。寮長には既に話をつけてある」

「二学年、ってことはこの大きさの寮があといくつかあるってことですか?」

「ああ。遠方から来た生徒が多いからな。帝都に住んでいない者はみな寮で生活している」


学園の敷地は僕が住んでいた村より大きいんじゃなかろうか……。世界は広いなと思い知らされてしまった。




寮へと足を踏み入れると二十も半ばと思えるお姉さんが出迎えてくれた。二学年の寮長だそうで、警護も兼ねているとのこと。あまり腕が立つようには見えないけど……。


「初めまして、リバル君。私はシャーリー、ここの寮長をしています」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「その顔……お姉さんが弱そうに見えたのかな?」

顔に出ていたようで図星を突かれてしまった。


「えっと……その、はい」

「細腕で剣なんか振れないだろって言いたげね。安心して、これでも寮長を務められるくらいには腕が立つのよ」

「寮長ってそんな凄い仕事なんですか?」

「ええそれはもう。やっぱり若い子ばかりだから喧嘩とかもよくあるの。それを止めるのも私の仕事ね」

「リバル、寮長というのはこの学園でも上位の成績を修めた者しかなれない役職だ。当然だが今の私でも歯が立つかどうか」

サリアさんが勝てないかもしれない相手ってとんでもないバケモンじゃないか。細身だから剣を交えたら折れそうなんだけどな……。


「ふふふ、またまたサリアちゃんもお世辞が得意ね。流石に私じゃあサリアちゃんに勝てないわ」

「貴女の在学中の成績は随分と尖っていたと聞いています。速さだけなら学園史上最速だったとも」

「ふふふ」

意味深なふふふ……怖いな、なんか。

否定もしないところをみるに恐らく本当なのだろう。



「シャーリーさんは在学中の時、疾風と呼ばれていたらしい。リバル、間違っても喧嘩は売るなよ」

「売りませんよ!僕そんなに好戦的じゃありませんからね」

「それはどうだが。レオリックス様との戦闘を随分と楽しんでいたようだしな」

楽しむ余裕なんてなかったよ!必死だったんだからな。


「ふふふ、リバル君。もし他の生徒から喧嘩を売られたらお姉さんに教えてね。私がみっちり教育してあげるから」

そう笑うシャーリーさんの目は全然笑っていなかった。


よし決めた。この人は絶対怒らせないようにしよう。

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